4-2 リンの日記より その2
本日2回目の更新です。
「はわゎゎゎわーーーー」
早いです、オオカミさんはとても早いです。お馬さんたちには乗り馴れてるけれど、全く別物です。
私はオオカミさんに振り落とされないようにギュッと抱きつきます。
さらに驚きなのはその横をフーセさんが同じスピードで走っていることです。
「小僧、小烏がいなくともだいぶ早くなったな」
「だろ?まだまだいけるぜ!」
「よかろう、儂を追い越せたならば背に乗せてやっても良いぞ!」
「まじか!そいつは張り切らなきゃな!」
「ーーーーーーーーーー!!!!!」
本当に怖い時って声が出ないっていうのは本当なんですね。また、初めての経験です。
私頑張りました、私にしたら1時間以上も頑張った気がするのですが…どうなんでしょう?流石に手が痺れて来ました
「あっ!ケンローストップストップ!」
「なんじゃもう疲れたのか?まだまだじゃの?」
「違う違う、リンちゃんが限界だ!」
「おお!軽いからすっかり忘れておった!」
急にオオカミさんが止まるので私は体を支えることが出来ず空を飛びました。あぁママ私空を飛べたよ!
地面に叩きつけられるかと思いましたがフーセさんが受け止めてくれました。また初めての事です。お姫様抱っこです。
「大丈夫か?」
心配そうに私を見ています。
安心したせいなのか感動したせいなのかわかりませんが涙が溢れて来ました。
「あぁ!泣かないで!ケンロー!急に止まるなよ!」
「止まれとゆうたのはお主じゃろ!」
フーセさんとオオカミさんはオロオロしています。心配をかけてしまいました。
「ッグス、ごめんなさい。落ち着きました。」
きっと目の周りが真っ赤です恥ずかしくて顔を上げられません。
「本当にごめんな、ほらケンローも謝れよ!」
「嬢ちゃんを背に乗せろとゆうたのもお主じゃ、儂は悪くない。」
「競争するって言ったのはケンローだろ?」
「儂は競争しておらん、いつも通りに走っていただけじゃ、なんじゃ競争しておったつもりか?」
「ああ!もういい!大丈夫?立てるか?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあゆっくり行こう、あとどれくらいかかるかなぁ」
そう言われて私も辺りを見渡します……
…もう一度見渡します……
これは困りました。
「ここはどこでしょう?」
余りのスピードに目を開けていられなかったのでどこをどう通ったのかさっぱり分かりません。お二人は真っ直ぐ上を目指したと言うのであの速度ならもう着いて居てもおかしくないのですが…周りは完全に森の中。ちゃんと道があったのになんでこんな事に…
「ケンローは分かる?」
「ん?もちろんじゃ!ついて来い」
ゆっくりと斜面に向かって森を歩きます。
まぁゆっくりと言ってもさっきに比べてと言う話ですが…
フーセさんは私が歩きやすいように前で道を開きながら進んでくれます。紳士です。
どれくらい歩いたでしょう、太陽の位置からするにお昼は過ぎていたでしょう。
「ごめんなさい、きゅっ休憩させてください。」
「そうだな休もうか、ごめんな気が利かなくて」
「ごめんなさい足手まといになってしまって」
「そんな事ないよ!むしろごめんな迷っちゃったのは俺らのせいだから」
「らじゃない、お前じゃ。」
「さっきから景色変わんねーけどほんとに道わかるんだろうなケンロー!」
「ん?あっ?うん大丈夫じゃ。」
「あっ私、サンドウィッチ作って来たんです、お昼にしましょう。」
カバンからサンドウィッチと水筒を出します。
「あっ」
カバンから出したサンドウィッチはぐちゃぐちゃになっていました。
泣きそうになった私から慌ててフーセさんがぐちゃぐちゃになったサンドウィッチだった物を奪い取ります
「うん!うめー!最高だ!ありがとうリンちゃん。」
紳士です。
オオカミさんはお腹が空いてる時しか食べないと言いました。オオカミですものね。そうなんでしょう。
「よし、腹も膨れたし行くか!」
また歩き出します。少し歩くと急に立ち止まりました
「ケンロー!」
「よし。」
オオカミさんが剣になります。
「リンちゃんこっちに来て、魔獣だ」
慌ててフーセさんのところに駆け寄り周りを見渡しますが何かいるようには見えません
「木の上か!」
クマさんです。凶暴そうなクマさんです。どうやって木に登ったのでしょう?一生懸命木を登る姿を想像すると可愛らしくも有ります。
「一閃!」
フーセさんが剣を振るうと光が走りました、クマさんが木から落ちてしまいました。かわいそう。
「小僧浅いぞ!」
「わかってる閃刃!」
凶暴そうなクマさんをやっつけました。木の上にいただけなのにちょっと可哀想です。
「はよここから移動するぞ、血の匂いにつられて魔獣が集まって来たら面倒じゃ、娘、わしの背に乗れ」
そう言われたのですが断りました。
まだ手が痛かったからです。
「じゃあ俺に乗って!」
という事でフーセさんにおんぶされる事になりました。
恥ずかしかったのですが急いでいたので仕方ありません。仕方ないのです。
先程と同じようなスピードでしたが、フーセさんの背中の方が安心して乗っていられました。しばらく行くと崖の下に出ました。
「場所がわかりましたよ!この崖の上が目的地です。」
「よかったのぉ」
オオカミさんがつぶやきます
どこをどう歩けばここに出るかはわかりませんがこんなせり出している崖は山小屋付近しかありません。でもここの上に行くにはぐるっと回って来なければ行けません。
「んー飛ぶか!ケンロー剣になって。」
「そうか、マントがあったの、最初からそれで飛んでくれば早かったんじゃ無いか?」
「いや、ソフィがいないから降りれねーかもしれないし」
「それもそうじゃな」
飛ぶ?ジャンプすると言う事でしょうか?流石にこの高さの崖は無理だと思うのですが。
こう思っていると剣になったオオカミさんを腰につけてフーセさんが言います。
「ごめんおんぶだと飛びにくいから前に来て」
人生2度目のお姫様抱っこです。しかも首に手を回しています。これわーーこれわーーー
「じゃあいくよー」
そう言うと…ふわっと浮き上がります。
「えっ!?えっ??」
お姫様抱っこの状態のままどんどん上へ上へ
「と…ととと飛んでます!!!」
「すげーだろ!」
木を越えてあっという間に崖の上へ
「はい、到着っと」
ストンと崖の上に立つと私を下ろします。少し残念です、もうちょっと飛んでみたかった。
「あれが目的地だね。」
山小屋が見えます。ようやく到着しましたが…もう夕方になってしまっています。
「よし、まずは七星剣を見つけるか、ケンロー小屋の中にあるのか?」
「いや、小屋の裏手じゃ。」
山小屋の裏手に行くとそこにも崖があります。
「あったあったこの岩じゃ、小僧。この岩を寄せろ」
オオカミさんが登った岩はとても大きい岩でとても動かせるようには見えません、でもここまで来たら私驚きません、フーセさんはやってしまうんですね。
「どれ?ふんぬ!ドォリャーーーー!だめだケンローびくともしねぇ」
せっかく心の準備をしたのに無駄になってしまいました。
「仕方ないのぉ」
剣になったオオカミさんを持ってフーセさんが剣を振り下ろします
「リンちゃんちょっと離れてて。閃刃乱舞!」
大きな岩が細かく切れていきます。
岩がなくなると奥には洞窟がありました。
「たいまつとか必要だったか?」
「あっ私ブライト使えます。」
「あっほんと、助かるよ!」
やっとお役に立てる時が来たようです。
「光の眷属よ盲目の時を解き放ち我を照らせ!ブライトフォール」
洞窟を進みます。と言ってもそんなに深い洞窟ではなかったようです。奥まで進むとお墓でしょうか?剣が刺さっています。
「バナン、ヴァルハラまた来たぞ。」
オオカミさんがお墓に話しかけます。
「バナンさん、ヴァルハラをお借りします。」
そう言うとフーセさんがお墓から剣を引き抜きます
カーブを描いた長い剣です。
2人はこちらに振り返ると
「じゃあ帰ろうか。」
と言いました。これで目的達成です。
洞窟を出るともう日が落ちる所でした。
「流石に今から山を降りるわけにはいきませんね。」
私たちは山小屋で一泊することになりました。
皆さんに心配をかけてしまいますが仕方ありません。
「狼煙を上げます」
崖のうえで狼煙を起こしてここに泊まる事をつたえます。
流石に夕方戻ると伝えていたので気づくと思うのですが…
「うお!ルルねぇちゃん?」
フーセさんが突然話し始めました
「いや、悪い迷子なっちゃって、うん、剣は見つかったよ。リンちゃん?ちょっとまって、リンちゃん!」
フーセさんが駆け寄って来て突然私の手を取ります
(フーセさんに手を握られてしまいました)
「ちょっとフーセ君!なにしてるの!!」
!!!お姫様の声が聞こえます!
「だってこうしないとリンちゃんにも聞こえないじゃ無いか」
「リンちゃん!大丈夫?怪我はない?」
「はい!大丈夫です。」
「ごめんね、あんちゃんフーセとケンローがまた暴走したんでしょう?」
今度はシルさんの声がします
「いえ、とても紳士的でした。」
「…ちょっと!フーセあんたなにしたのよ!」
「何もしてねーよ!とりあえずいま山小屋なんだけどもう日が暮れるから明日帰るよ!」
「あんたとケンローだけならともかくリンちゃんもいるのよ!バカ言ってないで飛んで帰ってこい!」
「あのー怖いです。あんまり高いとこを飛ぶのは怖いです。ですから一泊します。させてください。」
「それもそうよね、フーセ君にまたがって飛ぶんだもんね怖いよね、リンちゃんがそう言うなら仕方ない、フーセ君、リンちゃんをこまらせるんじゃないわよ!」
こうして山小屋で一泊することになりました。
私の冒険はもうちょっと続くようです。
なにとぞなにとぞブックマークなんぞをポチっとお願いいたします。ブースターがかかります。




