1-4 修行
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー剣狼
若いもんは見ていて飽きない
とくに伸びが良いものはなお良い
伸び盛り、成長期、言い方はいろいろあるが、変化の大きい時期はとくに面白い、肉体的成長、精神的成長、沢山の夢をもち、挫折し、信念が柔らかく柔軟でいかようにも変化する。
いつからこうなった?そろそろ歳かのぉ…
もういくつになったかなど数えていない
いつまで生きるのかも決めていない
しかしまぁ暗がりから起きた後ですぐに楽しみを見つけられたのは幸運と言えるだろう。
たまたま自分を起こしたものがそうだった、誰でもそうなのか、こやつらだったからそうなったのかはわからないが、面白い、成長速度が…
まずは姉妹の姉じゃな、こやつのおかげで皆の成長を上げているのが分かる。姉の言うことをみなが耳を傾ける、わっぱでさえの、そして知識を伝えるすべがうまい、小僧へワッパへ小娘へそれぞれに適した教え方をしておる。しかし、指導して弁当作って勉強して、こやつはいつ寝ておるんじゃ。
次は小僧じゃの、まだ儂を振るうには早いと言うことで棒きれで練習しておる、やはり今に近い記憶の方が呼びやすいのか七星のパルの技を練習しておる、パルは臆病者じゃった魔力を剣撃に乗せ飛ばし儂を盾にする戦い方が主流じゃった、魔力制御が苦手な小僧はそこを剣速でカバーして棒きれで木を切るまではしてみせた、岩まで行ければ一度儂を握らせてやってもええかの?
驚いたのは小娘じゃ、もうなんか使いこなしておる。
体の形を変えるところをすぎて、願い通りに森の動物に変身しておる、
「ケンロー!お話しできないじゃない!」
とか言うから変身する能力だから話す能力ではないと言うことを言ったら話が違うと怒り始めた、まず儂と話せるようになってもらいたいもんじゃ。
そしてわっぱじゃの…わっぱは成長しておる。しておるのは分かるんじゃが…残念じゃが成果が見られない。姉のはなしは聞いておる、朝は魔力集中して魔力を高め午後はセリスを見て剣術の見取り稽古、なんか小娘を探せ!見たいなこともやっとったの…
魔力は高くなった人並みに…、剣撃も飛んだ…うちわで扇いだ程度、他のもんの成長スピードが速すぎるのかもしれんが、パッとせんのぉ
「剣狼さまフーセはもっと成長しますわ、今は土台を作っている段階、おわかりでしょ?フーセにはもっと成長してもらわなくちゃ」
儂はお前の成長の方が怖いわ、儂の威厳かすれてしまうじゃろうに…
まぁ目的があって鍛えておるわけではない
ゆっくり成長を楽しむ事にしよう
「セリスさん、そろそろケンローさん使いこなせるんじゃないですか?」
口火を切ったのは小娘じゃった
「シルちゃん、剣狼さまはこれであの岩を割るまではダメとおっしゃられている。」
「あら岩を割りたかったの?セシル?もう割れるわよ?」
「いやいやファル、ほら見ろよ傷をつけるのが精一杯さ」
「てっきり飛距離を、伸ばしたいものだと思っていたから…単純に近づけばいいのよ、その木の棒が直接岩にあたるぐらいに。そうね、岩にあたる時に剣撃を飛ばすイメージでいいんじゃないかしら」
「なるほどゼロ距離射撃みたいなことだな」
岩の前で構えたセリスが息を整え棒を振るう
バキ!パラパラパラ
「すごい!セリスさん岩がひび割れましたよ!」
「ははっ出来た、出来たぞファル!」
「七星のパル様は私たちの国ムスシタナ王国の剣士だったのよ、今練習してるのは王国の剣術なの。村にも文献がいっぱいあったわ、王国剣術は魔術と剣術の融合、魔力を剣に乗せて放ち威力を増したり、変化を与える技なの。もっと威力を増すなら魔力を上げなきゃならないわ、あとは土の術も練習しなくちゃね、棒を見て?」
「なるほどな、これじゃ剣がいくらあっても足りない」
棒の先が綺麗に無くなっている
「明日から朝はフーセと魔力集中と土の術で硬化させるお勉強ね」
「剣術やるために魔術の練習か…何がしたいのか…」
「フーセみたいなことだな言わないの、貴方は魔術もできるところフーセにみせてもらわないと兄者の面目が立たないんじゃない?」
「そりゃそうだな、まぁフーセの為にもなると思って頑張るか」
「でもセリスさん!岩割れたんだからケンローさん振らせてくれるんじゃない?」
「ダメじゃ、確かに儂は割れと言った、儂もその棒きれのように折れたり粉砕することはない、しかしそれじゃ儂疲れるじゃろ?儂を傷めぬよう修練せい!」
「大丈夫ならいいじゃない、セリスさん頑張ったのに!」
「俺も俺も!やってみる!」
「無理だからやめときなさいフーセ」
「やって見なきゃわかんないだろ!、セリス兄みたいに、集中して…踏み込んで…どりゃ」
バキ!
「ほらっ無理だったでしょ棒のほうは粉々になったけどね」
「フーセ凄いわよ、その岩上がって飛び跳ねてごらんなさい」
バキバキ岩にヒビが走る
「おお!やるなフーセもうちょいだったみたいだな」
「ヘッヘッヘ!シルみたか!ファルねぇありがとう!ファルねぇのおかげだよ!」
「うんフーセ頑張ってる!セリスもね!」
全くもって成長が、楽しみじゃわい。
「ところでお前ら、儂ハラ減ったのぉ、この辺魔獣おらんし、コウヤクジュの実はないか?」
「ウサギとかイノシシならば私がとってきますが…」
「儂の活力は魔力じゃ、血肉を食らっても魔力がこもってなければ満たされん。」
「そうですか…うちの村では栽培して無いし隣村に行って分けてもらうか…」
「あっそれなら私行きますセリスさん、セリスさんは修行に、集中していてください。」
「そうね〜私も隣村の文献も見てみたいわね、明日の朝2人で行ってきます、セリス、フーセと魔力集中の修行頑張ってね」
「ふむ、沢山たのむぞ、お主らはよ魔獣と闘えるくらい強くなれよ。それまでコウヤクジュの実で我慢してやる」
「そうね〜早く成長してくれないとお金も無くなっちゃうわ〜頼むわね〜」
「任せとけよーファル姉!俺が本気を出したら魔獣なんて瞬殺さ」
魔力をもった獣、魔術、魔法を使うわけでは無いが肉体を魔力によって強化した動物たち、皮脂は固く突進で木々は倒れる。
昔はそこら中にいたものじゃが、今は王国の騎士隊により人里周辺の魔獣は掃討されておるらしい、確かにそれらしい魔力は感じん。まぁ儂だけで行ってもええのじゃが余り核たちから離れとうないし、小僧らの修行の一環として魔獣退治に出るまでの辛抱じゃ、それまではスカスカのパンのような動物とデザート的な香薬樹の実で我慢じゃな…
「期待しとるぞわっぱ」
「期待してるわよフーセ」
「期待してるわよフーセ」
「シルは襲われても助けてやらないからな」
「いらないわよ、セリスさんに助けてもらうもの」
「ふん!」
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剣撃が飛び岩を真っ二つにする、木刀も刀身を崩していない。
「やりましたよ!剣狼さま!」
土の術の修練を加えてより3日、やはりセンスが良いのじゃろう、小僧はわしの課題を成し遂げた。
「よかろう、儂を少し払わせてやるか」
「良いなぁにいちゃん、どうやりゃそんな飛ぶんだ?」
「もっと魔力を高めるか剣をもっと早く振れるようになるか、両方均等に上がるかだな、今までサボってたつけが回って来たなフーセ」
「それしかないのかー腕立てしながら精神集中出来りゃ一気に行けるのになぁー」
「そういう近道しようとするから両方うまくいかないんだよ」
「かっかっかっまぁ小僧でも儂を使えば小僧ぐらいは閃刃を打てるぞ」
「閃刃?」
「おぬしらが今やってる技の名じゃ、まぁこれは王国剣術じゃからどんな剣でも修練すれば儂じゃなくても打てるが、儂わスペシャルじゃからな!剣速も上がるし魔力集中も補助出来るから、威力は倍増じゃ」
「マジかよ!ケンロー!やらせてくれよー!一回できたコツをつかめば行けそうな気がするんだ!」
「まてまて!条件突破したのは俺だぞフーセ」
「うむ、まずは小僧、やってみるか」
狼の姿から剣へと姿を変える
「まずはそうじゃの…あの崖の下にある大岩いってみるか!」
「なるほど良い大きさの岩ですね、行きましょう」
「まてまて小僧、ここからじゃ」
「ここから?少し離れすぎでは」
「儂の見立てじゃ余裕じゃ」
「ほんとですか?では失礼します」
構えをとったセリスが集中し魔力を高める
「魔力はそんなもんでええ、それよりも狙いを外すなよ、目標をしっかり定めて……いけ!」
弓矢ならギリギリ届くか?という距離の岩にむけて閃刃をはなつ
「だめだったんじゃない?ケンロー?」
「いや切れておるよ、行ってみい」
半信半疑で近づくと岩は真っ二つに切れ目がはいっていた。
「ほれな、しかし思った以上じゃな、パルより切れ味良いの、岩が切られたことに気づいておらんぞ、わっぱ触れてみい」
「どれ?うぁぁぁ」
岩が綺麗に2つに分かれる
「すげぇ!真っ二つだ!」
「小僧は剣速が速い分切れ味が良いんじゃな、これなら一閃もいけるかもしれんの?」
「一閃?」
「今は剣を振るっておったろ?言わば線の力じゃ、これを点にする、つまり突きじゃ、簡単に閃刃を突きでやるってことじゃよ、このことを考えてパルの記憶を見てみい」
「はい、やってみます……そうかパル様は技の名前を叫んでいたんですね…パル様の声が聞こえました…一閃乱舞…着地…加速…一刀閃刃で足止めし…最後は…飛ばない閃刃?なんだ!?この技は…すごい…」
「にいちゃん!俺も見たい!」
「見たいと言われてもなぁ…俺が出来るようになるまで待ってくれ…」
「やるだけやって見せてよ!」
「一閃は出来るか?やってみるから…剣浪様、参ります」
「一閃!」
割れた岩の片側に放ったそれは、岩の表面を粉砕した
「ふむ、今のは魔力を剣全体に加えたせいじゃな、点ではなく面の力になったから突き抜けるでは無く、押しつぶすになってしまったようじゃの」
「俺も!俺も!」
「一閃!!!」
「…わっぱ…あの集中力の無さで…なぜ出来る?威力は物足りんが間違いなく一閃じゃな」
「なるほど…一閃!」
「小僧もわっぱに先を行かれる訳にはいかんということか…やりおるの」
「チクショーにーちゃんを越える時が来たと思ったのに!」
「いやフーセを見て悪いところがしっかりわかったからだよ、おまえの苦手なこともわかったよ…お前剣全体に魔力を集中しろって言われると何処に集中したら良いか分からなくなるんだろ?、その点一閃は剣先に集中したら良いからわかりやすい、そういう事だよ」
「なるほど…ノォー…そういう事か…」
「いずれ必殺技は出来るようになりそうだな、そろそろ近接訓練もするか」
「えーーー!にいちゃん!必殺技だぜ!?必殺したら良いんだよ」
「良いかフーセ!どうやって閃刃や一閃をはなつ?お前一撃目にそれを放って相手を倒すのと、連続技からの必殺技、どっちがかっこいい思う?」
「連続技!!!?なるほど、連続技はイイね!かっこいい!!!」
さすが小僧やりおる、のせるのがうまいの。
「よし、小僧とわっぱで実戦訓練といくか!本格的にやってとっとと強くなってもらうぞ、まず小僧は獲物はその木の棒を使え、土の術で体の強化も忘れるなよ、閃刃でも一閃でも使えるなら使え」
「剣浪様それではフーセが…」
「わっぱ、お前は儂を使え、儂の力で体を硬化してやる、木の棒の攻撃では怪我はせんじゃろう、衝撃は受けるから覚悟せよ?万が一わっぱが威力ある攻撃を出来た時は小僧に当たる前に儂がなんとか破壊力を減らしてやろう、これで2人とも全力でやれるな」
「やった!ケンロー使える!」
「小僧はパルの記憶から動きを見て戦え、わっぱは何が出来るのか考えて、まずは小僧から一本取って見せよ」
「いくよにいちゃん!」
「よしこい!」
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「クソォーーにいちゃんにあたらねぇ」
「だから、フーセは技を使いたがりなんだよ、素直に打たれる訳ないだろ」
組み稽古を始めてから2週間
小僧はそう言っているが避けれるのは小僧だからであるのは明らか、そろそろご馳走にありつけそうになって来た。
「そろそろ魔獣狩りに出ても良いからじゃろう、儂よくここまで堪えた、まさか近隣に魔獣おらんと思っとらんかったから儂そろそろ限界すぎて熟れてない果実でも食ってしまいそうじゃ」
「そうですね、東のトルダワ湖の辺りの森なら魔獣があるはずです、居なくてもコヤックの実の原生地ですからもし魔獣が居なくても剣浪様にとってもよろしいかと…ここから馬車で1日、準備もありますし寒さが来る前には戻りたいですね、明後日から1週間の旅行にしませんか?」
「キタコレ!魔獣狩りついにオレ様の実力を見せる時が来た!ファル姉!見ててくれよ!」
「うん頑張ってねフーセ、帰ったらおじさんにちゃんと…だめね、あとで私が一緒に行って村を出かける事をいうわ」
「うん、頼むよねーちゃん、俺じゃ絶対許してくれないもん、ファル姉が一緒だって行ったら間違いないよ」
「馬車はどうするの?お姉?」
「私に当てがあるの、明日隣村の村長さんにお願いしてみるわ、車は貸してもらえるとおもうの。馬はセリスお願いできるかしら?」
「おう、俺の愛馬と…まぁ1週間ぐらいなら一頭親父の馬をかりるよ」
「明日は準備それぞれして昼過ぎに確認で一度集まろう、明後日の日の出で出発だ!」
ようやく…ようやく…果物だけの生活から脱出出来そうじゃ…長かったような短かかったような…
腹が減りすぎてこやつらに経験積ませる前に食いつくさんように気をつけねば…
「グルルルル」
儂の腹だけが待ちきれんとばかりに返事をした




