3-12 進む道の行方
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーールル
トンネルの出口に近づくとカイ君と…1人の男性が待っていた。
それを見てフーセ君が不機嫌になる
「オヤジ…なんでここに居るんだよ…」
「ん?小僧なんだ?信用ある人に任せたい重要な荷物ってのはこいつらか?どうなってるんです?カイさん?」
「荷物ではなく重要人物ですよパスサイドさん。ルル王女です。」
「へっ?あっ!失礼致しました!!!」
この人がフーセ君のお父様か
「かしこまらなくて結構ですよ、楽にしてください。」
フーセのお父様はガタイが良い、いかにも言葉よりも拳が先に届くという印象のおじさまであった
「ご子息が当事者なら秘密が漏れる心配ないでしょ?そこでフーセ君の父であるパスサイドさんに頼んだんだ。」
「ご子息?なんのことです??私に息子なんていませんよ?」
「あ゛!?何言ってやがるクソ親父!!」
「おじさま、ややこしくなるからあまり虐めないであげて下さい。」
シルちゃんが割って入る
「いやいやお嬢さん、いじめるも何もなんとかとかさっぱり???」
「お嬢…えっ?私のこともわからないんですか?」
「あれ?人の顔は忘れない方なんですがね?どこかでお会いしてましたっけ?」
「このクソオヤジ!シルにまで!!」
殴りにかかるとカイ君に止められる
「待つんだフーセ君、どうもおかしいぞ。パスサイドさんの雇用書類にはちゃんと子供がいることになっていますが?」
「いやいや俺、嫁に先立たれたからずっと1人ですよ」
「私もわからないの?セリスさんは?オネ…ファルファリーゼは?」
「ガルデニアの坊主とファリーゼの嬢ちゃんか?この間ファリーゼの嬢ちゃんが王国で2人で雇われることになったからしばらく村に戻れないって報告にきてたな…わざわざ村のみんなに報告して回ってたよ、よっぽど嬉しかったんだろうな!知り合いなのか?」
「ファルね、操りの核の力で記憶をいじったのかしら」
「…そんな…」
シルちゃんがヘタリ込む
「…オヤジが俺の事を忘れてる……」
「となるとこれはまずい手だったでしょうか?あちらに筒抜けになってしまったという事に…」
「イヤその心配はないじゃろう。操りの核精神支配は距離も関係してると思われる、おそらく忘れろと命令されたから忘れてる、離れていれば忘れて居るだけじゃろうて」
「うぉ!犬が喋りおった!」
「オオカミじゃ」
「なんとかして思い出させることはできないかしら?」
うつむいていたフーセ君が顔を上げる
「そのうち思い出すだろう、別にこまんねーからとりあえずいいんじゃね?おっちゃんわけわかんねー事言って悪かったな、気にしないでくれ」
「気にしないでってフーセ!」
「いずれ操りの核をなんとかしないとダメだって事だろ。目的はいっしょじゃねーか、心配かけなくて済むなら忘れてた方が良いだろ?シルのオヤジさんやオバさんにも心配かからねぇならその方が良いと思わねーか?シル」
「…うん…そうかも…そうかもね」
シルちゃんが涙を拭く
「えっと…一体どういう事で…」
気にするなとフーセ君は言ったけどお父さんを王都に近づかせるわけには行かなくなった事情の説明は必要かな?
〜〜〜〜〜〜
話し合った結果フーセ君のお父様には不確定な要素が多い情報が漏れる可能性もあるのでお金をもたせ、王都に行けば巻き込まれて捕まる可能性が高いから近寄らず今日のことは忘れてくれと伝えて村に帰ってもらう事にした。
シルちゃんはショックが大きかったのだろう。馬車の後ろでふさぎこんで居る
フーセ君は普通に見えるショックはなかったのだろうか?
御者台で手綱を握るフーセ君の隣に行く
「大丈夫?」
「ん?ルルねぇちゃん何が?カイの馬車についてくだけだから大丈夫だよ?」
「そうじゃなくてお父様のことよ」
「まぁあれだけお金貰えばしばらく呑んだくれて生活するんじゃないかな、わざわざ面倒ごとに巻き込まれないく奴でもないから、わざわざ王都までいかねぇだろ」
「お父様じゃなくで貴方が大丈夫かって…もう…大丈夫そうね。」
「うーん、ルルねぇちゃんには話しておいた方が良いかな?親父の記憶な、操りの核から離れた状態で強めに魔力を頭に流し込めば多分戻るよ」
「ちょっと!?なんで!!!」
「シー!内緒にしてくれ、もしシルのオヤジさんたちの記憶を戻したくなったらそうしろって話、親父が今記憶戻したら面倒だろ?主に俺が!」
「フーセ君、シルちゃんにも教えてあげたらいいじゃない」
「まぁいずれな」
「今も落ち込んでるじゃない!」
「ルルねぇちゃんにこれを教えたのは念のため、わりんだけど察して。それよりさシーバード山ってあのでけー山だよな、結構遠くね?シルー!シーバード山めちゃくちゃでけーキレーだぞー」
呼びかけられてシルちゃんがのそのそと前に来る、
「ほんとだー」
フーセ君…貴方…
助かるように協力すると約束したけれどファルの持つ賢智の核の力に頼らなくなった今、あと3ヶ月…で……賢智の核!!!まずい!
「賢智の核の事を忘れていたわ!あの力で私たちの場所がバレてしまう!」
「そうか!ねーちゃんが調べたら直ぐにバレちまう!」
「どうしよう、フーセ君賢智の核をかいくぐる方法ないか理の核でしらべて!」
「わかったやってみる」
完全に忘れていた痛恨のミス…いやわかっていたところでどうにもならないんだけれど…
「あのぉーごめんなさい」
シルちゃんが申し訳なさそうに手を挙げる
「言う暇がなかったというか忘れてたんだけど…これ」
シルちゃんの手をみると丸い玉が…
「シルちゃん?これって…?」
「賢智の核です。お姉ちゃんから操りの核を取り出すとき先に間違ってこれ出しちゃって…」
「シルちゃん!貴方サイコーよ!」
シルちゃんを抱きしめて頬にキスをする
「ちょ!ちょっとルルちゃん!」
「ホントシルちゃん大好きよ!」
これで助かる!きっと助かる!どうにかなるかもしれない。
「フーセ君!」
シルちゃんから受け取った賢智の核をフーセ君に手を取って渡す。
「これで何とかなるね!」
「ああ!なんとかなる!」
〜〜〜〜〜〜〜〜
シーバード山の麓、サクマの町に着く
鉱山資源と酪農が主に行われている。町から山にかけての高原には牧場が広がっている
「さっ…さみぃーー」
山から吹き下ろしてくる風はそろそろ冬が来るのを教えてくれた
「さっ着きました、寒いのでまず中に入りましょう。」
カイ君の案内で町のほぼ中央に構えたファイブアイズ商会5号店に入る
「カイ様!お待ちしてました、予定より2週間は早いですね?祭りの後も売れ行き好調ですか?」
「やぁ!アン。そうだね、今年の祭りの宣伝がうまくいったのもあるけれど、上手いことスポンサーがついてくれそうなんだ。大きな仕事になる。しばらくこちらに滞在します。ここからはくれぐれも情報の取り扱いに気をつけてくれ、王都からの情報は直ぐに僕に教えてくれ、他のものにもそう伝えてくれるかい?」
「かしこまりました。そちらの方たち…は!いっいらっしゃいませサクマの町へようこそ!直ぐに温かいお茶を用意するので奥のお部屋でお休みください。」
シルちゃんと同い年ぐらいの子かなカイ君から信頼されているようだ。私のことにも直ぐ気づいた様だし気の利く子の様だ
「あったか〜い。」
暖炉のある部屋で私たちはひとまず腰を下ろす
「お茶をお持ちしました。サクマの町のミルクはとても美味しいのでお好みで混ぜてみてください。ホットミルクも出来ますがお持ちしますか?」
「あっ俺ホットミルク飲みたい!」
「私も!」
「儂も!」
剣狼が話した際、流石に目を丸くして驚いたが直ぐに平静を取り戻し
「かしこまりました、1つはお皿のほうがよろしいですね?」
と切り返してきたが…バタンととが閉まると
(どうしよう!大っきいワンチャンが喋ったよ!スゴイよ!抱きつきたい〜)
と聞こえてきた。
「コホン、失礼しました」
ソフィがカイ君の肩にのる
「ウフフ、私も話したらもっと喜んでくれるかしら?」
「アンはとても動物好きなのでもし良ければ話してあげてください、とても喜ぶと思います。」
「さてと、これからの方針ですが…」
「そうね、まずやらなければいけない事から。
1つ王都の状況の情報収集。
2つこちらの戦力の増強
3つシルちゃんを安全な状態にする」
「1つ目はこちらでやっています。強制的に操られるという事も有りますので王都の本店の者達には私がこちらにしばらく滞在するとしか伝えていません。変わった事大小関わらず報告する様にだけ伝えて有ります。明日には何らかな情報が来るとは思います。
2つ目はこちらで出来る装備であれば用意いたしますが装備品は王都に納入しているものが最高級品なので同等の物しか用意は出来ません。
それで3つ目ですが…シルさんどこか悪いんですか?」
「3つ目は俺がなんとかする後でペンと紙をくれ。」
「それなら直ぐにでも用意出来ますが…」
「そこの話は長くなるから後で説明するわ。」
「分かりました。」
「次にやりたい事ね、さっきの2つ目にもかかわるんだけど七星剣を集めようと思うの」
「七星剣ですか…各地の貴族達の家にあるのは見たことがありますがレプリカも多く本物かどうかは分かりませんよ?」
「そこは剣狼とソフィがいるから大丈夫、場所もだいたい特定付いてるみたい…よね?」
「任せろ、シル嬢、ミルクに少し魔力こめてくれんかの?」
騒ぎの元凶とも言える大きい犬が呑気にミルクをペロペロしてる。
「七星剣と同時にそれを扱える戦士が必要ね。剣狼とソフィはフーセ君が使うと言う事で良いのかしら?」
「まぁこいつしか今のところおらんからこいつで我慢してやる、まぁセリスや隊長ぐらいのやつならば力を貸してやっても良いがな。」
威張りながらミルクをペロペロ、全く締まらない。
「イルナ、貴方怪我の調子はどうなのかしら?」
「ハイ、私的にはもう大丈夫だと思っています。痛みもありませんし、医者には今年は安静と言われていますが…」
「わかった、場合によっては戦力になってもらうからお願いね。カイ君は武術大会出てたけど戦力と考えてもいいのかしら?」
「私は商人です。っが、七星剣を所有させていただけるならば考えます。」
「オッケー、頼むかもしれないわ」
「はい。」
「シルちゃんは?」
「無理無理!護身術ぐらいしかやってないもの、術だって生活するのに困らないぐらいしか使えないわ」
城からの脱出の時兵士たちをあれだけ素手でのしておいてそれはどうなのだろう、まぁ剣が関係ない以上いいか…
「私はファルどころかマーリンにも魔術では足元にも及ばない、一通りは使えるだろうけど戦力にはならないでしょう、後方支援がせいぜいね」
お茶を一飲みして一呼吸
「カイ君、戦力としてあてになりそうな人いないかな?」
「いることは居ますが、ほとんどが王都に居ますね。」
「だよねー。これも保留かなー。」
「とりあえず信用出来そうな者はさがしてみます。」
「お願い。シーバード山にある七星剣は?何処にあるのかしら?」
「山の中腹にバナンの家がある、そこだ。」
「七英雄のバナン、曲剣ヴァルハラですか。シーバード山の中腹…となると、家と言うより山小屋しか思いつきませんね…」
「多分それじゃよ。」
「あそこはこの町のものもよく立ち寄りますよ?剣なんて見たことありませんでしたが…」
「一応隠してはおいたからの。まぁそれも何十年も前じゃからなぁーどうなっとるかのぉ〜」
ホントにいい加減なオオカミだ餌を取り上げて少し躾しないとダメじゃないか?
「ではまずはそれを見つけに行きましょう。」
「では明日までに山に入る準備をさせます。私は情報収集が有りますので案内はアンにさせます。」
「ありがとう。お願いします。」
〜〜〜〜〜〜〜
夜になりそれぞれに部屋を割り当てられる
普段しない旅をしたせいかどっと疲れが襲ってくる
「体が重い」
こんな状態で明日は山登り…自分で言いだしたことだけれど参ってしまう、よく考えたらみんなで行く必要ないんじゃない?剣を見つけて持って帰って来るだけなんだから…
ある意味フーセ君と剣狼さえ行けばいい話じゃないかしら?
うん、明日起きてだるかったらそうしようかな?
コンコン
部屋の戸を叩かれる
「ルルねーちゃん今大丈夫か?」
「大丈夫よ、どうぞ」
戸を開いてフーセ君が入ってくる
「相談乗ってくれ」
賢智の核を使いフーセ君なりに色々調べた様だ
フーセ君が調べたのは
シルちゃんを元の状態に出来る→○
それは今すぐ出来る→○
それは出来る人がいる→○
それはフーセが知っている人間→○
「どう聞いたらいいかわかんないんだよね〜」
「なるほどね。じゃあ」
シルちゃんを元に戻すにはフーセが居ないといけない→○
「という事でまずは君がシルちゃんを助けることは確定」
シルちゃんを助けるために必要なものは理の核である→○
シルちゃんを元に戻す方法はいくつもある→✖️
シルちゃんを元に戻す方法は1つしかない→○
「俺が理の核でなんとか出来るって事だな、それしか方法が無いと。」
「そういう事みたいね。」
「そっかー方法は1つだけか…オッケー後は理の核で調べてみるわありがとう。」
そう言って部屋を出て行く
置いていった紙を見るとぐちゃぐちゃに塗りつぶされたところがある
「【シルを助けたとき】かな?何を書こうとしたんだろ?シルを助けたときシルは俺に惚れる!とかかな?」
とりあえずシルちゃんを助ける方法はフーセ君がいればなんとかなりそうだ、あと2ヶ月半ぐらいはある、もう少しフーセ君に頑張ってもらってダメそうならみんなで考えてみよう
とりあえず一安心かな、明日はフーセ君にもうひと頑張りして…ふぁ〜眠い…
2ヶ月半は長いのか短いのか、切迫詰まってるのに気づかなかった、いや気づいてはいたのかな、私は今できる事でいつも精一杯だ。
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