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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第3章 願い玉
36/83

3-10 潔き逃亡

少し心が折れていました、また投稿頑張るのでよろしお願いします。

ーーーーーーーーーーーーーーーールル

予想外、想定外、こんな事態をどう対処する?


瞬間的に消えたあの動きは少なくてもアソーマと同等以上の力を持っているだろう。仮にフーセがセリスを抑えられたとしても、ファルを抑えるのは骨折中のイルナ、シルちゃん、私3人。立ち向かった所で無理だろう。

逃げると言う判断は間違っていないはず、時間をくれたのは恐らく体を完全に支配する時間とか遊んでいるとかそんな所だろう。確かに彼らの意思を取り戻すためには立ち向かった方がいいのだろう、しかし、その為に命を天秤にかけるわけにはいかない。


「カーマイン!王は謁見の間にいるか!」


兵士を見つけ声をかける


「ねーちゃん危ねえ!」


兵士が剣をフーセが防ぐ


「カーマイン!!」


「お…王女…捕まえ…コロス?コロス!」

カーマインの剣を握る力が強くなる


「っ操りの核!」


「ねーちゃんどうすれば?」

どうする?どうすれば良い?操られているだけの兵士だ。しかし今は時間がない


「フーセどいて!」


シルちゃんが兵士にかかと落としを入れるとその場に崩れ落ちる。


イルナが兵士から剣を取る

「不味いですね、既に兵士に息がかかってる」


「前もってファルがって事?さっきまで普通だったじゃない!魔力込めながら命令しないとダメなんじゃないの?」


「ルルねーちゃんどうする!?どうしよう!?」


「お前は落ち着け」


シルがフーセを叩く


「いてーな!暴力女!」


「馬鹿に言ってもわからないからよ」


そうだ、落ち着け、私が取り乱していてはダメだ。

どうする?もし一番隊に出会って操られていた場合完全におしまいだ。でも…


「王様やられたらこの国おしまいなんだろ?俺が前を走るイルナねーちゃんは後ろ頼む、シルはルルねーちゃんな」


そうだ既に後手に回ってる、とにかく動いて情報を集めなきゃ


「フーセ君、そこ右!」


フーセが曲がるとすぐに戻ってくる


「いっぱいいるー!!」


慌てて逆向きに走る


「下に降りて!」


今度はイルナが先頭


「我山城切!!」


フーセが後ろに壁を作る


「よし!」


「よし!じゃない!お城壊すな!下の階丸見えじゃない!ホント馬鹿なの?…そうだ馬鹿だった…」


「逃げる方が優先だろ!」


「ダメです!下にも行けない、人が多すぎます、操られてるのか分からない。」


「じゃあ私の部屋!」


操られてているかどうか、確認して居たらきりがない、混乱が起きればなおさら逃げられなくなる


「隠し通路から逃げる!」


「ルルちゃん、隠し通路。私も知ってるってことはお姉ちゃんも、もちろん知ってるよ、大丈夫?」


そうだ、そうだった、でも…もうここしかない


「もう逃げ道はここしかない」


「あれ?逃げるんだったのか?王様のとこ行くもんだと思ってた。城から出るならこんな道。通らなくてもいいよ」


「王のところには行かせてもらえなさそう、まずは命あっての物種よ、どうするの?」


フーセが窓を指差す


「飛ぼう!」


「でも!私とイルナは飛べない、担いで飛ぶ気?無理よ!」


「そうか…そうだよね、ルルねーちゃんスカートだもんな」


「そう王都の民にスカートの中のピンクが見えちゃう、じゃない!言わせないで!」


「ルルねーちゃん余裕あるじゃん!まぁせっかくだから着替えてよ!そのかっこのままじゃ動きづらいだろ」


「ちょっとフーセどういう事?ルルちゃんの着替え見たいだけじゃないでしょうね?」


「まさかまさか、なぁソフィー…ソフィー?あっやべ」


「やべ!じゃ無いわよ私の主導権まで奪っておいて!」


「小僧!成長したと思ってみればコレか!やはりワッパで十分じゃ!永遠のワッパじゃ!」


剣狼とソフィーが剣から姿を変えてフーセをまくし立てる。剣狼も目が覚めていたのね


「ごめんごめん!剣狼運ぶのに主導権取ったら気づいたら両手でやってた。キンキュー事態だったから」


「着替えたわ。多分残り5分ぐらいでセリスが動き出す。飛べるのねフーセ君。貴方の言葉を信じるわよ?」


「ソフィー、剣狼、後で怒られるからとりあえず剣になって。城から飛んで逃げる。ソフィー頑張って軽くしてくれ、ねーちゃん2人担いで飛ぶから」


成る程ソフィーの力を使ってって………

フーセ君の上に乗るの?どうしようめちゃめちゃ恥ずかしい。

乗ること自体…フーセ君の背中にまたがって、飛べーあはは、とやってる私が恥ずかしい。


「ルルねーちゃん急いで!」


シルちゃんが鳥になって飛ぶ


「弓兵に気をつけて!」


三階の窓から飛び立つ、14歳にまたがる19歳の私。

空を飛んでみたいと、思ったことは何度もあるけど

こうじゃ無い。こうじゃ無かった!


「ルル様…」


そうだった19歳どころか20代も居たんだ。


「私飛んでます!飛べる日が来るなんて夢にも思わなかった!」


エー感動できるの?今私たちマントを付けた少年の背中に乗って飛んでるのよ?私がこの姿見たら間違いなく一日中笑ってるわ、もしかしたら笑い死んでるかも…


「ねーちゃん、残念だけどあんまり方向転換できそうに無い、城壁で降りるよ!シルにも伝えてくれ」


「そうして!できる限り早く!」


「わかった!」


良かった。城壁で降りられて良かった、街中を飛んで民衆にこんな姿見られられるくらいなら…死んだ方がマシよ。


城壁に立ち、城を見ると既に混乱が大きくなっているのがわかる。あちこちで戦闘が行われているようだ。


「ソフィー!会話の核で王にここから言葉を送ることは可能?」


「ちょっと難しいかな?個別にって言うのは無理だけど城にいる人全員にってなら出来るわよ。単純に魔力を沢山込めればいいだけ。ただセリスやファルにも届いちゃうけどね。」


「そうですか、ではイルナ退路の確保、街に逃げるわ、フーセ君私を守ってね。シルちゃん周囲の警戒お願い。」


「ムスシタナ城にいるお父様!兵士たち、聞いて!私はルル・ムスシタナ・ホルン、今城にはセリス、ファル両名が英雄ネルを名乗るものに操られてクーデターを敢行しています、彼らは更に人を操ることが可能、異常行動を起こしたものは操られて居ます、又ただ操られているだけで無くセリスファル両名の力は強大です、アソーマ隊長同格もしくはそれ以上のつもりで当たりなさい。敵は強大です。貴方達の兵士としての誇りも知っています。逃げろとは言いません!生きて!最後に立っていたものが勝者です。生きなさい。私も生きます必ずまたこの城で会いましょう!」


人が多すぎて一方的にしか話せないが今はこれでいい、アソーマならば王を守ってくれるだろう、今は体制を立て直さなきゃ


「街へ降ります!」


城壁を降りると街の方はいつも通りの活気に満ちている


「ルルちゃん目立つから帽子かぶって!」


フードを被る


「街に潜伏したいが…あてはない?イルナ、後、最悪の場合の足の確保もしたい。」


「宿舎に戻るわけにも行きませんし、宿を取ると言うわけにも行きませんよね?」


どうやらあてはないか…


「フーセ君シルは誰かいない?」


「この街で知ってる人?はカイぐらいしか居ないな」


「わたしもかな。」


「ファイブアイズのカイ君か…彼なら…なんとかなるか?」


考えて見るが他に浮かんだ人物よりはそちらの方が安全のような気がする


「ファイブアイズ武具店に向かう、イルナ別行動で足の確保、東と北門近くに用意して。」


「ねーちゃん、それじゃすぐにばれちゃうぜ!ファル姉を舐めちゃダメだ足跡増やしたところですぐにバレる、こう言う時は何もしない方が意外にバレにくい!イルナねーちゃん、の馬どこにいるんだ?」


「今は宿舎の小屋に居ます」


「宿舎ってどこ?」


「あそこです。あの見張り台のある建物の下に馬小屋が有ります。」


「馬車も有る?」


「馬小屋の隣に有ります。」


「それだけわかればオッケーだ、今の俺ならあそこから10分以内に馬を馬車につないで店まで持ってこれる。ルルねーちゃん、ファル姉から散々逃げてきた俺が言うから間違いない、何かするとそれだけファル姉に情報を与えてしまうから捕まる確率が高くなる」


「シルちゃん?」


「はぁールルちゃん。お姉ちゃんからの逃げに関してはこいつの右に出るものはいないよ、それでも6割かな」


「じゃあフーセを信じるわ。」


「今のだと俺じゃ無くてシルを信じてんだろ?」


「あら?バレた?」


「ひっで!ルル姉ひっで!」


笑いが起きる。

フーセ…この子はもしかして道化を演じてるのではないだろうか?人の失敗を自分のものにしている。空気を悪くしないよう、周りが落ち込まないようにおちゃらけたフリをして…


「ルルちゃん?どうしたの?」


「いいえ、何でもない。じゃあ皆んなでカイ君のところへ行くわよ。」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「いらっしゃいませ!すいませんお客様、セール直後で品薄なんですよ、何をお探しですか?って!シルさん!フーセ君!無事だったんだね!良かった!イルナさんまで、どうしました?」


フードを脱ぐ


「ひっ!ひっ姫さま!?えっ?どどどどうして!?」


まぁこうなるよね


「カイ君。こうやって話すのは初めてだな、済まないが緊急事態につき匿ってもらいたい。」


「なっ何かあったのですか?」


「クーデターだ。」


「何ですって!?となると…話は奥で聞きます、こちらへ。」


扉を開いて奥に案内される、


「そこの階段を降りて右側の部屋で待って居て下さい、私もすぐ行きます。」


部屋に入ると倉庫だった。匿ってもらうのだ仕方ないか…しかし結構広いな、品薄と言いながらこれだけ在庫を抱えているのか…


「お待たせしました、店を閉めると怪しまれるかと思いまして、お袋に店番を代わってもらいました」


「迷惑をかける、店主にも話をしたいのですが。」


「いえ、私がまず承ります、このままお受けするかどうするかは話を聞いてから判断させてもらいます。」


確か彼は15歳のはず…その割にはしっかりしている…というよりもうそこらの大人より大人のようだ…彼の協力を得るためにはどうしたら良いか…


「クーデターが起きたとの事ですね、街の情報網にそのような噂が出た事も有りません、何らかしらの情報も無くそのような事が起きるのは考えにくい、しかしながら姫さまがこんな店にまで来るというのは緊急事態という事は間違いないでしょう。お力になりたいという気持ちは有りますが当方はただの街商人、何か有れば全てを失います。場合によっては力にはならないかもしれません、その時は黙ってこちらから立ち去って頂きたい。私たち家族だけで無く従業員たちの生活も掛かっているのでご理解ください。」


「分かりました。ありのままを伝えましょう、緊急事態の為、私達も全てを理解しているわけではない、情報の整理も必要だ。」


恐らく濁したり嘘をついたらこの子は見抜くのではないだろうか、王への謁見で数多くの者を見てきたが、恐らくカイ君は領主や代表を務めてきた者たちと同じ空気…いやそれ以上か?いずれ誠意を持って頼むしかないな。


「セリスとファルがネルを名乗る者に操られてクーデターを起こした。」

私はこれまでの事を話す、


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「成る程、それならばアソーマ隊長達が首謀者を捉えるまでの安全確保という事ですか?」


「それは恐らく無理じゃろうな」


剣狼が狼の姿に戻り話し始める


「恐らく記憶の核を使いネルはセリスの体を乗っ取ったと考えて良いだろう。ネル本人が戦ったとしたらあの一番隊の3人では時間稼ぎが関の山じゃろうな。しかしあの場から良く無事で逃げられたな、奴がその気になれば全員今頃あの世行きだったじゃろうに…」


「剣狼様、この後どうなると思います?」


「デンゼル王国の復国とかゆうとったから少なくともこの国を治める気なんじやろ?」


「ネルって勇者じゃなかったのかよ!そういやケンローの事エディルって呼んでたよな」


「ふむ、そうじゃな、その辺は話さねばならんな」


剣狼が話し始める


1000年前の真実を…


「まずは…ネルについてじゃな」


「待って、その話長くなる?長くなるなら後にして、そんな時間は今はまだ無いの。犯行動機なんて後でいい、一番隊が不可能だとしたらはっきり言ってクーデターを止める戦力は無い、しかも下手したら今も敵の戦力は増大している、街に残って戦況を…覆すのは…」


自分で言っていて気づく、そう既に戦況を覆す方法が無い。


「わかりました。」


カイ君が立ち上がる


「私の立場から申し上げます。正直なところ、私にとって王は国を治める者の称号。今の王には何も不満は有りませんが次の王が更に良くしてくれるか悪くするかは、なって見ないとわかりません。私としては良くなってくれるに越したことはありませんけどね。どちらに転ぼうとも正直今後、我が国はかなり厳しい時代になる事は予測は出来ています。理由はお分かりですね姫さま?」


「…そうね、それを起こさせないように、私が時期国王を目指すつもりだった…」


「その言葉確かに聞きましたよ?ルル様が女王になる。その後ろ盾をさせていただきます。差し当たり今の状況を聞く限り早急に王都から出た方がいいでしょう。時間が経つほど動けなくなります。」


「ありがとう。カイ君、では店主に話をさせてください。」


「それは不要です。ここの店主は親方ですがファイブアイズ商会は私が立ち上げたものです。ファイブアイズ商会はルル姫様を全力でバックアップさせて頂きます。さしあたっては…」


「カイ君15歳だったよね?」


シルちゃんが目を丸くして聞く


「えっ、ええ来年16です。」


「それで店どころか商会を束ねてるの!?凄くない?」


「三年前に武術祭で優勝したお金とその時に宣伝して出た売り上げを元手にして広げてみました、武具は平和になってからは需要が減りましたが必要とはされています、潰れそうなところを救いつつ、範囲を広げてマーケットを広げている最中ですね。」


という事は12の時にもはや商会を立ち上げる構想を…私が12の時…あぁファルの魅力に気づいた時か…

うん12歳には人生の転機が訪れるものなのね


「姫さま、私は商人です。損得勘定で動きます。姫さまが国王になられた際は王国専属とさせていただきたい。」


「税収免除狙いかー、そこをつくなら、即決は出来ないかな?王国の名前を使うぐらいなら即決なんだけどね、貴方がどれだけの物か、見させてもらってからでいいかしら?」


「濁してきましたね、この状況で…」


「そこを即決しちゃう王ってどうだと思う?」


「まぁそれもそうですね。いいでしょう。私の器を鑑定していただきましょう。」


…よし!人材の確保だ!この歳で商会を束ねるほどの才、王国専属の商会と確約させても問題ないだろう、それよりも、そのまま財務大臣にでもしてしまおう。彼の器を図るのではなく、これからは彼の器を取り込まれば…


「んで?どうするんだこれから?俺がひとっ走り行って馬車とってくるか?」


「いや、それには及びません。姫。ここからは詮索無用、深く考えず、ラッキー!ぐらいに考えていただきますよ。」


「??わかったわ。」


そう言うとカイが倉庫の奥に行き何かガチャガチャやり始める。


「ここから先のことは忘れてください。良いですね。」


そう言うと倉庫の奥の壁が開いて行く


「えっ?トンネル?馬車?」


「これで北の森まで行けます。ゆっくり進んで出口で待っていてください、私は怪しまれぬように買い付けに行くという事で正規の手順で街を出ます。旅の準備をして向かいますがリクエストありますか?」


「やるわね、どうやってこれほどの…」


「3度目はありませんよ姫、詮索は無用です。」


「オッケー食料と私たちの装備一式、着替えをお願い。」


「わかりました。潜伏先にあてはありますか?」


「北の砦が一番近いのだろうけど…」


「やめておいた方がいいでしょうね。ではシーバード山へ向かいましょう、あちらにうちの支店があります」


「じゃあお願いするわ」


「ではここを閉めます。発光魔法は使えますね?」


「問題ないわ」


「では2時間後ぐらいに出口で会いましょう。」


扉が閉まると真っ暗になっていく


「光の眷属よ盲目の時を解き放ち我を照らせ!ブライトフォール!」


トンネルが明るくなる。


「ねーちゃんすげー!」


「城からの脱出は何度もしてきたからね、そのために使えそうな術はどんと来いよ!」


「カッコイイ!」


それにしてもこのトンネル…完全に関税対策ね、どうりであんな地下に大量の荷物があるはずだわ…馬車も通れるトンネルを掘るなんてどうやったのかしら、その技術の方が気になるわね。まぁ王都脱出はなんとかなりそうだ…カイ君が裏切らなければだけれども。


トンネルは明かりを照らせども行先は暗闇に包まれていた。


宜しければブックマークお願いします。心の支えになります。

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