3-9 終わりの始まり
ーーーーーーーーーーーーーーーーフーセ
「あーテステス。みんな聞こえるー?」
「聞こえます。」「聞こえたよー」
せっかく飲んだからという事でルルねーちゃんが会話の核の使い方を練習をしている。
「今度は個別にいくねー」
ルルねーちゃんは楽しそうだ、
俺から見てルルねーちゃんはファル姉と違って、なんて言うのかな?真っ直ぐに突き刺して来る。
ファル姉はそれ間違えてない?
と聞いてきて答えを探がさせるのに対して
ルルねーちゃんはそれ間違えてる。なんでだと思う?と聞いて来る。
どっちが正解だ?って言うのはわからないけれど、正直に言うとルルねーちゃんの方が答えやすい。でも、それはルルねーちゃんが間違えていると言ったらそうなんだ!と思ってしまう。
きっとルルねーちゃんは俺に似ているって気がする。ずるいんだ…だからなんとなく信用しきれない。ルルねーちゃんはそれさえも読んで核まで飲んで見せた…考えすぎかもしれないけど…
そんな事を考えて飛んでいると、
「はーいフーセ君聞こえるー?他の人聞こえたら教えてー」
「ルルねーちゃんから念話が届く。」
「聞こえてるよルルねーちゃん。」
「フーセ君少し空中で動き回って見てくれる?動いてる人相手でも話せるか試したいの」
「オッケー。」
ジグザグに飛ぶ
「あーセリス君と戦った時はあたふたしてたけど割と自由がきくのね?」
「飛んで動き出したらマント動かすだけでいいからな、剣持ってマント持ってってなるとちょっと難しい、後上下できないから飛び降りれるとこまでしか上がれないし」
「ソフィーさんの力借りればどう?重くなれば上下もできないかしら?」
ソフィーに話を通したのかソフィーがこちらに飛んでくると、背中に止まる。
「ふふ、誰かの背に乗って飛ぶって言うのは変な感覚ね。じゃあやってみるわよ。」
「おっ!これはいけるんじゃないか!?」
「少しづつ重さを変えるって難しいわね。」
少しずつ高度が下がる
「今度は軽くするわ。」
と言ったら次の瞬間一気に元の高度に戻る
「うわっ!」
「ごめんごめん、重いから軽いに切り替えに間ができちゃった、ちょっと練習が必要かな」
「うまくいけば自由に飛べそうじゃない、じゃあそのまま練習してて、私も念話の練習させてもらうから。」
「フーセ飛び方変よー、こうやって飛ぶんだから!」
シルが楽しそうに空を自由に飛ぶ
「シルちゃん楽しそうね、シルちゃんと言えばフーセ君まだ何か隠してるよね?」
「か?隠す?いや…何も…」
「貴方から聞いた話、シルちゃんの事ね。シルちゃんが3ヶ月で核になってしまう。おかしいと思ったのはそこね。」
「いや、魔力を補充したらまた伸びるよ」
「なら貴方はなぜ今それをしないの?何より3ヶ月にこだわる割にシルちゃんは大丈夫と言う。でも早急に治す方法が知りたい。どうして?」
「……。」
「そういえばシルちゃんが倒れた時に私も手伝った、変化の核に魔力を補充してと言ったわよね?あの時は慌ててたからあまり疑問に思わなかったけど、シルちゃんがなろうとしている核が魔力が足りないからシルちゃんを吸収してるのよね、ならシルちゃんの核に魔力を送らないといけないはず…でも変化の核に魔力を充填した…なぜ?」
背中にいるソフィーから聞かれる
「…。」
「わかった。質問を変えましょう。ファルの力が得られずに3ヶ月経った場合。貴方はシルちゃんを助けるのね?」
「ああ。」
「その時貴方はどれくらいもつの?」
「…。」
「そっか…わかった。」
「シルには言うな」
「オーケー、それを返事と受け取るわ。」
「フーセ。貴方…」
「ソフィー、男の子が決意して好きな子を助けるって言ってんだから野暮なことは言いっこなしよ。それにファルの力でなんとかできるなら心配するだけ意味がないもの。私も協力するんだからなんとかなるわよ。」
「ルルねーちゃん…ありがとう。」
「どういたしまして。ところでそっちの練習止まってるわよ、邪魔しちゃうみたいだから、今度は他の人と話してみるわ」
そう言うと念話が切れる
セリス兄がビクッとする、どうやらルル姉のターゲットはセリス兄のようだ。
「ソフィー、黙っててごめん。」
「心配させないように黙ってたんでしょう?特にシルちゃんに。」
「あいつに言うとたぶん俺に助けさせてくれなくなるから…」
「そうでしょうね。」
「だからシルには…」
「私もお姫様と同じ思いよ。頑張りなさい男の子!」
「ありがとう。」
セリス兄が凹んでいる。ルル姉にダメ出しされたのだろうか。
顔を上げると遠くに王国の旗の上がった複数の馬車が見える
「ソフィー、ルル姉に知らせて、うまく近寄って話しかけるってのはまだ無理そうだ。」
「しょうがないわね。」
「王国の馬車だよね?どうするの?」
シルが近寄ってくる。
「今ソフィーにルル姉に聞きに行ってもらってる。」
そう話していると念話がくる
「2人とも降りてきて。流石に飛んでると驚異とみなされちゃうかもしれないから。後は私に任せて。」
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ルル姉ちゃんが話してくれてVIP待遇…と言っても同じ馬車に乗せて貰っただけだけど。飲み物を飲みながら王都に到着した。
直ぐに王宮へ行く
先に戻ったイルナさんとセリス兄がファル姉を連れて王宮の前に立っていた。
ファル姉の顔色は変わらない。
いつも通りに見える
「フーセ、シル。無事でよかった。」
その一言でやはり姉ちゃんがおかしくなっている事がわかる。
セリス兄は複雑な表情を浮かべていた。
そのまま、ルル姉と一緒に謁見の間に向かう
「お父様戻りました。」
「おお!ルル怪我はないか?良く顔を見せておくれ。」
「ええ!大丈夫です。あの者に攫われたところ救っていただいたのです。」
ルルねーちゃんが手を指し示す
あっ俺か、そうだった。とりあえずお辞儀をしようとするとシルに袖を引っ張られる。
「膝ついて、頭下げて、セリスさんの真似!早く!」
周りを見ると、セリス兄もファル姉もシルも膝をついている。慌てて真似をする。
「お主は?」
シルにツンツンされる
「あっ俺か?、いて!つねるなよ!」
「フーセ、王様の前なのよ、ちゃんとして。」
シルに怒られた
「えっとわたくしはフーセ・パスサイドで有ります。」
「クププ」
ルルねーちゃんが笑う。
「んっ?それではそなたが探していたフーセか。」
「お父様、私の方で確認したところ、先日の王都襲撃の容疑、濡れ衣だったようです。」
「しかし、魔獣がこやつを守ったと…」
「それでしたら…シル。変身して見せてくれる?」
そういうと隣にいたシルが立ち上がる
「叔父様お久しぶりです。シル・ファリーゼです。」
「おお!見違えたなシル。」
「ありがとうございます。早速ですがまず鳥に変身させていただきますね。」
そう言うとシルが鳥の姿になる。
「なんと!?」
「変化の核の力です。」
ルル姉ちゃんが続ける
「この姿になったシルがフーセを助けに入ったのを勘違いされてしまったようです。これまで彼は傷をおったシルを助ける為に捕まる訳には行かなかった。シルが動けるようになったので弁明の為に王都に向かう最中、攫われた私を偶然にも見つけ、助け出してくれました。残念ながら、賊は逃してしまいましたがこうして無事に戻れたのは彼のおかげです。」
シルが元に戻る
「なるほど、そうであったか。娘からも礼はあったであろうが儂からも礼を言わせてもらおう。ありがとう。」
「どういたしまし…いてぇ!」
シルに叩かれる
「すみません、叔父様。なにぶん田舎育ちのもので礼を欠いております。ほら頭下げろ!こいつにはしっかりと教え込みますのでなにとぞ…」
「はっはっは、ヨイヨイ。シル、そんなに姫を救った勇者を無下にするな。それに報酬を出さねばな…何が良いか…」
「お父様、それについてお願いが」
「ん?言ってみよ」
「先程も申しましたが賊は取り逃がしてしまい脅威が無くなったとは言えません。また同じような事が起こるかもしれません。」
「そうじゃな、では一番隊の誰かをルルに…」
「いえ、王が狙われないとは限りません、むしろそれが狙いかもしれません。一番隊はそのままがよろしいかと。そこで、私専属の特別隊として。フーセを王国騎士として迎えたいのです。」
「まじか!ルルね…イテッ!」
シルに再度叩かれる。
「ふふっ、教育係としてシルも必要ね、後、処遇の決まっていない、ファルとセリスも頂けませんか?」
「ふむ…そうだな、しかしそれでは他の隊の物と連携が取れまい。イルナ!お前もその特別隊に入れ」
「えっ…でも…はっ、はい。承りました。」
「フーセもそれで良いか?」
「…良いで有ります。」
「ありがとう!お父様。じゃあ早速これからの方針を話すわ、とりあえず場所を移しましょうか」
「なんじゃ私は仲間はずれか?」
「ちゃんと後で報告しますからね。初めての私の部隊ですもの、私にやらせてください、お父様。」
「うむ。しっかりな!」
「じゃあ特別隊の皆さん、円卓の間に移動しましょう」
ルルねーちゃんは楽しそうだった、それに対してファル姉はずっと無表情のまま黙りこくっている
部屋を移動してバタンと扉を閉めるとルルねーちゃんが言う。
「それじゃぁ、ファル。何か言うことはある?」
ルルねーちゃん…悪い顔だ…
「何もありません。」
「私はともかくみんなには言う事があるんじゃない?」
ファル姉が顔を上げてセリス兄を見る
セリス兄の心配した顔を見て頭を下げる
「ごめんなさい…」
「ファル…」
セリス兄はそのまま黙ってしまう
「貴方に私の方で罰を与える訳じゃ無いから安心して、その代わり私の為に働いてもらうけどね。とりあえず、操りの核。貴方が持っているんでしょ?出してくれる?」
ファル姉が顔を振る、そしてお腹を指差す
「飲み込んでたか。フーセ君取り出す方法ある?」
「シルの変化の核の力なら出来る。」
「えっ私、身体の中は自信ないわよ!」
「じゃあ俺がやる、シルの核の力貸してくれ」
「エロフーセに触らせるくらいなら私がやるわよ、私が貴方の力を使ってやっても同じでしょう、それにお姉のお腹にも触るとかどんだけよ。」
「そうね、シルちゃんお願い。フーセ君、飛燕出しておいて」
シルが俺のお腹に触れている、少しこそばゆい
「ちょちょっと!赤くなってんじゃないわよ、こっちも恥ずかしくなるからやめなさいよ」
「うっせーよ」
そっぽを向くとソフィーと目が合う。
くそ、笑ってるし
「じゃあ行くよお姉」
ファル姉は相変わらず何も話さない
「んっ?これかな?こうやって…表面に移動させて…あっ違った、じゃぁこっちか、こうやって…ハイ!出た。これね。」
「じゃあとりあえず飛燕にはめ込み…」
そうルル姉が言いかけた時
突然ファル姉がシルから操りの核を奪い取る
「ファル!何を!?」
そう言うセリス兄ちゃんに抱きつく
「ごめんなさい、セリス。どうしても必要だったの。」
「なっ何が…」
みんながあっけにとられている中ファル姉は…
セリス兄の口に手を当てる
「飲みなさい!」
セリス兄の手がだらんと落ちる
「ファル貴方なにを!?」
「ほんとにルル…貴方は邪魔ばかり…いつも、いつもいつも!早く殺したかったのに…そう、フーセ!貴方もよ、トルダワに連れて行って殺せって行ったのになんでそんな事も出来ないの?ちゃんと話は最後まで聞きなさいって昔から言ってるのに…もう貴方のせいで予定がかなり前倒しになっちゃったじゃない!」
「ねーちゃん…なにを…」
「ほら!やっぱり聞いてない!セリスを英雄にするの!私のセリス!英雄ネルの力を持てばもうこの人は世界の誰もが認める英雄!私はセリスの願いを叶えるの!さぁセリス!私のセリス!目覚めて!」
「ネル…じゃと!?」
剣狼が叫ぶ
「どう言う事…」
「ヒュンゼル」
氷の刃が剣狼に向かって飛ぶ
剣狼が飛び下がり避ける。
「黙りなさい、さぁ目覚めて。セリス。」
「ファル。お前は本当にいい女だな。いい子だ」
セリス兄がファル姉の頭を撫でる
「さてと。君たちにも礼を言っておかねばな。予定通りとはいかなかったがようやく体を持てた。感謝する」
「にーちゃん何を…」
「本当はしっかりと国を作ってからと思っていたが、まぁ仕方あるまい。私直々に我がデンゼル王国を復権させるとしよう。」
念話が飛んでくる
(セリスとファルを拘束できる?)
(まて、まだ動くな)
剣狼が言う
「どう言う事じゃセリス。」
「おお!エディル!我が息子エ〜ディル。お前のおかげで千年も玉の中で過ごしたぞ!」
「儂はエディルではない。」
「そうか、そうか、記憶が無かったんだったな。罪も分からず居たのではこちらも張り合いがない。思い出せエディル。お前の罪を…」
次の瞬間、剣狼の頭を鷲掴みにして持ち上げる。
見えなかった…
「ほらほら、どうしたエディル。」
剣狼をブンブンと振り回して壁に投げつける。
「そうだな、お前らにも褒美として生きるチャンスをくれてやろう。エディルを連れて逃げて良いぞ?それとも戦ってみるか?」
セリス兄はそう言うと置いていた飛燕を拾う
「セリス兄…じゃないんだよな?」
「フーセ。私はセリスだよ。ただネルの記憶も持ったというだけさ。わかるか?」
「セリス、逃げる時間を…」
「ヒュンゼル」
ルル姉が話そうとすると氷の刃がルル姉の顔をかすめる。
「お前がセリスの名を呼ぶな」
ファル姉が声を荒げる
「ファル。気持ちはわかるが話ぐらいは聞いてやれ」
「ハイ」
「続けていいぞ、姫」
「逃げる時間をいただけるという事だけど、どれくらいもらえるのかしら?」
「そうだな、お前たちの鈍足な脚では時間がかかろうな、私もこの体を慣らすのに少し時間が必要そうだ、ふむ半刻くれてやろう。それまで私は動かない、しかしながら他の者たちがどうかは知らんがな…」
「それはありがとうございます。」
そう言うとルル姉がスカートの裾を掴んで挨拶する
「みんな逃げるわよ。フーセ、剣狼をお願い。」
「ルルねーちゃん!でも!?」
「お願い、言う事を聞いて。この人が勇者ネルだとしたら…敵対したら死を意味するわ」
「さすがはファルが一目置く姫だ、判断が早いな。ちなみにまもなく五分経つぞ?」
「少しぐらいおまけをくださいな、行くわよ」
剣狼の主導権を奪い剣にして持つ
「よかろうお前たちが部屋を出て半刻だ、全力で逃げて見せよ」
ルル姉が部屋を出るのに続く
「みんないい?まずは国王のところに行って知らせるわよ、アソーマならなんとかできるかもしれない」
謁見の間に向けて走る
セリス兄の…笑い声が響いていた。




