3-8 意地とプライドとーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーセリス
丘の家の前にはシルバーがいた。
「よかった!私のシルバー無事だった。」
イルナさんが喜ぶ
「姫様の無事を確認してないのに不謹慎ですよ、イルナさん」
「そうでした…失礼しました。」
さてとどうやって中の様子を伺うか…
と思っていると扉が開く。
「シルちゃん!?」
声を上げてしまった、
「あっ!セリスさん!…と?だれ?その人?セリスさん!もう浮気?」
「ち、違います王国騎士隊、2番隊副隊長のイルナ・スーレンです。」
「あっそうでしたか、失礼しました。中に入ってください、今お茶の準備するところなんで…ルルちゃん〜セリスさんと王国騎士の人がもう来ちゃったよー」
「はっ?」
どうなってる?さわれてたんじゃないのか?
言われるままに入るとフーセが柱に縛られてその前で姫様が椅子に腰掛けている。
「思ったより早かったわね?優秀、優秀。さすがファルの惚れた…チッ」
舌打ちされた
「これはいったい…」
「に…にーちゃん、えっとこの前は…」
「ワッパーーーー!!!!」
剣狼様が狼となる
「よもや忘れたとは言わせんぞ!儂を足蹴にしてくれたな!その足はもういらんものだと言う事で良いな!覚悟せいジワジワ食ろうてやる」
「この老いぼれ狼!私を小烏丸でまた広めたわね!あまつさえ私が操りの核を使ってるですって、もうろくしたのか!ギンギン丸」
「なんじゃいたのか小烏丸。なんじゃあの時ピクリともせんかったからお主が操ってあったんじゃろうが!」
「あれはフーセが私の主導権をとっていたから…」
「わっぱごときに主導権をとられた?お主こそババァになったんじゃないのか!?」
「バッ…ババァですって!?もう頭きた、そのヘニョヘニョになる剣、縛って地面に埋めてやるわ!」
「よかろう!ろくに使い手も守れん無能の剣は湖の底に沈めてくれるわ!」
ソフィーさんがフーセのロープを切る
「フーセやるわよ!」
「セリス決着をつける時じゃ!」
「なになに?喧嘩?」
シルちゃんが戻ってくる
「剣狼様もソフィーも待ってください、落ち着いて。」
「いいや待たん!」
「いいんじゃない?2人の力も見てみたいし」
「姫様!?」
「まぁ状況はあとで説明するわ、聞いてるわよ、貴方もフーセにやられたままじゃダメだってアソーマから指導を受けたんでしょう?わだかまりは捨てた方がいいわ、折角だからやっておきなさい。フーセ君もそれでいい?」
「わかった。」
「外行くぞフーセ」
「勝った後で言うのも変だし今言っておくよ、にーちゃん。あの時はごめん。」
「ははっ勝つつもりかフーセ。あれは俺が止まらなかったのが悪いんだ気にするな、もう…二度とない」
外に出て距離をとって対峙する
家の前ではテーブルと椅子を出してイルナさんとシルちゃんが準備している。
俺とフーセはお茶受けか…
「手加減するなよセリス」
「そんなつもりはありません」
「ソフィー、最初から飛ばして行くよ」
「オーケー。」
椅子に座ったまま姫様が手をあげる
「じゃぁ、準備はいいわね!はじめ!…これ言ってみたかったのよ。」
掛け声と同時に一瞬でフーセが自分の右側面に回り剣を振るってくる
「湖月!」
その剣受けながらフーセを押し戻す
「同じ轍は踏まないぞフーセ」
「さすがにいちゃんだ。」
「今度はこちらから行くぞ」
流水の動きでフーセのタイミング崩す
「一閃」
フーセが一閃を避ける瞬間に一気に間合いを詰めて
「昇月」
フーセを上に向かっての打撃を放ち地面から足を離させる、
「ぐっ」
空中に浮いたフーセは逃げれない、畳み掛ける
呼吸を置かず連撃を放つ、フーセは2つの剣を使い受けるが反撃はできないだろう、このまま終わらせる
「そうはいかねぇ!」
「なっ!?」
「エディルのマントか。」
フーセが空中に逃げる
「飛べるとか割と反則じゃないか?」
「何使ってもいいって前に言ったよな剣狼」
「閃刃。」
「うわぁ!」
フーセが落ちてくる
「かっかっか、空中で自由にとは行かんようだな、何でも使って良いと確かにゆうたがもう飛ばん方が良いぞ小僧」
「そうみたいだ、ソフィー、悪いんだけど主導権もらっていいか」
「…まぁしょうがないわね、そのかわり勝ちなさいよ」
「まだ何かあるようじゃな、気をつけろよセリス」
「いえ、このままあいつのペースにはさせません。」
そのままフーセを回るように走る
「盾刃」
フーセを盾刃で取り囲む
「行くぞ!十刃裂破!」
「いやいやにいちゃん、俺、黙って同じとこいないって、それはもうちょっとスピード早くやらないと、にーちゃんのいまのスピードじゃ無理だね」
自分が3番目の盾刃を十刃にしようとした先にフーセが居た
「くっ、何だ体が重い」
「ソフィーの力だよ、スピードの核、改め、重さの核ってとこだな」
「重力制御か!?」
「重力?…重力なのかな?んっソフィー?」
「重力とはちょっと違うわね」
軽くなった
「ヤベ!」
フーセが2つの剣で受ける
「この体勢で重くはできないだろ?」
「そうなの?ソフィー」
「…そうよ。」
「ははっ、この辺は変わんねーな。お互い距離を取ったら終わりそうに無いな、こっからは純粋に剣だ」
目の前をフーセの剣がかすめる、フーセが俺の剣を受け流す。
「なんか楽しいねにーちゃん」
「俺もそう思ってた」
一年も経って居ない…半年前に剣狼様に剣を教えてもらって…2人で修行して…後ろにいたはずのフーセと対等に剣を交わしている。不思議な感覚だ…だけど…
「終わりにするぞフーセ!昇月!」
フーセを上に飛ばす、一歩下がり
「一閃乱舞」
ほぼゼロ距離からの一閃、と言うよりは突きを四肢に突き刺す
「ぐあ!」
「止刀十刃。」
「ウァアアァ!!!」
フーセが吹っ飛び木にぶつかる
「そこまで!セリスの勝ち」
「剣狼様、手加減ありがとうございます。」
「曲刀から戻す時に固くしそこなっただけじゃ」
ソフィーさんがフクロウの姿に戻る
「今日はこのくらいにしておいてあげるわ、フーセが魔力全開ならこんなもんじゃ無いんだから!」
「負けフクロウの雄叫びじゃ、珍しいもんが見れた!かっかっか」
観戦していた3人も笑う
「フーセ大丈夫か?」
「あぁ、勝てると思ったんだけどな!」
「まだまだ負けねーよ」
そう言ってフーセを起こそうとするが
「手足切られてんだ、立てねーよ」
「もう、しょうがないな。」
そういうとシルちゃんが走ってくる
「いいよシル、自分でやるから核の力貸してくれ」
「あんた、ただ私のお腹触りたいだけなんじゃ無いの?エロフーセ、良いから私に任せなさい」
シルちゃんが傷口を塞いでいく
「さてと、状況の確認をしたいのですが?」
「そうね、また最初からかーまぁいいわ。貴方にも少し文句を言わないといけない事も有ったしね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
少し…
少し?
少しってなんだ?
「貴方ファルの魅力本当にわかってる?いいえわかってないわ、貴方1人に縛られていい人では無いの、私…じゃなくてみんなから愛されるべき人なのよ?わかってる?」
「はぁ〜」
「何その返事?いい?何度もいうけどね?」
「ルルちゃん話が進まないからその辺で」
「もう、じゃあこの話はまた後で。」
後で続くんだ
「とにかく、ファルちゃんが操りの核を持っているのは間違いないでしょう。それを取り上げる」
「だけど犯人はどうすんだよ?王国襲撃とルル姉攫った犯人。」
「えっ?貴方が構わないって言ったんじゃ無かった?」
「え゛?」
「ふふ冗談よ、そんなに難しく考えなくていいの。」
「でも」
「私が味方をするって言ったでしょ?貴方は私を攫ったんじゃなくて命令を受けたの。私がトルダワに行きたいという願い。襲撃の方は…あっそうだ、私が何者かに攫われたのを貴方が救った。襲撃の方は正直に話して勘違いですって言う。これで行きましょう。」
「ですが姫様」
イルナさんが口を挟む
「そうだった貴方もいたものね。マーダンと一緒で硬いからなー」
「硬いとかそういう問題ではなく」
姫様がファルを泣かせた時のような表情を浮かべる
「貴方、怪我をして今は副隊長ではあるけれど一線を退いているのよね?」
「!?はっはい。今はセリスさんとファルさんの監視を任務としています。」
「そうよねーそれなのに監視対象であるものが犯人だとしたら?しかも、犯行を繰り返していたら?」
「私はどんな罰でも受ける覚悟はございます。」
「貴方、怪我は肋骨だったわよね、復帰しても直ぐにまともな働きはできないでしょう?マーダンももうすぐ1番隊に入ってしまう…2番隊隊長はヒルロッテあたりかしら?…1番隊も4人ともなれば秘書官も必要となってくると思うの…誰か良い人いないかしら?チラ」
「私などには…」
「貴方がダメだというならなー、困ったなー、因みに1番隊になるとなかなか会えなくなるわよー。そうだ!3番隊にいるあの胸の大きい…なんていったかな?シルビア?あの子にしちゃおっかなーあの子はグイグイ行くからなー」
そういえばいたな。…いかんいかんファルに怒られる
「そっそれは…」
「あの子ホントマーダンの事が好きよねー2番隊にしてくれって毎年のように移動願い出してるもの」
イルナさんが耳を塞いで後ろを向く
「わっ私は!何も聞いていませんし、何も見ていません、何も知りません!」
「宜しい。」
イルナさんが…お…折れた…
「行かない、寄らない…」
「ん?セリス何か言った?」
「なんでもありません。」
「ルル姉ちゃん、ホント大丈夫なのか?俺捕まってシル助けられなくなるのだけは本当にやめてほしいんだけど。」
「もー心配症だな、フーセ君はホントシルちゃんのこと大好きなのね」
「だっだれが!そんな事!」
「ソフィーさん、会話の核貸してくれる?」
「?いいわよ?」
ソフィーから会話の核を受け取ると姫様は…
飲み込んだ。
「ちょ…ちょっと!」
「姫様!?」
みんなが取り乱す
「これで解決方法が見つからないと私も核になってしまう危険性が出た。これで私を信じてくれる?」
少し考えてフーセが答える
「…ああ。疑ってごめん、ルルねーちゃん」
「いいわよ、将来の弟ですもの。」
????なぜ?弟?
「そうそう貴方たち、ファルから核を取ってシルちゃんを助ける方法がわかったらそのまま私に協力してもらうからね。」
「協力?」
「そっ私がこの国の王になる為の協力」
「黙っていても姫様が次の王様…女王様になるんじゃないの?」
「うーん、黙っていたら弟になるかなーこの国はね今かなりギリギリなのよ。」
「平和なのに?」
「そうね、平和の代償かな…簡単な話、超絶貧乏なのよ。うちの国は」
「そうなの?」
「今の王様をどう思う?そうねーはい、シルちゃん」
「えっ?私?叔父さまは…すごいと思います。今の平和を作ったのは叔父さまですから。魔獣の掃討をして街や村を歩きまわれるようになったのはすごい事だと思います。」
「叔父さま?」
フーセがつっかかる。フーセはまだしらないのか…
「あら、フーセ君知らなかったの?シルちゃんは元王族よ?」
「いや、王族って…シルの家、領主様だけど…へっ?」
「シルちゃんのお父さんは王様の弟よ」
「へーそうだったんだ。」
あれ?
「なんだ、もっと驚くと思ったのに、セリスなんてすんごい顔してたんだから…」
「元なんだろ?別に様付けしろとかそういう話じゃないならシルはシルだろ?あれ?俺間違ってる?」
「いや!お前は様をつけろ!」
シルちゃんがフーセを叩く
「話を戻すわね、確かに交通の便利さは良くなったでもね、魔獣掃討にはかなりのお金を使うことになった。でも国王は民のために税金はあげなかった」
「良い王様だと思うけどな。」
「聞こえは良いんだけどね。お父様の悪いところはそのあとなにもしなかったのよ、それに漬け込んで隣国からはだいぶ手が回ってきてる。イルナには悪いんだけど、クー兄弟とか、1番隊のユウヒもそうね。大臣たちもだいぶ息がかかってる。私の弟の母もそう。このままだと気付いたら隣のリーアン王国に乗っ取られてましたーってなっちゃうの。」
「王様にそう言えば良いじゃん。なかなかそうも行かないのよ。と言うわけで私の陣営の力を作らないと行けない。その為に貴方たちの力を借りたいってわけ。」
「ねーちゃん、俺んち貧乏だから金ないよ?」
「お金は私が集まるから大丈夫。貴方達に求めるのは腕っ節と人気ね。セリスはもうファルの力もあるだろうけど人気あるから素敵ね。おそらくファルも同じような考えを持って動いていたんじゃないかしらね」
「そうだったのか、ファルがそんなとこまで…」
「そして私が王になった暁には婚姻制度の見直しを!そもそも人間同士、男とか女とか不平等とか言ってるのがおかしいの!全て同じ人類!国が違うとか身分とかそう言うことじゃなく好きな人が好きな人と一緒になる!ぐふっ、グフフ。」
???婚姻制度???なんか、国を良くするのと関係あるのか??
それを聞いてフーセとシルちゃんは顔を伏せ、イルナさんは期待の眼差しをする
「ま…まぁわかりました。ファルがおかしくなっているっていうのは正直自分は半信半疑なのですが、ファルは自分が説得します。」
「でた!でたでた、ファルは俺が…そんなのいらないわよ、私が説得します、貴方は何も言わなくていいです。」
「セリスさんのそろそろ察して…」
「セリスちゃんにその辺察しろってのは…」
「にーちゃんはその辺空気読まないよな」
「お前ほどじゃないよ」
フーセに言い返す
「セリス。」
イルナさんに肩を叩かれ首をふられる
「えっ?フーセより読んでないの?そこわフーセに矛先変わらないの?」
みんなに笑われる、おかしい、ここはフーセじゃないのか?
「さてと、セリスとイルナの後続が来るとややこしくなるから王都にそろそろ出発しましょう。」
「その方が良いでしょう、姫様、王都では誘拐という事で騒ぎになっているでしょう、少しでも早く戻った方が良いと思われますので…」
「馬は二頭しかいないものね、イルナ同乗を許可します。」
「俺は飛んでくから、にーちゃん、シル乗せてくれ。」
「あっ私も飛んでくよ、そっちの方が楽しそう」
シルちゃんが鳥の姿になる
フーセが少し辛そうな顔をする
「フーセ!飛ぶよ!ソフィーも一緒に飛ぼうみんなで飛んでたらきっと楽しいから!」
そう言ってシルちゃんが飛び立つ
「ほらフーセ君、女に気を使わせたんだ、待たせるな」
「うん」
「あの子は素直でいいな。セリス。君も…いやいいか、そのままがいいのかもな。さっ行こう。ファルが待っている。」
トルダワを後にする
楽しそうに空を飛ぶ2人を見上げて、
早くファルに会いたくなった。




