1-3 姉と妹
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーファル
「シルー、シルー?」
「何?お姉ちゃん?」
「フーセとセリス見なかった?」
「なんか最近ずっと2人でなんかやってるみたいだよ、洞穴見つけたでしょ?あそこで秘密基地ごっこにセリスさん巻き込んでんじゃない?あのバカ」
「そう、このあいだの祭りでフーセ頑張ったじゃない?ズルはしたけど…、おじさんそれでやっぱりあいつはできるやつだから呪術教えてやってくれってお願いされちゃって…」
「あのバカに教える?いくらお姉ちゃんだって…いや…お姉ちゃんの言うことなら聞くかも?セリスさんもいるし…お姉ちゃん!私もいくわ!」
「そう?シルもフーセの事心配なのね?」
「心配、心配、(セリスさんに迷惑かけないか)」
洞穴は丘で剣術をフーセに指導しているときに見つかった、シルと私はセリスとフーセの特訓にお弁当を持ってついて行っただけだったけれど…特訓の最中走り回ったフーセが崖崩れに巻き込まれて、あの時はどうしたらとドキドキしたわ、そしたらフーセが下から洞穴見つけたってニコニコして登ってくるんだもの、もう心配しないほうがむりよね、セリスはしっかりしてるけどあの人も無茶するから、私がしっかりしないと!
「お姉ちゃん?洞穴に居なかったよーどこ行ったのかな?」
「川の方かしら?」
「本当地に足がつかない男ねフーセは!」
川に向かう森の途中、声が聞こえる
「ドォーリャー」
「フーセの声だわ」
「にいちゃんみたいに飛ばないよ?どうしたらいいの?」
「木に魔力を込めて、ズバン!これだ!」
セリスの持った木から剣撃が飛ぶ、大木に大きな傷をつけた
「わかんないよにいちゃんーできないよこれ」
「わっぱお前は出来るぞちゃんと出来るようにしてあるぞ、小僧、お主もうちょいわかりやすく教えてやれ」
「犬が喋った!?」
私からはよく見えなかったがシルが叫ぶ
「シル!ファルねぇ!あちゃーみつかったか!」
「フーセが高い声出すからだぞ?」
「ファルねぇセリ兄すごいんだぜ?遠いとこからでも木を切れるんだぜ!」
「そんなことよりそのワンちゃん話してませんでした?」
「シルちゃん落ち着いて、大丈夫だから落ち着いて」
「騒がしくなってきたの?本当に余り広まるのは儂の本意ではないんじやがな?小僧」
「そんなことよりセリ兄2人にみせてやれよ!ビビるぜ」
めちゃクチャだ…
「はい、みんな?こっち見て、1つづつ整理しましょう?まず狼さんはお話ができるすごい狼さんでいい?」
「まぁ違うというのも面倒じゃすごい狼さんでええじゃろ」
「次ね狼さんは私たちを襲わないこれもいいかしら」
「まぁそうじゃなお前ら食ったところで魔力は戻らんし襲わんな」
「次ねセリスのさっきの剣術はどうしたの?」
「それは……、
「セリスさん凄いです」
シルが一通りの話を聴いた感想はその一言だった。
「2人はそれで剣術をきたえたいわけね?わかったわ、私はおじさんにフーセに呪術教えるように言われてる、ちゃんと私のお話も聞いてくれるならこの事は秘密にしてあげるわ、シルはどう?」
「フーセ、ちゃんとお姉ちゃんの話を聞いて勉強するのよ?私はセリスさんのお手伝いするわ」
「わかったよ、ファルねぇちゃんが教えてくれるなら俺もすぐに火起こしぐらいできるようになるよ」
「ふーつは出来るのよ」
「うるせ〜な」
「はい、喧嘩しない、剣狼さんこういうことでもいいかしら?」
「ウッウッ儂嬉しい、まともなもんと話せて嬉しい」
「剣狼さま私は…」
「小僧!お前は教えるの下手なんじゃ!ずばっとか力を込めるとか儂だって聞いててわからんわ!」
「そこは剣狼さまのご助言が…」
「儂わっぱの世話は任せるっていったよな?」
「はいはい喧嘩しない、今日はもう日が暮れるわ明日も特訓するんでしょ?お弁当作って来てあげるわ、フーセは午前は呪術、午後から剣術ね?わかった?」
「わかったよファルねぇ、ファルねぇが教えてくれるなら俺…」
「はいはいわかったわかった、セリスさんも今日は一緒に戻りましょう?」
「わかった、では剣狼さま、また明日お迎えにあがります。」
「うむ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル
私は今幸せだ!
セリスさんが汗を流す姿を独り占めしている
「セリスさんタオルどうぞ」
「ありがとうシルちゃん、一息入れるよ、フーセの方はどうだ?」
「あいつは基礎も基礎からなんで魔力高める練習からですよ、あいつにしては真面目にやってるみたいです」
「ははっ、フーセには手厳しいね、様子見て来てくれる?」
「はい、もちろん、喝入れて来ますよ」
フーセねーどうせ動かないでやる魔力集中なんて寝てるか逃げるかの二択でしょうからね、
集中力がないよ!近くでセリスさんが頑張ってるとそっちばっかり見て呪術どころじゃなくなるんだもの、
まぁそのおかげで2人っきりなんだけど…たまに役立つじゃないのフーセ。
小川の方に行くと石の上で魔力集中しているフーセが見える、
フーセが…珍しい…
静かにしとく方が良さそうね
こっそりと近づく
「…は勇者に…願いなのですね。」
お姉ちゃんの声…
「ではフーセが…の真核、セリスが記憶の…ですね?」
「嬢ちゃん博学じゃのよくしっとるな」
「なぜあの2人に飲ませることに?」
「簡単じゃよ儂ではあれに魔力を戻せん、今は平和な世じゃいちいち魔力が高いものを探して魔力を込めてくれとお願いするのも変じゃろ?あやつらに魔力を溜めさせておる、って事じゃよ。胃の中なら丹田に近いから魔力の低いあやつらでもそれなりに貯まるじゃろ?」
「では剣狼さま?私に賢知の核をくださいませんか?」
「賢知をか?どうする気じゃ?」
「もちろん飲みますわ」
「そうではない賢知の力でなにをする気じゃ?」
「私も願いを叶えてもらおうと思ったのよ、それに賢知の力があればあの2人を鍛えるのが早くなりますわ、剣狼さまの代わりに私が指導しますわ」
「なるほどの、まぁそれなら願ったりじゃな、よかろう。」
「何の話をしてるの?」
「あら?シル、ケンロウさんに私もお願い事してたのよ」
「えーいいなーわたしわー?わたしも叶えてよー」
「おいおい儂だって何でも叶えられる訳じゃないんじゃからな」
「えーフーセは何でもできるようにしたんでしょ?」
「そうなんじゃが…」
「もう1つはヘンカの核ですか?」
「お姉ちゃんヘンカの核って?」
「そうじゃ、うーん言って見れば変身出来る様になる力じゃ」
「ステキじゃない、森の動物にもなれるってことでしょ?それ!それいいじゃない!ちょうだい!」
「どうしたものかのぉ…核を全部たくすというのものぉ〜そうじゃなぁ〜でも、まぁええか、儂もそんな困ることもなさそうじゃし」
「意外に軽いのね?スゴイ条件とか出されるのかと思ったわ?」
「カァカァカァ、それはもっとうまそうに育ってから言え、小娘」
「食べられちゃうわお姉ちゃん!」
「わたしの方が柔らかいわ!わたしからお食べなさい」
「なんだろー守ってもらうはずがダメージをうけたわ」
「??」
「ぐぁかっかっ、姉を見習えよ小娘、よかろう2人の願いを叶えてやろう、姉が青の玉、小娘は緑じゃ」
「これ飲むの?大丈夫なの?」
「飲むのが契約みたいなものなのよ、シル」
「飲めるかな?水と一緒に飲んでいい?」
「好きにせい」
この大きさのものを飲み込むのは難しい、お姉ちゃんは難なく飲み込んだ、お姉ちゃん本当よくわからないところで、スゴイと思う。わたしもだいぶ苦戦したけどなんとか飲み干せた。
「もう水でお腹いっぱい」
「お腹押してやろうか?」
いつの間にかフーセが来ている
「勝手に乙女のお腹をサワルナァー」
回し蹴りをお見舞いする
「ダメだ、ぜんぜん力でない」
「あらあら」
フーセがキリモミしながら吹っ飛ぶ
「儂見るに聖戦の時でも生身でこの力はみたことないのぉ、あれ?儂のやったヘンカの玉ってこんな力あったっけ?」
「いや万全だったらもうちょい飛んでたわ、ほらもうフーセたちあがるもの」
「儂おかしいのかな?なんか大昔に同じことあった気がする…」
「ケンロウさま?それでどうやったら変身出来るの?」
「練習じゃ、変身はイメージする力なんじゃがそれよりもずっと大事なことがある、まずは自分の形を覚えい、自分に戻れなくなったらそれは自分が無くなるのと同義じゃ、まずは自分の体をよく見て触って覚えるところからじゃ、分かったか?」
「私も特訓かー、まぁいいわ自分をよく見て覚えるのね」
「ダメよ〜シル簡単に考えてるでしょ?今の自分の姿をあなたが忘れてしまったら誰にも元には戻せないのよ、しっかりね」
「フーセ午前はおしまい、私もこのあと村長の家の書庫で勉強するから明日は多分これないわ、明日も魔力の集中練習しておいてね」
「ケンロウさまそれでわ、私勉強して来ますわ。」
「分かった、儂は小娘にヘンカ基礎教えておこう、そのあとは小娘も任せるからな、いいか?」
「明日の午後にはこちらにお伺いしますわ」
「お姉ちゃん勉強ってどういうこと?願いは勉強??」
「私が叶えてもらったのはね、見極める力かな?偉い人が2つの真逆の話をしてるとするじゃない?そんな時どっちが正しいか調べるには一から自分で確かめるしかないわ、それはとっても時間がかかるの、私のもらった力はそれがどれが一番正しいのかわかる力みたいなものね、これから村長さんの家の本を読んでみんなの力になれる知識を探してくるわ」
「お姉ちゃん…もっと頭が良くなるの?」
「そうねぇ、よくなっちゃうかもしれないわ、フフ」
お姉ちゃんが頭が良すぎるのはずっと困っていたけれど、もうこれ以上よくなっても私がどうこう言われることはないから良いか…
「分かった、お姉ちゃん頑張って!」
「シルもねぇ〜」
「できる姉を持つと大変じゃの?」
狼の含み笑いを見ると少し変な感じだ
「そうでもないですよ?けっこう抜けてるとこ多いから逆に心配ですよ妹としてはね」
「そんなものか?」
「そんなものですよ」
虚勢だ、姉は私から見ても完璧である。容姿端麗、真面目な顔をすれば綺麗だし笑っていると可愛くて、頭も良くて、運動は苦手だけど、そこも可愛くて、理想なんだけど…好きなんだけど…うまく言葉にできない、言葉にしたらダメなきがする。
私がイヤな子になってしまうから…お姉ちゃんには勝てない、同じところに立ってたら私はどうしたら良いかわからなくなる、だからお姉ちゃんと違う人になりたい、髪を伸ばして、いっぱい動いて…お姉ちゃんと違うところで強くなりたい。
「そんな小娘に朗報じゃ」
びくっとする、相手は伝説の剣、私の心なんておみとうしだったのか!
「お前もあんなボンキュッボンになる力をえた!」
違ったようだ…狼なのに人間の体に欲情するのか…
本当どんな伝説を残して来たのやら
「ソウデスカーウレシイナァーワァーイ」
「そうじゃろうそうじゃろう」
「それで私はどうしたらいいんですか?」
「まずはイメージしやすいもの、常に見ることのできる手をみろ」
「はい見ました」
「なんじゃテンション低いのぉ?」
「そんなことないですよ」
「そうか?まずわ左の手を握って、それがまるく、月のように真円になるようにイメージするんじゃ」
「あっ丸くなった!スゴイ!えっ?これどうしたら?
えっ指がない!?」
ぎゅっと握った拳が動かなくなった感じで動かなくなる、気持ち悪い、なんとも言えない恐怖感を持つ
「小娘すごいの?いきなり変化させれるとはセンスあるぞ!まぁ落ち着けちゃんと戻し方もある、元の手の形をイメージするんじゃ、うまくイメージできない時は右手を見て思い出せ!自分の左手を…」
「戻った…」
私はヘタリ込む
怖かった、もう戻らないじゃないかという恐怖、さっきまであったものが突然失われた恐怖感から解放されて安堵したのか、私は泣いていた
「分かったかの?変身は何よりも自分の姿を忘れないことが重要になる、まずは今やったことを何度も繰り返してなれることじゃ、見えるとこから始めるのが良いじゃろう、間違ってもいきなり体全身を変えようと思うなよ、まぁお前の理想の体になるならええかもしれんがの?」
「分かった、少し休ませて…」
「初めからすぐに変化させられるのはすごいことじゃ、小娘才能あるぞ」
私の体が違うものになった感覚、とても気持ち悪かった…
「シル!スゲーな!」
ビクッとして振り返る、…フーセ?
「えっいたの?」
「なんだシル泣いてんのか?」
「泣いてないわよ!」
「今のが変化か!すげーな!ケンローなんでもできるってことは俺にもできるんだろこれ?」
「ワッパに変化の核があればできるの?」
「出来ねぇのと同じじゃねぇかよー!セリス兄みたい背が高くなるかとおもったのに!」
「残念だったわねチビ!」
「すぐにでかくなるわ!あとシルお前もずるすんなよな、左手の親指の付け根のほくろ消えてるぞ」
たしかにあった…
「ふ、ふん悪かったわね、こうすればいいんでしょ」
「そうそう、ズルはだめだからなズルシル!俺がなんか間違えてたらすぐ指摘するからな!ファルねぇみたいにボンキュッボンになろうと思うなよ!」
「うるさいわ!私もすぐ成長するわ!エロフーセ」
思いっきり蹴っ飛ばすがよけられる
「へっへっ動きが鈍ってますよー!じゃぁセリス兄のとこ行ってくるわーー」
「とっとといけ!」
「ワッパもやるのぉ、落ち着いたようじゃの?」
「うるさい!お前もあいつらのとこいけ!」
「くぁかっかっ、まぁそうするかの?」
腹がたつ…本当に腹がたつ…
「あーーー全員蹴り飛ばしてやるんだからぁ」
私は精一杯叫んだフーセに届くように…




