表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣狼の願い  作者: クタクタニ
第3章 願い玉
27/83

3-1 シルの願い

三章に入ります!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル


私はお姉ちゃんが大好きだ。


それは昔からもちろん今だって変わらない。


でも………



私がまだシル・ファリーゼになる前、王都で暮らしていた頃


王位19位と言えども王宮学からダンスまで色々やる事が目まぐるしいほどあった。


そのどれも第1王女あるルルちゃんよりもお姉ちゃんは何でも出来た。ううん、誰よりも凄かった。


正直どう凄かった?と聞かれても私とレベルが違いすぎて、先生にお姉ちゃんが質問してる意味もさっぱりだった。


でもその頃、私はそれが自慢だった。


みんなにお姉ちゃんが褒められるのが私が褒められているようで、私のおねぇちゃんだぞ!と自慢していた。


お姉ちゃんみたいになりたくて一所懸命に勉強した。


お姉ちゃんのマネをした。


こういうのは変だけど私はけしてバカでは無かったし

ふつうにできる。


でも、お姉ちゃんがふつうではなかった。


だんだんそれがわかってきたのが9歳のころ。


みんな私が出来ても、流石ファルちゃんの妹と褒める。


だんだんそれが嫌になる。


お姉ちゃんにも流石シルちゃんのお姉ちゃんと言われて欲しくなった。


だから私はお姉ちゃんの苦手なことを頑張ろうと思った。


ダンスや乗馬、剣術、格闘技。


体を動かす事を重点的に頑張った。


思いのほか格闘技…実際のところは護身術だが、かなり上達した。


そうなると今度はファルちゃんの様におしとやかになりなさいと言われるようになる。


私はお姉ちゃんの様になれない。


違う事で頑張ればお姉ちゃんの様になりなさいと言われる。


私はどうなりたい?


わからなくなる。


私が10歳になった頃。

ママが病気で居なくなってしまう。


それを追うようにパパも…


私達は沢山いるパパの奥様達から煙たがれ


ママの実家のファリーゼ家に行くことになる。


田舎だった。


今までやって居た勉強や稽古の時間が減り。


時間が余る様になる


ママのお兄さんとおばさまは優しかった。


私達を実の娘の様に扱ってくれた。


私はそれに甘えた。


それでもお姉ちゃんは動き続けた


勉学が無くなっても


料理に洗濯に掃除に…なんでもやって、卒なくこなした。


今思うとお姉ちゃんなりにファリーゼの家にいれるように頑張って居たのだろう。


でも私はなんでも出来てなんでもやってしまうお姉ちゃんによって、できる事をどんどん奪われていく。


私はどうしたらいいかわからなくなる


私は何をしたらいいの?


私は何ができるの?


私はお姉ちゃんにはなれない。


私はお姉ちゃんにならなきゃいけない…。


そんな時セリスさんと出会う


私をシルちゃんと呼ぶ優しいお兄さん


私を気遣ってくれて、頼ってくれたりもした。


私にやりたい事ができた。


セリスさんと一緒にいたい。


でも、セリスさんはお姉ちゃんが好きだった


また、お姉ちゃんに奪われる


私だって出来る


でもお姉ちゃんにはかなわない


消えたい。


醜い感情を抱く私を


消してしまいたい。


全部なくなって


私もなくなって…


全部消し去ってしまいたい。


暗闇に落ちていく


わからない


落ちるどころか動いてもいない?


わからない


私が居なくなる


「ズルすんなよシル」


ずるなんかしてない


「シルはシルだろ?」


うるさい


「絶対、お前の蹴り避けれる様になってやる」


無理だっての


「シル帰ってこい!」


帰って?私は初めからここにいる


「シルが好きなんだ」


誰が?


「お前がいなきゃダメなんだ」


お前とか偉そう


「だから…シルは…」


私は何よ?


「もっと小さくて…」


小さい?


「女性…は、気高い…で」


はっ?


「見た事ないからわかんないんだよ」


何のこと?


「だからさ、頼む!見せてくれ!」


何を見せろって?


「だからさ、ソフィー、人型なって乳首みせてくれ、シルの乳首見たことないからわかんないんだよ!」


!?!!!!!!


「死ね、エロフーセ!!!!!!」


だぶん、この後の人生でこれ以上の蹴りはできないだろう。


窓を突き破って吹っ飛んで行くフーセ


「あー、今度はフーセが死んだかなー」


「死なないわよ、湖に落ちたもの。」


「えっと…そうね…。でもまぁ死んでもしょうがないかもね。」


「はぁー。それでソフィー。私なんで裸なの?」


「うーん。まぁ大事なとこは無いからまぁーセーフみたいな?」


確かにあるべきものが無かった。


「シルちゃんを元の姿に戻そうとしたんだけど流石に見たことないところは無理だったという事よ」


「なるほどね、んで?ソフィーは何で止めないのよ…」


「色々と緊急だったから判断がつかなかったの、そういうことにしておいて。でも…良かった、お帰りシルちゃん」


湖の方から男の子の鳴き声が聞こえた気がしたが


まぁ聞かなかった事にしておいてやろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さてと。まずはどうなって、こうなってるの?」


とりあえずシーツを体に巻きエディルのマントを羽織ってベットに腰を下ろす


「そんな事よりシル?変なとこないか?大丈夫か?俺のことわかるか?」


「うるさい!あーもう、フーセ!私の事心配するなら食べ物!大至急!お腹すいた」


「わかった、とびきりのやつ!すぐ取ってくる!」


勢いよく階段を降りて外に飛び出して行く。


いつになく素直なフーセ


「はぁーなんなの?あいつ?どうしたの?」


「シルちゃんはどこまで覚えてるの?」


「うーん大会でセリスさんとお姉ちゃんが優勝したのは夢じゃない?」


「それは夢じゃない」


「20万は?」


「それも夢じゃない」


「って事は!?んっ…あれ変化出来ない…」


「今は辞めて、まだ魔力が戻ってないと思うから」


「あっそっか私…」


「死にかけたっていうか、生物学的に言えば死んでたわ、シルちゃん」


「?死んでたの?私」


「だぶん変化の核の力だと思うんだけど魔力をフーセが懸命に込めて蘇った?っていうか元に戻せてないけど戻ったというか」


「ふーんなるほど、それでフーセの声が聞こえてきたのか…」


「…フーセの声が聞こえたの?」


「聞こえた聞こえた、ズルすんなとか帰ってこいとか、私の事が…」


「私の事が?」


ニヤニヤしながらソフィーがのぞいてくる


「忘れたー全然忘れた、ダメだ思い出せない」


「私の事が?」


「ソフィー、しつこい」


「もう、可愛いんだから!でもまぁ良かった、改めて、お帰りシルちゃん。」


「ただいま?で良いのかな?ただいま。」


「でもこれだけは覚えておいて、フーセ、すごい必死だったんだから、シルちゃんが死んだと思って、凄い落ち込んで、セリスちゃんと、にーさんまでぶっ飛ばして…」


「はっ?セリスさんをぶっ飛ばした?」


「自分の魔力のほとんどを注ぎ込んで、食べながらずっと」


「食べながら?ずっと?はっ?なにそれ?そこは何も食わずにじゃ無いの?」


「違うの魔力切れ起こしちゃうほどシルちゃんに送り続けてるからシルちゃに三日三晩寝ないで魔力を注ぎ続けてたんだから…」


「なるほど…補給しながら頑張っていたんだと…ソフィーは言うわけね。」


「そう、そうなのよ。」


「なるほどね、まぁ感謝するとこかな?いや、そもそもこうなったのはフーセのせいだからとんとんか…」


「ちょっと厳しくない?」


「厳しくない。」


「まずはシルちゃんの体のことについてだけど…」


「体?うん、まぁだるい感じがするけどいたって普通よ?」


「まずシルちゃん落ち着いてね、胸に手を当ててみて」


「胸?」


「無いわね。先が」


「それもそうだけど…」


「あれ??あれ??」


心臓の鼓動が感じられない


「今のシルちゃんの体はまぁ元の体なんだけど本体じゃ無いわ。」


「へっ?どういう事?」


「うーん。シルちゃんは今私みたいになったって事。なんだけど…シルちゃんは核になってる」


「???わからない。核になってるってどういう事?」


会話の核をソフィーが取り出す


「ちょうどこんな感じの核。それが今心臓の位置にあるわ、それがシルちゃん。貴方が死んだ状態になって貴方の体は急激に核になろうとしていた。それをフーセが魔力を注ぎ込んで進行を遅らせた。実は進行は遅くなったけどまだ進んでる。」


「核になろうとしてる?」


「そう、フーセが調べてわかった事があるわ、核は核を作るんだって、人の願いや想いを集めて一つの核になる。手に持って使ってる時はその時だけだけど飲み込んでしまった貴方達はどんどん核を成長させる、シルちゃんが飲み込んだ変化の核にそれがいっぱいになると核はもう一つの核を生む。初めは空っぽだから一気に吸い込み始めたのねそれを止めるためにフーセが魔力を注ぎ込んだって事らしいわ」


「???んーと…つまりケンローから渡された玉は願いを叶えるんじゃなくて自信をその人の気持ちどころか身体までを、吸い取って新しい願い玉を作るって事?」


「まぁそう感じみたいね」


「ケンローはそれわかってたのかな?」


「だとしたら…何をする気なの…にーさん…」


「まぁそこは今考えてもわからないか…ケンローに直接聞くのが早いかな?でもフーセ、ケンローぶっ飛ばしちゃったんでしょ?セリスさんまで…話してくれるかなぁ〜」


「根に持つからなぁー、にーさん…。」


「そもそもなんでぶっ飛ばしちゃうのよ」


「フーセ貴方が死んだのを思いつめてセリスちゃんに俺を殺してくれって突っ込んで行ったのよ」


「えー何やってんのあいつ」


「そのあとここに来てずっと塞ぎ込んでたんだけどファルちゃんがここに来て賢知の核の力で貴方が助かると教えてくれたの」


「お姉ちゃんが?それで?お姉ちゃんは?」


「兵士の人達と捜索でこっちに来たみたい、見つからないようにこっちの状態を聞いてフーセに任せたって言って帰って言ったわ」


「何それ私がそんな状態だったのにお姉ちゃん冷たい!」


「ファルちゃん、様子がおかしかったわ、その事についてはフーセが戻ってから話しましょう。」



バン!ダダダ!戸を開けて階段を上がってくる音がする


「シル!おまたせ!めちゃくちゃ上手いの喰わせるからな!ゴールデンラビットの肉だぜ!ほんと最高なんだ!食ってくれ!」


不均一にスライスされたお肉をだされる。

ひとつまみして口に入れる


私は理解する

幸せを

私は感じ取る

至福を


そうかこれが溶ける、広がる、染み渡るということか


「美味しい、フーセこれとっても美味しい」


「だろ?これ食って魔力補給したからなんとかなったんだ」


「これを…三日三晩食べ続けた…」


「あ?嗚呼そうだな、3日3…」


「この!贅沢者ガァー!」


「あー窓が…もう私直さないからね、後は二人で直してね」


私は人の可能性を甘く見ていた、入射角度、力の入れるタイミング、そして振り抜く。それが揃った時インパクトは最大となると…私は私を褒めてあげよう。だぶん私以上にフーセを飛ばせる人間は存在しない。


遠くで水しぶきが上がる。


「うん。美味しー」


残念ながら今度は鳴き声は聞こえてこなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ