2-14 トルダワの恩恵
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーファル
フーセとシルが居なくなって3日
私はマーリンさん達とトルダワ湖を目指している。
村に帰るよりそちらの方が可能性が高いと思われるからだ。
とみんなには言っているがそちらにいると私は確信している。
まぁそうじゃなくてもフーセの行きそうな場所だからなぁー
「あの…ファル…ちゃん?」
マーリンが恐る恐る声をかけてくる
「試合ではその…」
「?あっあゝ、気にしてませんよ、お気に入りの服が1着無くなっただけですから」
「そっそうなの?良かったら今度西町にステキな服屋さんがあるの、ご一緒してくださらない?」
「えぇ喜んで」
私が元だが王族と知って気を使うマーリン。せっかくだから私の為に沢山仕事をしてもらおう
次の日の朝トルダワ湖に着く。まず本命であるガジュさんの小屋に向かう。
湖を見渡せる丘の上にあるログハウス。
ガチャ
中に入るが
「残念ながら外れのようね?」
兵士の人たちと部屋を見て回るがフーセ達は見当たらない
「そうですね、私もう少しここを調べてみます、そちらは念のため湖の方確かめてきて貰えますか?」
「わかったわ、じゃとりあえず湖を一周してくる、それから村の方へ向かいましょう。」
そういうとマーリンは兵士たちを連れて湖に降りていく。
「行ったわね……」
扉を閉めて声をかける
「フーセいるんでしょ?出てきて。」
そういうと、天井からソフィーが降りてくる。
「ファルちゃん…」
「ソフィー、フーセは?」
「上の隠し部屋にいるわ…その…フーセに会う前に話をしてもいい?」
「一体なにがあったの?」
「魔獣が王都を襲ってきた時わたし達は真っ先にそこに戦いに行ったわ、そこでなぜかフーセだけ敵の標的にされなかった、それで疑われたのね、フーセを狙った矢から身をもって、鳥に変身して居たシルちゃんが守ったわ、その結果事態は最悪。逃げたけれど追撃でシルちゃんは…そこでフーセも取り乱して…何かの力に目覚めたとしか言いようがない…その力で私の主導権はフーセにとられてしまって何もできなくなったわ。
そのあとセリスにあったけど取り乱したままのフーセはセリスを気絶させて…ここにいる。ここについて私も元の状態に戻ったんだけど、フーセはずっと黙ったままシルちゃんを…」
「なるほど…」
「あの…シルちゃんは…」
「とりあえずフーセに合わせて」
暖炉の中でソフィーが何かすると天井が降りてきて階段になる
「へーこんなのあったんだ」
「上は私の使ってた部屋だからね、私は飛んで入れるから出す必要無かったのよ…」
階段を上るとフーセがベットの横の椅子で座って何かを書いている、ベットには少し大きめな鳥が横たわる
「フーセ?」
びくっと反応するとそのまま震え出す
「ファ…ファルねえ…あの…その…シルが…シルが…」
「うん、大変だったね…ソフィーから聞いたわ」
「大変だった?それだけ…?大変だったさ、でもそんなの…シルは…シルは死んじまった…死んじまったんだ…」
「うーん、シルが死んだか…どれ?」
「この鳥がシルだ息もしてない、鼓動も聞こえない!ファル姉、怒ってくれよ!俺のせいなんだ…また俺のせいで…」
「落ち着け、テイ!」
頭にチョップする
「ねーちゃん?」
「確かに息もしてないし、鼓動もない。でもね、死んだ?そんなわけないの」
「いや…だって!現に!」
「私の賢知の核の力覚えてる?」
「ああ、本とか見たときに真実かどうかわかるって…」
「そう、っで私そこで思ったの…沢山本、いろんな人が書いてるわ…魔力がある人全然ない人、作者はいっぱいいる。全て賢知の核で調べる事が出来たわ…じゃあ私が書いたものは?紙とペンある?」
先程何か書いていた紙を差し出す
「すごーい、上手じゃない!」
少し恥ずかしそうにするフーセ
紙にはシルの似顔絵が書いてあった。
その絵の下に書く
「シル ファリーゼは生きているっと…はらっやっぱり!」
「ねーちゃん、俺にはわかんないよ。」
「そっか、はい手を出して」
フーセの手を自分のおへそのあたりに当てる
「ん?なんで…?」
「核に力を込めて文字を見て」
「あっ文字が光ってる」
「これが賢知の力、ちなみに…シルファリーゼは死んでいるって書くと?」
「あっそのままだ。」
「もうちょっと調べましょう、シルファリーゼを元に戻す方法はある」
「ねーちゃん!シルは…シルは元に戻れるんだ!死んでないんだ!」
フーセが泣き出す
「よしよし、泣くな、泣くな」
「でもねーちゃんなんでわかったの?」
「この力でフーセとシルが無事かどうか出発の前に調べてたから、ちなみにここにいることもね」
「そっか、さすがファル姉だ!」
「さてと、フーセの元気が出たところで、時間がないから本題よ」
「もうすぐ騎士たちが戻ってくる、このまま見つかれば連行されちゃうわ、シルが助からなくなるかもしれない。」
「うん」
「私はこのままフーセ達を探してるという事で、兵士達と村へ行ってその後たぶん王都に戻るわ、あっそういえば奪った馬はどうしたの?」
「森に入る前に放したよ、賢いやつだったから自分で戻ってると思う」
「オーケー。私は今これ以上の助けはできないからシルの事はフーセ…任せたからね。」
「わかった」
「とりあえずここでしばらく隠れてて、なんとかなったら誰かよこすわ」
「誰か?なんとかってどうするんだよ?」
「そうねーもうフーセ達の弁護をしようがないほどこじれちゃってるからな…王国乗っ取っちゃうとか?」
「いやいやねーちゃんいくらなんでもそれは…」
「そうかな?セリスに勇者になってもらって〜街の人気をとってーあっそうだルルが邪魔なんだ!ルルを誰かにさらってもらって…?いや殺してもらって〜」
「…ねーちゃん?」
「そう、そうよ殺してもらって!そいつをセリスに倒してもらって…そしたら英雄でしょ?」
「ちょっとねーちゃん…妄想がすぎるぜ?」
「妄想?出来るわよー」
「いや、だから出来るとか出来ないじゃなくて…」
「ルルを殺す!セリスが勇者になる!権力を持った上でフーセ達の罪を晴らす!ウン完璧だ!」
「……」
フーセが黙る
「まぁ後は私に任せなさい!なんとかしちゃうから!あっそろそろ戻ってくるわね、ソフィー階段私が降りたら隠して、後フーセあんまり勝手しないでよ!どんどん予定が狂ってるんだから!」
「あっああ、わかったよねーちゃん」
よしこれでまずは状況がわかった。また失敗したなー前回を反省して私達に攻撃しないようにしたのがこんな事になるとは…もっと上手くやらなきゃ!とりあえず今後の方針は決まったから作戦を練らなきゃね
隠し階段が上ると間もなくマーリンが戻ってくる
「ファルちゃん!王都に奪われたイルナの馬が戻ってきたらしいわ、残念ながら馬だけ見たいだけど」
「そうですか、こちらは特に手がかりになりそうなものはなかったわ」
「湖の方もなにもなかったわ」
「じゃあ村に向かいましょう」
外に出て扉を閉める。
早くセリスのとこに帰りたいんだけどなぁーしょうがない…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーフーセ
扉が閉まり、しばらくすると馬達が遠ざかっていく音がする。
「よかった、あいつイルナって言うのか、いい馬だった。あんな子を育てて見たいなぁ」
「コホン、さて…」
ソフィーが咳払いをする
「元気になったところで、まず何か言う事ない?」
「えっと?ごめんなさい?」
「ごめんなさい?」
「ありがとう?」
「ありがとう???私が聞きたいのはそんな事じゃないわよ?いい?そのとりあえず謝っとけとかお礼言っとけってのが1番私嫌い。うわべだけの言葉はいらないわ」
「そのーソフィーを動けなくしてごめんなさい。ファル姉のおかげで目が覚めました、もう大丈夫です。」
「まぁ良しとしてあげましょう。さてと色々あるけどまずなぜ私動けなかったの?やっぱりフーセがやってたの?」
「あっああ、あれはソフィーの核の主導権を俺が取ったんだ、核を俺の魔力で覆って俺の意思で使えるように。あの追われてもっと速度でねーのか!って時さソフィーが魔力込めてるって言っただろ?」
「そうね、目一杯こめてたわ」
「じゃぁ俺も魔力出したら早くなんじゃね?って思ってソフィーの核に触れた時、ソフィーの事が理の核の力でわかったんだ、理の核の事だいぶわかってきたよ」
「なんか、一気に来たわね…私の事がわかったって?」
「うん色々分かったよ、例えば、速度の核とソフィーの核は別物だとか」
「えっ!?」
「ソフィーの核を魔力で覆うとソフィーの力を俺も使える!、あと速度の核は、正確にはスピードを上げてるわけじゃなくて物の重さを変えている!とか!」
「えっまって速度の核と私の核?」
「うん、剣になった時見えてるやつ、あれソフィーの本体、速度の核はまた別物でソフィーの中にある。」
「まってまってまって?えっ?ちょっとよくわからない」
「わからないって言われても…俺にはそうとしか…」
「私の核ってどういうこと?」
「ソフィーの核はソフィーの本体?、心臓?脳?なんて言えばいいのかな…」
「よくわかんないけど分かったわ、じゃぁ速度の核は?」
「ソフィーのなかにあるよ?」
「えっ?それがわからない!」
「えっとあれだよソフィーが、核を飲み込んで変身してるみたいな感じ?そうシル!シルみたいな感じだよ!」
「いまいちピンとこないわね。でも、わかった問題が多いから次に行くわ。速度の核は重さを操るってのは?」
「重さを操るんだよ?」
「だよ?じゃない。説明して。」
「やってみたら良いじゃん。ソフィーがスピードを上げようとしてる時はヌォーーーって感じで魔力込めるじゃん。」
「…はい…ヌォーーね」
「んであれは軽くするって事で、ピピピピピ!って魔力込めると重くなるの!」
「ピピピピ…?」
「んーあーあれだよ、会話の核で話した時みたいな」
「あれがピピピピね?」
「それはそうとソフィー、さっきなんで止めたんだ?」
「止めた?」
「ファル姉と話をしてた時だよわざわざ会話の核まで使って」
「あれは…まぁ後で話すわ、そんな事よりシルちゃん。助ける方法見つけなきゃ」
「そうだね、シルを理の核で調べてみる。」
ベットに横わる鳥に触れる
「理の核のことわかったって言ってたけど、どうわかったの?」
「ことわりって言われても俺よくわかんなかったんだけど、用はなんでも説明書!みたいな事だったんだね。ソフィーの核に触れる事でソフィーの使い方?みたいなのがわかった。でも、考えてる事とか、過去の事とかはわからない、現に今シルを読み取ったけど…人間、女性、身長165 体重45.2 変化の核で変身中ってしか読み取れない。」
「なんでも説明書か…じゃ今度はシルちゃんじゃなくて変化の核を調べてみて、この状態で生きてるとなると変化の核の力ってことでしょう?」
「成る程!了解、やってみる」
シルの中にある変化の核を探す
「あった、変化の核?ん?2つ?あれ?……」
「わかった?」
「まずい!時間がない!!!えっと魔力…がもっと…」
「時間がない?魔力?落ち着いて」
「えっとシルを元に戻せるんだけど、もうすぐシルの魔力が無くなっちまう、そうなったら今度こそ死んじまう、シルの補助で魔力を送り込まなきゃ!ただ俺の魔力でじゃ足りなすぎる!俺の魔力を上げる方法!なんかない?とにかくすぐ俺の魔力だけでもおくる!」
「魔力補給ねコヤックの実をもってくるわ!」
「頼む!」
直ぐに下からソフィーがコヤックの実を持ってきてくれた、右手で魔力を送り込みながら左手でコヤックの実を受け取りかじる
「…だめだ!ぜんぜん足りない!ソフィーもっとだもっと食い物!コヤックの実じゃなくてもいいからとにかく食い物持ってきて…いや、ソフィー!ソフィーちょっと変わって、あれだ会話の核を使わないで変化の核に語りかける感じで魔力送って!」
「でも!私…出来るか…どうか…」
フクロウの姿のソフィーの頭に手を乗せる
「出来る、理の核ができるって言ってる、ソフィー人型になって、そっちの方がやりやすいと思う。」
そういうとソフィーが人型になる。
「かわるわ!」
「うん、でも服は着て!」
「あら?そう?」
部屋にあったエディルのマントを羽織り
「とりあえずここにはこれしかないから、フーセには刺激が強いかもしれないけど我慢して」
裸マント…変質者でしかないなと、思ったが、そんなツッコミをしている場合でもない。
「1時間…いや30分頑張ってくれ、やばそうならコヤックの実を食って構わない。」
「フーセはどうするの?」
「魔獣取ってくる、とにかく食って魔力回復しなきゃ、くそ、凹んでなんも食ってなかったとか、情けねぇ!」
ダッシュで森に入る。
「いいか?フーセ、この森にはな沢山の魔獣がおる」
ガジュのおっちゃんの言葉を思い出す
「まず、レッドウルフ、最初戦ったやつじゃな、実はあやつらそんな魔力は高くない。牙や爪に魔力を込めるぐらいだから牙と爪さえ気をつければそこらの狼や犬と変わりない」
レッドウルフを見かけるが素通りする
「湖の中には沢山魔獣というか魔魚がいるがまず湖の中に入らねば襲って来ない、基本的には魚だから朝と夕方は凶暴だから注意しろ」
「魚を取ってる暇はないな」
湖を通り過ぎる
「森を歩くときはジブラモンキーに気をつけろ、あいつらは賢い、罠を仕掛けて獲物を取る。見かけたらその辺りには間違いなく落とし穴やらツタを使った罠がある、引っかかったら囲まれるぞ」
猿を見かけ、方向を変えて迂回する
しばらくすると崖が目につく
「崖にはな秋になるとゴールドラビットが巣をつくる、ゴールドと言っても金色のウサギってわけじゃない、冬の間冬眠する為に魔力を溜め込んだウサギがめちゃくちや美味なんじゃ、食い過ぎると魔力酔いしてしまうほどじゃ、秋になったらまたこい!その時食わせてやる」
「おっちゃん!食いにきたぜ!」
険しい崖を登っていく
「いた!」
崖の中腹にある穴に顔を突っ込むとウサギと目が合う
「よし!…えっ!まて!?」
ウサギがこちらを見て口を開ける、
「あいつら捕まえるのはコツがいる、敵を見つけると貯めた魔力を相手にぶつけてくるんだ、魔力出されちまうと勿論魔力が無くなっちまうから味が落ちる。」
咆哮が放たれる
間一髪でかわし崖に片手でぶら下がる…
「つまりこうなると失敗か…取り方は聞いてなかったけど…」
用は見つかる前に仕留めたらいいんだろ?
さらに崖を登りなんとかもう一つ穴を見つける
「いるかどうか確認しないで…」
飛燕の剣先に魔力を込める
「一閃!」
血が飛び散る
「手応えありと」
穴の中を覗くとウサギがグッタリとしている。
「よし!」
ウサギをつかみ、崖を降りる。
「シル待ってろ!」
ログハウスに向かって走り出す。
木から枯れた葉がどんどん落ちてくる
それを横目に僕の足は速度を上げた。




