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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第2章 王都
24/83

2-12 別れの朝

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーソフィー


「ふぁ〜」


大きく伸びをして起き上がる。


別にフクロウの姿で何かに捕まったまま寝ても良いのだけれども、やはり人の姿で横になって布団を被った方が「寝た」という感じかして休まる気がするので私はこの姿になって寝ることが多い。


「うーん」


隣でシルちゃんも目覚める


「おはよう」


「ごめんね、起こしちゃった?」


「ううん、あいつよりは早く起きたかったから問題ない」


というと親指でくいくいとフーセを指差す。


「爆睡ね、いたずら描きでもしちゃう?」


ニヤッと笑いかけると


「やめといた方がいいよー、昔それやったらこいつやり返そうと、こっちの隙を狙ってくるんだもの、めんどくさいったらありゃしない」


「あら?そうなの?それでやり返されたの?」


「まさか!そんなヘマしないわよ、このバカじゃあるまいし。でもたぶんまだ根に持ってるわよ、こいつ、よく、こっちの様子をうかがってる時とかあるもの」


「あっ気づいていなかった訳ではないのね」


「そりゃそうよ、殺気がダダ漏れなのよ、剣士としてまだまだよね。」


「…そうね、色々とまだまだのようね」


そう言ってフクロウの姿に戻ると着ていた服の中から顔をだす。


「!?そっかそうやれば服脱ぐのチョー楽だ!」


そう言うと同じように服の中から私そっくりに化けたシルちゃんが顔を出す。


「あらあら、でも服はどうやって着るの?」


「あっそっか、着る方が面倒なのね…まぁいいわ」


そう言うと服を着た状態のシルちゃんに戻る。


「その辺なんだよ。とわしは思うぞ小娘」

にーさんが顔を起こして話す


「その辺ってどの辺よ」

ガサゴソと今着てる服と同じものを取り出すシルちゃん。


「なんじゃ服きとるのにわざわざ着替えるんかい?」


「それはそうよ、見た目は問題ないけどそれじゃ私、裸で歩き回るのと同じじゃない。」


「なんじゃろうな、がさつ?は違うか…色気がないというかの?」


「狼に色気見せてどうすんのよ」


「いや、わしじゃなくてな、世の中には見られてないけど見られてるというかの、サービスはいくらあっても良いというかの…、なんでもない忘れろ」


「ごめんなさいね、剣であって賢いほうのケンロウではないから、許してあげて」


「なんじゃ小鴉その言い草わ!」


「色ボケギンギン丸は良いから寝てたら良いと思うわ」


「またそのネタか…それは止めろとゆうて…」


「ハイハイハイ、そこまで、喧嘩しないで。うるさいのが起きちゃうじゃない、ちょっと朝の散歩でもしようと思うけど、ソフィー、一緒にどう?」


「いいわよ、行きましょう」


「ケンローも行く?」


「ええからそのうるさい奴を連れてとっとと行ってしまえ。」


そう言うとまた丸くなるにーさん


ホントろくな事を言わない。



初めはフクロウの姿で町に出るのはダメかと思っていたけれど行商人も多い王都ではうっかり声を出したりしなければあまり問題ないようだ。まぁそこらの猿やらオウムと一緒にされてる感は否めないが…それに習ってシルちゃんの肩に留まる。


「ところでさソフィー」


「なに?」


朝早いだけあって人通りもないから直接声を出す


「ケンローも人の姿になれるのよね、どんな姿なの?」


「うーん、人の姿のにーさんは一応私元になってる人間のお兄さんだから、似て…はいないと思ってはいるけど私より5歳上らしいわ。たぶんセリスちゃんとフーセの間ぐらいの姿かな?」


「人の時の記憶はないの?」


「ぜんぜん、全く、これっぽっちも無いわね。」


「思い出したいとか、人に戻りたいとか無いの?」


「結構ストレートに聞くのね。」


「いやだった?ごめんなさい」


「違うの昔に同じ質問されたんだけど、その時は随分回りくどく聞かれたからね、記憶がないからこの姿…というかこれが私なの。戻るって言ったって戻ったから何かあるの?という感じね。シルちゃんだって変身できるじゃない?元の変身できない体に戻りたいと思う?」


「…別に困ってないというかこっちの方が今は楽しいかな」


「そんな感じよ、そもそも人間だった時、フクロウだった時、剣だった時、私が幸せだったか不幸だったかもわからないんだもの、特に思い入れは無いのよ」


「そっか、そんなものか」


「そんなものよ」


「さーて今日はどうしようかなぁー」


「とりあえずフーセがカイ君に文句を言いに行くとは言ってたわ。」


「まぁそういうだろうとは思ってた、文句というよりもう一度戦えだろうね。しょうがない付き合ってやるか」


「勝手にしろとはならないのね?」


「見えないとこでなんかやらかされるよりまだ見えるところでやらかされた方が楽ってだけよ」


「やらかすのは決まってるのね」


「決まってるでしょ」


「そうね、ふふふ」



宿に戻ると宿の前には人が溢れていた


「まだかな?」


「是非内の服を着てもらわねば!」


「ちょっとうちに来てもらうんだからだめよ!」



「みんな、お姉ちゃんとセリスさん目的か…これは大変だ」


「教えてあげる?」


「優勝者の宿命でしょ。野暮はしないわ」


「それもそうね。」



部屋に戻るとちょうどファルちゃんとセリスちゃんが出かけるところだった。


「じゃ私達は王宮に行ってくるから、2人ともハメを外し過ぎないようにね」


「はーい王様によろしくね、お姉ちゃん私は元気に自由を満喫してますってね」


「シルちゃんソフィーさんフーセをよろしくな」


「フーセはまだ寝てるわ、今日は負けた子のとこ行って文句言ってやるっていってたからまぁ町をぶらぶらしてると思うわそちらは夜の晩餐まで有るんでしょ?

こっちも美味しいもの食べさせてもらうからね、セリスのツケで!」


「おう、ほどほどにしてくれよ、こちらも思ったより出費が多そうなんだ」


そう言うとなにも知らずに宿の正面入り口に向かって行く2人。がんばれ



「さてとフーセ起こして、了解ももらったから豪遊しましょう。」


ニヤッとして金貨の入った袋を取り出しシャカシャカ振るシルちゃん


「いつの間に!?どうしたのそれ」


「お姉ちゃんの賞金、預かってたの。流石に全部じゃ無いけど20万は入ってるわ」


「ファルちゃんに怒られるんじゃ無い?」


「いいえこれはセリスさんへのツケだからいいの。ソフィーも聞いたよね?」


「悪い子ね」


「賢いと言ってもらえる?それに流石に全部は使わないわよ。」


「あら、お昼と夜何食べようか困っちゃうわね」


「ホント、あちこちでちょこっとづつ食べるのがいいのか、それとも高級なとこでいいもの食べるのか…」


「ホント食うことしかないのか?お前ら」


フーセが起き上がる


「あらおはよう。なんだったらずっと寝てても良いわよ?」


「だれが!俺はカイへのリベンジと焼肉が入れば後はお前らに付き合う。」


「ほらあんたも食いもんじゃん」


「ぷっはははははは」


顔を見合わせて笑う


「すぐ準備する、とりあえず朝飯食いにいくんだろ?どこ行くか決めといてくれ」


「あいよ、入り口で待ってるから鍵任せた」


ホント王宮に行った2人よりもこっちの方が息が合ってる気がするんだけどな


それから美味しそうな匂いのするパン屋さんの隣のお店に入り朝食を済ませ、カイ君に会いに武器屋へと向かう。


ファイブアイズ武具店の扉を開くとカイ君が店の掃除をしていた。


「いらっしゃってフーセ君!ありがとう君のおかげだもう昨日のうちに在庫切れで予約注文まで貰って最高だよ!今までの中で1番の売れいきだ!しかし、まさか剛腕のグローブが1番売れるとは…」


「ありがとうじゃない!あんな試合させやがって!」


「?何を言ってるんだ、ちゃんとルールに則った試合だったろ?」


「そうだけどそうじゃねーだろ」


「そうだね、シルさんの前で恥をかかせてしまったものね」


「それもあるけどそうじゃねぇ」


「あっそうそうお礼をしようと思っていたんだよ、君のおかげで売れいきが…」


「それはさっき聞いた、お礼ってんならお前商売抜きにしてもう一回俺と戦えよ」


「商売抜き…そんな勿体無いこと…まぁ…でも…よし、わかった、どこでやる?」


「王都の事はよくわかんねぇ、人が居ないとこがいいな。」


「東城門前に行こう。午後から仕事があるから、やるなら直ぐだけどいいかい?」


「その方が俺も助かる」


「あそこに見えてる城門のとこで待っててくれ、直ぐ準備して追いかけるから」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんだフルプレートじゃ無いのか?」


「あれは昨日売れちゃってね、今あるのはウイングブーツとかの剣だけさ、流石に売り物使うわけにはいかないんでね」


「…その剣…」


「あっやっぱりわかるかい!?これはスマートジーコ社の新商品さ!商品の良さはやっぱり使ってみないとわからないからね!…あっ」


「商売…抜きはもう諦めるよ…まぁいいや、シル!合図を頼む」


「はいはい、じゃあ囲った枠内での試合。出たら負け。あとは自分で負けを認めること。あと私が危ないと思ったら止めるから。それでいい?」


「オーケー」


「わかった」


フーセが構えを取る


カイ君が目を見開き此方を見て


「はじめ!」


「まった!」


いきなりカイ君が止めを求める


「この期に及んでなんだよ!」


「あれ…なんだ?」


フーセの後ろ東を指差す


「土煙?」


「あれは…トレント…トレントだ!」


「魔獣!?なんで!?」


「こっちに向かってくるな、カイ!町のことはわかんねえ、とりあえず兵士さんに知らせてくれ」


「君たちも行こう!」


「足止めぐらいならできるかもしれない。」


「シルさん!」


「ああなったあいつを説得すんの時間がかかるからとりあえずカイ君は行って。あいつは私に任せておいて」


「…分かりました。城門の中ならまず安全です。急いでください。」


そう言うとカイ君は城門に向かって走り出す。


「はぁー」


そうため息をつくとシルちゃんが鳥に変身する


「どうせ止めてもいくんでしょ?」


「いく!」


「ソフィー?大丈夫だと思う?」


「うーん微妙?」


「ダメそうなら撤退。危なかったら私セリスさん達呼びにいくからね、わかった?」


「わかった」


そう言うと上空にシルちゃんが飛び上がる


「今度は勝ってみせる!おっちゃん!」


ギュと私を握りしめてフーセが走り出した。


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