2-11 妹の気苦労
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーシル
まぁこうなるのはわかっていた。
遅かれ早かれ2人は両想いだってことは…認めたくないけど…わかってはいた。
でも、これは腹立たしい。
2人が付き合います!ってのはわかる。
結婚します?
意味がわからない!順番飛ばしすぎじゃないのか?
飛ばしてないとしたら私やフーセに隠れて2人でコソコソしていた?
しかも私よりも先に大会の実況の人が知っているとか何事?
とにかく色々まとめて怒って叫んで…何を話したか自分でもよくわからない…
「ファル姉!おめでと…う?」
わかってて言ってるのか?このバカは?
キッと睨み付けるとフーセは静かにドアを閉めた。
状況判断はできるようだ。
「さてお姉!言いたいことはまだまだあるけれど、もうすぐセリスさんの試合もあるからまたにする。終わってないんだからね!ちゃんと反省して!わかった?」
「はい…」
お姉がしゅんとする
「説教はまたするけど…お姉、おめでとう。よかったね。」
暗かった顔がパーと明るくなったかと思ったらギュッっと抱きしめられた
「ありがとう!シル!」
「もう!良いから!すぐにその服なんとかしないとセリスさんの試合にまにあわなくなるよ!」
ため息を一つついてドアの向こうで待ってる人間に声をかける
「フーセ!もう良いから入ってきて」
「えっと…いいのか?」
恐る恐る顔を出すフーセ
「良いから早く入る」
「はい!」
「フーセ!大至急部屋に戻っておねーちゃんのバック丸ごと持ってきて。」
「丸ごと?」
「5分はフーセには無理か…10分以内でいいわよ」
「3分だ!」
と言った次の瞬間扉がバンと閉まる。
本当に「お前には無理」という魔法を覚えてから色々楽になったものだ、お子様よのう。
「ふふふっ」
「何よお姉ちゃん?」
「なんでもないわ、フーセも大変だなって思ったの」
「これぐらいしか役に立たないんだからいいのよ」
「ふふふっ、そうねー」
「なによお姉ちゃん」
「ごめんごめんちょっと楽しくて」
「なによそれ?」
「怒らないで、ちょっと試合の後でテンションおかしくなってるのかも、ごめんね」
「いいけどさ」
「フーセどれくらいで来ると思う?」
「何もなければ7分かな、本当に全力出したなら5分切ってほしいかな」
「切ってほしい?」
「早いに越したことはないんじゃない?」
「シル的には?」
「私よりも遅くて困るのはお姉ちゃんでしょ?」
「そーだよね?」
「なんなの?本当へんだよ?お姉ちゃん?」
「そう?そうかもね…あははは」
「ちょっとしっかりしてよ?」
その時バンと扉が開く
「タイム!」
「3分半。」
「よし!3分台!」
「だけど…それ私のバック」
「まてまて!お前のバック黄色のやつだろ?」
「それは持ち運び用。それは私の着替えバック、お姉ちゃんのバックはオレンジ。はい、やり直し行ってこい!3分半」
「クッソォーーー」
バンとまた扉が閉まる
「次は3分で来るわよ」
「そうなの?」
「たぶんね」
って言ったのに4分かかった。どのバックか迷ったとか…どう見てもオレンジのバックなのに何故に迷うことができるのかわからない
「オレンジ?これはピンクのじゃないのか?」とか言っている柄をみればわかるだろうに…
取り敢えずフーセのせいで遅れたがセリスさんの試合には間に合ったようだ
「えっ!?結婚するの?」
実況の言葉に目を丸くするフーセ。完全にお姉ちゃん試合を見ていなかったことが発覚した。
「えっ、まじで?聞いてないよ?」
「そんな事よりセリスさんちゃんと応援しろ!」
「はじめ!」
審判の声が響くと途端にセリスさんが攻撃を弾く
周りからどよめきが起きた
「防いだぞ!」
「今年は期待できるかもな!」
ふふふ!期待できる?違うなセリスさんが優勝するのだ!
と思った後、結婚の事を思い出し、お姉ちゃんを見る。
「期待できる?違うセリスは優勝なの!」
思ってることは一緒だったが入れ込み方が違った…
ちょっと怖い…
セリスさんが追い込まれている、
「優勝するの!セリスがんばって!」
待ってお姉ちゃん、ちょっとキャラが違う、目に力入りすぎ。その祈り方はなに!?
ふと反対に座るフーセに目をやると試合を見ながら何かブツブツ言っている。
ははーん、これはソフィーと念話してるわね、
ソフィーはガジュさんの持っていた会話の核を持っている、良く2人で会話の核で夜お話するのが日課になっている私はわかる、念話は慣れないと難しい。口に出さなくて良いのだがどうしても口が動いてしまう、
はじめは私も声に出してしまっていた。
ソフィーもしばらくガジュさんに預けていたから魔力量によって遠くに飛ばしたり1人に伝えたり大人数に念話を飛ばす制御をする核のコントロールがうまくいかず思い出してる最中だとか…今はおそらくフーセだけに送るつもりだろうけどフーセに触れる事で…
少しフーセに肩を当てる
「…れなら、ここは乱舞で足元を狙って距離をとりたいな」
やっぱりソフィーと念話中だったようだ。
「ちょっと私にも分かりやすく解説してくれない?」
「シル!?」
「あら?そっちまで届いちゃった?シルちゃん。まだ魔力多かったかのかしら距離が短いと調整が難しいのよね」
「うんん、大丈夫よソフィー、今はフーセにくっついて盗み聞きみたいな感じだから。」
「そうなの?ならよかった」
「良くねーよ」
声に出してフーセがいう
「こちとらセリス兄の戦い見て勉強中邪魔すんなよ」
「どっちが強いのかわたしにはよくわかんないの良いから…」
その時実況から
「今、私は聞こえてしまいました!会場にいる他の方にも聞こえたなら間違いありません、セリス選手の持つ剣が剣狼!伝説的英雄!勇者パルが振るった伝説の剣!剣狼!!!今年の武術祭、決勝にて盛り上がって来ました」
あーーー
「ねぇこれって不味いじゃないの?めっちゃもりあがってるけど…」
「大丈夫なんじゃねーか?反則したわけじゃないし」
お姉ちゃんを見るともう試合を見るどころか私たちの声も届いていなかった
「お願い勝って!頑張って!セリス」
声に出してる事は普通だけど祈りすぎ、お姉ちゃん
祈祷師みたいで妹の私もちょっとひくわ
「今のセリス兄が使った技、なんだかわかる?ソフィー?」
「止刀十刃ね、盾刃に曲剣による点の力で閃刃をかけるとこで威力と速度を増した十字の斬撃を飛ばす技ね、歯がまっすぐな剣と湾曲した剣と2つないとできない技なんだけど、兄さんの硬化の核で硬さを変えて形を変えれるから一刀であれをできるのは剣狼だけってわけね」
「あれ俺にもできるかな?」
「直刀と曲刀の二本の剣を使えば…その前に盾刃を覚えないとダメだけれどできない事はないわ」
「前から聞こうと思ってたんだけどさ…」
「なんだよシル?」
「あんたなんで剣2本持ってんの?」
「「カッコいいから?とかいったらカッコ悪いか…じゃぁなんて言えば…」」
念話で考えてることが丸聞こえになっていることに気づいていない…
「攻撃主体なんだよ俺は!」
ソフィーが顔を背けて肩を震わせる
「ならさ、なんであんたはセリスさんの真似ばかりするの?」
「にーちゃんのマネ?そりゃ王国剣術だから…」
「王国剣術って言ったって色々あるんじゃないの?それこそ二刀流とかさ」
「そうなの?ソフィー?」
「王国剣術には二刀流はないわね、基本王国剣術は剣と盾を持つ剣術だからね」
「ならさ、二刀流にしたら意味無いんじゃないの?王国剣術やるならさ。一刀流?にするか、二刀流の剣術習った方がいいんじゃないの?」
「だって知らねーもん王国剣術しか…」
「あんたねぇ、その辺なんだよ…」
「どの辺だよ」
「自分で調べる気とかないの?あっそっか気づいてなかっただけか?」
「わ…わかってたよ、俺だってそれく…にいちゃん?
ソフィー!にいちゃんの動きが変わった」
闘技場に目をやると…
セリスさんが押し返している、
「さすがセリスさん!」
「にいちゃんあんな動きもできたのか?すごいな、隠してたのか!」
「いえ、あの動きはまるでパルそのもの…にーさん何かしたわね…いけない相手を殺してしまう!」
とどめかと思われた時セリスさんの動きが止まる。
「あー、にーちゃんリバースしてる…無理しすぎたか?」
「セリス、セリス、セリス、セリス」
おねーちゃんの方も限界が近そうだ
「止刀光刃!!!」
光の槍が相手を吹き飛ばす。
「決まりだ!シル!ファル姉!いくぞ!」
セリスさんの優勝により大騒ぎになる。
なんだかもうお祭り騒ぎで…みんな笑顔だった…
しかしファーストキスがまだで結婚とかどうなんだろうか?いずれコソコソやってたわけでなく2人が抜けているだけという事はわかった。大丈夫なの?結婚して…
ホテルに戻ると優勝した2人をスイートルームへ招待したいというオーナーさん。
私とフーセにもセミスイートを用意してくれたが…
「ちょっとなんでこいつと相部屋なのよ!」
フーセと相部屋にされた…しかも疲れてとっとと寝てしまうフーセ
自由人め
「私もいるから3人部屋よ」
ソフィーさんがフクロウにもどり声をかけてくる。
するとノックもなしでガチャっと扉が開く
やばっと思ったら
狼が一匹入り込んできた
「わしもいるから4人部屋じゃ、もうわしの存在忘れられとる」
「にーさんも流石に邪魔はできなかったわね」
「邪魔もなにもあいつら見とると、どっと疲れてくるわい」
「剣狼様お疲れ様」
ケンローの労をねぎらって部屋の隅にタオルケットを敷く
「わしもベットがいいのぉ」
「私のとこはダメよ、どうしてもというならそちらにどうぞ、潰されてもいいならね。」
すでに布団を蹴っ飛ばして寝ているフーセを指差す
トボトボと部屋の隅に敷いたタオルケットの上に行き
「寝る」
そういうと背を向けて丸くなる、諦めたようだ。
「私はシルちゃんと寝ようかしら」
そういうとソフィーは人の形となる
ソフィーはというか、ケンローも実は人型にもなれる。剣の力、獣の力、人の力を混ぜて作られたキメラ(?)とのことらしい。ただ歩き回るより飛んでる方が楽だからというか歩くのが嫌いなソフィーはあまり人型にはならない、因みにケンローは人の姿が嫌いだからまずなることはないとソフィーから聞かされている。
「シルちゃん服借りるわねー」
「あっこういう事も有るかと思って用意してあるよ」
大会前の特訓の時に、この事はソフィーに教えてもらった。今のところ2人だけの秘密。
まぁケンローも知ってるんだろうけど…
しかしまぁ見た目が10歳ぐらいの女の子。気分だけなら妹が出来た感じなんだけど…
「これ可愛すぎない?」
「えー似合ってると思ったのにー」
2人でベットに入り込むと
「ところでさ、セリスさんの試合で動きが変わったとか、ケンローがなんかしたとか言ってたけどなにかあったの?」
「そうだった!忘れてた、にーさん起きてる?」
「なんじゃ?セリスの動きの事か?」
「聞こえてるなら教えてよ」
「あれは記憶の核の力じゃ、わしを振るったパルの記憶を呼び出してパルになりきっとったようじゃの」
「そんな事が出来たの?記憶の核で…」
ソフィーが起き上がる
「どうやら飲み込んだ事で出来る事が増えているようじゃな、わしも驚いた。あとで理の核の力でフーセに調べさせようと思っとる、もういいか?わしもう眠い」
そういうとケンローが黙ってしまう。
「そっか、今までの使い手は剣にはめ込んで魔力を流し込んで使ってたんだものね、服用することで使い方に制限があまりなくなったのかも…」
「って事は私も何かもっとすごい事ができるかもって事?」
ソフィーがまた横になるま
「そうかもね、まぁにーさんの言う通りフーセに調べてもらいましょう」
「こいつに調べ物ね…」
イビキをかいて大の字になって寝るフーセを横目に…
「無理じゃないかなぁ〜」
「そう言うと張り切っちゃうわよフーセ」
「まぁじゃぁ張り切ってもらうしかないかなぁー」
「ふふふ、オヤスミ」
ソフィーが目を閉じる
「オヤスミ」
私も諦めて目を閉じた。




