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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第2章 王都
22/83

2-10 武術祭 フーセサイド

突然ですがフーセサイドに変わります。武術大会からのフーセに何があったか、楽しんでもらえたら嬉しいです。2-4武術祭からの分岐として読んで下さい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーフーセ


「少年の部、準決勝!西口、ただ今3大会連覇中!カイ選手!東口タアキ村より初参戦フーセ選手!おっおっと!カイ選手!今年は準決勝からあれをやるのか!?フル装備で現れた!!!」


「え゛っ!?あれはありなの?審判さん?」


「…残念ながら、大会規約にあるのは少年部は武器が木製のものに限るという事だけなんだよね…毎年議論になってるんだけどここぞって時だけ、しかも盛り上がってしまうから…頑張ってくれ」


現れたカイは兜、鎧、小手、レッグガード、盾…持てる防具を全て身につけてきた。


「やあ!フーセ君!予選から君には目をつけていたんだ!出来れば決勝が良かったんだけど、準決勝でもしょうがない。君の実力ならば沢山儲か…盛り上がるに違いないからね!」


「いやいやいや、木刀でどうやってこれを突破しろと!?」


「そうだよねーそう言われると思って、審判団に特例を頼んで置いた!要は木刀にしてるのは大怪我が無いようにだこの装備をつける代わりに君には歯を潰した鉄製の剣を持たせる了解を貰っている、本当は歯があっても良いんだけどそこは了解をもらえなかったよ…あっ僕は木刀で戦うから安心してくれ」


「そこまでするならそれ脱げよ」


「!?武器防具屋の僕に防具を脱げと!?それは無理だよ人前でこれを脱ぐと言うことはうちの商品はダメなものというふうに見えてしまうじゃないか!大丈夫さ鉄製なら君も色々技が出せるんじゃないか?」


「えっ?あっ?そういうもの???」


「さぁこれを使ってくれ、そして全力で打ち込んでくれ、遠慮しなくて良い!僕の装備している防具はそれを全て防いで見せるよ」


なんだかよくわからないうちに歯を潰された鉄刀を持たされた


「はじめ!」


「それじゃ遠慮なく全力で行くぞ!閃刃乱舞!!」


「素晴らしい!!思った通り君は間違いなく強い男だ」


完全に棒立ちのままこちらの閃刃を一度に受ける

が…


「対戦相手の彼には今、歯こそ潰しておりますがシーバード山より取れるシーバード鉱石100%で作られたライトソードを使っていただいています。」


棒立ちのまま大きな通る声でカイが話し始める


「そして彼が使うのは見ての通り王国剣術である閃刃!かなりの使い手です!これは大人の部でも上位まで食いこめたのではないでしょうか?」


「なっなに実況してんだよ!戦えよ!」


チラッとこちらを見るとニヤッと笑い背を向ける


「さぁ今私が来ているのはスマートジーコ製のフルプレート!ご覧の通り彼の放つ無数の閃刃をものともしない強固さ!さらに衝撃吸収も備わっており体にくる打撃振動を吸収!戦場に居ながら野原を散歩する気分を味わえます!」


「くそ!そっちが動かないなら!!!一閃砲弾!!」


遅いが威力のある一閃を放つ


「更にこちらはホリック海の底から取れる希少鉱石ホリック鉱で作られておりなんといっても軽い!」


すんでのところでサッと交わされる


「先代モデルのなんと重量が3分の1!おや?そろそろ相手選手もやる気をなくしてしまうかもしれない!フルプレートはぬいであげましょう。」


「ぐぁーー頭きた!そんな時間やるかよ!一閃乱舞!」


「はい!そうですね!フルプレートといえば脱いだり着たりがもう大変、しかしそこをなんと解消させたのが今回の大きなところ、本体の重さが軽くなった分、留め金も軽量化に成功したためこのように…」


一閃を避けながら鎧を脱いで行くさらに脱いだものを保護者席に居るおっちゃんに向けて放り投げる、


「相手の攻撃を避けつつでも脱げてしまう簡単さ!12万8000ジダのところ今はお祭り10万ジダだ!更に更に今この場で決めていただけるならば、ディスプレイする手間が省けるので更にお安く9万ジダでご提供、ご注文は保護者席にいる親方にお願いします!」


言い終わると同時にフルプレートを全て脱ぎ木刀と盾を持ちこちらを見る


「これでやっとまともに戦ってくれるんだな」


ニヤッとまた笑うと


「続いての商品はフルプレートは性に合わないという貴方発見!スマートジーコ製ライトシールドだ!こちらも、もちろんホリック鉱を使い耐久性軽さは先ほどのフルプレートと同じ!更に!」


「イテ!」


木製の短剣を投げられた


「はい、油断しない!このようにシールドの裏には短剣10本を収納可能!本日は大会規定により木刀ですが短剣の代わりに薬草などを入れておくことも可能です」


「ぐぁーーー!!!!アッタマきた!!」


一気に間合いを詰めて乱戦に持ち込みにいく


「おっと!もうかい?せっかちだね?でもまだ説明が終わってないんだ!ご一緒に紹介するのはこのウィングブーツ!」


捕まえたと思った瞬間カイが一瞬にして先ほど自分がいたリング中央まで移動している


「くそっ!」


更に追いかける


「この通り風の術式を込めながら編み込まれたブーツは風の加護を受けて超速のスピードを実現!これを履けば走るのが苦手な君!今日から君がスピードスターだ!」


「くそっ追いつけねえ、ならば一刀閃刃だぁ!」


横一文字の閃刃を放つ


「もちろん、早いだけではなく跳躍力もこの通り」


ひらっと交わされたかと思うと頭の上に乗られる


「体の重さが軽くなるので殿方に抱えられたい姫君たちにもオススメですよ!」


慌てて剣で払う


すると横にすたっと降りたかと思うと今度は逆に持ち上げられる


「最後の商品はこの剛腕のグローブ、土の加護を受けたこちらのグローブは僕の華奢な腕でもこの通り、片手で彼ぐらいの重さならラクラク」


「くそっ下ろせ!」


「おっとと、暴れるなよ、すぐ下ろすさ、ほい」


「この野郎!」


剣を握り込みカイに斬りかかろうとするとドラが鳴る


「そこまで!フーセ選手場外!カイ選手決勝進出です」


「今日紹介した商品は東門のすぐそばファイブアイズ武具店にお越しください!今日この後私が使っていた武具もオークションにかけますよーきてねーー!」


呆気にとられて居るとポンと肩を叩かれる


「しょうがないよ、うん。しょうがない」


「シ…シル…」


ぎゅっと手を握られダガーになったソフィーを渡される


「あれはどうしようも無かったわ、私を待っていたとしてもね…」


会話の核の力で声をかけられる


…泣きたかった


何よりシルに慰められたら異常に泣きたくなった


「おっ、俺…反省してくる!」


ソフィーを握りしめたまま、早くシルの前からいなくなりたい一心で走った


カッコ悪い…情けない…何もできずに…おちょくられ…しかも商売道具にされた…


走った


とにかく走った


街を囲む壁にさえぎられて


「クッソオォーー!!!!」


全力で壁を殴った


痛くてまた泣けてきた


ソフィーがフクロウの姿に戻り


「私は木の上で街を見てるから、落ち着いたら声をかけて」


そういうと、静かに飛んでいった


気を使われるとまた恥ずかしくなって泣けてきた






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ソフィー!」


「落ち着いた?」


「イヤ腹が立ってきたらお腹すいた!なんか食いにいく!そもそもあいつはなんなんだ!戦う気さえ無かっただろ?あいつをギャフンと言わせてやりたい!あいつの装備12万8,000?子供の金で買えるか!盾が45000?2万だってたかいわ!ウインドブーツ?剛腕のグローブ?術使ってるのと同じだろうが!」


「ウンウン」


「ソフィー使っても勝てなかった?ソフィー…それは無いよソフィーの力の方があんな装備よりずっと凄いと俺は思うね」


「そうね!そうね!」


「金持ちのボンボンめ!」


「守銭奴め!」


「にいちゃんとねーちゃんの応援に行こう!あいつとは改めてリベンジ戦だ!」


「ソノイキダ!」


「ふー」


「ありがとうソフィー、慰めはもういいよ、俺何がダメだった?全部悪くて何もできなくて反省しようと思ったけどどうにもわからないんだ、」


「あらあら思っていたより成長したのねフーセ?えらいえらい。」


羽で頭を撫でられる


「それはもういいよ」


とっさに払うとサッと避けられまた頭に乗られる


「そうねー何がいけなかったって完全に相手のリズムに飲まれた時点でまぁ負けだったのかな?」


「っていってもさー」


「まずはその剣を受け取った時点で相手の土俵ね」


「っていっても木刀でどうやってフルプレートを突破するんだよ?」


「はい負けた」


パシッと頭を叩かれる


「フルプレートには木刀では勝てないそう思わされた」


「?無理っしょ?」


「ほら考えるのをやめてる、あなたが考えないといけないのは勝てるかどうかじゃなくてどうやって相手に勝つかよ、そこを間違えない。まぁ剣を受け取ったことはしょうがないとしましょう。その次、攻撃が単調。イライラしたのはわかるけど完全に舐められた貴方はおおかたボコボコにしてやる!とか思ったんでしょ?」


「…思った」


「もう完全に相手の思うツボやりそうなことは王国剣術を使った時点で想像はつく、さらにあおって攻撃を散漫にさせる。はい負けた。」


「じゃあどうしたらよかったんだよ?」


「ほらまた考えるのやめた」


「考えなさい。貴方にはフルプレートも盾も無かった無ければ負けるの?方法はある、確率とか言いだしたらきりが無いけど、可能性も信じないで諦めるなら初めから戦ったらだめだわ。」


「うん…」


「はい、お姉さんからの助言はお終い。リベンジする前に良く反省しなさい。そんな反省よりももっと大事なことあるでしょ?」


「もっと大事なこと?」


「シルちゃんにカッコ悪いとこ見せて逃げ出して放ったらかして…どうするのかなぁーって思ったのよ」


「…だっ大丈夫セリス兄やファル姉のとこに行ってるさ」


「そういうことじゃ無いんだけれど…まぁいいわ、戻りましょ。」


そういうとソフィーはダガーの姿に戻った


しかしそうだなぁ凹んでると思われてるよなぁーカッコ悪いなぁーとりあえず何も無かった風に戻るしか無いかなぁー


色々パターンを考えてコロシアムに戻る、


「イヤー凄かったね術士の決勝」


「ファルちゃん可愛いかったなぁー」


コロシアムから人が大勢出てくる


「やばいなファル姉の試合終わっちゃったみたいだ」


行き交う人たちの話に聞き耳を立てたところどうやら勝ったみたいだ。さらっとおめでとうと言いに行こう


見てたって事にしようかな…


控え室の戸を開ける


「ファル姉!おめでと…う?」


控え室に入ると小麦袋を被ったファル姉がシルにお説教されていた。


「フーセ!助けて〜」


とりあえず。これは試合を見てた事にするのは無理だ。


これはもう俺の敗北なんてどうでもいい事になってるのは間違いないな…


よかったような…それはそれで悲しいような…


とりあえずあの怒り方のシルには近づいてはいけない事だけはわかる。


僕は考えるのをやめて扉を静かに閉じた。





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