2-9 これから…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーセリス
「おそらく操りの核の力だな」
城に戻り会議室で席に着くと
開口一番に剣狼様がそう言った
「操りの核ですか…それは人を操るということですか?」
「いや、操りの核は強力な核じゃ使い方を間違うと核自体に使用者が操られる恐れもある。」
「まってくれ、核とはなんだ、お前達はなにを言っている」
マーダンが声を荒げる
現在会議室には国王陛下、第1部隊、第2第3部隊、隊長副隊長。俺とファル、剣狼様、そしてなぜか姫までいた。
「コホン、勝手な発言はお控えください。まずは疑問点から整理しましょう。」
イルナさんが仕切り始める。
この人、副隊長だったのか……まじで?
「まず、1つ目今回の襲撃の相手が何処なのか、その目的。2.戦闘時的魔獣を操っていたと思われる逃亡した人物。3.セリスはその人物と面識があるということ。4.今話にでた核とはなんのことか。他に何か有りますか?」
「有りませんね?解決が早い所からいきます。2.3の疑問はまとまりそうですので、セリスさん逃亡した人物の説明をしてください。」
「今回武術祭には私、ファル、ファルの妹のシル、そして弟みたいな幼馴染のフーセ4人で来ていました。今回武術祭の少年の部で準決勝まで残っています。」
姫さまがポンと手を叩く
「もしかしてあの子?完全に武器屋の息子に宣伝に使われた?」
「何か有ったのは聞いていますが私もファルも試合があったので見れていないのです。でもおそらくそれですね。」
「あの子はちょっとかわいそうだったわね」
姫さまに可哀想と言われる試合…なにが有ったんだ…フーセ
「続けます。フーセは自分と共に剣狼様に指導を受け切磋琢磨しておりました、その力試しの一環として大会に参加しました。しかし東の森で追い込まれて来たのは間違いなくフーセでした。完全に錯乱してるとしか言えない状態で私を気絶させ馬を奪い逃走しました」
「ちょっと!私のシルバー取られちゃったの!?どうしてくれるのよ!」
イルナさんが声を上げる
「コホン」
「失礼しました。」
マーダンの咳ばらいに
イルナさんが小さくなる
「すみませんイルナさん、その件は後で謝らせてもらいます。話を戻します。フーセは朝まではいつも通りだったのです、王都を襲撃するなんて力も時間もあるはずが無いのです。」
「ではなぜあの少年は戦場に居たのだ」
「それは何にでも首を突っ込む奴だとしか…」
1番隊の人が口を開く
「その少年が魔獣を操って居たと報告にあるがそれについてどうなんだ?」
「そこに居た魔獣がそのものを守ったのは間違いない事実です、この目で確認しました。他にも攻撃の標的にならなかったという報告もございます。」
「成る程、そのように見えた、というわけでなく間違いなく守ったのだな」
「間違いなく。」
「そんな…事って…」
ファルが顔をおさえる
「フーセに魔獣を操作する事ができるとは考えられません」
「じゃからそこで操りの核じゃよ」
「セリスと逃亡した少年の関係はわかった、それで核とは?」
さてどこまで話したものか…
「儂が説明しよう、七星剣の力の源それが核じゃ、それぞれ別の力を持っておる。硬化、理、賢知、記憶、変化、会話、速度の7つじゃな、儂のが硬化の核じゃな。これに対する核も存在する、操りの核じゃ。ディヴァイスターを分かち魔剣アシュラを作った時それに対抗するものとして操りの核だけが分かられた。
つまり、ディヴァイスターは儂、剣狼と小鴉丸、そして操りの核を持つ飛燕に分けられた。という事じゃ。」
「そうだ!フーセが持っていた剣を飛燕と言ってましたよね?いつも持ってた分厚い剣の代わりに…なぜあの剣を…」
「そうじゃ、じゃからなフーセにおける可能性として
1.フーセ自身が操りの核に乗っ取られて異常行動している
2.小鴉の奴が操りの核を持っていてフーセを操っている
3.第三者がフーセ達を操っている
が可能性として上がる。しかし小鴉の奴がずっと剣から戻らなかった事から恐らく2が有力かの?」
「ソフィーさんが?なんで?」
「まてまてまてまてなぜここで人物が2人も増える?小鴉、とソフィー?とは誰だ」
あっやってしまった…
「まだ何か隠しているな、お前達の信用に関わる問題だちゃんと話せ。」
ファルが口をは開く
「小鴉丸、というのはソフィーさんの事、彼女は剣狼様と同じく二刀アシュラの一刀小烏丸であり、七星剣
夜刀小鴉。そして剣狼様と同じく変身されますフクロウのソフィー。今はフーセが所持しています。」
「フーセとやらは飛燕と小鴉、二刀の剣を持っているのか?」
「元々持っていた分厚い剣のと小鴉の二刀流で戦う事も練習はしていましたね」
「では二刀流にしていたのはこの時を想定していたとは考えられるか?」
「それは…」
ファルと声が揃う
「ないですね」×2
「そんな頭良くないです。」
「かっこいいから、と本人が言っていました」
「その時からソフィーとやらに操られていた可能性、兆候は…」
「…フーセが操られていたわけではないのですが彼女と有ったのはトルダワ湖、そこで私達はトレントに襲われています。ガジュさんがあの森にはトレントにはいないと…」
「おお!ガジュか!今年はまだきておらんなぁ、元気でしておるか」
「…ガジュさんはそのトレントとの戦いでフーセを守って命を落とされました。」
「そうか……そうか…」
王様が顔を伏せる
「トレントと戦っていた時ソフィーさんはおりませんでした、戦い終わってから現れた…」
「いよいよ小鴉が怪しいの」
王が口を開く
「まずは分かった、とりあえず今後の方針だ、セリスとファルはシルを探して話を聞くのがいいだろう。イルナ、力を貸してやってしれ。」
「ハイ」
「続いて王都襲撃の理由は未だ不明、王都の守りを警戒態勢にマーダン頼む」
「ハイ」
「マーリン、各拠点、に警戒を流しつつ、フーセ君の捜索、ただし見つけても刺激するな。見つけた場合、監視するよう徹底しろ」
「ハイ」
「国王、ありがとうございます。」
「しかし、状況がはっきりした場合、裁く必要が出るかもしれん、それは忘れるな。」
「ハイ」
「セリスとファルには騎士団に入ってもらうつもりでいたが今君らの連れに容疑がかかっている以上そのまま入隊というわけにはいかないからな、この件がはっきりするまでは保留にさせてもらう、窓口はイルナに任せるから困ったことが有れば彼女に相談してくれ。
あとずっと宿にいるわけにもいくまい、2人に部屋をあてがってやろう。そのかわりこの件が片付くまで勝手に王都を出ることはならない。良いかな?」
「重ねてありがとうございます。」
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ホテルに戻ってみたがシルちゃんが戻ってきてはおらず…フーセとシルちゃんのバックが朝のまま放置されていた。
宿の主人に言伝を頼み
王から借り受けた部屋に移動する
「2人同じ部屋にしてあげたかったのだけれども、隣同士の部屋という事で許してね。」
「いえ、そんな、ありがとうございます」
「あと壁はそんなに厚くない、他の部屋には独身兵士が多い、配慮を忘れぬように。」
「あっえっとハイ…」
「私はある意味貴方達付きになったわ、何かあれば203号室にいるから出かける時は声を掛けて、いなければ管理人に言伝をしておくように。」
「すいません…ご迷惑を…」
「いいのいいの!事務仕事でうんざりしてたから他の者に押し付けることが出来るようになってむしろラッキーよ。ところで明日はどうするの?」
「武器屋のカイ君に会いに行こうと思います、当日フーセ達が会いに行く予定だったので…」
「わかった、私も同行するから行くときは声をかけてね」
部屋に戻るとファルが顔を伏せている
「剣狼様の力で居場所を調べたりは出来ないのですか?」
「魔力探知はある程度できるじゃろうが特定は難しいの。」
「明日はまずカイ君に会いに行って話を聞いてみよう、後はフーセとシルちゃんの捜索だな。」
「何でこんな…」
「大丈夫、大丈夫さ!俺が何とかする、して見せるさ…」
ファルを、抱きしめて窓の外を見る
まだ雨は降り続いていた。
翌朝天気は回復を見せる
イルナさんに声をかけて、
武器屋に向かう、途中宿によって話を聞くが、やはりシルちゃんは戻ってきてはいなかった。
「いらっしゃいませ!あっセリスさん!大会優勝おめでとうございます」
「ありがとうカイくん、カイ君も優勝だろ?おめでとう。」
「いえいえ、そういえばフーセ君とシルさん大丈夫でした?」
「!?何か知ってるのか?」
「えっ何かあったのですか?」
「昨日から行方が分からないんだ、昨日ここに来ると言っていたから何か知らないかと思ってな」
「そうなのですか、昨日お昼前にシルさんとフーセ君が来ました、それで試合のことで文句を言われてしまいましてね、再戦を頼まれまして、まぁ店の宣伝にフーセ君を使ってしまったというのもあったので町の外で対決することになりました…」
「やっぱりか…」
「そこででは始めるかとなった時に魔獣の群れを見つけまして、フーセ君とシルさんが町のこと分からないから知らせに行ってくれと、抑えるだけ抑えて見ると残られました、他の人も気づいて割とたくさんの人が直ぐに魔獣討伐に向かったので上手くやり過ごしたとばかり思っていたのですが…」
「そうか…わかった…ありがとう。」
「フーセが見つかったらこの店に顔を出すように伝えてください、彼の戦闘スタイルなら左の小手が有ると戦いやすくなると思うのでそれを試合のお詫びに用意して有るからと」
「必ず伝えるよ」
店を後にする
「突発的に巻き込まれたのは予想通りだったか…後はシルちゃんの行方か…」
「フーセを追っているっていうのが自然かな…」
「やはりフーセを探さないとどうしようもないかな?村かトルダワ湖ってのが有力だけど、操られてるとなると分からないな…」
「いずれ村には一度戻って話はしておかないとみんな心配するわ!」
「よし、まず村に戻って話をしつつ、トルダワ湖に行って見るか!」
「すまない、2人とも、言わずに済めば良しと思っていたのだが…2人は王都襲撃者と考えられている容疑者の知り合いだ、はいどうぞと王都を2人とも出すことはできないんだ。私は2人の世話も頼まれているが監視という役割もある」
「そう…ですよね…2人ともという事は片方だけならと言うことは可能ですか?」
「そうだなどちらか残るのであれば構わないよ、王都を出る方にも、もちろん誰か付ける事にはなるがな」
「じゃぁ俺が…」
「セリス、貴方村に帰って、私とシルのお父様とフーセのお父様に心配させないように上手く説明できるの?」
「そっそれは…ちょっと自信ない…かなぁ〜…」
「私に任せてくれないかな?」
「…フーセの様子もおかしかった…ファル1人に行かせるのは心配だよ」
「あら?私1人じゃないわ、誰か騎士の人つけてもらえるんですよね?」
「ええ、人選はこれから相談する事になるわね」
「なら、マーリンさんにお願いできないか聞いていただけませんか?マーリンさんはフーセの捜索の任務についています、村もトルダワ湖も私たちが考える限り可能性は高いところ、きっといっしょに行っていただけると思うのですが…」
「そうだな、聞いてみよう、多分1人どころか何人かついて行ってくれるだろう」
「ありがとうございます。」
ファルがイルナさんに頭を下げる、そうしてこっちをみると
「私が行く、セリスは王都でお留守番。決まりね」
「あぁ、わかったよ、今回はファルにまかせた。」
「では、3番隊に話を通しにいく、ファル、良かったら共にに来てくれないかその方が話が早そうだ」
「はい、もちろん。あっセリス!騎士団の馬車で行くと村の人たちに心配を増やしちゃうと思うから私たちの馬車の準備をお願いしても良い?」
「了解だ。」
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荷車を片付けている間にはファルが戻って来た。
「明日の朝、出発するわ」
「どちらかと言えば見送られる方だと思ったんだけどな、逆になっちまった」
「うーん、そう言われればそうかもね、でもまぁ戦地におもむくと言うよりは凱旋という感じで行こうかと思ってるわ、みんないい成績を残せたから騎士見習いにしてもらう事になりました、早速下働きから始めているのでご心配無く、ってとこかな。余計なこと言って心配かけたくないもの。」
「まぁ嘘はついてないし、問題ないかな、でもフーセが村に居たらどうするんだ?」
「マーリンには極力穏便に済ませてもらうようには頼むつもりだけど…フーセの状態次第かな…」
「それも、そうだな…」
顔を上げてファル腕組みをする
「そう言えば、フーセにやられちゃったままなんでしょ?兄の威厳取り戻すために少し鍛えておいた方がいいんじゃない?」
「あぁ、それは考えていた、正直に言うとファル、フーセを今説得できるとしたらファルかシルちゃんしかないんじゃないかと思う。もし声が届きそうにないなら争わないでほしい。おそらくマーリンさんでも、マーダンでも、戦いになればかなわないと思う。」
「…セリス…」
「めちゃくちゃカッコ悪いんだけどさ、今、弟分に勝てる気がしなくなってんだよ俺。間違いなくこの間あってやられた時は同様もしたし油断もしてた…でもな…それ、差し引いても…俺は今あいつを止めれない、勝てる気がし…」
ファルに指で口を塞がれる
「それでも兄貴なんでしょ?フーセはきっと強いセリスに期待してる。頼りになる兄貴に期待してる。私もね強い貴方に期待してる。」
「うん…」
「フーセは貴方に憧れて強くなった、でも今強くなってフーセは困っているはずよ。目印を失って迷子になってる。兄貴の貴方が道を示して上げなきゃ。貴方が前を歩かなきゃ!ちょっと興奮して前に飛び出したあの子を止めれるのはやっぱり貴方だと思う。落ち込むには早いわよセリスまだできることはいっぱいあるんじゃない?」
「できる事?」
「うん、できる事。いっぱいある。だからやってみよ?弱いなら強くなれば良い、時間がないなら作ればいい、前に進む道はいっぱいある。近道を探して足を止めるくらいならとりあえず進みながら考えたっていいんじゃない?」
「そうかもな…」
「カッコつけたい未来の旦那様、貴方の未来の妻は数日実家に帰らせてもらいます。その間に思う存分カッコ悪くあがいてみて!できなかった時は私がなんとかしちゃうからね!」
「そこは旦那をたててくれないのかよ?」
「あげません。カッコいいところ見せてね」
「あぁ、まかせろ!」
「あっ、でも浮気はダメだからね、とくにルル!には気をつけて!」
「姫さま?そうそう会えるもんでもないだろ?」
「いい?一人でお城には行かない、寄らない、近づかない!わかった?」
「いやいや子供じゃないんだから」
「行かない?」
ジトっとした目でファルが見上げてくる
「…寄らない、近づかない」
ニコッとわらうと
「はいよろしい、じゃぁ部屋に戻ろっか」
「ファル…」
納屋から出ようとしていたファルが振り返る
「カッコ悪いとこ見せて悪かった」
「そーね、でもちょっと弱音吐いてくれて嬉しかったよ、セリスもこんな顔するんだなって」
「そんな変な顔してたか?」
「変じゃないよ、男の子の顔。なんて言うのかな…クヤシーーー!って顔」
ファルが眉間にしわを寄せて歯を食いしばる
「そんな顔してた?」
「してた。母性本能なのかな?ちょっとキュンとしたよ」
「え?こんな顔に?」
眉間にしわを寄せて歯をくいしばる
「全然違うよー」
「ならまた凹んだ時には抱きついてみよう」
「仕方ないその時はまたヨシヨシしてあげよう。でも、あんまり多いのは相手しないからね、年に…いや2年に一度くらいのペースがいいかな?」
「なんだよ、俺は2年に一度しか甘えられないのかよ?」
「そーでーす。残りは私が甘えるから、よろしくね」
軽く身を寄せてきたファルの頭を撫でながら
「そーだな、俺もこっちの方がいいな」
堀の向こうに見える城をみる
とりあえずやれることからやってみるしかない
ファルが村と湖を回って戻って来るまで早くて2週間はかかるだろう。フーセが見つかって戦いになるわけではないだろうが、フーセに向き合える兄貴ならなければ。
ファルと一緒に宿舎に戻る
月明かりが道を照らしてくれた




