1-2 セリスの願い
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーセリス
天気は快晴
朝日と共にいつもと違う朝を迎える
そう今日は収穫祭
今年の作物の豊穣のお礼と人々の修練を神に捧げる祭。
「今年もあいつらの兄貴分としていいところみせてやらねばな」
と意気込んで迎えた祭
いつも通り剣術大会で優勝し呪術でもソコソコの成績をのこし、まずまずの結果だった
…だったが、いつもと違うことが起こった。
今年はフーセからのごまかし依頼が来なかった
それどころか呪術で爆発呪を使ってみせた
結果、村長の家に忍び込んで巻物を盗み出したのがバレてみんなにしっかり怒られていたが…
問題はそこじゃない
巻物を解読できた
フーセが!?
俺もあの書は読んだことがある
もちろん俺は読める
フーセが?
しかもあれだけ怒られていつもなら反省してなくても反省するあいつが反省のそぶりを見せれていない。完全に浮かれている
「間違いなく、なにかある!」
ずっと俺の後ろを歩いてきたフーセ
ここは兄貴分として弟分の成長として喜びたいところだか…あいつは絶対に陰で努力などしていない。する時間がない。はずだ…
まぁ怒られた後走っていった方向的に、前に見つけたほら穴かな?
直接今回の裏を聞いた方が早いだろう
どう聞いたものか悩んでいたが考える必要は無かったようだ。
「セリスにーい!」
向こうからどうやら説明してくれるようだ
「すごいもの見つけた!もうこれはセリス兄でも俺を褒め称えたくて泣いてしまうかもしれない!すごいよ!ヤバイよ!キタコレ!」
「やっぱりなんかあったわけだ、バインボルドー使えたのはそういうわけか」
「にいちゃんバインボルドーじゃないよヴァインヴォルドゥ!にいちゃんが解読して書いといてくれたからだいたい読めたけど発音が違っていたみたいだったよ」
どうやら解読してルビをふっていたのは自分だったらしい、となるとファル辺りが教えてやったのか?やばいな恥ずかしい間違いを見られてしまった…
「ファルにでも教えてもらったのか?」
「チッチッチ!にいちゃんファル姉にカッコ悪いとこは見せないぜ!それ!それを見せたいんだよ!」
「それ?見せたい?誰かに教わったんじゃないのか?」
「ああもういいから例のほら穴にいこう!はやく!」
どういう事か?旅の人でも見つけたのか?だとしたら危険だな…まぁいきなり襲われることはないと思うが…剣取りに戻るってのもな…とりあえず太めの木でも持っとくか…
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「わっぱ、言わなかったか?あまり人を連れてくるなと、また祭壇に飾られたりしてわけのわからんやつに持たれるのは嫌なのじゃよ。」
「えっ?聞いてないよ」
剣が…話している…
あゝそうかあまりにも話を聞かないフーセに話を聞くように誰かが陰から話しているのか…
ってことはこのほら穴もう秘密じゃなくなってる?
ファル…は言わないなシルちゃんあたりか?
案外シルちゃんがなんか声変えてフーセからかってんのか?仕方ないのってやるか…
「わーナンダコレケンガハナシテイルー」
「わっぱの連れも残念なやつなのか?」
「セリス兄はすごいんだぞ!残念じゃないよ」
「そうかそうかケンの神様におしえてもらったんだなーよかったなーフーセ」
「そうだよセリ兄!願い叶えるとか嘘つかれたけど!術おしえてもらったんだ!」
「願いもちゃんと叶えておるぞ!?さんざん昨日説明したじゃろ?」
「よかったなー何を願ったんだ?」
「何でもできるように」
「何でもか!それはいいな!フーセはちゃんと話を聞けば何でもできるからな!ちゃんと話を聞くんだぞ!」
「だろ?ほら何でもできるって!」
「じゃあなんで、なんでもできるようにって願ったんじゃ?もう昨日から儂この話、何周しとるんじゃろ?」
「じゃあちゃんと叶えてよ」
「何個も叶えるのはダメと言ったじゃろ?この話も何回目じゃ」
「うんうんじゃあ俺も叶えてもらおうかなぁー」
「そうだよセリス兄も叶えて貰えばいいよ!」
「ん?そうだなぁ俺もお願いしてみようかな?」
フーセがやる気を出すために、なんでもできるようにしてやったか…よし俺もフーセにもっとやる気をだしてもらわないとな!
「じゃあ俺はもっと剣術を鍛えたいからそうだなぁ伝説の勇者様のように強くなりたいってのはどうだ?」
「ふむ願い叶えてやってもいいがコウヤクジュの実をもっとよこせ魔力が足りんわい」
「コウヤクジュ?」
「コヤックの実だよにいちゃん」
なるほどね
「フーセ、お前祭壇に行って今日お供えしたコヤックの実、カゴごと持ってこい、その間に俺は神様にお願い事をしておくよ」
「怒られるんじゃない?持ってきたら」
「お供えしたものの片付けを頼まれたって言えば大丈夫だよ、頼めるか?」
「わかった〜」
返事をしながら走っていく
最後まで話聞くきがないなあいつ…
まぁよし
「それで?シルちゃんか?誰だこんな手の込んだことしたの?」
「どうした小僧?」
「フーセに努力させるためにこんなファンタジーなことやってるんだろ?」
「あゝそうか小僧は…そういうことか、芝居下手じゃの」
「うるせーよ。いったい誰だ?」
「ふむ、まぁ普通そうなるよな、わっぱでさえ最初は信じんかったもんな、まぁ信じても信じなくてもええが村のもんは誰もおらんよ」
どういうことか?俺にまで演技を続ける意味はないはずだ…俺がネタバラシするとでも思っているのか…俺の信用けっこう落ちていたんだな…
「してどうするんじゃ?『ネル』のように強くなりたいという願いかなえるのか?」
「叶えてもらえるなら叶えてもらいたいな、どうせ頑張ればなれるってやつだろ?」
「くぁかっかっか、まぁそうじゃななれるかどうかはお前次第というのはその通りじゃな!」
「なんかフーセと俺をうまいこと騙そうとしてないか?」
「おっお前は割とまともじゃったんじゃな、まぁコウヤクジュの実を2、3個もらってなんでも願いを叶えてやるって言って信じるわっぱがおかしいと思うんじゃが…」
「んで何が狙いなんだ?フーセ騙したって使いっ走り…それがねらいか!?動けないんだな?旅人か?岩陰にかくれてるんだろ?」
「確かに動けないのぉ、隠れてはおらんがな、間違いなくお前の目の前におるわ、別に信じても信じなくてもええが…わっぱ1人の相手は疲れるからのぉ〜そうじゃな、やはり願いを叶えてやるのがわかりやすいの」
「頑張れば叶うのなら今だってそうだ、その必要はないんじゃないか?」
「そうじゃな言い方が悪かったの小僧には記憶を与えてやる、勇者『ネル』魔王『エディル』7星の『パル』が儂を使ってきた記憶じゃ、勇者達の技を見れれば近づけるじゃろ、ただし使えるかはお前次第じゃがな、まぁ小僧の肉のつき方なら割といい線いくんじゃないじゃろか?」
「なるほどなそれなら見せてもらおうじゃないか、勇者達の記憶を」
「正確には勇者と魔王の記憶じゃがな、よし儂の塚にある赤い玉をとって飲み込め」
「赤ってか茶色くないか?しかもデカイな、これ飲むのか?」
「わっぱと同じ事いうんじゃの?さすが兄弟じゃの?」
「血はつながってねーよ、これ本当に飲んで大丈夫か?」
「とっとと飲め小僧、もうわっぱへのツッコミで儂は疲れとるんじゃ」
「わかったよ、せーの」
………一気に飲み込んだ…水ぐらい必要だったな…
「何も変わらんが記憶はどうしてくれるんだ?」
「ふむでは小僧儂を抜け」
「よし、っん?どりゃ!?ヌォォォオー」
「抜けねぇぞ」
「あっそうじゃったな、では、儂の塚を握って魔力を込めろ、魔力の込め方から説明しなくても大丈夫じゃろ?
頼むぞ」
「フーセが苦労かけたみたいだな…
行くぜ?フン!」
流れてくるパルのエディルのネルの剣をふるった記憶
技の数々
「ケンローにいちゃんー戻ったぞー」
我に帰る
「どうじゃ信じたか?」
「そうですね、勘違いしたとはいえ、数々のご無礼お許しください剣狼さま」
「まだお主の魔力では、見たい記憶を呼び出したり声の記憶までは呼び出せないじゃろうが、それは鍛えればなんとかなるじゃろう」
「急にえらそうになったねケンロー?」
「ばか!お前!剣狼さまにむかって」
「ヨイヨイ、わっぱに何言っても無駄なのは儂ももうわかった、しかしわっぱの世話は任せたぞ?」
「ありがとうございます。剣狼さま」
「そうかしこまらんでも良い、してわかっておるな?」
「わかっております。
フーセ、コウヤクジュの実は?」
「いっぱいあるよ、また絞る?」
「いや小僧もう儂を抜けるな?そのカゴに突き刺せい」
「はい、それでは」
記憶の中にある、パルの記憶、パルも剣狼を抜くのに苦労していた、魔力を塚にこめそれを剣先に伸ばして行くイメージ…
「セリスにい!かっこいい!ケンロー思ってたより長くてかっこいい!」
「なんか調子狂うのぉ」
「剣狼さま失礼します。」
コウヤクジュの実が詰まったカゴに突き刺す
輝く、今度こそ輝いてー伝説の剣は…
「に、に、にい…俺さ、スゴイ剣に変わるのかと思ったけど、これ大丈夫?」
そうか記憶は、俺しか見てないもんな…
「大丈夫だ、コレが剣狼さまの真のお姿だ」
「デカイよこの犬デカすぎるよ!」
「狼 だ《じゃ》!」




