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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第2章 王都
19/83

2-7 王宮

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーセリス


「じゃ私達は王宮に行ってくるから、2人ともハメを外し過ぎないようにね」


「はーい王様によろしくね、お姉ちゃん私は元気に自由を満喫してますってね」


「シルちゃんソフィーさんフーセをよろしくな」


「フーセはまだ寝てるわ、今日は負けた子のとこ行って文句言ってやるっていってたからまぁ町をぶらぶらしてると思うわそちらは夜の晩餐まで有るんでしょ?

こっちも美味しいもの食べさせてもらうからね、セリスのツケで!」


「おう、ほどほどにしてくれよ、こちらも思ったより出費が多そうなんだ」


王宮には昼過ぎに来るように言われているがまさか王様にこの普段着で会いにいくわけにも行かず午前の内に街で仕立ててもらって向かうこととなる


「王様に失礼のない服ってなんだよ?フルプレートでも着ていけばいいのか?」


「お店の人に聞いたら間違いないわ、私もせっかくだから買っちゃうわ!マーリンさんに請求書送ってやるんだから!」


お気に入りの服をズタボロにされ憤怒するファル。

戦いの場にお気に入りの服を着ていくと言うのがおかしい、そもそもお気に入りじゃない服が存在するのかと言うことも疑問を投げかけたいところだが…やめておこう。


外に出るとあっという間に囲まれる

ブライダル関係、住宅関係、武器屋に魔道屋、ファンと名乗る人に…etc…etc…


半強制的店に入れられて

選ぶ余地もなく服を着せられ

店主と固く握手してサインして


隣の店に連行されて

髪を整われ


その向かいに連行されて

靴を履かされ


気づくと王宮の前に立っていた。


「何だったんだ…これお金どうなるんだ?賞金残るのか?」


「レンタルですって、汚さなければタダでいいって、是非結婚式は今のお店必ず使ってくださいっていってたわ」

後ろからファルに声をかけられる


「結婚式は王都でするしかないようだな」


振り返ってファルをみる


「ご感想ございます?」


「もうこのまま結婚式で良いんじゃないか?」


「30点、赤点です。やり直し」


「とても綺麗だ」


「90点、結婚式では100点以上を期待するわね。セリス貴方もカッコいいわよ」


「はっは、予習しとく、じゃあ行きますか姫?」

腕を差し出す

「うむ、苦しゅうない」


王宮の階段を登る、2人でよかった。

確実に1人だったらパニックだった。


「そうじゃのせめて儂もゴウジャスな鞘におめかししてほしかったわい」


「あら?剣狼様、剣狼様は威厳ある狼ですもの、変に着飾ったら格が下がってしまいますよ?私達と違って元が良いと苦労しますわね」


「まっそれもそうじゃの」


ちょろい狼だった。



広い通路を抜け、待合室に通され、お茶の味もわからないままに謁見の間に通される。


大きな扉の前でクー兄弟が待ち構えていた


「ずいぶんと服に着せられているな」

マーダンが声をかけてくる


「こんな格好は初めてだよ、まさに着せられたからな」


「ファルちゃんはとっても似合ってるわーそこらの貴族より着こなしてるもの」


「マーリンも昨日の魔術服より鎧の方がかっこいですよ」


「これ窮屈で嫌いなのよ」


「そう?腕ががっちりしてて強そうなのに」


「そうなのよーね〜それもあるのよねー」


「コホン、本日は我々は昨日準優勝の為本来ならば謁見の資格はない、しかしながら王には君たちについて報告しなければいけないことが出来た為同席を許してもらえるだろうか」


「報告?」


「君の剣と新術の開発についてだ、なに悪いようにはしないさ」


「あぁむしろ頼む。緊張してうまく話せる自信がない」


「したがって本来謁見の間には武器となる物の持ち込みは禁止なのだが、特例として認めてもらっている。しかし間違ってもうかつに剣に触れるな指示があった場合も柄には決して触れるな。

王のそばには直属の1番隊の3人がいる触れてしまうとその3人から…まぁどうなるかはわかるな。」


「了解した。」


「よし、では入るぞ」


ごくっと唾を飲み込む


「今年度優勝者、セリス・ガルデニア、ファル・ファリーゼ到着しました。」


「うむ、通せ」


扉が開く、王様と、王妃様、その隣にいるのは姫様かな?


「胸を張って歩け、キョロキョロするな」


小声でマーダンが声をかける

後ろに目がついてるのかこいつ


「よいよい、マーダン、彼はこの王都に来たのも初めてなのだろう?お前やマーリンならまだしも、作法を学んでないものに無理強いをするものではないぞ」


「しかしながら、最低限というものはございます。」


「硬いのマーダン、お主は少し物事を柔らかく考えい」


「はっ」


「まずは武術大会優勝おめでとう!楽にして良いぞ、今日はお主らを褒めるために読んだのだからな」


「あっありがとうございます。」


「タアキ村のセリス、よくマーダンを倒したな、このところ、こやつばかりの顔を見続けるのが嫌になってな今年もそうだったら、1番隊に入れて出場できん様にしてやろうと思っておった所だ。」


「いえ、マーダンさんに勝てたのはたまたまと言いますか…間違いなく、もう一度戦えば負けるのは私でしょう。」


「こう申しているがどうだマーダン。」


「いえ彼はもっと成長します、来年は負けません」


「残念じゃがダメじゃよー、お主は来季より1番隊入りじゃ!」


「ですが!国王!」


「まぁこの話はあとで後ろの堅物達に話を聞け」


はじめて自分の後ろに人がいたことに気づく


「ビックリしたか?こいつら突然現れるからほんと驚くんじゃよ」


「驚きました、そこにいるのに、いないというか…」


「そして、ファルよ、今はファリーゼを名乗っておるのだな。」


「はい、お父様とお母様を無くし、ファリーゼのおじさまのところにお世話になり、お願いして養子とさせてもらいました。」


「そうか、王位を捨てたか」


「はっ!?」


「あれ?これ言っちゃダメなやつだったか?」


「いえ、むしろ話してくださってありがとうございます。普通に私は王位についていたのよと話してもただの冗談にしか聞こえないですもの、いずれ説明しようとは思っていましたがうまく伝える機会がなくてこまっていたところでした。」


「えっ?はっ?」


「ファルはな儂の弟の3番目の妻の子じゃ、王位は16位だったか?」


「ハイ、私が16位シルが19位でした。」


「弟と妻が流行病でなくなっての、妻の兄であるファリーゼ家が面倒を見るということになったということじゃよ、セリス!お前面白いな、儂はこんなにビックリした顔を見るのは初めてじゃよ」


「そ…それはもうビックリですよ。窓を開けて大声を出したい気分です。」


「はっはっは、ファル、これ他の人にもやりたいから今度他のやつ連れてこいよ。」


「お戯れを…」


「マーリンは何故そんなに青い顔をしておる?」


「なっ…なんでもありません」


「さてと、そろそろ本題に入るか。」


ニコニコしていた王が引き締まった顔になる


「セリスよお前が持つ剣が剣狼という話が届いた

それは真か?」


「はい。剣狼に間違い有りません」


「それを証明する方法はあるか?」


横からマーダンが口を開く


「申し上げます。文献より、聖剣剣狼は、自在に硬度を変え、またその刀身の形も変化させることのできる剣。と有りました。決勝の場で私をはじめ多くのものがそれを確認しております。」


「なるほどな」


「そうなるとセリスお前には悪いが儂はこう言わなければならない。」

一呼吸おいて王が口を開く


「その剣は第8代国王パルのものである、パル王が亡くなったと共に失われた剣、お主か盗んだなどとは思っておらん。よく見つけてくれた、その剣を国に返してはくれんか?」


「それは異議ありじゃの、パルの子よ」


剣狼様が狼の姿となる。


瞬間自分の首元に剣がある事に気づく


「国王お下がりください。」


「待ってく…」


「黙れ、術を解け」

隣にいたマーダンが恐ろしい顔で襟を掴んでくる


「だから城は嫌なんじゃよ」


「剣狼様勘弁してください、私が殺されてしまいます」


「また説明せんといかんのか?パルがみんな恐るから城では剣でいろとか言うから儂の狼の伝承が残らんのだ」


殺気だけでわかる、間違えば死ぬ


「何も襲ったりせんから剣を収めい、でなければ儂が直々にそのなまくら達をへし折るぞ」


王様が手をさっとあげる

同時に殺気から解放される


「剣狼様せめて説明してから変身してください」


「ホレじゃぁ説明せい」


「すみません、説明させていただきます。」


二刀アシュラから七星剣になったこと、剣狼様との出会いを報告した、ただ、ソフィーさんの事は伏せておいた、よこせと言われたらたまったものではない。


「なるぼど、それは失礼した、剣狼殿」


「そういうわけで儂はパルに力を貸したのだ、国に力を貸したわけではない、もの扱いされるのは違うという事じゃ。そして今はこのセリスを認め力を貸しておる、念のため言っておくが、今は後ろのものより弱かろうが数年も有れば並び、追い越すぞ」


「なるほど、しかしながら国としてはそうもいかんのでな、剣狼殿がセリスしか認めないというならばセリスに国に来てもらうか、ルル!こっちに来い」


姫がこちらに歩いてくる


うまく言えないが…姫様!って感じだ


「セリス、儂の娘ルルじゃ。」


「はい。」


「お前こいつと結婚せい!」


急激に隣で魔力が高まるのを感じた、次の瞬間今度はファルが剣に囲まれていた


「おっお待ちください、この隣にいるファルと私は婚約しております、本人も動揺したものですのでどうか剣を収めてください。」


ファルの魔力が落ち着くとスッと剣を引かれる


「すみません王様、そういうわけで大変恐縮なのですがその話は…」


「別によかろう?正室はやれんが側室を持っても構わんぞ?」


また魔力が高まる、


「落ち着けファル、大丈夫だから」


こちらを見たファルは完全に涙目だった


「王様そうもいかないのです、この大会の決勝で実況で自分とファルが結婚すると放送されてしまっています、そこで姫様と結婚するとなると姫様に泥を塗る事と、なってしまいます。」


「私は構わないですわよ?」


ファルが姫様を見上げる、どんな顔をしてるかはここからは見えないが震えている

それを見て姫様がニコッと笑い


「冗談よファル、ちょっとだけ羨ましくてからかっただけよ、お父様、そもそも勝手に縁談を決めないでくださいます?」


「だって、ルル、勇者だよ?伝説の剣だよ?」


「それはお父様が欲しいんでしょ?私を巻き込まないでください。」


「結婚は出来ませんが、私は王につか…」


バン!と大きな音を立てて扉が開く


「至急の案件にて失礼、東より魔獣が多数接近中です、現在隊長不在につき第2、第3の両副隊長が準備をしております」


「魔獣だと?魔獣だけか?隣国の強襲の可能性は?」


「現在敵兵の姿は確認できていません、東国境砦には鷹を出しておりますが返事には今しばらくかかるかと」


「魔獣の量はどれほどか?」


「一個小隊程と思われます」


「国王、急務につき失礼します」


クー兄弟たちが背を向ける


「マーダン、まってくれ」

マーダンが歩みを止める

「国王お願いがあります。私を王国騎士としてマーダンと共に戦わせていただけないでしょうか?」


「私も戦わせていただきたいです。」


ファルが隣に並ぶ


「よし、わかった。しかし隊にいきなり入って戦うのは許可できない、2人には東城門の守りを頼もう。1匹足りとも通すな、マーダン、まかせるぞ」


「御意!」


「剣狼様」


「よし、ちょうど腹が減っておった、ランチタイムじゃの」


「よろしくお願いします」


こうして自分とファルは王国騎士団に入ることになる。


王国騎士となった自分はまだ知らない


王国騎士がなんたるかをまだ知らない


人のことは言えないなそう思わないか?フーセ




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