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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第2章 王都
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2-3 王都

中継ぎのお話って難しい

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーセリス


カタカタと馬車が進む


もう一刻も進めば王都が見えてくるだろう。


荷台ではフーセが何やら騒いだり凹んだりシルちゃんに色々言われている。


ファルは…ちょっと今見ることがでできない…



この一ヶ月弱、共に過ごしていたこともあるだろう。


頭も体も使いすぎていたこともあるだろう。


テンションが上がりすぎたという事もあるだろう。


武術祭を目の前に俺は…やってしまった…


いや、やってしまったと言うのは語弊があるな、やらかした?いや…


…とにかく、舞い上がりすぎた。


2週間の呪術のお勉強が終わった後もなんとなく…なんとなく…彼女の家での生活を続けることになった。

月の綺麗な夜で…彼女と顔を合わせたらなんとなく…なんとなく…口が勝手に開いてしまった。


「武術祭優勝したら、家を建てて一緒に住まないか?」


告白を通り越してなぜかプロポーズしてしまった。


それに対して彼女は…


「優勝してね、セリス」


と、にこやかに返してきた。


オーケーって事だよな?


「ちゃんと前見ててよ?セリス、そろそろ他の馬車の往来も多くなるわ」


「お…おう!大丈夫だ」


突然後ろからファルに声をかけられドギマギする。しかし女心と言う奴は全く分からない、彼女は俺とは違い本当にいつも通りである。もうちょっと…こう…なんかあるだろう?


「あら?あらあら?おねーさんの翼にピピピッと反応があったわ…セリスちゃん?」


ホロの上にいたソフィーさんが隣に降りてくる。


「なにか…あったわね?おねーさん聞きたいなぁー」


おねーさんと言うより近所のグリダおばさんを思い出す。実際の年齢を考えるとそれどころでは無いのだが…


「何もありませんよ」


「あら?何もなかった人はそうは答えないと思うわよ?何のことですか?とか…」


「ホント何にもありませんよ」


「あら?そう?」


そう言うとソフィーさんは今度は自分の肩の上に乗る


「おねーさんは何でも相談に乗っちゃうわよ?話した方が楽になると思うわ〜」


耳元でこそこそ話してくる


「ソフィーさん、あまりセリスいじめないであげて下さいな」


「あら?あらあら?ファルちゃん!おねーさんわかってきたわ〜なるほどね〜それは新しいリボンで気合も入るわよね〜」


気づかなかった…


「それは王都に行くから身だしなみに気をつけてるだけですって」


「そうね〜身だしなみには気をつけなきゃね〜それで!?」


「なになに?何の話?」


シルちゃんまでが身を乗り出してくる


「この2人なにか隠し事よ!きっと!」


「何も無いですよ、ねぇセリス」


「あぁ!何もない」


「ほら怪しい、ね?そう思わないシルちゃん!」


「まさか…優勝したら…2人で旅行にいこうとか?ダメだからねみんな連れてってよ!」


「ま…まさか…旅行…いいね、でもまぁ王都に行くのも旅行みたいなもんだろ?そういえば王都の宿泊先は予約取れたのか?」


「えっ、ええ!バッチリよ!奮発して良いところ取っちゃったわ!」


「そりゃー楽しみだー」


かなり焦った…


「ごまかしたわね」


「ごまかしたね。」


シルちゃんとソフィーさんがジトっとした目で見てくる。


「にーちゃん!聞いてよ!俺にいちゃんと戦えないんだって、少年の部だってよ、マジかよって感じだよな」


ナイスフーセ!


「そうなのか!?残念だな…でもまぁこれで俺もお前も2人で優勝ねらえるじゃないか!」


「それもそうかーでもなー」


「なんどもいってるけどさガキンチョフーセ、年齢制限はしょうがないじゃない」


「ごめんねフーセ私がちゃんと読んでおけば、がっかりさせなくて済んだのに…」


「ファル姉気にしないでよ、年齢制限はどうしようもないよね〜でもなぁ〜この少年の部は木刀のみってのが緊張感ないよなぁ〜」


「え゛!?」×3


女性陣から声にならない声が聞こえる


「木刀のみ?って事はソフィーさんを使えない?」


「ほら使わなくても腰につけておけば…」


「使わないといってもそれはさすがに無理じゃないか?」


「ソフィーさん離れてても恩恵を与えられたり…」


「触れてなきゃ無理ね…」


「お姉!宿代はいくら?」


ファルが手のひらを広げる


「五万か?大分安いとこ取れたな…」


ブンブンと首を振る


「50…」


「50?……50万?」


「フーセの優勝は間違いないって、ソフィーさんが…」


「だって私を待ってたら負ける要因が無いもの!?私を使えないなんて聞いてないわ…!」


「大丈夫だって、俺優勝すれば問題ないんだろ?」


「絶対よ!絶対に勝ちなさいよ?あんたにかかってるんだからね!」


「任せとけって!木刀でも一閃も閃刃も打てるし負けねえーよ、あっ王都着いたら木刀買ってくれ!」


「あぁ…お金…」


ファルが頭を抱える


…どうやら勝たなきゃいけない理由が1つ増えたようだ…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


立派な宿に喜ぶはずが頭を抱えることとなったファル。木刀であろうとそうそうフーセが負けるとはおもえないのだがやはり間違いなく優勝できるかどうかは王都のレベルが分からない以上は確定ではない。


宿に荷物を置き武術祭の登録と木刀を買いに街に出ることとなった。


「本当に出るのか?ファル?」


「もちろんよ!あなたと私は準優勝以上、フーセは優勝を誰かが果たせばお金が足りるんだから!確率は上げたいわ」


きっと彼女はすでに自分のプロポーズの事は忘れてしまっているのではないだろうか?


「予選会の日程は明日の朝フーセ、午後から私とセリスね、時間の関係もあるのかしらね剣術組はコロシアム2周を早いものから15人がトーナメントに参加ですって」


「えー最初から対戦じゃないのかよ!」


「参加者が王国中から来てるのよ?全部対戦してたら何日あっても足りないわ、それに基本ができてない人参加して無駄に怪我人を増やす必要はないという事でしょう、お祭りなんだもの。」


「ファル姉も走るの?」


「術師は筆記試験ですって」


「うげ〜術師じゃなくてよかった。でも姉ちゃんは楽勝だな!」


「どんな問題が出るか分からないからどうかしら…過去の問題とか呪術の本も読みたいし王国図書館に行ってきてもいいかしら?」


「フーセの木刀の方は俺に任せて行っておいで」


「ありがとう、後で宿で会いましょう」


そういうとファルは小走りに図書館に向かって走って行った


「フーセも楽勝じゃない?コロシアム2周なら村半周ぐらいでしょ、しかも平坦。楽勝じゃない!」


「まぁそうだな!予選突破は確実だな!」


「シルちゃんあまりフーセを調子づかせるなよ!ロクなことにならないんだから」


「にいちゃんは俺の走りを見て、俺がまだ少年であったことに感謝すべきだな!」


「安堵させてくれ。まぁ大会のレベルもそれである程度掴めそうだな」


「あそこに武器屋があるよ、木刀のついでに大会のことを武器屋で聞いて見ればいいんじゃない?」


「いらっさーい」


武器屋に入るとフーセと同い年ぐらいの少年が店番をしていた。


「木刀が欲しいんだけど、どこにあるかな?」


少年はカウンターの幅を指差す


「おっあったあった、これで武術祭はバッチリだ!」


「武術祭に参加するのか?」


お店の少年が声を掛けてくる


「おう!俺が優勝してやるぜ」


「それは俺を昨年優勝のカイ様としっていってるのか?お前お上りさんだな?」


「お上り?お上りさんだ!」


「あんた田舎者っていわれてんのよ?」


シルちゃんにツッコミを入れられる


「いやいや馬鹿にしてるんじゃないですよ、やはり自然豊かな環境があってこそ貴女のような美しい人が…」


「美しい?シルが??」


ジロジロとシルちゃんを見るフーセ


「カイさん?大会ではこいつにお灸をすえてあげてね」


「いて!?」


何が起こったか分からないがフーセがダメージを受けている。


「はっはっは、それはもう、でも決勝まで来れたらの話ですね。せめて買った木刀が無駄にならないように頑張ってくれ」


「そっちこそ俺に木刀を売ったことを後悔しないようにな」


タンカを切ってフーセが店を出て行く


「悪いなこれお代。でもなアイツを見くびらない方がいいと思うぞ」


「お兄さん、わかってますよ。いい筋肉のつきかたしてましたからね、剣の塚を見てもどれだけ降ったか分かりますよ。大会が楽しみです。」


「さすが見るところが武器屋の息子だな」


「お兄さんも強そうだ、でも予選は走りの、勝負ですよ、走りやすい靴なんかも有りますよ?見ていきません?」


「いや、履き慣れた奴が一番だ、それにタンカを切って店を出た奴が店の前でずっと待たされてるのもかわいそうだしな」


「そうですね、トーナメントで会おうと伝えてください。綺麗なお嬢さん、用がなくてもお茶ご馳走しますからぜひまた来てくださいね」


「ありがとう、お仕事頑張ってね。」


「またのお越しをお待ちしてます」


店を出るとフーセがふてくされている


「ムカつく奴だ」


「どっちがよ?ああいう紳士的なところを少し見習いなさい!」


「綺麗とか言われて浮かれてただけだろ」


「まぁ2人とも落ち着け。それで、剣狼様は先ほどの少年どう見ます。昨年優勝者らしいですが…」


「実際剣を振ったとこを見んと確実な事は言えんがワッパが楽勝とはいかんだろうな」


「カウンターで足元が見えなかったけれど手足はフーセより長そうねリーチの違いはありそうね、セリスと戦うつもりで向かえばいいんじゃないかしら?」


ソフィーさんが続けて話す


「紳士的な態度の他に身長でも負けてたものね…これはダメかもしれないわ」


「うっせーよ直ぐにでかくなるよ!俺の成長期はこれからだ!」


「さてと時間もあるし王都観光と行くか」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


心配していた予選会…


王国中の猛者が集まるだろうと思われたこの大会だが…


「カンパーイ」


3人とも無事に予選突破となった。


「大会中、フーセの事はお願いするぞ、シルちゃん!」


「なんだよそれ!シルに何を頼むってのさ!一人で大丈夫だよ!」


「だめよ!」


ファルがいつになく声をあげる


「試合自体に心配はしてないわ!集合場所だったり試合前の点呼だったり、忘れ物したり、説明を聞いてなかったり、絶対忘れちゃだめなんだからね!シルしっかり頼むわよ!」


「はっはい!」


完全にファルの眼力に小さくなるシルちゃんとフーセ、気持ちは分かる。


「明日はみんな負けない限りバラバラで行動だ、でもどうせなら全員で決勝まですすむぞ!」


「違うでしょ?全員で優勝でしょ?」


ソフィーさんが言う


「全員で優勝したら今日より豪華ディナーでうちあげよ。」


「特上の肉!」


「よし!頑張るぞー!」


「おーーー!!!」



……………


しかし豪華ディナーどころか

あんな事になるとはこの中の誰が想像しただろうか…


ここから自分達の物語は大きく分岐する事となる。






















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