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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第2章 王都
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2-2 新たな課題

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー剣狼


「俺はケンローがした事を許せない!だから謝らないし、認めない!でも俺は強くなりたい、剣術は教えてくれ!」


しょぼくれたワッパが元気になったかと思えばなんともワガママな事を言ってきた


「儂も別にワッパに理解されようなどとは思っていない、しかしな…」


「フーセ元気になったか!良かった、強くなりたいか!そうか!よし久々に組み稽古するか!」


セリスが割って入ってくる


「ええい!セリス、儂がまずはガツンとワッパに言ってやらねばならん!」


「しかし剣狼様…」


「強くしてほしいという問いにまずは答えてやると言っとるんだ、少し黙っとれ。

ワッパ、この前のトレント戦、主は何がいけなかったと思う?」


ワッパが考え込む


「ほれ何も反省しておらん」


「いや、ケンロー、何がいけなかったって、もう全部悪かったとしか言えないよいいところが無いもん」


「フーセ…」


「そうじゃな、儂が始めに下がっとれと言ったのはお前が邪魔にしかならん事を分かっとったからじゃ、あそこでセリスがファル嬢を助けた時にお前が出ていかなければトレントから一次的にも退却して体制を立て直せたじゃろう」


「俺…戦えないじゃないか…」


「そうじゃお主は戦える気になっていただけじゃ、まずはそれを教えてやる。セリス、全力で相手をしろ。ワッパ獲物はなんでも構わん、セリスに一撃でも与えてみろ」


「しかし剣狼様!」


「お師匠様じゃ!ワッパはお主と同じぐらいの強さになっていると勘違いしおる節がある。まずは今の自分を知らねばならん、致命傷にならんように儂が硬度を変えて調節してやる、手加減するなよ、ワッパの為にもじゃ」


「わかりました」


ワッパはガジュの指導を受けてあの大ぶりの剣をだいぶ使えるようになった…しかしそれは使い方がわかっただけで強くなった訳ではない…上手に切るのと綺麗に切るのとは訳が違うそこを履き違えて強くなったと錯覚してしまった、まずはそこを正す。


ワッパが斬りかかってくる

しかしセリスは受ける事なく全てかわす


「どうしたワッパ、技を使っても良いのだぞ?」


「いわれなくても!!!!」


そして技に集中する余り守りが疎かになる、攻撃は最大の防御とワッパはゆっとったがそれは息継ぎ無しの連続攻撃、呼吸を乱してやれば逆に大き過ぎる隙を生む。1つの戦いにおいて休みなしに剣を振るうなどまず不可能。


タメに入った瞬間セリスが間合いを詰めワッパを突き飛ばす。


「ぐあ!」


「どうしたワッパ、セリスは技を1つも出しておらんぞ!?」


剣の使い方より自分の体の使い方…ワッパがセリスの真似をして剣を振るったところでワッパにこの戦い方はあわないというより出来ないだろう。


「フーセ、一度休もう、これ以上は…」


「まだ…まだだ!」


ワッパが懸命に剣を振るう、近距離、中距離、遠距離

覚えた技を全て使いどれも、当たらない。


「そろそろ終わらせるか…セリス」


「そうですね…そうします。」


「一閃!」


セリスの一閃がみぞおちに入る、そのままワッパが崩れ落ちたのを確認し狼の姿に戻る


「フーセ!」


ファル嬢と小娘が駆け寄る


「兄さん、だいぶお優しい指導ですね」


「お前か…セリスもファル嬢もフーセを甘やかし過ぎじゃ、それが移ったのかもしれんの…と言うかお主はワッパについとるんじゃろ?指導してやれば良いではないか?」


「私はあの子たちを引き裂きたい訳じゃ無いのよ兄さん、まぁたまにアドバイスはしてあげるつもりだけどね」


「ふん、面倒じゃの?、あゝ面倒じゃ」


久々に会ったこいつはガジュの事を根に持っているのか、何かを狙っておるのかわかったものでは無い、暫くは様子見かの?


ワッパを木陰に寝かせセリスがやってくる。


「お師匠様?フーセの悪いところきっと伝わったと思うのですがこの後どう指導されるおつもりですか?」


「そうじゃのー、トレントを倒すとゆうても、もうおらんしな、分かりやすい目標を与えてやれれば良いのじゃがな」


「それなら良いのがありますよ」


ファル嬢がニコニコして何やら紙切れを取り出す


「今日はこれを皆んなに見せようと思っていたの」


「なにそれ?おねぇちゃん」


「ぐぇ!」


フーセをつぶしながら小娘が身を乗り出す


「いてーよバカシル」


「あらまだ寝てたの?」


「ふむなになに、王都武術祭、優勝者には王様との謁見の栄誉と報奨金が与えられる…か…面白そうだな」


「うまくいってお眼鏡に叶えば王国兵士としても雇ってもらえるかもしれないわセリス!そしたら将来安定よ!」


「はっはっは、そいつは俺はがんばらなきゃな!」


「なに言ってるの私も出るわよ?術師の部門もあるの!うまくいけば王国魔道士になっちゃうかもしれないわよ?」


「さすがにそれは…」


「あら?試してみる?私多分貴方に一泡ぐらい吹かせられるわよ?」


「いやいやファルに剣は向けることはできないよ」


「うーん…じゃあ私にタッチできたら貴方の勝ち、私の攻撃が当たったら私の勝ちってのばどう?」


「シル?姉ちゃんなんで急にやる気なの?」


「わかんない…けど…久々におねぇちゃんがテンション高いわ…たぶんこれかな?」


「優勝賞金……剣士、術師、両部門で、もしとれたら…」


「姉ちゃん、お金にうるさいからな…」


「さあセシル行くわよ!シル合図して!」


「ハイハイ…じゃぁ始め!」


「ファル!行くぞ!」


セリスが一直線に駆け出す、詠唱前に一気に終わらせるつもりのようだ


「ヴァインヴォルドゥ!」


短詠唱で小規模の爆発が2人の間に起こる、走りを止め方向転換し、セリスが土煙を突破すると…


「避けれるかしらね」


無数の火球が空中に浮いていた


「おいおいおい!」


「ゴーズメルぐらいは無詠唱でも出せるのよ、威力は小さいけれどね…全部当たったら流石に火傷じゃ済まないから、ちゃんと避けてね?」


さらに火球を増やして行く


「そこに、術を留めるとかいつの間に!?」


「あら?私もとっても反省したのよ、あの時これができていたら多分あんな事にはならなかった…じゃぁ行くわね?」


「あー負けたのセリス…」


「私も術名叫んだ方がいいのかしら?取りあえず…そうねー|ゴーズメルフォーハンズ《火球の連弾》!」


無数の火球がセリスに向かって飛んで行く

避ける避ける…しかし


「はいそこまで!」


ファルが嬉しそうに声を上げる


「はっはっは…」


見事に誘導され火球に囲まれたセリスが乾いた声をあげて手を上げる


「まぁセリスが剣を持ってたらこうはいかなかったんだけどね〜どう?参った?」


「参った、降参だ」


すっと火球が消える


「かっかっか、ワッパだけでなくセリスお前も鍛え直しが必要そうじゃな」


「まったくです。」


対人の戦闘。今の世の人々の強さは分からないがまぁええとこまで行くじゃろう…

それでなくてもいろんな者の戦い方を見るだけでもこの後の2人には役にたつだろう


しかし…ファル嬢よ…ワッパのを見てるとはいえヴァインヴォルドゥの制御をし、魔力の保存、操作までこの短期間で行うとは…驚きを超えて恐ろしいぞ!


「ワッパも目覚めたな、お前の訓練だがな…まず、ひたすら走れ、あとその剣を片手で触れるようになれ、暫くは組み稽古は禁止じゃ」


「防御の練習とかじゃないの?それにおっちゃんがこの剣は両手剣だって言ってたよ?」


「かっかっか、防御の練習?分かっておらんな〜さっきセリスにあれだけやられてまだ気づいておらんか?」


「いいか?フーセ、お前はな、」


「まてセリス、答えを教えるな、少し考えることが必要じゃ。その祭りはいつなんじゃ?」


「一ヶ月後です、あちらに移動するのに約3日、休みや、宿の確保ができるかも怪しいので特訓できるのは3週間と思って頂ければ…」


「ワッパ村をそうじゃな1日3周、休みながらでも良いから必ず走れ、ただしその剣を持ちながらじゃ。

そして素振り…1日500にしとくか…これも休みながらでも構わん、こなせるようなら自分で数を増やせ。

それをしながらセリスとどうやって戦うか考えろ。」


「3周!!!人少ない村だけど、どんだけ距離あると思ってんだよ、素振りは500なら楽勝そうだけどさ」


「あぁー言い方が悪かったの片手で500じゃ左右で1000、出来れば両手も加えて1500にしたいがそれは余裕があればで良いおまけじゃ」


「えええーー!!!」


「ほれ今日のぶん行け!2週間後に一度セリスと対戦させてやるその時にセリスとまともに戦えん用なら祭りは観客席でセリスの応援じゃ」


「マジかよ!もう昼だぜ?」


「良いからとっとと行け!」


「マジカヨーーーーーーーー!」


遠ざかるワッパを見送りながらセリスがいう


「自分も走り込みしないと行けませんね…」


「いやセリスお前はお勉強じゃ」


「え゛!?」


「ファル嬢、こやつに先ほどのゴーズメルをその場に留める奴をこいつに教えてやれ」


「待ってください、私は、火球もつくれないんですよ?」


「何も先ほどのファル嬢の技をやれと言っとるわけではない、自分の目の前にゴーズメルを留めれるようになれば良い、そうじゃなどれくらいかかりそうじゃ?」


「操作までしなくて良いのよね?そうねー魔力制御、苦手だからなーセリスは…良くて一ヶ月かかるわね」


「そうですよ、間に合いませんって」


「でも、もし剣術の鍛錬の時間もこちらにくださるのなら3週間…まだ足りないなぁ〜」


ファル嬢が考え込む


「そうだ!シル!あなたもセリスの為に手伝ってくれる?」


「えっ?もちろんよ!セリスさんの為なら私なんだってしちゃいますから!」


小娘がここぞとばかりにセリスに詰め寄る


「それなら2週間でいけますけどどうですか?」


「そうじゃな…2週間動かないのはいかんから少し体を動かすようにはさせてくれ」


「わかりました、これから2週間、セリスは私達の家に泊まり込みね。おじさん達に報告がてら着替え取りに行ったら来てね。シル先に戻ってこの事伝えておいて」


「大変!片付けなきゃ!」


小娘はそう言うと姿を鳥に変え文字通り飛んで行った


「えっ本気で?」


「先ほどのワッパと同じ顔しとるぞ?」


セリスがぽかんと口を開けで呆然としている


「はいっセリスも走る!」


「あっえっハイ!」


慌ててセシルは回れ右をして走り出す、大丈夫かの?


「それで剣狼様?」


「なんじゃ?」


「私の特訓の時間がなくなったのですけれど私に何か見返りはあるのかしら?」


「ファル嬢は凄いから大丈夫じゃよ」


「言い方が悪かったですね、セリスとフーセがいない2週間、剣狼様は何をなさるんでしょう?」


これは…ずっと忘れておった…昔感じたことのある…この感情は…なんじゃ…まさか…恐怖なのか…

ニコニコと笑顔でこちらを見るファル嬢から魔力でも殺気でもない何かを感じた…


「わ…儂は…」


「暇ですよね?ごろごろ日向ぼっこしちゃうぐらい暇ですよね?」


「そっそうじゃな…」


「では、剣浪様の凄いところを見せてくださいな!2週間、狩をして朝昼晩三食、みんなが食べれるだけの物を取って来てくださいます?」


「儂だけで?」


「そうです、みんな特訓と勉強で忙しいですから、あっ剣浪様が食べたい獲物で結構ですよ?家まで持って来て頂けたら美味しく調理して貰いますから。」


変わらぬ笑顔で続ける


「お昼は間に合いませんね、今日の晩からお願いします。では私も準備がありますので行きますね」


そう言うと、くるっと向きを変えるとスタスタと行ってしまう


「兄さん…先ほどのセリスとフーセと同じ顔をしてますわよ?」


木の上からクスクスと笑いながら声をかけられる


「さっ私もそんな顔にならないうちにフーセの様子を見に行くわ、頑張ってねにーさん」


誰もいなくなった森の広場で取り残される…


まさかの事態にぽかんと口を開けた儂がそこにいた。


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