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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第2章 王都
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2-1 未来への理由

とりあえずここから第2章になります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーセリス


あれから2週間たった。


シルちゃんも次の朝には目覚め、ガジュさんの事を聞くと涙を流していた。

ソフィーさんはいつの間にか戻って来ていて、もうここにいる意味はないからと自分たちについてくることになった。ガジュさんの事も有るのかフーセにくっついている。


そんなフーセは、あれからずっと、ふさぎ込んでしまっている。剣浪様に会いたくない様だ。仕方ないかもしれない、時間がかかるかもしれないけれど乗り越えてくれると信じている。


「というのは建前か…」


ため息まじりに呟く


「あなたまで凹んでどうするのセリス?」


「そうだな…そうだよなぁ〜」


丘の上から村を眺めながら草むらに身を投げる


「なんとか元気づけたいものだけれど」


「お前らはワッパを甘やかし過ぎじゃ」


「剣浪様、誰のせいですか!?」


「セリス!お前までそんな事いうのか!」


「フーセの気持ちも考えてくださいよ」


「儂は嘘もついとらんし間違った事もしたとは思っておらん、そもそも、あの戦いにおいてガジュは死ぬ必要はなかった、むしろワッパが二度死んだのじゃぞ?

それをかばってもらっただけじゃ、それをお前ら儂のせいみたいに言うのはおかしいじゃろ?」


「ガジュさんが死んだことでは無く、それを死なせてしまった者のまえで食べるのは…私も先にパル様の記憶を見てなかったら卒倒してますよ。」


「ファル嬢も落ち着いていたの?」


「私も文献で読んでいましたし、文献で読んでいた剣浪様はもっと…その…ヒドイ感じでしたので…食べると言うよりか喰らう?食い散らかす?」


「じゃろ?儂なりにだいぶ我慢しとるんだぞ?」


「あゝもう、わかりました、剣浪様は悪くないです、

ただいずれフーセが顔を出した時は大人として対応してくださいね?」


「わかったわかった、威厳のあるところを見せれば良いんじゃな…」


たぶんダメだな…


とりあえず、シルちゃんとソフィーさんに任せるしかないかー




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーフーセ


「でね!そこのスイートポテトが絶品なの!季節限定なんだけどお芋の甘みだけなのにどうしてあそこまで美味しくなるかなぁ〜どうしよう!もう一個いっちゃおうかしら?ってなっちゃって〜」


「あら?そんなに美味しいの?季節限定って事は今は食べられないのかしら?」


「そうなんですよ、年中置いたらいいのに、この味はこの時期しか出せない!ってことらしんです」


「なぁ!」


「まぁこだわりなのね!?それは食べて見たいわ」


「なあったら!」


「何ようるさいわね」


「うるさいのはこっちだよ…ここ俺の部屋、なんでお前らはずっとここでくっちゃべってるんだ」


「なぜ?ソフィーさんがここにいるからよ?」


ソフィーさんを見る


「私はガジュの代わりにあなたの面倒を見なくちゃ」


「だったらさ?俺を慰めるとかさ…もっとなんかあるだろ?」


「だからさっき聞いたでしょ?大丈夫?って、そしたらあんたが大丈夫だって言ったんじゃない!なに?大丈夫じゃないの慰めて欲しいんですか?よしよし」


「あゝもう!頭撫でんな!もういい俺が出てくよ」


「イェーイ勝った〜」


……………………


「あっあっちの煙のあがってる煙突のある家、あそこですよさっき言ってた店」


「あら以外に近いのね!」


「んで?なんでついてくるの?」


「ソフィーさんがいるから。」


「ガジュに頼むって言われたもの?」


「ソフィーさんなんかかわってない?」


「いいじゃない似たようなものよ」


「頼むからさ〜1人にさせてくれない?」


「え゛?あっごめんね、そうよね?フーセも男の子だもんね」


「シルちゃんがいけないんじゃない?こんな可愛い服着て!まっ!下着まで!!」


「あゝもういい加減にしてくれよ」


「ふーん、いい加減にね…じゃぁ言ってあげようか?僕のせいでガジュさんが死んじゃった〜しかも信じてた剣狼がガジュさんの死体食べちゃった〜〜さらにそれを見てもセリスさんもおねーちゃんも止めてもくれない!あぁなんて僕は不幸なんだ〜〜僕はどうしたらいいんダァ〜〜」


「違う!」


「違わないわよ」


「違う!!」


「違わない、少なくても私に見えているあんたはそうだってことよ。」


「うるせーよ!そうだよ、俺のせいだ!俺のせいでおっちゃんは死んだ!」


「そうやって俺のせい俺のせいって、お前のせいでも誰のせいでもどうでもいい、いつまでもウジウジウジウジ…蛆虫かお前は!蛆虫だってハエになるわ!気持ち悪い!」


「誰が!」


「もういい、勝手にしろ!でもこれだけはいっとくからね!私はお前を蛆虫にする為に助けたんじゃない!

いい加減にしろバカ!」


そう言うとシルは走っていってしまった。


「青春ねぇ〜」


「そんなんじゃないですよ、ソフィーさん」


「そんなんだと思うわ〜、あの子絶対将来は素敵な子になると思うわ〜

まぁどうしたらいいで悩んで動けないならそうね〜お姉さんがアドバイスを少しあげようかしら?」


ソフィーさんが肩に留まり話す


「ガジュの最後の言葉…あっ貴方に向けたものね、なんていってた?」


「強くなれって、この剣みたいに力を秘めてるから、皆んなを守れるぐらい強くなれって…」


「それと、こんなところで折れるなよって言ってたでしょ」


「うん」


「貴方にとって守る皆んなってだれ?」


「…俺は守られてばっかりだ、にいちゃんも姉ちゃんもシルだって、俺が助けるほど弱くないよ…」


「そう…でもねだから貴方は弱いままなのよ?セリスちゃんは剣が上手、ファルちゃんはとっても頭がいい、シルちゃんが強い心を持ってる、貴方は?」


「わからない…」


「まずはそれを見つけましょう?ガジュは分かってたみたいだったわね?その剣の様に真の力をって言ってたぐらいだから、貴方には絶対に誰にも負けない強い力があるはずよ」


「うん…」


「はい、お姉さんのアドバイスはここまで、ところでその剣の真の力って何のこと?」


「あぁ、ソフィーさんなら見せても大丈夫かな?」


剣の留め具を外して剣身をだす


「ソフィーさんが核を取った剣じゃないかっておっちゃんは言ってたけど…」


「飛燕…、なぜ貴方が…核は?核は無かったの?」


「俺の家の納屋にお届け先不明で何年も前からあった剣なんだ、この間「理」の力を使ってこの剣身に気づいたんだけど核はついて無かったよ、ソフィーさんが核とった剣ってこれじゃないの?」


「いえ、違うわ…」


ソフィーさんが考え込む、しばらく考え込み


「私が森を出て貴方についている理由、話しておくわ」


「まず1つ目、トレント、あの木の魔獣があそこに現れた理由がわからない、どう考えても突然現れる様な魔獣じゃないもの、私やガジュに気づかれずに湖の近くまで来れる様な大きさのものじゃないからね」


「そうなの?突然あの家の近くの木が魔獣になったりはしないの?」


「そうだとしたら…何者かがそうしたとしか思えないわ。こう言ったら悪いけど…貴方たちが来たらそうなった」


「俺らを疑ってるの?」


ソフィーさんは何も答えない


「そして2つ目、真偽は確かじゃないけれど兄さん七星剣を見つけて核を取って集めてるって言ってたじゃない?有名な剣だけど、そんな簡単に見つかるものじゃないわ、分かったとしても厳重に保管されてるはずよ、それを集めてる、自分が動かなくなるまでそうしていたのにここに来て急に貴方に力を与えた…兄さんは何かをしようとしてる気がしてならないの…」


「ケンローが俺たちに力を与えた理由…」


「きっと兄さんは私が貴方についてるのはあの人がガジュを食べたから私が貴方を確保してるとでも思ってるんじゃないかしら?貴方についてるのはそう思っていて欲しいからね。」


「ソフィー…もやっぱり人を食べるの?」


「そうね、食べた事はあるしそれを悔やんだこともないけれど、もう食べない…と言うより食べれないわね…私は人に沢山の恩があるガジュにもシーラにも…」


「シーラ?」


「そう、私が七星剣だった時の私の使い手よ、その人と約束したの…魔剣じゃなく皆んなを守る聖剣と呼ばれる様になろうってね。」


「てっきりガジュのおっちゃん食べちゃったんだと思ってた…ソフィーに食べられる事が約束だったんだって…」


「兄さんはそう思ったみたいね…でもね、ガジュとの約束は、ガジュをガジュのお母さんの近くに埋める事、それとあの森を守る事…」


「でも森を出ちゃったら…」


「私が離れても森はすぐにどうこうはならないわ、それよりトレントが発生した理由を見つける事が優先だと思ったの、さっき言った様に兄さんに何か理由があるんじゃないかと思ってる、まずはそれを突き止めるわ。それともう1つガジュが言ってたでしょ?王様と約束したってそれはガジュがいたから成り立っていた。年に一度王様にガジュからの連絡が行くことになってるのにそれがなくなれば脅威ありと言うことで王国から調査が入るでしょう、そうなれば…どうなるかはわからないわね…だからガジュの代わりに森を守ってくれる人も探さなきゃいけない、まぁ私が守るからって言っても良いのだけれど私の存在が王様に知れたらそれこそどうなるかはわからないのよね」


「トレントの原因と森の管理人探し…それなら俺がなるよ、森の管理人!おっちゃんとの約束!俺がやるよ!」


「ふふふっありがとう。そう言ってくれると思ったわ、でもね急がないで…後を継いでくれるのは嬉しいけれど、フーセにはまだいっぱい未来がある、沢山色んな世界を見て!それでもやりたいと思った時にお願いするわ、それまでは私がなんとかするから。」


「でも…」


「森の管理人はあの森の誰より強くなくちゃいけないわ、まずは強くなりなさい!」


「うん…そうか…おっちゃんみたいに強くなるよ!」


「ふふふっ期待してるわよフーセ

それじゃ始めの一歩は心配かけた皆んなに謝るところからね…」


「え゛?」


「だってそうでしょ、セリスちゃんもファルちゃんも、シルちゃんなんてとっても心配してくれてたじゃない?」


「シルはいいよ、ずっとからかってただけじゃんか」


「お姉さんからのアドバイスをもう1つ!いい?おぼえておきなさい!こっちの方が重要よ!あの子は絶対素敵な子になるわ!」


「ナイナイ!あの猫被り暴力装置が素敵って!?無敵の間違いだろ?ファル姉ちゃんなら間違いなしの綺麗なお嫁さんになるよ!」


「ファルちゃんもそうね〜あの子はうちの子にしたいわ〜」


「だろ?そーだ!それこそファル姉に相談した方がいいんじゃないかな?ケンローの事」


「そうね〜でもまだまってね、私も疑いを持ってるだけ、証拠も何もないんだもの、兄さんの怪しい行動と、トンレトが発生したのが結びつくのかもわからない、皆んな疑心暗鬼になって仲を悪くさせたい訳じゃないの。兄さんもそうよ、乱暴者で頑固で食意地貼ってるけど………いいところもあるのよ」


「俺はケンローは許せないよ」


「そうね、私もよ。でも飲み込んでくれる?理解しなくてもいいけれど、理解しようとすることをやめないであげて」


「…よくわからないよ」


「兄さんは寂しがり屋なのよ、私も人を大事に思うことができたわ、あの人も変われるかも知れないじゃない?そういう事よ」


「寂しがり屋?」


「そうよ、とってもね」


「うん…分かったよ、わかんないけど分かった。」


「ありがとう」


「でもケンローの疑惑はどうやって調べるんだ?」


「それはしばらく私に任せておいてフーセは強くなる事を考えてね、心も体もね」


「わかった!」


さてとりあえず皆んなに謝らなきゃな…セリ兄、ファル姉はともかくシルはなぁ〜〜………


どうしたらいいかはまだわからない、でもやりたい事はできた、俺は強くなるよ、おっちゃん!


僕は森を駆け出す、まずはシルに謝ろう…違うかな?ありがとう?違うな…まぁなんとかなるだろう…


さっきより軽くなった足が風を心地よく感じさせてくれた。




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