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剣狼の願い  作者: クタクタニ
第1章 始まりの願い
10/83

1-10 森の脅威

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーファル


「やっぱりファルちゃんあなたうちの子になりなさい!ガジュの奥さ…は無理ね…娘…微妙ね…」


晩御飯を食べながらソフィーさんが口を開く


「ソフィーさん、ですから私は家に帰らないと…」


「ソフィーさんがうちに遊びに来たら良いじゃないですか。」


シルが身を乗り出して提案する。

ここに来て3日目、シルはソフィーさんととても仲良しになったようだ。お茶詰みにいった時から2人で色々たわいもない話しで盛り上がっている。


「おっちゃんも一緒に遊びに来てよ!」


そしてフーセに至ってはガジュさんをフーセの父親よりも尊敬している節がある。


「すまんな森を守るからと言うのが王との約束なんだ、それを放棄するのは儂は絶対に出来ない」


おそらくガジュさんがフーセに対して子供をあしらうのではなく1人の人間として対処してくれるのがフーセは嬉しいのだろう。


「えーえー!良いじゃんか」


「約束を破ると言うのは相手も約束を破って良いと言うことだ、そうなればこの森は無くなってしまう。これは儂と王との約束、王様が儂を認めてくれた証でもある、それを大事にしたいんだ」


多分村の大人達なら「フーセワガママばかり言うな良い大人にならないぞ」とか「いつかな」とかいって簡単にあしらっているところだろう、私も最近そうなってるのかな?気をつけなきゃ


「私もガジュを1人に出来ないからちょっと無理ね〜」


ソフィーさんは簡単な方らしい


「えーそうなんですか〜じゃぁ私お姉ちゃん連れてまた遊びに来ますよ〜」


ここ数日で妹も軽くなったようだ


「ファルは村に連れて帰りますよ、そうでないと俺が困ります。まだ2日は居ますけどあまり引き抜きしないでくださいね」


よし、よくいった


「明日明後日、さらに美味しいのがんばるから、セリス、フーセ!美味しい素材を宜しくね!」


せっかくなのでプレッシャーもかけておく


「まかせとけ!」×2


「といってもな〜〜」


黙って居た剣浪が口を開く


「思ったよりこの森の魔獣、魔力弱いの?そしてもうちょい違う肉喰いたいの?」


「ガッハッハ、それは剣浪殿仕方ないことですな、この森の魔獣ですと今となってはこの2人で倒せぬものはおりますまい、たった2日でどんどん強くなる、若さですかな?ガッハッハ」


「そうですね、土の術で防御を固めて戦うのがなれてからは普通の動物と大差はありませんからね、こうなると、キメラ(合成魔獣)なんかと戦っては見たいですね」


「おっ!言うようになったな小僧」


「ガッハッハ、だいぶ力をつけている証拠ですな、それでしたら明日はひとつ勝負をして見ませんか?剣浪殿?」


「儂と勝負をする気か?」


「おっと言い方が悪かった失敬、賭けをしませんか?」


「賭けか?」


「明日はフーセとセリスに湖で水生型魔獣の討伐をしてもらいましょう、狩り尽くされては困るので時間は一刻、より多く取った方が勝ちというのはどうですかな?無論私はフーセに賭けます」


「ほう、して?何をかける?」


「ファル殿…」


ちょっとまって!


「と言うのは無理でしょうから、負けた方は明日の晩飯抜きで取った魚を燻製にすると言うのはどうですか?」


「かっかっか、まぁよかろうしかし余興としてはちと盛り上がりにかける、小僧とワッパのモチベーションを上げねばなふむ…ファル嬢と小娘が勝者に接吻してくれる権利と言うのはどうだ?」


「ちょちょ、ちょっとまってよ!」


シルが声を声を荒げる


なんで私が…


「小娘は勝者はどちらだと思う?」


「それはセリスさん…」


「問題なかろ?」


「そうなんだけど…」


「ファル嬢はええか?」


「うーん…ほっぺなら」


「ウォォォォ!ついに兄ちゃんを超える時が来た」


「おっやる気だなフーセ、しかし素直に勝ちは譲らねーぞ」


まぁやる気が出たならよしとするか、よしよし

よくわからないうちに賭けの対象にされたけど、明日は久々にお魚料理できそうだ、ムニエルかな?どんな魚かわからないから勉強しとかなきゃ…


部屋の隅でシルが頭を抱えている

余裕がないぞ?イモウトや?そこが可愛いんだけどね。でもセリスのほっぺまでしか私は許さないぞ!


「では剣浪殿はセリスに賭けるということでよろしいですな?」


「無論じゃ、ワッパをどこまで仕上げたか楽しみにしとるぞ?ヒゲ」


「いやいや油断されると痛い目に合いますぞチャチャ丸殿?」


「良い度胸じゃヒゲ」


「ならば今宵は先に前哨戦といきますか?」


ガジュさんが棚の奥から酒瓶を出す


「ヒゲ!まさかそれは!」


「流石に知らぬ訳は有りませんな、魔力の加護をもった神酒、その名も《魔王降誕》…あまりの魔力の濃さに酒の酔いと魔力酔いにより誰しもが魔王となってしまう秘酒ですよ」


「かっかっか、それは良い!その瓶ひとつ儂が空にしてくれよう」


「ガッハッハなるほどーなるほどーチャチャ丸殿はイケる口ですな、ならば今日はこちらも…」


「ま…まさか!あるのか…それが!?お主それをどうや…いやそれは聞いてはいかん…」


「ええその《96》ですよ…」


「いいのか!?儂飲んでもいいのか?」


「いいんです、1人で飲んでしまうのも良かったのですが…分かち合ってくれる人と飲みたかった…飲みたかったんです」


「ガジュよ!お主のヒゲは立派じゃ!」


「いえ!剣浪様貴方様の毛並みには敵いません!」


ウワァ〜とりあえず干物でも出して早く退散しよう、これは長老たちの年一の寄り合いでよくある酒自慢だ…ソフィーさん早くも居ないし!


「兄ちゃん俺たちも前哨戦だ!腕相撲しようぜ」


「はっはっは勝てるつもりか!?」


「おねぇちゃん…私唇乾いてない?」


「ぁあもう!ねなさーーーーーい!」


結局丘の上の小屋は昼よりも騒がしく次の日を迎えるのだった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「くちゃい」


鼻をつまみながら窓開け見渡す


どうやら朝方まで飲んで居たようでリビングには夜見た酒瓶がどこにあるかわからない状態だった。


「もう!だれが片付けるのよ!」


ガジュさんは柱にまるでコアラのように抱きつき剣浪に至っては大皿の上で丸くなっていた


「食べられたいのか!」


私のそんな声に起こされたのかシルが顔を出した


「ウワァ〜〜!ってくっさ、なにこれ?ってかケンローどこで寝てんのよ、ウケるんですけど」


「シル?あまり変な言葉使わないの、いちを立場もあるんだからね?」


「はぁ〜い、おねぇちゃん。でもこれはないでしょ?」


「ないわね〜」


2人で顔を見合わせてクスクス笑ってしまう


「さてと、これを片付けなきゃ朝ごはんも食べれない、2人を起こして来て」


「かしこまり〜〜」


さてどこから手をつけたものか…



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


片付けして朝ごはんを食べたものの、酔っ払いたちは全く起きる気配がなく、セリスとフーセに任せて私は勉強に集中した。

ヒゲで酔っ払いだけれどガジュさんの持つ本はとてもいい本が揃っていた、森の動植物の本、魚の本、魔獣の本、育て方や駆除の仕方、家具の作り方、サバイバルの方法。実際にやって見ないとわからないことも多かったが面白く、時間を忘れてしまっていた。


気づくと日が落ちかけていた


どうやら酔っ払いたちをうまく連れて湖に行ったらしく小屋には誰もいなかった


外に出て丘の下を見るとみんなが手をふって魚を担いで歩いてくる、「あの様子だとセリスの勝ちかな?」

そう思いながら手を振り返す


油断していた…忘れていた?


とにかく私は失敗した


丘の下からは血相を変えてセリスが走ってくる


だったらきっと大丈夫


私の足に一瞬で絡み


私は大きな「木」の怪物に持ち上げられた


「なんじゃこれは!初めて見るぞ」


ガジュさんが目を丸くして驚いている


「木が動いてるよ!兄ちゃん!」


「こいつは植物の魔獣…トレントだ!」


「ワッパ、小僧、こやつの攻撃は土の術だけでは防ぎきれん。小僧は儂をもて、ワッパ小娘を連れて下がれ、ガジュ、あてにしてもよいか?」


「トレントとは戦うのは初めてですが、あてにされましょう」


木の怪物は根を急に根を動かし速度を増す


「キャァーーー」


私を振り回しながらみんなに襲いかかる


ツタを鋭く尖らせ、セリスに向かって伸ばす


「小僧!いいか絶対に受けるな、お前の一閃より威力は上と思え、相手は木の魔獣、常に土の術がかかってる物と思え」


「はい!」


素早く横に方向を変えて避ける、ツタが連続して地面に深く突き刺さる。


「トレントの動きを止める、少し離れろ!」


ガジュさんが大きな斧を振り回す


「行くぞ!我山城切(ガザンジョウセツ)!!」


大きな揺れと共にトレントの前の地面が盛り上がり壁が出来る。


壁により見えなくなったトレントは今度はツタを鞭のようにしらならせ壁を壊しにかかる


「ファル!いくぞ!閃刃乱舞!」


側面に回り込んだセリスが私に巻き付いたツタを切り落とす


「キャァーーーーーー」


「よっと!」


「セリス!ありが…」


「まだだ、しっかり掴まってろ」


トレントが無数のツタをこちらに向けて伸ばしてくる

セリス私を抱えたままツタを避ける、


「剣浪様、少し時間稼ぎをおねがいしても?」


「そこはお師匠じゃろ?まぁファル嬢逃してすぐこいよ。儂が倒してしまうぞ」


剣浪が狼の姿に戻る


「お願いします」


「こっちからもいくぞ!我山瀑布(ガザンバクフ)


無数の岩ががトレントにむかいとんでいく、それと同時にセリスも走り出した。


「フーセ!」


それと入れ替わりでフーセがトレントに向かって走っていく。


「兄ちゃん、交代だ!いくぞ〜!一閃砲弾!」


一閃が弾丸ならばこれはまさに砲弾だった、重い塊が

トレントに向かって飛んでいく


「こらフーセ!遠い!間合いを考えろ!」


ガジュさんが叫ぶ

ドォーーーン

トレントの足元に爆煙がおこる


「動きを止めた結果オーライ!」


「フーセ!無理だ!戻れセリスが叫ぶ」


「大丈夫!大丈夫!にーちゃんはファル姉をよろしく」


「ファル怪我はないか?できればシルちゃんともう少し離れててくれ、調子に乗ったフーセはろくなことにならない」


私を下ろしセリスはトレントの方を睨む


「私は大丈夫、早くやっつけちゃって、晩御飯の支度をしなきゃ」


「任せとけ」


セリスが走り出す。

トレントのツタの動きを剣浪が翻弄し、フーセとガジュさんが切り落としている、枝やツタは何度切り落としても再生するようだ。


「ワッパ下がっとれとゆうたろうが!」


「俺だって戦える!閃刃!」


「ワッパ!お主の魔力では一撃貰えば終わりじゃ!わしゃ知らんからな」


そういうと剣浪はセリスの元に駆け出し剣となる。

「剣浪様、こいつに弱点はないのですか?このままでは…」


「記憶を呼び出してる暇はなさそうじゃな、まぁ弱点は火なのだが…持ち技になかろう、魔力の核となるところを探すしかないな」


「あの幹の何処か…全力で一閃を打てば貫けそうですが…タメの時間を作らないと…核の場所も不明、参ったな」


トレントのツタを鞭のようにしならせた攻撃が続く、避けながらそれを切り落とすことでみんな精一杯のようだ。


「おし!兄ちゃん!やって見る!」


フーセが間合いを取る


「ヴァインヴォルドゥーーーー!」


幹に爆炎が起こる、しかし


「威力が弱い!ワッパ!魔力が足りん、理の核の力で威力を引きあげろ!」


怒りを買ったのかトレントのツタが一斉にフーセに襲いかかる、


「いかん!」


横からガジュさんがトレントのツタを切り落としにはいるが…


「グァアーーーーーー」


フーセの足にツタが突き刺さる、直ぐにガジュさんが切り落としフーセを担ぎ間合いを取る


「シル!行くよ!フーセをお願い!私はセリスの援護に入るわ」


このままではまずい、どうにか全員で逃げなくちゃ…

方法を…なにか…なにか…

頭が回らない、私を助けた時点で逃げればよかった、体制を整えて入れば…フーセをちゃんと引き止めて入れば…後悔ばかりが先行して今するべき事に頭が回らない。


とにかくセリスを援護しなきゃ


「ゴーズメル!」


トレントに向かい火球を放つ


「ファル!すまない」


セリスの息がだいぶ上がっている、無数のツタの攻撃に背を向けて逃げるのは不可能に近い。

ガジュさんも足止めの技を挟みながらフーセたちを逃す事で手がいっぱいのようだ。


このままじゃ…


「ファル!みんなを連れて逃げろ!俺が時間を稼ぐ。最悪剣浪様が倒してくださる!」


「うーんちょっと厳しいかの?朝昼気持ち悪くて何も食えんかったし、腹減ったのぉ」


「剣浪様!そこは任せろぐらい言ってくださいよ」


余裕が有るのか無いのかわからないが、いずれ手がないのは確かのようだ


考えろ…


私のせいだ…


考えろ…


このままじゃセリスが…


考えろ…考えろ…考えろ…
















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