1-1 フーセの願い
「あぁ〜世界は青いなぁ〜」
ため息まじりに空を見つめる。
丘の下の村では明日の祭りのためにみんなが精を出す中、僕は現実逃避に精を出していた。
祭りってなんだろう?
神様への感謝
神様への奉納
黙ってお供え物して祈っとけばいいじゃないか!
そもそも大人がやり始めたものだ
子供を巻き込まないでほしい
剣闘したり術のお披露目したり
そもそもそんなの役立たないんだから
やるだけ意味ないだろ?
平和なんだから!
戦争?があったらしい
大じじ様も国を守るために王都に出ていたらしい
国が分裂して2つの国になった
そしたら他の大きな国から襲われて
元に戻った。
元に戻って話し合いで解決したとか…
なにがしたいんだろうね?大人は…
戦争の名残で今も剣学と術学は
必須とされている。
100年近く戦争がないのに…
つまりだ、剣も術も駆けっこも勉学もできなくったって生きていける!
人間だもの!?
とはいえ明日の祭りではそれをしなければならない
「さてと、できなくても実は頑張ってましたアピールの為にジタバタして見ますカァー」
丘の斜面から身を起こし崖のほら穴に足を向ける
村に帰ってジタバタしたところを見られると一夜漬けがバレてしまう。密かに対策を練る為、いわば秘密基地にての悪あがき?もとい特訓だ。
ともあれ剣技は一朝一夕ではどうにもならない
術だ!見た目が派手で威力はなくてもこれは!と言うやつを見せればなんとか…うん…ごまかせるはずだ
ともなれば、やはり爆発系
村長の家からはいしゃ…借りてきた
呪術の巻き物…絵がついてるからダブンイケル!
どうせ僕の術じゃ爆発まではできないだろう、それくらいの自覚はある。
しかし煙と風さえ起こせればきっとそれなりにみえるはずだ!?それぐらいならばきっと…なんとか…
それにうまいことこの洞穴の崩れたとこを吹き飛ばせちゃったりしたら秘密基地も広くなって一石二鳥!
巻き物を開き呪文?を読む
「風と光の断りをヤブリ、アマツカミノ…なんとかが…イニシエのキン…を…乳…で…かい…
最後は読める!」
「バインボルドー!」
カラカラと小石が転がり落ちて来る
な…何かはおきたが…爆発には見えなかった…
が…詠唱適当でもなんとかなるかもしれない
絵から読み取るに大爆発の呪文だそれっぽくなるだろ…ってか、なって…お願い!
バインボルドー!バインボルドー!バイン、ボルドーぉーーーー!
どれだけやっただろうか?
実は石を手で外に運んだ方が早いのではないかというかんじではあったが穴は広がった…しかし
爆発は起きなかった。
「ダメだー欲張ったー」
始めに習うのが風の呪、次に水
友人たちは火や土の呪をならっている、まぁ僕も習っているんだけれど…爆発はレベル高すぎたー
「もういいか…長い詠唱の呪を丸暗記して唱えてる間に攻撃してもらって気絶する、今年もこれで行くか!」
お祭り対策も毎年恒例になったところで
ふと奥に目をやる
無意味な特訓により洞穴から洞窟にレベルアップした秘密基地。
祭りが終わったら探検だなぁ〜今は灯りもないし何があるかわからないし…そう!セリス兄なら喜んでくれるはずだ。セリス兄と行こう!
まぁまだ瓦礫が続いてたら意味ないし…確認はしておくか…
崩れた瓦礫を登り奥を覗く
洞窟になったと思ったほら穴はどうやら大きなほら穴になっただけのようだった…
「剣?」
ほら穴の奥に石の剣がささっている
しっかりとまっすぐ突き刺さる剣が…
「かっカッコいい!!!」
勇者の剣?伝説の剣?神々の剣!
これ抜いたら俺勇者?
キタコレ!
石をかき分けて穴を大きくしほら穴の奥に滑り込む
つかを握り一気に……
そうだよね片手じゃダメだよね
両手で握り一気に…
しかしビクともしなかった
これあれか?
ここは昔祠で、崖崩れが起きて塞がって。
石を切り出して作った御神体的なあれか?
そうか…神様かー
抜いたらすごいです。みたいなのとは違うのか〜
がっかりしながらもそれでも新しい発見というか特別なものを見つけた喜びはある。
きっと剣の神様だよな、明日の祭りもあるし祈っとくか
それならお供え物ぐらいしないとな…
サイドポーチからコヤックの実をだす。
祭りで備えられる物をはいしゃ…もらってきた高級果実。神様に備えるものだからちょうどいいだろう
剣の前に置き
お祈りした。
「剣術が…いや術学もあるし…」
「やっぱり願いは1つだよなぁー欲張たらダメだよねーそれなら…なんでもできるようになれますように」
よし!
お祈りも終わったし
帰って明日の根回しをセリス兄に頼むか!
お供えした実を掴みポーチに入れ…
「それ…もってかえるのか?」
「供物としたんじゃないのか?」
声がほら穴に響く
「えっ!?はっ!??」
「だってここで腐ったら嫌だし!」
どこから聞こえたかわからないが混乱して素直に答える
「供えたなら置いていけというか…お前その実を絞って我にかけろ」
剣に目をやる
剣というか石
いやいや石も剣もお話出来ませんよ?
「どこ見てる?目の前にあるだろ、儂ココだよ?目が見えないのか?お前今の今まで俺に語りかけてただろ?おーーい?」
剣に目をやる、石の剣である。
「はいそうそこ!はいコウヤクジュの実をだして」
「えっと神様ですか?」
「神様?……神様だ」
「えっなんの…?」
「なんの?…えっ剣だろ?見ればわかるだろ?儂、剣の形してるだろ」
「絞ってって実を潰し…」
「それ以外に何がある?あれか?お前は残念な子か?
さっきもあれだよな欲張るなーとか言ってたのになんでもーとか言ってたし」
「ダメですか?願いなんだからなんでもいいじゃないですか!!」
「わかった、しまうな実を出せ!お前の願い叶えてやるから…」
「ほんとに?何でもできるようになるの?」
「何でもできるようになるからね、それ絞って?」
なんとも威厳さが感じられない神様だが石の剣が話す時点でこれはこれで面白い、願いが叶うかはさておき、僕はコヤックの実、改めコウヤクジュの実を絞り、振りかけた。
石の剣だったそれは輝き、姿を変え
光り輝く伝説の剣へと…
…………
伝説の剣へと………………
そもそも伝説の剣ってどんなだ!?
光り輝いた剣は石から金属へと変わった
普段剣術で使ってる剣よりは高級そう
うん、あれだ、実は切れ味がすごいとか…特殊能力があるとか…
「儂、思うにお前、なんかガッカリしてるだろ?」
「伝説の剣って案外、話盛ってたのかなぁー?」
「儂、言っとくけど、今ちょっと魔力が戻っただけだから病気で立たなかった子が勇気を出して立ち上がった!すごい!ケンロウがたった!ケンロウがたったわ〜ぐらいのレベルだからな?儂魔力戻ったらすごいんだからな!」
「神様はロウというんですか?」
「誰がロウじゃ?なぜ?ケンはどこいった?あっあれか剣のロウさんみたいなことか、それと神様だったり伝説の剣だったり安定しないのう…」
「ではなんとお呼びすればよろしいですか?」
「お前、突然礼儀正しかったり生意気だったりどっちなんじゃ?残念さが、増しておるぞ?儂の名か…どれがええじゃろうなぁ」
「ディヴァイスター!」
「おっよく知っとるの、ちょっと見直したが儂、あの名前嫌いなんじゃ」
「ディヴァイスターなの!?おとぎ話に出てくる世界をまとめた勇者の持つ剣」
「過去の話じゃ、ほれ儂キラキラしたイケメンというよりクールなダークヒーローぽいじゃろ?どうせなら魔剣アシュラでよべ」
「アシュラ?知らない、聖剣じゃないの?魔剣なの?ディヴァイスターの方が有名だからいいじゃん」
「ディヴァイスターはだめじゃ、あれは儂が全快になった時の名じゃ今はほれ、あれじゃろ、みんなガッカリするじゃろ?後から実はディヴァイスターでした〜って方がかっこいいじゃろ?」
「なるほど確かにその方がかっこいいですね!?」
「なんか儂も頭悪くなってきた気がするの?じゃぁ最近の名前で七星剣の一刀、剣狼ならどうじゃ?」
「結局最初に戻るんだ、爺ちゃん、昔自慢したいからわざとフリいれたんですね?」
「そこはツッコミ入れるんじゃな、お前ボケかツッコミかどっちかキャラ決めてくれんかの?儂も振り回されて大変じゃよ」
「七星剣だったんですね〜世界をまとめた聖剣と世界を分けた二刀魔剣アシュラと七星剣は同じ剣だったんですね」
「お前二刀アシュラ知っとるじゃないか!?なぜ知らんといった?」
「勇者の剣の方が伝説っぽいから、マケン、イヤゼッタイ」
「まぁええか、ケンロウ様とよべわかったな?」
「ところでケンロウ様?約束の方は?これいかに!?」
「そうじゃったな、願いは〜なんでもできるようにじゃったな、それなら何とかなるじゃろう、儂の鞘に白い玉が付いとるじゃろそれを取れ」
「白いってか灰色?ですけど取りましたよ、他色の玉はどうします?赤と青と緑ぽいの」
「他の玉はそのまま、触れるでない、さっきお前もいっとたろ?欲張ると願いは叶わなくなるぞ?」
「なるほど、して?これを身につけておけばよろしいのでしょうか?」
「身につけてといえばそうなのじゃが……飲め」
「飲むの?握りしめて願うだけじゃだめ?」
「まぁできなくもないがお前の魔力じゃ足りんな、飲んだ方が直ぐに願いが叶うぞ?」
「飲んだら魔力が溢れるとか!力が増す!増強剤みたいなことですね!?飲みましょう!ひ弱なボディーにサヨウナラ!?こい!我が真の姿よ!?」
「あゝ残念な子が確定したの…」
「ウォォ〜〜そして僕の体は光り輝き!力が!力が溢れてくる、熱い!胸の奥が熱いんだ!」
「胸焼けじゃな」
………?
「何も起こらない、どうやら失敗したようだ」
「いや願いは叶えたぞ、お前は何でもできるようになった」
「なるほど、身体的な変化はないんですね、つまり!? 」
岩場に手をかざす
「バインボルドー!!!!!」
そうこれにより大爆発が…
起こらなかった…
さっきより石がちょっとおおきかったかな?
「…嘘つき…ケンロウさんは嘘つきですね、ディヴァイスターとか嘘つくし、もうあれですか?いたいけな少年で遊んでるんですね?スケコマシー」
「スケコマシは関係ないじゃろ?お前が勝手に勘違いしとるだけじゃ、お前がさっきから使おうとしとる術は一体なんじゃ?聞いたことないぞ?バインバインとかどんだけ乳が好きなんじゃ?いったい何をしようとしとったんじゃ?」
「これ」
巻物を広げてみせる
「なるほどのーってかお前はここでこんな術使おうとしとったんか?死にたいんか、たわけが!?」
「何でもできるっていたのに、術も発動しないし飛べないし、瞬間移動もできないし」
「さっきからピョンピョン飛んどったのは飛ぼうとしとったんかい、なんかもう儂一周回って好きになってきたぞ?いいか、願いはかなっておる、お前は何でもできるようになっておる、出来ないのはお前のやり方が間違っておるか、もしくは知らないからじゃ」
「どういうこと?」
「まずさっきの呪文が発動しなかったのはな、まず呪文自体が間違っておる、バインボルドーとかゆうとったろ?ヴァインヴォルドゥじゃ」
「ヴァイン」
「あっまて」
「ヴォルドゥ」
爆発が起こる
通って来た穴の周りにあった石が吹き飛び崖の下へと落ちていく
「そうかこれが俺の真の力」
「ばっかもぉーーん!!!」
爆発音より大きな声が響く
「よかった儂また生き埋めになるかと思ってもうこの世と別れを告げようか迷ったわ、しかもお前の真の力はそんなちょっとの爆発なんか!?逆にそんなもんでよかったのかと儂も悲しんどるよ」
「出来ましたね〜〜ほんとだ出来たー」
「お前…術についてどう理解しとる?」
「唱える!不思議なことがおこる!やった!」
「あゝ儂頭痛い、いいか?まず術ってのはな、魔力を練る、詠唱、術名の3行程あってって、聞けい!?」
「知ってまーす散々聴いた話です」
「もういいわ、いずれな今の術な、ちゃんと唱えたら今ごろ儂らは生き埋めになっとる、儂…生き埋めでいいんじゃろか?」
「何でもできる僕が唱えたのに土砂がちょっと崩れた程度なのはなぜですかー」
「お前は何でもできる、しかしな、術ならその呪文の知識、魔力、が足りない。飛ぶなら翼が足りない。早く移動するならその筋力が足りない。つまりじゃなお前は何でもできる才能はもったがその才能を使う基盤がないんじゃ」
「え"ぇーーーーーー
それじゃ意味ないってか今までと変わらなじゃない ですカァー!俺よく言われますよ?やればできるって!」
「儂は何でもできるように間違いなくした…鍛えればな」
「嘘つきー嘘つきー」
「儂もう疲れた…封印して欲しくなってきたわい」
こうして僕は何でもできるようになった。
できるよ!
ほんとだよ!?
がんばれば…




