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沖縄県・尖閣諸島
会議の翌日、田中官房長は秘書官が手配したヘリに乗ってこの場所に異動していた。眼下にある魚釣島には小さいながらもしっかりとした船着き場と白い建物が建っている。中国とのいざこざが絶えなかったこの島になぜこのような人工物があるのか?まぁ日本が整備したからなのだがそのきっかけを作ったのは実の所中国である。尖閣問題が起こる前から中国は自国の海軍力の強化を積極的に行っていた。それは日本で言う海上保安庁と同等の組織である海警局も同様だった、特に日本でも話題になったのは排水量10000tを超える大型巡視船の存在だ。これが正式に配備されたとき無論尖閣諸島にも投入されることになり当時の海上保安庁は手を焼くこととなった、日本政府もこれに対応するために保有している巡視船の中で最大の大きさを誇っていたしきしま型を投入することになる。投入当初は接近する中国船を日本船が追い返すというのを繰り返していたがだんだんと相手が意固地になってエスカレートしていき仕舞には船同士のど突きあいに発展していった。事が起こるのにはそう時間はかからなかった、警備に当たっていたしきしま型巡視船2番船あきつしまが中国の10000t巡視船の領海侵入を防いでいた最中、相手が体当たりを仕掛けてきたのである。当然あきつしまもうまくいなしながら対抗するが最終的に衝突されることとなりその衝撃で舵に支障をきたし特定方向にしか進めなくなった。そして進む方向が不味かったあきつしまの前には魚釣島があり最大速度で動いていたあきつしまはそのまま座礁、横転して負傷者をだす。負傷者は速やかに回収されたもののあきつしま自身はそのまま残される形になったのだがこれが日中両政府の頭を悩ませることとなる。日本は回収しようにも船体が完全に岸に上がっていて持って帰ることは出来ずかといって軍艦構造であるあきつしまを放置する訳にもいかずそうなると現場での解体となるがそうすると業者の者を上陸させなくてはならなくなりお隣さんがうるさい、対する中国も事を起こした張本人でありこれがきっかけに民間では開戦の噂が飛び交いそれを聞きつけた海外資本が国外に流出、経済が思いっきり傾き国民の不満がたまっていき政府の首が閉まり始める。この事態に慌てた中国政府が報道官を通して言わせた言葉が・・・
「今回の事態(中国経済の混乱)を引き起こした責任は日本国にあり、かの国は速やかにこの事態を終息させる義務(中国への経済支援)がある」
と言った訳なのだがこの言葉を受けた日本はこの言葉の意味を・・・
「今回の事態(あきつしまの座礁)を引き起こした責任は日本国にあり、かの国は速やかにこの事態を終息させる義務(座礁船の撤去)がある」
と受け取ってしまいあきつしまの撤去に乗り出したのである。
この解体作業にあたって魚釣島では解体業者が上陸する→長期間の作業→寝泊まりするところがいる→建物を建てる→活動するための物資がいる→民間船がくる→上陸させづらい→港をつくる→なんか実効支配が強化されているラッキーという状況になり、中国政府も自国の経済が傾いたことに慌てすぎてその遠因となった事件を忘れていた事と経済危機を軽く見せようとして言葉をぼかした結果引き起こしたことだがこれにはかなり怒ったらしく色々言ってきたのでその時の日本政府が一言「国際裁判所に行きます?」と言ったのが中国の民衆に火をつけてしまいそれに押されるような形で提訴、無論敗訴したのがまた民衆に油を注ぎ中国政府は自国を押さえつけるのに躍起になり国外に構えなくなるという結果になった。まさに愚民化政策の成れの果てである。その尖閣諸島もいまでは個人の所有物となりその所有者が今回、田中官房長が会いに行く人物でもある。
ヘリポートに着陸し地に足をつけた田中官房長が伸びをしながら周りを見わたす。何となく察してはいたが案の定出迎えは無いようだ。一応メールは出しておいたがそんなものを気にするような奴でもないかと思いながら建物に歩を進める。島に建てられた建物群のなかで一番小さい建物が彼女の仕事場兼住居でありその扉を開け中に入ると奥の方から何やら女性の声が聞えてきた。
「修君発電施設の発電効率落ちているから様子見てきて、あと農場施設で今日の昼食を適当に収穫したら実験施設に置いてあるサンプルのデータを取ってね、それから・・・」
「陽御子ちゃん、ちょっとタイム、そんないっぺんに言われても覚えられないって」
「ったく役に立たないわね、じゃあ発電施設だけでも見てきてよ、アカ、アオ悪いけど食料調達任せる。ムラサキとミドリ、キイロはサンプルの様子を見てきて」
「・・・相変わらず忙しないところだな、陽御子」
「あ、おじいちゃん来ていたの?」
しばらくやり取りを見ていた官房長であったがいつまでも自分に気づく様子がないので話しかける。その言葉でようやく気付いたのか田中官房長の孫である八洲 陽御子は軽く挨拶を済ませる。この様子だと確実にメールは読んでいないなと思いながらソファに腰を下ろす。彼女の方は某SF映画に出てきそうな缶型のロボットに指示を出して今では幻の品となった紅茶を淹れさせる。どうやら実験で栽培していたものらしい国内が落ち着いたら民間に技術提供も考えているようである。
「それで急に来てどうしたの?今色々大変なんでしょ?」
「一応メールで要件を送っておいたのだが、まぁ言葉で説明するよりこっちの方がお前さんにとってはいいだろう、ほれ」
そう言いながら鞄から分厚い書類の束を取り出して彼女に渡す。受け取った八洲はそれをパラパラと1分も掛からずに読み終え内容を頭の中に入れる。
「随分と面白い事になっているのね、それでこれの調査を私に?」
「そういうことになるな、他の人材はお前の推薦があればそっちを優先するがどうだ?のってみるか?」
しばらく考えた後おもしろそうと呟いて彼女が了承してくる。一先ずこれでこちら側の人材の確保は完了となった、そのあと彼女からの質問の応酬に数時間付き合う事とは別に高天原でも動きがあった。
「そういう訳でこれから向こうに行ってもらう事になったからよろしく、オモイカネ」
「別に構いませんが私今謹慎中なのですがよろしいのですか?」
「あ、これ一応あの件の罰も兼ねているからそこのところもよろしく」
思い出したように追加で話すアマテラス様にオモイカネ様が意外そうな表情を見せる。てっきり謹慎処置で終わりと思っていたようだ、そんなわけないだろと表情で察したのかアマテラス様がツッコミを入れる。それで火が付いたのかアマテラス様による説教という名の愚痴が始まる。そもそも何故オモイカネ様が謹慎になっているのかというとタケミカヅチ様が日ノ出で爆発事故を起こした少しあとまで遡る。
ツクヨミ様に連れられて現れたオモイカネ様がはじめに見たのは疲れて突っ伏して寝ているアマテラス様であった、そんなアマテラス様をツクヨミ様がつつきながら起こす。まだ若干寝ぼけているようだが意識が覚醒したようで伸びをして体をほぐしている。
「う~ん、どうしたのツクヨミ?」
「姉上、オモイカネを連れてきましたが・・・」
「?・・・あ~連れてきてくれたの?ありがと・・・ってオモイカネちょっと話があるからそこに座りなさい」
「あ、はい」
アマテラス様にすごまれて言われたとおりに座るオモイカネ様、余りの威圧感に正座です。
対するアマテラス様はというと両手を腰に置いて仁王立ちのポーズ、ツクヨミ様はこの後の展開が読めたのかどこかに退散していった。
「それでなんで呼ばれたのか心当たりはある?オモイカネ」
「い、いえ、まったく・・・何かありましたのかな?」
アマテラス様の尋問に答えるオモイカネ様ですが目線を逸らしているあたり怪しさ満点です。そこに追撃するようにタケミカヅチ様の事をアマテラス様が話すと額に汗を浮かび上がらせてくる。何というかすごくわかりやすい性格だ。
「・・・それでもう一度聞くけど本当に心当たりがないの?」
「いや~あはは・・・すいません」
観念したのかオモイカネ様が平謝りをする。アマテラス様もわかればよろしいと短く言った後はオモイカネ様の説明に耳を傾けて黙っている。
オモイカネ様がなぜタケミカヅチ様を向こうに送り込んだというとタケミカヅチ様の希望が半分、実験目的が半分という訳らしい、神々が力を回復するまでおとなしくしている時にその回復速度が神によって違うことに気付きその要因を思案した結果人々の認知度に比例していたのでそれなら人に可能な限り近づいて活動すれば回復も早くなるのではという考えが浮かび、それを確かめるために当時暇を持て余していたタケミカヅチ様を送らせたようだ。
説明を聞き終えたアマテラス様が深くため息をつく、言い分はわかったがそれでも一言こちらに報告してほしかった。今回は何事も、とはいかなかったが平穏に済んだからよかったがこれで何か大事になれば大惨事である。オモイカネには相応の対応をしなければならない、一先ず当分は謹慎にして罰は後で考えることにしよう。
「それが今回の派遣に含まれるのですか?」
「そうよそう、ついでにあなたの立てた推測を自分で確立してみなさいよ、一石二鳥でしょ?」
時は戻って日ノ出派遣前の高天原にてアマテラス様がそう答える。なんか四字熟語の使い方がすこしずれている気がするがそれは置いておこう、オモイカネ様も火に油は注ぎたくはないのでここは従う、自分自身で確かめられるならそれはそれで好都合でもあるというのもあるだろうが・・・
「それでアマテラス様、行くのは分かりましたが私はどういう立場で向こうに行けばよろしいのでしょうか?流石に神としていくわけにはいかないのでしょう?」
「それなら確か日本政府の文部化学省が適当に肩書を用意しておくそうだけど?」
「左様でしたか、ところで化学ではなく科学ですのでそこは悪しからず。では私は準備に取り掛かりますのでこれにて失礼いたします」
話し言葉ではわかりにくいボケにこれまた分かりにくいツッコミを入れてオモイカネ様が姿を消す。さてこの後はどのような事が起こるのか・・・それは神様ですらも知らない。




