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ゆめたんか  作者: にゃー
7/7

奈々波まことは夢をみる


その日ー

ゆみと一緒にまゆに謝って一緒にまゆに散々怒られて帰りが遅くなってお母さんにも怒られたその日、私は夢をみた。


「やぁ、奈々波まこと。今日はお疲れ様。

きみにしては上出来だったよ。」


「あ!あいむ。」


見覚えのある白い何もない部屋。

あいむの部屋だ。


「……あいむが私を呼んだの?」


「まあね、最後に話でもしようかなって思って。遊馬ゆみも呼びたかったけど彼女はきみみたいな不条理な能力はないからここにはこれないんだ。」


「………最後……?」


「うん、最後だ。

ぼくは今日これから消えてなくなろうと思う。」


「なに……言って……」


「………ナイトメアってさ、夢の世界があるから産まれるんだ。そして、いまこの町の夢の世界はぼくしかいなくてぼくがいるからこの世界はあるんだよ。」


「よくわかんないよ!

わかるように言って!」


「この世界はぼくが存在するためだけにあるんだよ。ぼくが存在し続けるためにナイトメアは産まれてしまう。

だからこの夢の世界を消滅させるよ。」


「なにそれ!?お互いの世界のバランスは?!」


「もともとない世界を作ったせいでバランスをとる必要があったわけだよ。

この世界が消滅してもきみたちの世界には何の支障もない。」


「わ…私はもっと夢を見たいよ……!!」


「見れるよ。もともとはきみたちが見る夢と夢の世界は別物なんだから。

それこそきみは朧げにだろうけどこれからも人の夢に干渉し続けるだろうね。」


「あいむは……あいむはどうなっちゃうのさ!?」


なんで……なんでこんなに苦しいんだろう。

なんでこんなに涙がでちゃうんだろう。

むかつくヤツなのに。

名前を呼ぶのも嫌なくらい嫌いなやつだったのに。


「言っただろ?消えてなくなるんだよ。」


「なんでよ!?らしくないじゃん!!

あいむは自分のことしか考えないやつじゃん!!」


「やれやれ、ひどい言われようだな。

それに質問が多い。相変わらずなやつだね、きみは。」


「なんなんだよ……いきなりさ……。」


「まぁ、ぼくは十分生きたよ。夢の生物が言うのもおかしいけどね、十分生きた。

きみたちの世界のいろいろを犠牲にしてね。

遊馬ゆみもきみもその犠牲の1つだろ?

よかったじゃないか。ぼくが消えればぼくに付き合って悩む必要もなくなるんだから。」


「そういうところがむかつくの!!!!」


「………じゃぁ、逆に聞くけど、

今後、誰かの想いを壊すことをきみたちは続けていけるのかい?

もしかしたらまた、きみの友人の想いかもしれないよ?

それにまた倒せないようなナイトメアが産まれたらきみは人を殺せるかい?」


「壊すよ!!これは現実じゃないんだから壊すよ!!

それにまゆとゆみを……あいむを守るためなら人だって殺すよ!」


少し口もとを緩めながらあいむは続けた。


「無理だよ。きみたちは優しすぎるんだ、奈々波まこと。

きっと心がもたない。」


真っ白な部屋の壁が少しずつ、少しずつ粒子になってなくなっていく。

その向こうに見える景色もやっぱり真っ白で、でもこの部屋以上に何もない真っ白な空間が広がっていた。


「いやだ……いやだよ……やっとあいむのこと……」


ふわふわ浮いていた足を地面につけてあいむが抱きしめてきた。

小さい体で優しく。

癖っ毛が頬にあたってくすぐったい。


「友達のためにって気持ちはおかしいかい?」


そう言って少し離れて、でも両手を私の肩から離さないで真剣に、でも優しい目で私の目を見て問う。


「………っ……おかしくない…おかしくないよ……あいむ……!!」


目が熱くて開けられない。

力強くあいむを抱きしめ返す。


「ぼくはたくさんの犠牲の上で生きてきたんだ…今更悲しんでもらうような命でもないよ。最後にきみたちを絶望から解放できるって思えば上出来な命じゃないか。」


「でも……でも……!……っうぐ…ひぐっ……やっぱりさみしいよ……!……さみしいよ…!」


「うん、さみしいかもね。

きみと会わなければ、繋がらなければこんなめんどくさい感情もつこともなかった。」


「あいむ………。」


あいむがどこでどの時点でそうおもうようになったのか私にはわからない。


「でもきみに会えてよかったよ。

ありがとう、まこと。」


そう微笑みながら部屋の壁みたいに私の腕の中からあいむは消えていった。

叫んだ。声がかすれるくらいに叫んだ。

私たちを想って消えていったちょっと変わった友達の名前を。







「………で、まこととゆみは元気がないわけね。」


「………あうー…。」


本を読みながら淡々とまゆが言う。

私とゆみは上の空で同じ格好で空を眺めている。


「気にすんなとは言わないけどさ。

もう、この町のために苦しまなくてすむんだから、そこは喜ぼうよ。

そのほうがその子も嬉しいと思うけど。」


本を読みながら頭をかいている。

これでもまゆは心配してくれて言葉を選んで話している。


「わかってはいるけどさぁ……やっぱりさみしいんだよー、まゆー。」


「わ…私が…あんなことに…ならなければ……。」


「ち、ちがうよ!ゆみのせいじゃないよ!」


そうだよ、ゆみのせいなんかじゃない。


「………はぁ………まこと、そのあいむって子は最後になんて言ってたのさ?」


「………ありがとうって……。」


「ゆみ、それってなんの言葉?」


「………感謝のことば……。」


「じゃぁそういうことじゃん。

さみしいとか自分のせいとかじゃないよ。

うじうじうじうじ同じところでうずくまっててさ。これじゃその子が報われないって。」


「……ゆ……ゆみーー!!」


2人してゆみに飛びかかって泣いた。

わかってるよ……わかってるつもりなのに……やっぱり同じことを考えちゃうんだよ…。


「うぐ………そ…それにまことはこれから勉強の嵐だからね。少なくともどこかしら高校には入ってもらわないと。」


「わかってるよー!同じ高校いくんだもんね。なるべく高いところ入れるように頑張る!」


「いいよ、そこまでは期待してないから。」


「たはは……手厳しいなぁ…。」


「……まこととまゆは同じ高校にいくの?」


「うん!高校でまゆと一緒に絵を描くんだ。」


「………あ…あの!!私もー












「それでさー、3人で同じ学校に行けるようにいま頑張ってるんだ。主に私が。

2人とも頭いいのにもったいないよねー。」


「2人にとっては天秤にかけるまでもないことなんだろうね、きっと。

きみは友達にめぐまれているね、まこと。」


「にゃはは、まったくもってその通りだね!

でもやっぱり申し訳ないから少しでもいいところにいけるようにがんばるんだ。」


「もう大分手遅れな時期だけどね。」


「なんとかなるよ、きっと。」


「ぼくも応援してるよ。まぁ、ぼくが応援したところでだけど。」


「そんなことないよ、ありがとう、あいむ!」


「……相変わらずだね、きみは。

さて、じゃぁそろそろ起きたほうがいいんじゃないかい?」


「え?」


いたずらっぽく笑うあいむが私にでこピンをする。






「………はにゃ………?」


「あ…起きた…」


気づいたら自分の部屋のベッドの上にいた。

何故か私の机でまゆが本を読んでいる。


「もう8時だよ。」


「…………あー!!!

起こしてくれてもよかったのにー!!!」


「いま、起こしたじゃん。」


そう言いながら空中ででこピンする真似をしている。


「…………たはは……。」


おでこを押さえて私は笑う。


「がんばれ、まだ間に合うよ。」


「んにー!!いじわるー!!」


「ほらほら、急いで急いで。」


「………ねぇ、まゆ………。」


「ん、なに?」


「……あはは、なんでもない!!」


私も前を向いて進まなきゃいけないのわかってるよ。


でももう少しだけ立ち止まっててもいいよね……もう少しだけ。
















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