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ゆめたんか  作者: にゃー
6/7

遊馬ゆみは夢をみる


「なにここ………。」


おそらく私の町だった場所。

家は瓦礫になりビルは崩れあちらこちらで火が燃え上がっている。

あまりに悲惨すぎて自分の町なのに自分が今どの辺にいるかも把握できない。


「きああああああああああああ!!!!」


少し遠くに黒い霧につつまれた巨大なナイトメアが叫んでいる。


「………こんなの……誰の夢なの……?」


「これは遊馬ゆみの夢だよ。」


「不思議少女……」


気がついたら横で不思議少女がふわふわ浮きながら癖っ毛をいじっている。


「これは遊馬ゆみの想いだ。

精神が安定しない子だとは思ってたけど、まさかこんなことになるとはね。」


「……たしかにすごいことになってるね…。

なにが起きたの?」


「隕石だよ。

小さい隕石がたくさん降り注いできたんだ。

この町を壊したいって想ったってわけだよ。

まったく、とんでもないよ、遊馬ゆみは。

なにを思ってこんなことを…。」


「………ゆみは?」


「さあね、最初はナイトメアを殺そうとしたよ。びっくりだよ。自分の想いじゃないか。

理解できないね。」


「……それで…?」


「勝てなかった。勝てるわけない。

自分自身の想いなんだから。

その後は知らない。どっかに行っちゃったからね。大体の場所はわかるけど遊馬ゆみは負けたんだ。探してどうするのさ。」


悪気がないところがほんとうに感に触る。


「ゆみが勝てなかったんなら私をよんだって勝てないんじゃない?

それともゆみみたいに私にも力を貸してくれるの?」


「今回は緊急だからね、もちろん力は貸すよ。でも別にあのナイトメアに勝てとは言わないよ。」


「え?」


「遊馬ゆみを殺すんだ。」


「…………!?」


「大体の場所はわかるって言ったろ?

時間もないんだ。それじゃぁ、いこうか。」


「ちょ……ちょっとまってよ…。

ゆみを殺すってどういうこと……?」


「本人が死んでしまえばその想いだって消える。遊馬ゆみを殺せばナイトメアも消えるよ。」


「できるわけないでしょ!!」


「遊馬ゆみは1度、夢で人を殺してる。

あのときも今みたいに星が降ってくる夢だったね。」


私はゆみとはじめてあったときのことを思い出した。

真っ暗な教室で1人でまだ見えない星を眺めてたゆみを。


これでよかったんだよね。


「………ゆみ……。」


そんなの悲しい…。

涙が溢れて止まらない。

ゆみは1人で悩んで答えをだして、それでも悩んで。

それがどんなにつらいことなのか私には想像もできない。


「この状況で遊馬ゆみは人を殺したんだ。

自分が殺されたって文句はないはずだよ。」


「……きっとゆみは自分で死のうとしてるよ。これを止めるために。」


「ありえないよ。これが遊馬ゆみの想いで願いなんだ。それにこれは遊馬ゆみの夢だ。

夢で人を消滅させることができるのはイレギュラーな存在だけだ。

今は遊馬ゆみはイレギュラーじゃない。自分で死ぬことはできないよ。」


「…ゆみも悩んで傷ついたんだね……。」


わかってるよ。これはゆみのほんとうの願いなんかじゃない。

涙をぬぐいナイトメアのほうに目を向ける。


「私はゆみを助ける。助けたい。

そして謝りたい。友達なのに傷つけちゃったことを謝りたい!」


「助けるってなんだい!?

これは遊馬ゆみのー


「これはゆみの願いなんかじゃない!!!」


「奈々波まこと…きみはなにを………。」


「力を貸してよ、あいむ。

私はゆみの気持ちとちゃんと向き合うんだ!」


「……この夢が遊馬ゆみではなくて違う他人でも同じ行動をとったかい?」


「……とらない。たぶんゆみと同じことをしてたと思う。

友達だから…ゆみだから助けるんだよ。」


「……やっぱり人は変わってるね。繋がりを大事にしたがる。

まぁ結局ぼくには何もできないんだ。

きみの決めたように行動すればいいさ、奈々波まこと。

さぁ、ぼくの頭に左手をおいて願ってくれ。」


「あいむ……。」


「夢の力は想いの力だよ。

奈々波まこと、きみと遊馬ゆみの繋がりに、きみの想いにぼくはかけるよ。

ぼくとしても今後、遊馬ゆみがいなくなるのは困るしね。」


「…ありがとう。」


あいむの頭の上に左手を置いた。

その瞬間、私は光につつまれた。

なにかに吸い込まれるような、なにかが流れてくるようなよくわからない感じ。

私は願った。想った。ゆみのことを。


「さぁ、いこうか、奈々波まこと。

遊馬ゆみの想いを壊すんだ。」


目を開ける。

私もゆみみたいに魔法少女の様な格好になっていた。

なんか昔、こんな絵を描いたことがあるような気がする。


「うわー!私いまちょーかわいくない!?」


「うん、きみの容姿なんて今どうでもいいからさ。」


「うにー!相変わらずむかつくやつだな!」


「きみはマイペースすぎるんだ。

ほら、時間がないよ。」


「わかってるよ。よーし。

それじゃ、いっちゃうよー!!」


持っているステッキでナイトメアにめがけて構えた。

構えた瞬間、光に私はまたつつまれた。


「え?え?なにこれ?!」


「なるほど…それがきみの想いなんだね、奈々波まこと。」


光の外にあいむが消える。

なにもない。

真っ白な空間に私はいた。

少し向こうに体育座りをして泣いている女の子がいた。

側によって目の前に座って話しかけた。


「どうしたの?なんで泣いてるの?」


「……ひっく……私……どうすればいいか……わかんなくて……こんなこと……」


「………ゆみ……」


その女の子は幼い姿をしたゆみだってわかった。

ナイトメアの正体。

ゆみの想い、願い、悩み、あすまゆみそのもの。


「……ごめん……さい……ひっくっ……ごめんなさい……!!」


「………ゆみはこれが間違いだっておもってるの?」


「………うん……っ…

私…こんなの……ほんとは………望んでない……!」


「じゃぁだいじょぶだよ。」


「……え?」


にかって歯を出して笑って見せた。


「間違いだって思えてるんならだいじょぶだよ。」


「………どういうこと……?」


「私たちってさ、いろんなこと悩んでいろんなたくさんの人を傷つけて、自分自身も傷ついて、そうやって前に進んでいくんだよ。

そうやってひとつひとつ間違いを見つけていくんだよ。」


まゆもゆみも梶くんも夢にでてきたOLさんもみんな誰しもがそうやって間違いに悔やんで傷ついて前に進んでいくんだよ。


「んでさ、それに耐えられそうにないときはね、友達に頼るの。」


「……とも……だち……?」


「うん、私もまゆもすごい心配してるんだからね。頼ってくれた方がすごい嬉しいよ。」


「……まこと……。」


気づいたら幼かったゆみはいつもと変わらない中学生のゆみの姿になっていた。


「間違うことってきっと間違いなんかじゃないんだよ。」


「でも私……人を殺して………まゆの願いだって壊しちゃって………」


「私だってゆみの立場なら同じことしてたよ。知らない誰かよりゆみとまゆを助けたいもん。」


ゆみの手をとる。

冷たくて真っ白な手をしていた。


「まこと……。」


「…………だからね……」


私は心の中で未だに葛藤している。

でも……だから私はあえて肯定する。


「だから…これでよかったんだよ、ゆみ。」


ゆみは大声で泣いた。

ゆみもきっとわかってるんだよね。

でも言葉にしたら負けちゃうもん、私たち。

どうすればいいのかわからないもん。

だから一緒に背負うよ。

この痛みと一緒に前に進もうよ、ゆみ。


白い空間にひびがはいり崩れていく。

隙間から私たちの町が視界にはいる。


私たちは頭からゆっくり一緒に落ちていく。

おそらくナイトメアがいたところから。

夢はなんでもありだね。


「……まゆにあやまらくちゃ……。」


落ちながら、それでもはっきりとゆみの声が聞こえる。


「たぶんあいつは謝ることに怒ると思うけどね。…うん、一緒に謝ろう。」


「ありがとう…まこと。」


「……ゆみ…ごめんね。辛かったよね。」


「……私、まことに嫌われたと思ってた……軽蔑されたと思ってた。

友達にひどいことして最低なやつだって……いや……最低だね……それでも私は自分のことばっかりで…まことみたいになれないや……。」


「ぼくは自分のことしか考えないやつが他人のためにここまで悩まないと思うけどね。」


「あ、あいむ!」


気づけばすぐ横をあいむがふわふわ浮いている。

いや、一緒に落下している。


「ぼくから言わせてもらえばそれがいいこととか悪いこととか嫌われるとか軽蔑されるとかの思考がわからないよ。

要は自分が得するか損するかだろ?」


「ゆみ、あれが真の自己中だよ。」


「…ははは……励まされないなぁ……。」


「やれやれ、それにしても人騒がせなやつだねきみは、遊馬ゆみ。」


「ご…ごめんなさい……。」


「もー!いーじゃんかー!何事もなく終わったんだから!」


「ぼくは感心してるんだよ。

きみたち人の繋がりはたいしたもんだよ。

ナイトメアを、人の想いを説得するなんてめちゃくちゃなやつだね、きみは。

うん、興味深い。」


「なんかいちいちむかつくやつだなぁ。」


「……遊馬ゆみ、きみには苦労かけたね。

あとはぼくに任せてよ。」


「………え…?」


「ちょ、それってー


そこで私は目が覚めた。




気づいたら教室の自分の席にうずくまってた。

外はもう暗くて電気も消えている。


「……まゆは帰っちゃったかな……。」


「帰るわけないでしょ、ばか。」


「……まゆ……。」


真っ暗な教室から小さくまゆの声が聞こえた。その声は少しかすれていたような気がする。


「電気つけてたら水月先生が来るじゃん。

私はまことと違ってそういうのかわすの苦手なんだよ。」


携帯を見ると夜の8時をまわっていた。

私が寝てからかれこれ3時間はたっていた。


「………ありがとう…まゆ……迷惑かけてばっかだね……。」


「私にはこれしかできないんだよ。やらせてよ。」


「……うん、だからありがとうなんだよ。

ただいま、まゆ。」


「……おかえり、まこと。」


まゆがいなかったら私は立ちなおれなかっただろうし、ここまで頑張れなかった。

私の幼なじみで親友で私の1番の理解者。


「おらぁ!!こそこそ話し声が聞こえると思ったらまたお前らか!奈々波!!早絵月!!何時だと思ってんだ!!」


暗い教室の蛍光灯にあかりがついたと思ったらなんかおちつく怒鳴り声が聞こえてくる。

まゆは体が硬直していた。


時間が遅かったのもあって説教はまた明日ってことで今日は帰された。


「あー、やっぱり水月先生怖いや。

まことはなんで平気なのさ?」


「んー………慣れ?

私、子どもの頃からいっぱい怒られてるから。」


「いーのか悪いのか、まことは相変わらずまことだね。」


「あはは…………ねぇ、もう夜遅いんだけどさ……少し付き合ってほしいところがあるんだけど……。」


「わかってるよ。それじゃぁ、会いにいこっか。」


「………うん!!」


「的はずれに謝ってきたら説教してやるんだから。」


「……たはは……何時に帰れるかな……。」


そう言いながら私たちはいつもの帰り道とは別の道を並んで歩く。





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