遊馬ゆみは正義を定義する
私たちは1日目のテストが終わり3人で駅前のタコス屋にいる。
「ゆみ…なんで私の夢のこと………。」
「………ま…まことがあの夢を見たってことは全部話しておかなきゃだと思う……。」
「……私は聞かないほうがいいやつかな?」
「……ううん…まゆにも聞いてほしいかも……友達だもん……隠し事はしたくないよ…。」
「そっか、ありがとね、ゆみ。」
「……あの夢はなんだったの?」
あの夢ー
つっちーが階段から飛び降りて梶くんがそれを見て逃げて訳わからない化物が現れる夢。
散々夢を見てきたけどあんな夢ははじめてだった。
「あの夢はまことの夢じゃないの。
か…梶くんの夢でまことは梶くんの夢を見てたの。」
「……んにゃ?」
「ご…ごめんね!説明下手で……。」
「まこと、とりあえず最後まで話を聞こうよ。そういう反応、悪い癖だよ。」
「あはは……ごめんごめん。」
まゆは私の悪いところをちゃんと言ってくれる。口は悪いやつだけど、そういうの言い合える仲が嬉しかったりする。
「ごめんね、ゆみ、続けて続けて。」
「う…うん!
ゆ、夢ってね、その人の想いからできてることが多いの。その人が想っていることが夢になるの。
梶くんは……土浦さんのことを恨んでる……んだと思う。
だからあの夢は梶くんが願っていることが夢になったんだ………と思う。」
「梶くんがつっちーを………。」
私たちは何も知らない。
梶くんはつっちーにいじめられてたのかな?
わからないけど何か恨みをかうようなことをしていたんだ。
夢で見るぶんには自由なんだろうけど何かもやもやする。
「夢になるだけで終わるんならそれはいいんだけど……想いが強すぎるといけないものが産まれることがあるの……。」
私の脳裏にあの黒い何かが浮かぶ。
つっちーの死体から現れた黒い存在。
「そ……それって……。」
「うん…まことが最後に見た黒い化物みたいなやつ。私たちはナイトメアって呼んでるけど。」
暑くもないのに汗がではじめる。
「そのナイトメアってのが産まれると何かよくないの?」
まゆは冷静に頭をかきながら質問する。
長い付き合いだからわかる。
まゆは不安なときにこの仕草をする。
まゆは実際に見てないから想像するしかないのだけれど私たちのことを心配してくれている。
「ナイトメアはね、夢を現実にしちゃうんだ……。ナイトメアには……想いにはそういう力があるみたい。」
「……え……じゃぁ……。」
あの夢が現実になるってことはつっちーは階段から落ちて…。
「だ、大丈夫。梶くんの夢から産まれたナイトメアは…わ…私が消滅させたから……。」
「ゆみが?」
気まづそうに恥ずかしそうにしながらゆみはつづける。
「私も2年前にはじめて今のまことみたいに人の夢を見るようになったの。
理由はわからなかったけどその日から私はナイトメアを消滅させる役割を与えられたんだ……。」
「……誰に?」
「あいむっていって夢の住人って言ってた。
今も夢の中ではサポートしてもらってるの。
私がはじめて人の夢を見たときにいろいろ教えてくれたんだけど……まことのときは会ってない?
なんかふわふわ浮いてて癖っ毛の女の子なんだけど……。」
「会ってないよう、そんな不思議生物。」
「そ、そっか……私もよくわからないんだ。
ただあいむに言われるがままにやってきただけだから……。
1回だけ失敗したことあって大変さは身にしみてるし倒さなきゃいけないって思うし………。」
「んー……よくわかんないや。」
「ご……ごめんね……。」
「とりあえずゆみはすごいんだね!!」
「……え?」
「正義の味方じゃん、それ!
つっちーだってゆみがいなきゃ大変なことになってたわけだし、ゆみはえらい!すごい!」
「そんな……私……そんなたいそれたことは……。」
「ゆみ、私もそれはすごいことだと思うよ。」
「……まゆ……。」
「今まで誰にも知られず頼ることもなく頑張ってきたんだよね。
それがどれだけつらいか私は想像もつかないよ……。
正義の味方だよ、それ。
でも今日からは私たちだけはゆみの頑張ってるの知ってるから。
だから弱音でも愚痴でもなんでも話してよ。
まことはともかく私にはそれしかできないからさ。
私はゆみの味方でいたい。」
「うん!そうだ!!頼れ頼れ!!
奈々波さんもいつだってゆみの味方だよ!」
「……まぁ、そういうわけだよ、ゆみ。
友達なんだから頼ってよ。」
「わ……私……私…………。」
ゆみの目から大粒の涙がこぼれおちる。
ずっと1人で辛かったんだろうな。
ほんとうにゆみは強いと思う。
「よしよしよーし!
次回からは奈々波さんもナイトメア討伐頑張っちゃうんだからね!!」
「嘔吐して腰抜かしてるやつがよく言うよ。」
ゆみが落ち着いたころにタコス屋をでて私たちは帰路を歩く。
「しゃらっぷ!!女の子が汚い言葉使わないの、!!それにまゆは実際に見てないから言えるんだよ!!ほんとのほんとに怖かったんだからね!でも今度はゆみと一緒だし大丈夫だし!!ゆみはベテランさんだし!」
「あ……えっと……頑張るね。」
「…そもそもまことはまたその誰か別の人の夢を見るの?」
「………さぁ?ゆみ分かる?」
「見ないなら見ないほうがいいよ。一緒にいてくれるのは嬉しいけどやっぱり友達が危ない目にあうのはいやかも……。」
「もー!私もまゆも同じ気持ちなんだけど!」
「……まぁ、その通りなんだけどなんでお前は私の気持ちを勝手に言うかな…。」
「照れるなってば~。」
「…うざい。」
「………あ…ありがとうね、まゆ、まこと。
でもこればっかりは私にもわからないよ。
私だって見るときは見るし見ないときは見ないんだ。」
「毎日ってわけでもないんだね。」
「うん…週に2回あるかないかくらいかな…。」
「それでも大変だね……じゃぁもし私も見るようなら一緒に頑張ろうね!!」
「私だって見る可能性はゼロじゃないだろうしそのときはよろしくね、ゆみ。」
「2人とも……ほんとうにありがとう…。」
安心したような顔でゆみは私たちに手をふって別れた。
その日の夜も私は夢を見た。
「……あれ?ここどこかな?」
真っ白い壁に囲まれた部屋。
窓はなく扉がひとつあるだけの真っ白いなんもない部屋。
これも誰かの夢の中なのかな。
「………ゆみもきてるのかな?」
「遊馬ゆみはきてないよ。」
「…んにゃ?だれ?」
宙にふわふわ浮いてる女の子がいた。
ショートの髪の毛は癖っ毛なのかあちこちにとびはねてる。
「ぼくはあいむだよ。遊馬ゆみから聞いてるだろ?」
「ああ、不思議少女か。」
「失礼だな。ぼくはきみの何倍も生きてるんだよ。」
「あははは、そっちに怒るんだ。
で、ここはどこ?」
「ぼくの家だよ。
きみと話しがしたかったからぼくが呼んだんだ。まぁ結局夢の中ってことだね。」
「へー!不思議少女はすごいね。
そんなことできるんだ。」
「すごいだろ。遊馬ゆみを他の人の夢によんでんのもぼくなんだよ。」
「んー……なんで?」
「ナイトメアを殺してもらうためだよ。
夢が現実になるのはお互いの世界のバランスを崩しかけないからね。
遊馬ゆみを選んだのはたまたまだよ。
別に誰でもよかったんだ。」
「……不思議少女ががんばればよくない?
ゆみ辛そうだったよ?」
「ずいぶん勝手な見解だね。
きみたちの世界のためでもあるんだよ?
ぼくが、っていうのは少しおかしくないかな?」
「………でも……。」
「それにぼくじゃナイトメアに勝てないしね。ぼくの力はきみたちの夢の力を引き出せるだけなんだ。
ぼく自身が強いわけじゃないんだよ。」
「んんー……不思議少女も必死なんだね。」
「ぼくだって死にたくないからね。
お互いのためってやつだよ。」
「……そっか…。で、話しってなに?
私テスト勉強で忙しいんだけど?」
「呼んだのはぼくだけど寝たのはきみだからね。まぁ話しが終わったら目が覚めるように促してあげるよ。」
「超すげー!」
「そろそろ話してもいいかな?
きみと話してるとなかなか話しが進まない。」
「たはは…親友いわく悪い癖らしいです…。
どうぞどうぞ、話して話して。」
「単刀直入に言うと他の人の夢に干渉するのをやめてほしいんだ。」
「……んにゃ?昨日のことを言ってるの?」
「昨日のはもちろんだし今までだって毎日の様に干渉しようとしてたじゃないか。
夢っていうのは不安定なものなのに更に不安定になる。1人ならまだしも2人もイレギュラーに干渉されるとちょっとね。」
今までっていつも私が見てる夢って人の夢だったんだ。
いつもはおぼろげに見るだけだったけど昨日は初めてはっきりと見た。
「そう言われても見たくて見てるわけじゃないしなぁ。」
「無意識かぁ。奈々波まこと、きみはたち悪い力を持っているね。
どっか引っ越してくれないかな?
夢と現実の世界って場所でリンクしてるから引っ越してくれれば解決するんだけど。」
「ひどくない!?
絶対に引っ越さないからね!!」
「やれやれ、ならこれ以上きみと話してても仕方ないね。こっちでなんとかするよ。
それじゃぁね。」
「あ!!ちょっとまっー
「で、起きたら朝の6時だったと。」
「………うん。」
「テストの結果は散々だったと。」
「あの不思議少女めー!!!」




