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月夜とジン

作者: 矢積 公樹
掲載日:2015/04/16

わがままいっぱいの街が

ようやく眠気を催すころ

買ったばかりのジンを片手に

川辺に向かう

川面を渡る風は雪の気配をまとい

北国から来た鳥でさえ

岸辺に身を寄せあい

ここに集ったことを悔やんでいるよう

対岸のビルのはるか上に

満月が独りで待っている


ビンの封を切りひと口開ける

蒼く透明なささやきが舌を撫でる

月を見上げてひと息に飲み下す

喉を滑り落ちる灼熱が

痛いほどの香気を巻き上げる

たまらず眼を閉じる

香気は熱をおびたまま噴き上がり

小さな竜巻が俺を捻りあげる


熱が去るのを待って

ゆっくりと眼を開ける

水面に映る街の灯りが蕩けだす

鉄橋を渡る電車が遠くなる

月が漂いながら微笑み

俺もつられて笑う

川は流れながらささやき

俺はつまらない嘆きを忘れる

風が強く吹き

俺は洗われて軽くなる


14年前に書いた詩の断片を思い出して書き直したものです。長い定型詩でしたが、その中の使えそうな文言を抜き出し、今の自分の言葉で仕立て直しました。冬の寒空の情景が表現できていればと願っています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無理のない素直な言葉運びで、読みやすく叙情もある。突き刺すほどの冷気は感じないものの、ひんやりとした感じを受けました。そつのない詩でありながら、雰囲気を感じました。
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