1話:いらっしゃい
ここは普通とは違う世界
言葉も、文化も、服装も、普通と同じ世界
だけど普通とは違う世界
色んな事が違う世界
とてもとても綺麗な世界
「退屈だのー」
オレンジ色に染まった空を見上げながら、自宅へと向かう少年の名前は倉敷朧。
「何か面白い事でも…お?」
オボロの前に現れた白猫。特に珍しい訳でもない普通の猫である。
しかしオボロはその白猫に何かを感じ、後を付けていた。
「んー、ここは」
気が付けば神社に着いていた。オボロが子供のころによく1人で遊んだ近所の神社だ。
「懐かしいなー!」
もう白猫の事など忘れ、オボロは神社の周りを1周していた。
「………ん、誰だ?」
賽銭箱の前に少女が一人立っている。と、そこまではいいのだが…だがその少女2つほどおかしな点がある。
そのおかしな点とは…。
「白髪…?それに」
そう1つ目、その少女の髪の色は純白だった。
自分と同じくらいの歳の少女、その少女の純白の髪が夕日に照らされキラキラと光る。
そしてもう1つ…。
「猫耳…」
髪の色と同じ純白の猫耳である。
あざといな…、とそんな事をオボロが思っていると、
「あなたは…」
オボロに気付いた少女が口を開く。
「あなたはこの世界に満足していますか?」
「してないね」
意味の分からない質問。だが迷うことなくオボロは答える。
「いつもと同じ毎日を常に過ごし、面白い出来事も無いし、つまらない人しかいない、そして何より…」
スラスラと自分の思いを述べ、そして間を置き、
「スリルが足りないね」
大真面目な顔でオボロは言った。その瞬間…。
「よっしゃあ!」
先程まで落ち着いていた少女は急に大声を出し満面の笑みを浮かべた。それと同時にピコピコと動く猫耳。
「連れて行ってあげる!!」
「え?」
間の抜けた声を出したオボロを無視し少女は続ける。
「いつもとは違う毎日を過ごせて、面白い出来事ばかり、変な人しかいない、そして何より…」
「スリル満点の世界へ!!!」
「!」
少女に手を引かれ賽銭箱へと吸い込まれていったオボロ。
そして着いた先は…。
「うおっ…」
「いらっしゃい、綺麗で素敵な私たちの世界へ!」
まるでゲームの中のように見渡す限りの緑が広がっていた。