第一話 はじまりの夢
連載小説一発目です。
よろしくお願いしまーす。
ーー声がする。
「・・・さん、ごめんなさい。ごめんなさい。」
ひとりの少女が泣いている声。
目の前には黒髪の青年がこちらを見ている。
「○○さん、僕は君を待っています。ーーいつまでも。」
その青年の言葉は私に向かって言っていた。
次の瞬間この泣いている少女が自分だと気づく。
ーーなぜ私が泣いてるの。
ピピピピ
目覚ましの音で目が覚める。
ふとため息をつく。
最近同じ夢を繰り返し見ている。
しかも決まって同じシーン。
あの女の子はなんなんだろう…。
しばらく考え込んでいると私の部屋に足音が近づいてくる。
バンッといきよい良くドアが開く。
「お姉ちゃん!早く起きないと学校遅れるよ。」そう言ってくるのは妹の望美。
私は両親と妹の望美、そして母方の祖母と暮らしている。
なに不自由なく幸せの毎日を過ごす普通の高校生だ。
ただ変わっているとすれば父が婿養子だということだけ。
普通の家庭は母親が嫁ぐが我が家では父が嫁いできたのだ。
もともと母は祖母であるハルの一人娘として生まれたが結婚すれば姓がかわってしまい芳川家の跡取りがいなくなってしまう。
そこで父の提案で婿養子をとるという形になったらしい。
父は四人兄弟の末っ子で家の方は兄が継ぐから姓を遺す必要はないと笑って言っていた。
それを聞いた祖母はとても喜んで父を迎えたらしい。
「光里ちゃん、おはよう。」
私に笑ってあいさつしてくるのは祖母のハルだ。
ハルは『光里』という私の名前を名付けてくれた人。
とても優しくて私は小さい時から祖母が大好きだった。
祖母は母を産んですぐに夫である祖父を亡くし、女手で一つで母を育てた。
よく苦労話など聞かされたが最後は必ず幸せそうに笑う。
笑顔の耐えない人なのだ。
私もその笑顔を見るとつられて笑ってしまう。
だからとても祖母が大好きだった。
「おばあちゃん、来週の日曜私の友達遊びにくるからまたあれ作ってくれない?」
ハルは「えぇ、もちろん。」と言うと頷いた。
あれというのは揚げ餅のことだ。
揚げ餅はハルの得意料理で小さい時から食べてきた私の大好物でもある。
「ありがとう、おばあちゃん!」
ハルに礼を言うとすぐに支度を済ませ、いつものように学校へ家を出た。