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耳と尻尾の二等市民  作者: 沢沢


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短編小説: 耳と尻尾の二等市民


西暦2300年、東京。 朝の地下鉄の改札前で、佐藤・三毛の背すじが冷たくこわばった。

ピピッ、と甲高い電子音が響き、目の前のゲートがガチャンと冷たく閉ざされる。 「すみません、ICチップが……」 「動物人間(アニマルマン)専用の感応エラーね。ほら、後ろがつかえてるから端に寄って」

窓口の係員は、画面を確認すらすまいと目をそらした。その瞳の奥に、わずかな怯えが走る。 他者を「不完全な労働力」として管理しながら、同時にその身体能力や適応力を恐れる人間社会。その排除のシステムは、この街のインフラの隅々にまで染み付いていた。

満員電車に押し込められ、ツバの深いキャップで耳を必死に抑えながら、三毛は奥歯を噛み締めた。 人間の骨格に合わせて一律で作られたオフィスチェアは、背もたれに長い尻尾の逃げ場がなく、尾骨を常に圧迫して鈍い痛みを引かせる。一年中完璧に管理されたオフィスの乾燥した空気は、猫種の敏感な鼻のヒゲや耳の粘膜をヒリヒリと乾かしていく。

デスクに座ると、隣の席の中村が笑いかけてきた。 「いやあ昨日のデータ分析助かったよ。さすが野外に慣れてるタフさは違うねえ」

コーヒーを差し入れてくれる、気のいい同期だ。だからこそ、その無自覚な「褒め言葉」が、猫種としてのプライドと日頃の鬱屈を逆なでしていく。彼らにとって三毛は同僚でありながら、都合のいい道具の枠を出ない。

午後の大型プロジェクトの最終コンペ前、その歪みが爆発した。 中村が取り仕切る基幹データの総括部分に、市場予測の根本的な前提の崩れ――競合のシェア変動を完全に無視した致命的な計算ミスがあることに、三毛は気づいていた。

ここで指摘すれば、土壇場で中村を救うことができる。 だが、尾骨を抉る椅子の痛みと乾燥にすり減らされた神経の裏で、三毛のなかに黒い感情が這い上がった。

――ここで中村が潰れれば、このプロジェクトの主導権は完全に俺のものになる。人間サマと持て囃されながら無能を晒す同期を、ここで踏み台にして這い上がって何が悪い。

三毛は、冷徹に口を噤んだ。

数分後、クライアントの前で中村のデータは市場予測の根本的な破綻を突かれ、フロアは凍りついた。青ざめて震える中村を横目に、三毛は即座に自分の完璧な対抗データを差し出し、プロジェクトを鮮やかに救ってみせた。

「さすが三毛さんだ!」

朝、自分を「動物人間(アニマルマン)枠」の異形として冷たく排除したあの人間社会と同じ構造が、今度はオフィスの中心で、都合のいい実力者として三毛を持ち上げる。上司たちが手のひらを返したように絶賛するその歓声の中で、三毛の背筋は、あの改札の係員と同じ冷たい優越感に濡れていた。

定時を過ぎ、三毛は裏通りの静かなバーの扉を叩いた。 カウンターの隅に腰を下ろし、冷えたグラスに口を付ける。

「いらっしゃい、三毛さん。……耳が、随分と寝てますね」

店主である犬種の動物人間(アニマルマン)の女性が、無言でグラスを拭きながらかすれた声で言った。こめかみには、若い頃についた古い傷の跡が深く刻まれている。 三毛は答えず、グラスを見つめた。冷えたグラスを持つ指先が、あのとき中村を出し抜いた瞬間の歪んだ興奮で微かに熱を帯びている。その熱を自覚した瞬間、喉元までせり上がってきた吐き気を、三毛は無言で飲み込んだ。

店を出ると、2300年の東京の夜風は乾燥していて、敏感なヒゲを冷たく刺した。 明日になればまた、あの冷徹な専用改札の電子音が鳴り響く。

ピピッ。

・設定

2080年に起きた年々悪化している少子高齢化によって人類は減少に減少を重ね地球の人口は50億人になってしまっていたこの減少による労働力減少をどうにかするために、動いたアメリカ国家公認秘密マッドサイエンティストグループ アニマックスが、猫や犬などの人間と長年生活を共にしてきた動物の人間化の研究を成功させ長年生活を共にしてきた動物たちの体は変形し人間の体つきに近づき、尻尾と耳、鼻の横のヒゲ以外の部位は人間と大差ないまでの人間化に成功したが、動物の時の特有の能力や特徴はそのまま残った状態で人間化した動物人間その名もアニマルマンとして世界に公表し、世界各国の反応は好評により、アメリカ含む先進国と協力し、何十年もかけて約40億人生成し、世界中に労働力減少の改善のためにアニマルマン家族の普及をさせた。アニマルマンは、特有の言語アニマルマン語(猫化・犬化・多種族化(アニマルマン全体の共通語)の三つある)を喋り第二言語で住んでいる環境の言葉を喋ることができる。日本は日本人人口が約7000万人外国人ルーツの人口は約4000万人、アニマルマン人口約5000万人の日本総人口は約1億6000万人になっていた。義務教育にはアニマルマン語(猫化・犬化・多種族化(アニマルマン全体の共通語)の三つあり選択でどれにするか選べる)が追加された。アニマルマンは世界的に人間と全く同じ「人権」があるが、それでも少し差別はされており、外国人によるアニマルマン差別用語のsavageと言われる。訳はdo your business outside動物の時にしていた行動を差別するような形で野蛮人と言われる、日本でも差別はされており、東京や大阪、愛知では差別がひどく社会問題にあげられるほどである。差別用語「savage」や東京・大阪での差別激化の理由として、「人間の労働力を補うために作られたのに、優秀すぎて人間の職を奪った」「税金や住宅を圧迫している」という理由がある。アニマルマンの苗字は品種の名前になり下の名前は自由。公式な書類では父親の苗字に統一するが、アニマルマン同士の会話では品種で呼び合う」。アニマルマンは混血にならず、どちらかの親の品種として生まれる。人の中にアニマルマンも当てはまる。そしてアニマルマンが世界中普及するのに半世紀、普及した年は2150年。この話は2300年の話である。

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