平日の夜
晩餐会が行われる日は王様はお部屋でご飯を食べません。
どういうことかというと、いつもの晩ご飯である王様の食べ残しがないのです。
しかし、飯抜き断食コースではありません。
そんなことは私のお腹が許しません。
お部屋に戻ってきた王様がベッドに入るのを手伝ってから、お部屋でしばし完全な夜中になるのを待ってから、お椀を持って厨房へと向かいました。
厨房には召使のために、大鍋にオートミールや麦のお粥か豆のスープが作られて置かれているのです。
召使さんは自分のお椀に食べたいだけよそって、自分のお部屋で食べることができます。
私はお城の人たちから、「醜い」とか「近づくな!穢れる!」と言われているので、夜中にこっそりこうやってご飯をもらうわけです。
大鍋の蓋を開けて、覗き込むと底にちょっぴりしかないです。
あー。
でも、こういう日もあります。
私は大鍋の底のお粥をかき集めて、お椀に入れました。
お椀にもちょっぴりしかおかゆが入ってなくて残念です
私が厨房から出ると、声を掛けられました。
「メリッサ! 今から飯か?」
声の主はジャンさんです。
最近、お城に勤めはじめた平民の方になります。
私は頷きました。
お城の中は私の声を聞くだけで穢れるという人がいるので、極力話をしないようにしています。
ジャンさんは私のお椀の中を見て、
「少ねーなー。そうだ、待ってる。今、いいもん持ってきてやるよ!」
そう言って、ご自身の部屋へと戻られて、しばらくすると、チーズを持って戻ってきました。
「やるよ」
私は頭を下げてから、
「ありがとうございます」
それから、ジャンさんの愚痴が始まりました。
「城生まれの召使は偉そうで、俺をこき使いやがってさ」
人間関係にご苦労があるようです。
「お前と話をしてるのを見られたらさ、お前と話したやつは呪われるんだって言われるしさ。お前が本当に俺を呪えるなら呪ってみせろよ」
「やり方知らないです」
「だろうよ。この城の召使どもの存在そのものが呪いだぞ」
そう言って大きなため息を吐きました。
それから、私を見て、
「なあ、外国で流行った歌知ってるか?」
私は首を横に振ります。
「仮面を被った王の召使と王様の恋物語だよ。それ、お前がモデル? 皆そう言ってるぞ」
「違います。私と王様はそのような関係ではありません」
「本当かよ。王に仕える唯一の女の召使なんだろ? 貴族じゃないのに、王の私的な区画で暮らしているんだろ。で、身の回りの世話もしてるんだろ?」
ジャンさんは興味津々です。
「そうです。でも、違いますから」
「アリューデ王妃はその歌のせいで、お前と王の関係を疑ってるらしいし、宮廷内もその噂で持ちきりだよ」
「困ります」
本当に困ります。
ジャンさんは続けます。
「王様って氷の貴公子って言われるくらい美男子なんだろ。銀髪で長身ですげー人気あるっていうぞ」
「人気あるですか」
人気がどれくらいか知らないです。
ふと、ジャンさんが私の後ろに視線を移しました。
?
ジャンさんが声を上げます。
「新人の召使か? にしても、良い寝間着着てるな」
私が振り返ると、そこにはメルヴェーユ様がいました。
「私、帰りますね」
「なんだ、そいつ。上司みたいなやつか。王の区画の召使長か? もう夜なんだから、こんな時間まで召使に命令するなよ」
ジャンさんが言うと、メルヴェーユ様はふっと薄く苦笑いしました。
「それじゃ、失礼します」
私とメルヴェーユ様は王様の区画へと歩き出しました。
きっと私が長い時間戻らないのを心配して迎えに来てくれたんですね。
「ルンルンルン」




