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メリッサちゃんは王様のかわいい召使  作者: 桜雨実世


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4/12

外出

 ある日のことです。

 私の元に冷凍の荷物が届きました。懸賞に当たったのです。


 魔法によって箱ごと冷凍されているのでひえひえしています。便利な世の中です。


 箱を開けてみると、大きな蟹の足が8本入っています!


 わあ、わあ、食べられる足だ。


 8本!


 8回分!


 私はすぐに蟹を、前に懸賞で当てた収納水晶に仕舞いました。

 これはすごくて、この水晶の中に入れると、なんと時が止まるのです。


 蟹は永遠においしいまま。

 蟹なんて初めてです。


 蟹の食べ方なる紙も同封されていて、ありがたいです。

 解凍したらすぐに食べることができるとのこと。

 でも、専用の道具が必要みたいです。


 お城の厨房から借りるわけにはいきません。

 お城の人たちは醜い私が触ったものを穢れたと言って使いたがらないのです。


 私は翌日、執事様に外出の許可をもらいに行きました。自由にお外に出ることはできませんし、お金も持っていないからです。


 他のお城で生まれた召使たちはお城の中にある銀行からお金を下ろすこともあるみたいなのですが、よくわかんないです。

 私は王様のそばで一生を仕える召使というのが決まっているので、外の世界とはほぼ無縁なのです。


 だから、私の場合は執事の方に行きたい場所を伝え、許可をいただき、お金もその時もらうのです。

 このお金は私のお給料の一部で、執事の方が普段は管理しています。


 お城に仕えているので、お外に出れても二時間くらいが限度ですし、外出する日も自分では決められません。

 多分、お城の召使は皆、こんな感じなんだと思います。


 外出の許可は十日後に決まりました。それまで蟹は我慢です。


 我慢。


 我慢。


 が・ま・ん。


 一日一回蟹の脚を眺めながら、外出の日がやって来ました。


 外出する時も長袖のお洋服、仮面、フード、ブーツ、タイツ、手袋と素肌が出ないようにしないといけません。


 そして、さらに、王様の紋章が書かれたネックレスもつけないといけないです。


 そして、お城から出ると、私は男の人に声を掛けられました。

「メリッサちゃん!おでかけ?」

「は、はい」

「一緒に行ってもいいかな?」

「一人で、だ、大丈夫です」

「そう言わないでさー。一緒に連れて行ってよー」


 断りきれないので、毎回、一緒にお外を歩くことになるのです。

 最初は嫌だなと思ったのですが、荷物とか持ってくれるし、迷子にならないので、今ではまあ、いいかって思ってます。


 この妙に馴れ馴れしい方もお城の召使の方だそうですが、どんなお仕事をされているのかわかりません。


 どうも私たちのお休みの日が被るみたいで、私が外出する時、この方と必ず会うのです。

 

 ちなみに、レイエというお名前の方です。


 私はレイエさんに、

「今日は食器を買いに行きます」

「へー。お城の食器じゃだめですか?」

「ちょっと専用の道具が必要なんです。懸賞で当てて……」

「へー、何を当てたんですか?」

「か……、かぼちゃ……」


 まずいまずい。

 蟹と言ったら、分けろと言われるかもしれません。おいしいものは独り占めするからおいしいのです。


 私はカニスプーンを無事に購入し、レイエさんと一緒にお城に戻りました。

 これで、カニを食べることができます。



 メルヴェーユは表情一つ変えることなく、輪郭だけは人の形をした黒い異形から報告を聞いていた。


 王に代々受け継がれる使い魔の一つだ。


 黒い異形は明るい面白がるような声で、

「メリッサ嬢は懸賞でかぼちゃを当てたそうです」

「そうか。かぼちゃは冷凍便で届くのか?」

「さあ。それで、彼女は専用の道具が必要だということで食器屋に行き、カニスプーンを購入していました」


 メルヴェーユは静かに言った。

「蟹だな」

「蟹ですね」


 この黒い異形はメルヴェーユがメリッサが外出をする時にそばに護衛としてつけている。

 その時はレイエという若い男の姿だ。


 メリッサは異様な格好をしている上に、滅多に城内の王の私的区画から出ることすらない。まともに町を歩けるわけがない。


 一人歩きは危険だ。


 一応、王の紋章が刻まれたネックレスを身に着けさせているが、もし、万が一、そんな彼女を馬鹿にするような連中や暴漢がいたりしたらと想像しただけでゾッとする。


 心無い言葉や暴力で傷つくメリッサを見るのは、悲しい。


 異形は忠実な使い魔らしくきちんと護衛の役目を果たし、報告もする。


 メルヴェーユとしては、命の恩人でもあり、今では半身といってもいいほどの信頼を寄せているメリッサを失うわけにはいかない。


 異形が下がったあと、一人残った王は心の中で思った。

(俺も蟹、食べたいな……)

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