海賊退治(レイエ視点)
俺はメルヴェーユの影武者として今日も仕事をしている。今は会議中だ。
そんな時にメルヴェーユからテレパシーが届いた。
(船が襲われた。テレマスヴォルグアに負けないくらいにかっこいい姿になって、こっち来い!)
契約には逆らえない俺は椅子から立ち上がり、
「すまん。体調が優れない。部屋で休ませてくれ」
そう言って、部屋まで全力疾走した。
なあ、体調が優れない人間が全力疾走って無理があるだろ。
でも、俺は契約で命令には逆らえない。
これ絶対、城の連中から悪いもの食って腹下したって思われたんじゃねーか?
くそ、テレマスヴォルグアに負けないくらいにかっこいい姿ってなんだよ!
何に変身すればいいんだ。
俺は部屋に戻って、すぐに契約主であるメルヴェーユの元へと転移した。
白銀の竜。
氷の貴公子と言われているメルヴェーユの召喚獣らしいだろ!カッコいいだろ!
俺はちらりとメルヴェーユを見る。すると、メリッサの背中を抑えながら、満足げにしていた。
何してるの?
いや、いい。
とりあえず、海賊をやっつけりゃいいんだろ。
早速、氷の魔法で海賊たちを攻撃していく。
どうだよ、カッコいいだろうよ!
海賊どもも乗客どもも白銀の竜に驚いてやがる。気分がいいな!
俺は再度、メルヴェーユを見ると、メリッサの背中が膨らみ、それをメルヴェーユが必死こいて手で押さえつけていた。
スラムにダンジョンが発生した時のように、メリッサの背中から羽が飛び出しそうになっているんだろう。
でも、素手で押さえつけることができるもんなのか。
また、メルヴェーユが満足げな顔をした。
できるのか……?嘘だろ。
メリッサは俺とテレマスヴォルグアを交互に見ながら、
「私も願えば奇跡が起きるかもしれない!いでよ!イモムシさん!」
ちょ、おま……。
「無理でした」がっかりしたような声のメリッサ。
「メリッサちゃん。あのイモムシ、かなり嫌なやつだよ」エチカが言った。
おい、黙れ、糞女。
「メリッサ!無理じゃない!俺がいれば、奇跡も起こせる!」
メルヴェーユが言った。
「ほら、大きな声で空に向かってイモムシを呼んでみろ!」
「イモムシさーん!」
(レイエ!一度戻って、イモムシの姿で出直してこい!メリッサが驚かないように優しく登場しろよ!)
俺の本体をイモムシ呼ばわりするな!
くそ!
竜で気分よく暴れてたってのによ。
(さっさと出直せ!メリッサがしょんぼりしちゃうだろ!)
俺はイモムシの姿で出直すと、メリッサは喜びの声を上げた。
「わぁ、イモムシさん!」
メリッサは迷いなく俺の上に飛び乗り、叫んだ。
「私は世界で一番のイモムシライダーだぞー!」
うわ、ナニソレ、ダセッ。
……。
ちがう、俺はダサくない。
イモムシは……ダサく。
エチカが、
「メリッサちゃん。それはダサいよ」
言うなよ!
メリッサはエチカに向かって、
「ダサくないです!イモムシさんは世界で3番目くらいにカッコいいんですー」
メルヴェーユも俺に飛び乗って、
「行くぞ!メリッサ。悪者を一網打尽だ」
「イモムシさん、悪い海賊たちをゴリゴリ食べちゃえー!」
「ゴリゴリ?そうか。イモムシ!骨も残さず食えよ!」
メルヴェーユが命じた。
えぇっ!?
俺にそんな食性はねーよ!
「戦闘活劇みたいです!」
んなわけねーだろ!
イモムシが人間食いだしたら、ホラーかスプラッタになっちまうんだよ!
おい!
海賊ども俺に近づいてみろ!
俺は命令には逆らえないんだぞ!
だから近づくな!
近づいたらお前ら食うしかなくなるだろ!
テレサが、
「イモムシさん、可哀想」
って笑いながら言いやがった。
お前、俺を馬鹿にしてやがんだろ!
エチカは、
「可哀想」
おい、お前は本当に俺のことを憐れむな!惨めになるだろ!
俺の活躍もあって、海賊たちは戦意を失い、投降したり逃亡した。戦いは終わったらしい。
俺は心身ともすっかり疲れたが人を食わずに済んで良かった。
千年以上生きているのに、今日だけで千年くらい老けた気がする。
最後にメリッサは俺に向かって、
「お礼にご褒美あげるです」
ご褒美?
こいつにもそんな他人を労う思考ができたのか。
俺は感心していると、次の瞬間、メリッサは仮面を少しずらして、俺につばを吐きかけた。
え?
メルヴェーユが、
「こら、メリッサ!お行儀が悪いことはしちゃだめだって言っただろ。相手がイモムシでもつばを吐いちゃダメだぞ!」
もう一人の男が、
「エチカさん!あなたのせいですよ!あなたが女の子のよだれはご褒美だって教えるから!」
「私、悪くないけど」エチカさんは涼しい顔で言いました。
ここ豪華客船だよな?
何が起こったら、んなもんを教える事態んなるんだよ。




