計画(チシャ視点)
メルヴェーユに形ばかりの謝罪をした王妃アリューゼの兄チシャは、久しぶりに会った妹を叱りつけていた。
「お前が妊娠したというつまらない嘘をついたから、俺はわざわざ謝罪に来る羽目になったんだぞ!」
「嘘のつもりはなかったのです!ただ……月のものが遅れて……」
アリューゼは明らかに狼狽している。
チシャの怒りは収まらない。
「だったら、来た時に来ましたと素直に言えば良かっただろう!そうしたら、こっちの王宮だってお前の懐妊を発表せずに済んだんだぞ!お前のせいで俺たちがどれだけの痛手を負ったのかわかっているのか!」
アリューゼは泣き出した。
「メルヴェーユ様はそんなこと一言もおっしゃらなかったし、怒りもしませんでした!私のことをすっごく愛してるから」
「アホ!よく聞け!」
チシャは思わず怒鳴っていた。それから、説明を始めた。
「メルヴェーユはお前が流産したと発表したのは温情じゃないぞ」
「え?」
「長い間、両国間で争っていた鉱山があるだろ!」
「魔物の巣になって……」
「それで、和平をする必要があって、お前がメルヴェーユに嫁いだ。両国間で協力して、魔物を倒して、鉱山の利権や領有権はその後決めようって決めていた」
「存じてます」
アリューゼは何を今更といった様子で、こちらも顔を赤くして言った。
チシャは腕組みをし、イラつきを隠さずに、
「いいか!俺たちはお前の嘘のせいで、鉱山の領有権を明け渡さざるを得なくなった上に、魔物の掃討作戦の最前線を担うことになったんだぞ!」
「え?」
「お前の嘘がこの国の王家に恥をかかせた。その恥を隠蔽するための手数料みたいなもんだ」
「そ、そんな」
アリューゼはショックを受け、蒼白になっている。
チシャはなんとか交渉を有利に進めるために、メルヴェーユの弱みを握ろうとメリッサと面会しようとしたが、彼女の部屋にいたのは裸の魔人だった。
しかも、見たところ、かなりの高位存在。
王家が契約で縛って使役している使い魔かもしれない。
だが、なぜ召使の小部屋にいたのか。
考えれば考えるほど頭がこんがらがってくる。
チシャは客室に戻り、側近たちと話し合った。
側近の一人が、
「メリッサは船旅に出ているそうです」
「どの船に乗っているかわかるか?」
「は!」
側近は有能で、メリッサが乗っている船もすでに特定していた。
「メルヴェーユはメリッサを大切にしていると言ったな。よし。海賊を雇って船を襲わせて、メリッサという女を人質にとれ。我軍が海賊船を襲い、メリッサを救う。そして、メルヴェーユの元に戻せば、恩も売れるし、こちらにも多少分のある形で決着できるかもしれん」
「早速手配いたします」
チシャはニヤリとした。
客船如き、海賊船が本気を出せば、落とすのは容易い。




