出発!
私がお城に出る時、王様はどこにもいませんでした。そういう日もあります。
見送りに来たのは執事様です。
「ウィル様がともに入れば問題ない。あの方はとてもお強いからな。どんな魔物だって百人力だぞ」
すごい人なのですね。
私は言われた通り、すこぶる重い鞄と私の荷物が入った鞄を持ち歩いています。
ヒィ。重すぎる。
合流したウィルさんが重いカバンを見て、
「持とうか?」
「駄目です!これは王様から誰にも渡すなと言われています!」
「そうか」
私はあまりにも重すぎて、途中から、目から汗が流れてきました。
「う、うぅ」
「メリッサ。持ってやるよ。いくら王の命令とはいえ」
「だ、駄目です!」
「だが……」
「やめてください!」
「わかった」
私たちは更に歩きます。
鞄を引きずったら、王様の大事な鞄が傷つく。
ヒイヒイ。
「う、うぅ」
「メリッサ。持ってやる!」
ウィルさんが手を伸ばしました。
「わーん!触っちゃめです!」
執事様のウィルさんは百人力という言葉が頭の中に蘇りましたが、負けられません。
「う、うぃ。う、うりょい、やりゅのかぁぁ!お、おっりはた、たくさんの蟻をいっぱい、ふんできたんだぞー!やんのか、あぁ~」
「ええぇ!」
ウィルさんは雄叫びを上げました。
あわわわ、殺される!
「助けて、おちん◯さん!」
私は思わず叫んでいました。
そんな時に後ろから聞こえたのが、
「メリッサちゃん!」
「メリッサ!」
テレサさんとエチカさんの声でした。
エチカさんは私の前に躍り出ると、短剣を抜いて、
「ちょっと!たとえ騎士でも貴族でも容赦しないわよ!」
私は鞄にしがみつきました。絶対離しません!
「違う、俺は違う!俺はこの子と船に乗るように命令されただけで」
テレサさんは私の頭を撫でながら、
「メリッサちゃん、あの人知り合い?」
「はいです。王様の乳母兄妹で、魔物を百人力で倒す強い人です」
「ちょっとすれ違いがあったんでしょうね」
私は事情を話すと、テレサさんが、
「鞄を魔法で軽くしたり浮かせたら?」
「!それなら、重くないです。ウィル様、失礼しました」
「いや、いいんだ。ハハハ」
ウィルさんは船に乗る前から疲れている顔をしています。
船に乗り込む時、船のお姉さんが、
「えっと……確か」
すかさず違うお兄さんが、
「いいんだ。その方たちは」
「は、はい」
ウィルさんは不思議そうな顔をしました。
そして、船は出港。
港をあとにします。
わー、船が動いてます。
ウィルさんと一緒にお部屋に戻ると、お船と同じくらい王様から持たされた鞄も動いてます。
わー、鞄すごい。
次には、鞄からナイフの刃が飛び出してきました。
ウィルさんが私をかばうように前に出ます。
切り裂かれた布の下から登場したのは、王様です。
「メリッサ!俺も来たぞ!」
とても、機嫌良さそうに笑っています。
でも、普通の人には無表情にしか見えない程度の変化です。
はいです!
ウィルさんは何故か四つん這いになっていました。
王様は、
「なんだ、椅子になりたいのか?あいにく、俺は家臣を椅子にする趣味はない。なあ、メリッサ!」
そう言って、王様は部屋に備え付けられた椅子に座りました。
「座り心地が悪いな。メリッサ、ほら、俺の膝に乗れ!一緒に海を見るぞ」
はいです。
海はキラキラできれいです。




