おかえりなさいとただいま(メルヴェーユ視点)
メルヴェーユが離宮から城に戻った頃、メリッサもひょっこりとレイエとともに帰ってきた。
メリッサの頭を撫でて、怪我がないことを確認する。
機嫌は良さそうだから、ひどい扱いは受けていない。
彼女は周囲に人がいないのを確認した。それから、懐から黒ジュースを取り出し、メルヴェーユに差し出した。
「おぉ!黒ジュース!」
黒ジュースはメルヴェーユが水代わりに飲みだしたことが家臣たちに問題視され、城内持ち込み禁止となったのだ。
メリッサの機嫌もいいし、メルヴェーユは限界だった。
黒ジュースを一気飲みし、着替えることもせずベッドに潜り込むと、
「メリッサ、ルンルンしてくれ」
メリッサは言われた通り、ルンルンと歌い出した。
メルヴェーユはメリッサが機嫌よくルンルン歌っていると、時々、鱗粉のような金色の光がちらりと発生することを知っている。
きちんと出ているから、留守中も大事に扱われていたらしい。
安心したのと、歌の効果で眠くなってきた。
目を覚ますと、真夜中になっていて、メリッサはまだルンルン歌っていた。
メルヴェーユは彼女の頭を撫で、
「もういいぞ。腹が空いたな」
そう言って、棚の箱からビスケットを取り出して、メリッサにも与える。
メリッサはそれをおいしそうに食べると、ルンルン言いながら、部屋からぬいぐるみを持ってきておままごとを始めた。
メルヴェーユはソファに深く座りながら、メリッサが自由に遊んでいるのを眺めるのも好きだ。
メリッサはくまのぬいぐるみを持って、
「おちん◯さん!イモムシさんを倒すです!」
!?
今、なんて言った?
メルヴェーユは思わず、ソファから腰を浮かし、メリッサに声をかけた。
メリッサは無邪気に、おままごとを続けていたが、驚いたようにこちらを振り返る。
そして、素早く立ち上がり、命令をすぐ実行できますよモードになる。
いや、今、それじゃない。
「ちょっと、もう子どもは寝る時間だから、寝ろ。な」
メリッサは首を横に振った。
自分は子どもではないと言っているようだ。
メルヴェーユはメリッサを抱きかかえ、部屋に運び、ベッドに無理やり入れて、おでこを撫でてあげた。
「よいこはねんねよいこはねんね」
この歌も大事なポイントだ。
おでこを撫でると、メリッサは眠るのだ。
眠ったのを確認してから、レイエを呼び出した。
「レイエ。お前、メリッサに何をした。おちん◯さんって何者だ。イモムシとはなんのことだ。」
レイエはメルヴェーユの前にいつも通りの黒い異形の姿として現れた。
人のような人じゃないような顔のないよくわからない存在。それがレイエである。
レイエは答えない。
メルヴェーユは痺れを切らして、
「命令だ。答えろ」
レイエは王家に契約によって縛られている使い魔なので、嘘をつくことができない。
こと細かく事情を白状させた。
契約破棄のために巨大魔石を奪うためにメリッサを利用しようとしたこと、自分の真の姿が巨大イモムシであること。おちん◯さんというのはテレサという女が使役する魔人であること。
メルヴェーユは、
「……俺が呼び出していたのは巨大ないもむしだったのか……。がっかりだな」
真の姿がイモムシである黒い異形は恐縮している。
それから、イモムシをおちん◯さんに化けさせた。
確かに、見えている。
だが、隆起した筋肉、逞しい力強い顔立ち、高い身長、突き出た角。
メルヴェーユは冷静に判断した結果、
「イモムシよりこっちのほうが強そうでカッコいい。交換できないか?」
「えぇ!?困りますよ。仲良くやりましょうよ」
レイエはそう言って、媚びるように笑った。
イモムシより丸出しのほうがカッコいい。
レイエは気を利かせたつもりなのか、竜に化けた。
「ほら、カッコいいですよ」
「小手先」
「失礼だな」
名前こそあれだが、おちん◯さんには確かな肉体美がある。




