スラムでの暮らしにも慣れてきました
私が王都のスラムにある酒場ふきだまりで暮らし始めてから数週間が経ちました。
王都の夏は夜になっても想像以上に暑くてびっくりです。
今まで山の中にある離宮で過ごしていたので、こんなに暑いなんて思いもしませんでした。
お城のように、暑い時に風の魔石で部屋を冷やせないので、、皆さん、体から汗がダラダラと流れます。
エチカさんが私を見て、
「ねえ、あんたそれ暑くないの?脱いだら?ここにいる連中だってあんたの身体のことあんまり気にしてないわよ」
私は年中、長袖のローブに仮面ですから、不思議がられるのも無理はないです。
「大丈夫です。魔法でいい感じに暑くないようにしてますから」
「それってずっと魔法使ってるってこと?」
「?そうですよ」
エチカさんはとても不思議そうにしています。
「魔力が尽きたりしないの?」
「しないです」
「嘘でしょ」
「しませんよ」
酒場の営業が終わるのは夜明け近く。
私は毎日、テレサさんの部屋で、テレサさんとねんねしてます。
窓を開けて、私は歌い始めました。
「ルンルン! ルンルン!」
王様がいる離宮に向かって歌ってあげます。
もしかしたら、奇跡が起きて、私の声が届くかもしれないから。
テレサさんがニコニコしながら、
「メリッサちゃん。おいで」
「はいです」
私たち二人は一緒にベッドに入っています。
テレサさんがふと、
「そういえば、メリッサちゃんがいつもルンルン歌うのって、夜中よね。王様だって寝てるんじゃないの?」
「王様はあまり眠れない人なのです。時々、ルンルン歌えって命令されます」
「あら、そうなの」
「ルンルン歌ってほしいって王様がいう時は、難しい顔をしていたり考え事をしていたり、怖い気持ちになる時です。だから、ルンルンで明るく照らしてあげます」
翌日のお昼頃、窓の外が騒がしいです。
お外を見ると、黒い穴が宙にできていて魔物が溢れています。
あれはダンジョンの入口で、最近多いんです。
なぜかは分からないのですが、町の中にいきなりダンジョンが発生します。
こうした攻略を専門にする騎士さんがお城にいますが、スラムには来ないんだそうです。
だから、スラムの人たちが自力でダンジョンを攻略して、消し去ります。
今もスラムの人たちが続々とダンジョンに挑んでます。
ダンジョンの中には魔石や宝物が落ちているので、一攫千金のチャンスでもあるそうです。
一階に降りると、レイエさんが鼻歌交じりに椅子に座ってふんぞり返ってました。
私はヤギのミルクを飲んで、黒くてボソボソしたパンを食べます。
レイエさんは笑顔で、
「メリッサ嬢!そろそろですよ」
「何がですか?」
「ハハ。祭りですよ」
お祭りかー。
お祭りに行ったことないから、楽しみです。
カウンターの向こうではテレサさんが冷たい目線でレイエさんを見ていました。




