聖人になった弟(メルヴェーユ視点)
メルヴェーユが八歳の頃、両親は彼の弟のことを心からかわいがっていた。
一方のメルヴェーユは愛想がなく、気味の悪い全身あざだらけの少女を召使にした気味の悪い子どもと見られていた。
だが、両親は表向きはメルヴェーユに笑顔で接し、心から大事にしているという風に接するのだ。
しかし、メルヴェーユは自分がそのように思われていることを知っていて、自分はいつか両親から捨てられるのではないかと恐怖していた。
自分の身もメリッサも自分で守らなければと、大人たちの話を盗み聞きした。
それから、無垢な子どもを演じながら、城内の色々な所に出入りし、魔道具の使い方を聞きながら、盗聴するための魔道具を手に入れた。
両親は弟があまりにも可愛すぎたため、自分を遠くに追いやり、王位継承を弟にしようと考えているのを盗聴して知った。
自分がいなくなれば、またメリッサはいじめられてしまう。
ある日の夜、室内の照明が切れたため、メリッサに照明の魔法を使って照らしてもらったところ、そのあまりの光の強さにメルヴェーユは驚いた。
「すごいな、メリッサ!」
自分と会話を禁じられているメリッサはニコニコしているだけだ。
そして、ある日、神殿から大司教が城の教会に訪れることを知った。
当日、弟が大司教に挨拶をした瞬間、全身が光り輝いた。
大人たちは驚き、メルヴェーユは、「この子は神様の祝福をもらったんだよ!」
これを聞いた大人たちもそのとおりだと頷き、大司教も感激しながら、王に、
「王子をぜひ神官への道へ」
両親は拒否することができず、弟は幼くして神殿へと送られた。
旅立つ弟を見送る時の両親の複雑な表情が忘れられない。
実際のところ、メルヴェーユは大司教が訪れる当日の朝早くに、メリッサを教会の隅に隠すように潜ませた。
そして、何時間もメリッサをそこに閉じこめた。
自分は合図を送り、メリッサはその合図通りに照明の魔法で弟を照らしたのだ。
たったそれだけなのだ。
メリッサが教会を出ることができたのは大人たちが完全に寝静まった深夜のこと。
それまでの間、彼女は一切飲まず食わずでトイレにも行かずに耐えていたのだ。
それでも、メリッサはメルヴェーユに対して、ずっと笑顔を向けた。
彼女は自分が弟が神殿へ行ったきっかけを作ったことを知らない。
なぜなら、弟が神殿へ行ったことは知っていても、その理由を下級の召使かつ半ば隔離された生活のため、知る由がなかったからだ。
メルヴェーユはメリッサは自分のためならなんでもするし、自分のために何でもしてくれる唯一の存在なのだとその時思った。
彼女以外の人間は信じられなくても、彼女だけは信じることができる。
たとえ、自分がどれだけの悪人だとしても彼女はきっとついてきてくれるに違いないという、不思議な確信があった。




