豚ラーメンの完成
昨日は王様にストップされてしまいましたが、今日は完成させるです。
お仕事が一段落してから厨房に行くと、炎の魔石がいっぱい置いてありました。
今日の厨房はすごいお料理作るのかなー。
料理人さんが、
「メリッサ。この魔石で煮るんだぞ」
「魔石必要ないです。節約大事です。なかなか魔力が減らないから魔法で充分です」
「……あの、……その、魔力の消耗は抑えたほうがいいんだぞ。魔石なら問題ないから」
「そうですか」
魔石なんて必要ないのになー。
じゃあ、煮るです。今日も臭いですー。
今日はチャーシューも作りますよ。
くつくつ。
くつくつ。
後ろで料理人さんたちが小声で、
「今日は光ってないぞ」
「光ってないな」
何か光ってたですか?
私も見たいです。
骨も脳みそも全部溶けてドロドロになりました。とても食べ物とは思えないです。さすが、高貴な人が食べちゃ駄目な食べ物なだけありますね。
私はその間、つきっきりでお世話ですよ。
おいしくなーれ、おいしくなーれの思いを込めて、
「ランランラン」
夕方近くに完成しましたが、なんかスープがうっすら光ってるです。
あー、料理人さんたちはこれのこと言ってたですか。
料理人さんたちが後ろで、
「お、おい。スープが光ってるぞ!」
「光ってる……」
またコソコソ言ってます。
さすが、豚の脳みそパワーです。
王様がやって来ました。
私がいつも抱っこして寝ている熊ちゃんのぬいぐるみも一緒です。
王様は熊ちゃんを私に見せて、
「メリッサ!今からこの熊ちゃんは一時的に高貴な王様だ!俺は今、王様じゃないし高貴じゃない」
ばっちい人になったってことですか?
「お前、今、俺が汚物になったとか思っただろ」
思ったです。
私が頷くと、王様は首を横に振り、
「違うぞ。俺はとにかくラーメンを食べてもいい身分になれたんだぞ!」
でも、王様になった熊ちゃん食べられなくなっちゃったです。
「熊ちゃんが可哀想って思っただろ?」
私が頷くと、
「こいつは人食い熊だから問題ない!」
そ、そんな!
それじゃ、私が寝てる間に食べられちゃうかもしれないです!
「問題ない!俺が熊を黙らせるから」
後ろで料理人さんたちがまたコソコソと、
「お、おい。メリッサは何も言ってないのに、王様はメリッサの言葉がわかってるみたいだ……」
「もしかして会話が成立してるのか?」
王様は料理人たちに向かって、
「メリッサの言いたいことは全部わかる!俺の体の一部だからな!」
私は王様の一部なので、王様は私の言いたいことは全部わかるのです。えっへん。
王様が、
「いいか、メリッサ!俺も豚ラーメンについて調べさせたところ、コールというものがあるんだぞ」
コール?
「あぁ、注文する時のカスタムのことだ!マシマシやカラメといったものをコールするんだ!これを呪文とも言う」
そうなのですか。
「俺が特別にメリッサの分もコールしてやる」
わからないから、ありがたいです。
「麺500gニンニクアブラマシマシカラメヤサイなし!これが俺のコールだ」
よくわからなかったです。
「お前は麺100gにんにくアブラマシマシカラメだ。お前は野菜は少しは食べないといけないからな」
わかったです。野菜食べるです。
王様の私室にラーメンを運んで食事タイムになりました。
うっすら光るスープを食べるのは初めてです。
王様は、
「メリッサ、豚ラーメンは箸で食べるんだぞ!俺はマナーの一環で箸の使い方もわかってるがお前はフォークを使え」
わかったです。
「それで、天地返しと言って、麺を野菜の上に乗せるんだぞ!」
言われたとおりに私は麺を野菜の上に乗せます。
こうして、私と王様はズルズルと麺をすすりました。
ふぁー、獣の匂い、にんにくの臭い、しょっぱさ。ふぁー、すごい料理です。
これは高貴な人が食べていい食べ物じゃありません。
高貴な方になってしまった熊ちゃん可哀想です。
王様は汁まで飲み干してから、
「メリッサの歌も元気になるがメリッサが作った料理も元気になるな」
私は別に元気になってないです。
「それにしても、部屋も俺たちも純粋に臭いな。だが、後悔はしない」
その夜、メルヴェーユは眠れずに深夜、星空を見ていた。
メリッサも自分に付き合って起きている。床に座って、ぬいぐるみたちと一緒に一人おままごとをのようなことをしていた。
普通の女の子のままごととは違い、狭い世界で生きてきたメリッサのおままごとは休日に見聞きした王都での出来事や城での暮らしが反映されている。
「冒険者のエイダさんは人を殺したので、正規のギルドからお仕事をもらえないですー。だから、ここでお仕事をあげるですー。違法な魔物のペットが逃げたのでー、騎士団とかに見つからないように生きたまま捕まえてきてくださいー」
メルヴェーユはおままごとを静かに聞いている。
メリッサの光り輝く料理を食べると、体の疲労はすべて取れ、心地よく脱力状態になる。そして、体の傷もちょっとの病気も治るし、身体能力も向上するのだ。
そのため、今のメルヴェーユは城の外の王都の風景の細かい部分までよく見える。しかも、夜なのに昼間のように鮮明だ。
今、庶民が暮らすアパートメントで裸の男女が言い合って、女が枕を振り回している。
メルヴェーユは呟いていた。
「人の痴話喧嘩を見ながら、食べる菓子は最高だな。もっとやれ」
メリッサがこちらを向いた。
「メリッサ、なんでもない」
それを聞いたメリッサはおままごとを再開した。




