行きつけのお店
私はてくてくと城下を歩きます。
人が多い広場を抜けて賑やかな市場を抜けて、どんどん昼間なのに薄暗い雰囲気の町へと行くです。
ここでは路上で目の焦点があっていないおじちゃんが、木の枝を持って、
「俺は、俺にかかってきたら、かかってこいよー!」
と壁に向かって叫んでます。いつものことです。
他にもおっぱいが見えそうなくらいのお洋服を来たお姉ちゃんが男の人の袖を掴んで、「遊んでかない?」って言ってます。
別のところでは、顔が入れ墨だらけのムキムキお兄さんが、「ちょっとおじさん!遊んでおいて、それしかお金ないってどういうこと」とか言いながら、おじさんを力ずくで引きずっていったです。
この町は他の街と比べて怖い人とおっぱいが見えそうな人が多いです。
私が辿り着いたのは酒場「ふきだまり」。
このお店は冒険者ギルドとか城の下請けとしてお仕事をもらえなくなった冒険者の人たちが集まっているです。
前に、冒険者の一人にどうしてお仕事もらえなくなったですか?と尋ねたら、おじさんは笑いながら、「仲間を殺しちまってよ。表には出られないんだよ。おっと、お嬢ちゃん通報するなよ」って言われました。
酒場を切り盛りしているのはマスターとその娘さんです。
娘のテレサさんが私に向かって、
「あらメリッサちゃんいらっしゃい」
「こんにちはです。ご飯ください」
「はーい」
テレサさんは慣れた手つきでお料理を始めました。
私は厨房に入って、隣に立ちます。
「テレサさん、豚ラーメンの作り方と材料を教えてほしいです」
「えー、豚ラーメン?王様が食べたいって言ったの?」
「言ってないです。私が食べたいです」
私は厨房からお客さんの席を見ました。
今日は冒険者の人たちは少ないです。
テレサさんが、
「今日、お客さん少ないでしょ。今、お仕事行ってるの。町の中にダンジョンが出来ちゃってね。強力な魔物が出ちゃったから、騎士団も冒険者ギルドも手を出し渋ってこの町の冒険者が出払うことになったの」
「そうだったですか」
「最近、町にダンジョンが発生することが多くてね。メリッサちゃんも気をつけるのよ」
「はいです」
こっちを驚きの眼差しで見てる女の人がいます。
褐色の肌で、おっぱいは隠してるけど、お腹丸出しの人です。
その人はこっちに来て、
「ちょっとその女の子お客さんでしょ。お客さんが厨房に入っていいの?」
「そうねー。メリッサちゃん、ちょっと椅子に座ってね」
「はいです」
私は厨房から出て、椅子に座りました。
お腹丸出しお姉さんは私を見て、
「どうして仮面つけてるの?ローブも身に着けてフードも被って暑苦しい格好。あなた子どもでしょ。それに……すごい魔力だわ」
「私は王様の召使です。命令により仮面とローブをつけてます。それと、もう大人ですー。ププー」
テレサさんが、私にパスタを出しながら、
「立派な大人なのよ。そうよね、レイエさん」
「そうですよ。背が低いから勘違いされやすくて」
今まで黙って、座っていたレイエさんが頷きました。
腹出しさんは私をまじまじと見つめ、
「どうしてそんな格好してるの?」
「全身に黒いあざがあって、穢れているから、肌の露出をしてはいけない決まりなのです」
「そのあざって、魔晶紋じゃないの?」
「なんですか、それは?」
「稀人の証よ」
マレビト?
腹出しお姉さんは、
「私の名前はエチカ。遥か南方からやって来たジプシーの踊り子兼占い師よ。人が魔法を使えるようになったのは遥か古代に魔族や天使、精霊と交わった結果なの。マレビトというのは先祖返りした人間のことで魔力の結晶がアザのような模様で出るのが特徴なの」
「へー」
「あなたからもすごい魔力を感じるから。魔法使うの得意だったりしない?」
「違うです。メリッサは生活魔法くらいしか使えないです」
私はパスタを頬張りながら答えました。
エチカさんが、
「先祖返りした稀人はね、体の成長も人とは違うことがあるの。途中までは成長したのに、急にゆっくりになったり止まったり」
「メリッサには関係ないです。お姉さんの故郷にそういう人はいっぱいいるですか?」
「ほんの少しだけいるわ。この大陸に来てからはあっていないけど。きっとこの大陸の人はあまり精霊や魔族、天使と交わらなかったのね」
「ふーん。テレサさん、黒ジュースを五本お願いします」
テレサさんは黒ジュースを出しました。
一本は王様へのお土産で、一本は今飲む用。残りはストックです。
テレサさんが豚ラーメンの作り方とレシピを紙に書いてくれました。
「豚ラーメンはニオイもきついから高貴な人が食べていいようなものじゃないの。あと、豚の脳みそを入れて煮ると、さらにコクと臭みが追加されるからより本格的な味になるわ」
「わかったです。王様には食べさせてあげないです」
「なら、いいけれど」
私はお城へと帰ることにしました。
「稀人会ってみたいです」




