朝ご飯調達
土曜日の朝です。
あうー、なんということでしょう。
王様と夜明け近くまでオセロやってご飯を調達できなかったです。
でも、大丈夫です。
なぜなら、王様は休日はお昼近くまでねんねしてるから!
今からでも間に合うですー。
ベルが鳴りました。
?
私が行くと、王様はだるそうにベッドから出て、
「メリッサ。着替える」
私は頷いて、洗面やお着替えのお手伝いをします。
支度が終わった王様は私の頭に被さっているローブのフードをめくってから、頭を撫でて、またローブをしっかりと被せました。それで、私の仮面も整えました。
「いいか、メリッサ。これから朝食を調達しに行くぞ」
私は頷きます。
王様が区画の外へ出ると、給仕の人たちが王様のお部屋に食事を運んでいる最中でした。昨日の料理人さんもいます。
その料理人さんは前へ出て、
「ただいま陛下のお食事をお持ちいたしました」
王様は、
「俺は今日の朝はメリッサの作った食事を食べると伝えたはずだ」
「しかしながら、陛下。その召使は今朝、厨房にやって来ませんでしたよ」
「そうか」
王様は静かに頷きます。
料理人さんは、
「それに、陛下には穢れた召使が触った食材と料理を食べるなどとふさわしくありません。何卒、私が腕によりをかけて作った食事をお召し上がりください」
王様は私の頭をフード越しから撫でました。それから、頬ずりしました。
「俺は五歳の時から十三年間、毎日、メリッサに体を洗われて、触られ続けている。こっちは下の世話までされている。そういうわけで、俺も随分と穢れているんだ。穢れた存在が、穢れていない存在の料理を食べるなどとんでもない。行くぞ! メリッサ」
私は頷いて、王様の後ろをひょこひょこついていきます。
その後ろを侍従とか偉い人たちがついてきます。
私は後ろを振り返って、この人たちの後ろに行こうとしました。
召使は偉い人の後ろにいかなきゃめです。
でも、王様が、
「メリッサ、来い!」
私は頷いて、ついていくことにします。
辿り着いたのはきれいなお花がいっぱい咲いているお庭です。
王様が取り出したのは、食べられる雑草マニュアルです。
「いいか、メリッサ。俺たちは穢れてるから、厨房とか城の食材を使っちゃ駄目なんだぞ! だから、庭で朝食の草を調達する。俺は草は食べたくないが、メリッサのお腹のためにも草は大事だからな!」
さすがに、侍従の人たちが止めに入りました。
「陛下! おやめください! 陛下のようなお立場の方が草などと」
「うるさい! 俺は草を食べるんだ! 外野は引っ込め! 俺が飢え死にしてもいいのか!」
飢え死に! た、大変です。
頑張って、草詰むです。
私は王様から食べられる雑草マニュアルをひったくってから、雑草を詰み始めました。
侍従の人が王様に、
「しかし、陛下! もし万が一のことがあったら」
「お前は城の図書室にある本を信用しないのか! 嘘情報を書いた本を置いているのか!」
あ、ミミズ。
アハハ。
そこに、一人の庭師のおじいちゃんがやってきました。もう大分、ヨボヨボでがたが来てるです。
「メリ坊。ちょっと元気がない木があってな、またいつもみたいに歌ってくれんかね? 坊が歌うと木が元気になるからなー」
私は草を取るのも飽きたので、頷いて、王様をほっぽらかして、木のところに行きます。
王様は偉い人たちとお話してるです。
庭師のおじいちゃんが、
「あの銀色の髪のかっこいいお兄ちゃんはどこの貴族の方だい」
「お城の方です」
「そうかい。メリ坊のあとを着いてきてるよ」
「そうですか」
「まあ、たまたま行く方向同じだけだろ」
多分、違うです。
庭師のおじいちゃんは王様の顔を見ることができる身分じゃないので、ちゃんと知らないです。
本当は私もそういう身分なのです。
元気がない木は緑色の葉っぱの中に黄色や赤い葉っぱが混ざってるです。他の木は全部、葉っぱが緑なのに。
私は元気がない木に歌ってあげます。
「ランラン」
庭師のおじいちゃんは私が歌っている間、卵を2個持ってきてくれたです。
「メリ坊、お礼だよ。いっぱい食べて大きくおなり」
もう大人なので、大きくなるのは無理です。
でも、王様の朝ご飯を手に入れました。
やった。
王様が私の頭を撫でました。
「次は肉だな」
王様は侍従たちを見ました。
私は王様の袖を掴んで、首を横に振りました。
それは食べ物ではないです。
「メリッサ。大丈夫だ。家臣を食べることはしない!」
良かったです。
一人の騎士様がやって来て言いました。
「陛下! この近くに騎士たちの宿舎がありますので、どうかそこで休憩を……」
「俺は穢れてるんだぞ!」
「はあ? 我々は魔物との戦いで、穢れるのは日常茶飯で慣れてます。必要なら、神官の力で不浄を取り除けばよろしい」
「メリッサのあざはそれで取り除けなかった。つまり、不浄じゃない。なのに、この城の連中は……」
「陛下。とりあえず、こちらへ」
私と王様は騎士様の宿舎に向かいます。
王様が、
「そいつは俺の乳母兄弟だ。名前はウィルという」
私は頷きました。
騎士様の宿舎に入ると、体が大きな人しかいないです。怖いです。帰りたいです。
王様が、
「メリッサ! 俺の傍を離れるなよ! 男というものは女が一人で歩いているだけで、物陰に力ずくで引きずり込むんだぞ!それで、言葉では言えないようなことをするんだぞ!メリッサは小さいからなおさらだぞ!」
私は王様にピッタリとくっつきました。
乳母兄弟というウィルさんは、
「そういうことをいつも吹き込んでおられるのですか?」
「俺はメリッサには多少脚色しているが真実しか言わない!」
テーブルの上にポテトチップスあるです。
じっと見つめていると、ウィルさんが、
「食べたいのかい?」
王様がポテトチップスを手に取り、
「メリッサが食べて安全かどうか確かめてやる。……大丈夫だ、このポテチは安全だ。シケってない。ほら食べろ」
1枚手にとり、食べました。
おいしい!
ウィルさんは騎士団の魔導式冷蔵庫からベーコンを取り出しました。
大きなベーコンです。
それから、パンも。
王様はいつも通り無表情ですが、喜んでます。
「メリッサ、これで朝ご飯にありつけるぞ!」
私は頷きました。
早速、騎士の宿舎でのお料理タイムです。
王様はボウルに卵を割り入れて、ポテチも入れました。
「これを焼くと絶対とうまいと思う! 焼け!」
私は頷いて、ボウルに入った卵とポテチだけを浮かせて、炎の魔法で包み込みました。
「ちょっと脂も足すか」
そう言って、王様はオリーブオイルもたっぷり入れます。
私は炎に包まれた卵とポテチに油を混ぜて、卵入りポテチをオムレツの形に整えていくです。
騎士の人たちが驚いてこちらを見てるです。
?
王様が騎士たちに向かって、
「何見てるんだ! 料理してるだけだぞ! メリッサも俺も見世物じゃないんだぞ!」
「いや、あなたがたじゃなくて……」
「飯はやらないぞ」
「は、はい」
なんか納得できない表情で下がっていったです。
王様や私が珍しかったですか?
完成したので、お皿に盛りました。
王様が、
「メリッサ、ベーコンとパンも焼いてくれ」
私は頷いて、焼きます。
出来上がったポテチオムレツにいっぱいのケチャップをかけました。
王様は満足げに、
「メリッサ。朝ご飯おいしいな」
私は頷きました。
美味しい朝ごはんでした。




