表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛秘密クラブ  作者: 白熊 猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/22

第6話 恋占い

放課後の図書室は、いつもより少し暗かった。

窓の外では雲がゆっくりと流れていて、薄い光が棚の隙間からこぼれている。

秘密クラブの時間だ。

空は扉を開けながら、小さく深呼吸をした。

「空、今日もちゃんと来たね。」

未来が先に来て、机の上に分厚い本を広げていた。

表紙には金色の文字で『占いBOOK』と書かれている。

ピンク色の背表紙にハートの模様――どう見ても、男子が一人では開けない種類の本だ。

「……なんでそんなものがここに?」

「今日の活動内容はね、恋占いをしようかなって。」

「こ、恋占い?」

「うん。こういうのも恋の練習にはいいかなって思って。」

未来は楽しそうに笑った。

その笑顔に少しだけ警戒しつつも、空は机の向かいに腰を下ろした。

いつも通り、ここでは相川でも、くんでもなく――空。

それだけで、少し嬉しくなる。

「俺、占いとかやったことないんだけど……。」

「えー、意外。こう見えて私はこういうの結構好きなんだよ?」

「そんなに意外か?未来が好きなのは少し意外だけど。」

「ふふ、どういう意味?」

「……いや、なんか、そういうの興味なさそうに見えたから。でも、女の子はそういうの好きな人多いもんな。」

未来が笑いながら頬杖をつく。

その仕草がなんとなく照れくさくて、空は視線を本に落とした。

「じゃあ、まずは好きな人との相性占いからやってみよっか。」

「いや、そういうのって……相手いないとできないんじゃ?」

「大丈夫。これは理想のタイプとか運命の人を占うようなものだから。」

「……理想のタイプ、ね」

未来はページを開いて、指で占いの欄を指した。

好きな色や誕生日、第一印象で気になる仕草――そんな質問が並んでいる。

まるで恋愛雑誌の特集みたいで、こういう本を読むのが初めてだった空はなんとなく落ち着かない。

「はい、まずは空から答えてね」

「俺?」

「そう。質問読んでくから、直感で答えてね。」

未来が軽く頬を上気させながら、読み上げる。

「初対面の人にどんな印象を持たれたい?」

「好きな人と話すとき、どんな態度になる?」

「気になる人の前だと、どんなふうに接する?」

……ひとつひとつ答えるたびに、未来がニヤニヤしてくる。

まるで心の中を覗かれているみたいで、顔が熱くなった。

「ふふっ。空って、真面目なんだね。」

「な、なにが。」

「気になる人の前では優しくしてしまうとか、素直になれないとか。可愛いね。」

「可愛いって言うな。」

「だってほんとにそう思ったんだもん。」

未来はページの隅にある結果を指でなぞりながら、読み上げた。

 「あなたは誠実で優しいタイプ。恋愛では一途だけど、照れ屋で不器用。」

空は顔をしかめながら小声で呟く。

「当たってるような、当たってないような……。」

「当たってるよ。空、そういうタイプだもん。」

「……未来になんでそんなことわかるんだよ。」

「え? だって、一緒にいればわかるよ。そういうの。」

さらっと言われて、心臓が跳ねた。

占いって、こんなに照れくさいものなのか。

「じゃあ次は、私の番だね。」

「……お、おう。」

未来が同じ質問に答えていく。

声のトーンが少しだけ柔らかくて、どこか楽しそうだった。

理想のタイプは?、という質問に、未来は少しだけ考えてから口を開いた。

「うーん……優しい人かな。」

「へぇ。」

「あと、あんまりしゃべらなくてもいいけど、ちゃんと気持ちを考えてくれる人がいいな。」

「……。」

未来の好きな人の像がなんとなくわかってきて、なんとなく落ち着かない。

言葉では上手く言い表せないが、そわそわしてしまう。

でも、未来は普段通りの表情だ。

「結果は……好きになる人は誠実で優しく、あなたのペースを大切にしてくれる相手。だって。」

「……ふーん。」

「どう? こういう人、いいと思わない?」

「まあ、いいとは思うけど……。」

「空、ちょっと目が泳いでる。」

「気のせいだ。」

俺が未来から視線を逸らすようにすると、未来がくすっと笑った。

それに釣られて俺も笑ってしまった。

2人の笑い声が、静かな図書室にふわりと広がっていく。

ページをめくる音と、微かな笑い声だけが空気を満たしていた。



そのあとも、血液型診断、誕生日別の恋傾向……と、未来は次々にページを開いていった。

恋愛運アップの色とか、相性のいい星座とか。

どれも、空にとっては未知の世界だ。

けれど、未来が隣で説明してくれる声が心地よくて、退屈どころか楽しく感じた。

「ねえ空、恋が叶うジンクスって知ってる?」

「……知らない。」

「好きな人の名前を紙に書いて枕の下に入れて寝ると、その人の夢を見るんだって。」

「へぇ……。」

「空も、やってみる?」

「いや、それはちょっと……。」

「じゃあ、私が代わりに試してみようか?空って書いてさ。」

「やめろって。」

未来がくすくす笑いながら、いたずらっぽく紙を引き寄せる。

空は思わず顔を背けた。

――けれど、心の奥ではほんの少しだけ、気になっていた。

もし本当に未来がその紙に“空”と書いたら。

どんな夢を見るんだろう。

そんなことを考えてしまう自分に気づいて、少し驚いた。

「ふふ、空って、やっぱり占い向いてないね」

「うるさいな。向いてないけど……でも、ちょっと、面白かったよ。」

「でしょ? こうやって笑ったり、ドキドキしたりするのも恋の練習なんだよ。」

未来はそう言って、優しく微笑んだ。

その笑顔を見ていると、たしかに――恋愛に関係ある気がしてくる。

たとえ本の中の言葉でも、気持ちを動かす力がある。

未来の言葉ひとつひとつが、それを証明している気がした。

それに相手のことを知ることができるのは面白いと思った。



図書室を出ると、夕焼けが差し込んでいた。

空は本棚の影で小さく息をつく。

占いなんて、信じていなかった。

でも――未来と一緒に読むと、不思議と信じたくなってしまう。

……俺の恋愛運、悪くないかもな。

そんなことを思いながら、空は未来の後ろ姿を追った。

夕日の中で、彼女の髪が淡く光って見えた。

秘密クラブの時間は、今日も静かに終わっていく。

明日も更新します。

また読みにきてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ