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恋愛秘密クラブ  作者: 白熊 猫


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第5話 クラスでの2人 その1

朝の教室は、いつも通り賑やかだった。

机を寄せ合って話すグループ、眠そうにあくびをする男子、黒板に書かれた日直の名前。

どれも日常の風景で、変わらないはずの光景。

けれど相川空にとっては、最近ほんの少しだけ違って見えている。

その理由は、一ノ瀬未来。

秘密クラブでは、名前を呼び合って笑い合う関係。

けれど今は、同じ教室の中で、まるで他人のような距離間だ。

未来は窓際の席で静かに本を読んでいた。

光の中で彼女の黒髪が揺れ、その姿はいつも通りの一ノ瀬未来だった。

凛としていて、少し近寄りがたい。

その姿を見て、空はふと、昨日の雨音を思い出した。

……変な感じだ

相合傘をして、楽しく話をしながら一緒に下校していたのに、今はただのクラスメイトで話すこともなかなかない。

教室と秘密クラブで全く別の世界にいるような不思議な感覚だ。

「おい、相川。昨日の数学の課題、やった?」

隣の席の友人、田村が話しかけてきて、空は慌てて意識を戻した。

「あ、ああ、うん。やったよ。」

「コピーさせてよ、俺を助けると思ってさ。」

「……自分でやりなよ。」

「昨日は時間がなくてできなかったんだよ。今日だけだから、頼むよ!」

「仕方ない。今日だけな。」

「サンキュー。」

そう言いながらも笑い合い、いつもの空気に戻る。

けれど、笑いながらも、視線は時々、未来の方へ向かっていた。

彼女は誰とも話していない。

本を読み込みながら、穏やかに時間を過ごしている。

ふとした瞬間、目が合った

その一瞬――息が止まった。

未来の瞳がこちらを見て、すぐにそらされる。

それだけのことなのに、すごく残念に思ってしまった。

教室では空と呼ばれることはないし、彼女のことを未来とは呼ぶことはない。

そのことが、妙に寂しかった。



昼休み。

空は友人たちと弁当を食べながら、なんとなく教室内を眺めていた。

廊下の向こうに、未来の姿が見えた。

女子数人と楽しそうに笑って話をしている。

普段の未来は、静かで落ち着いたタイプだ。

それでも、笑った顔はどこか柔らかく、教室の空気を穏やかにしているように見えた

……一ノ瀬って、こんな感じなんだ。

秘密クラブで見せる表情とは違う。

控えめで、けれど誰にでも優しく微笑む、クラスの一員としての顔。

空はその違いに、不思議な感情を覚えた。

未来ではなく、一ノ瀬としての彼女。

その距離が、少しだけ切なかった。



午後の授業が始まる直前、空のペンが床に派手に転がった。

拾おうとした瞬間、他の方向から手が伸びた。

「……あ、ごめん。」

顔を上げると、そこに未来がいた。

彼女は空のペンを拾い上げて、静かに差し出す。

「これ、相川くんの、でしょ?」

「……あ、うん。ありがとう、一ノ瀬。」

その一瞬のやり取り。

それだけのことなのに、心臓が不自然に跳ねた。

未来の手がほんの少しだけ触れた感触が、消えない。

名前を呼び合うことが許されない学校の教室。

未来ではなく、一ノ瀬と呼ばないといけないことが残念に思った。



授業中も、何度か意識してしまう。

未来がノートを取る音、ページをめくる仕草。

そのすべてが、昨日の秘密のクラブと重なってしまう。

集中しようと黒板を見ても、頭の片隅には傘の中で見た未来の横顔が浮かぶ。

あの距離、あの空気。

……だめだ、授業中は集中しないと。

このままだと未来のことが気にって他のことに集中できない。

無理やり思考を捨てるように頭を左右に激しく振ってから、授業に意識を切り替えた。



放課後。

チャイムが鳴り、教室にざわめきが戻る。

友人たちは帰る準備をしながら、ゲームやテレビの話で盛り上がっていた。

空は適当に相槌を打ちながらも、心ここになかった。

未来は教科書をまとめ、静かに鞄を手にし、席を立っていた。

その姿が、なぜか他の誰よりも遠く感じた。

ほんの数メートルしか離れていないのに、声をかけることができなかった。

秘密クラブ以外では、単なるクラスメイト――。

そんな不思議な関係を彼は守っていた。

未来がドアの方へ歩いていく。

その後ろ姿を目で追いながら、空は小さく息を吐いた。

そして、ゆっくりと立ち上がる。

……俺も行こう。



夕方の廊下は静かだった。

窓の外では、夕日が赤く校舎を染めている。

足音だけが響く中、空の胸はじんわりと熱を帯びていく。

これから秘密クラブの時間。

未来と再び、名前で呼び合う時間。

それを思うと、心の奥がふわりと高鳴った。

昼間、他人のように過ごしていた反動だろうか。

たったそれだけのことが、今は何よりの楽しみになっていた。

廊下を曲がり、図書室へ向かう途中、誰かの笑い声が遠くに聞こえた。

同じ学校にいるのに、まるで別の世界へ踏み込むような感覚。

秘密という言葉が、魔法のように広がっていく。



図書室の扉の前に立つ。

心臓が少しだけ早く打つ。

ドアの向こうには――きっと、あの笑顔がある。

教室では一ノ瀬。

でも、ここでは未来。

名前ひとつで、こんなにも関係が変わる。

それがたまらなく不思議で、そして心に響いた。

空はそっとノックをした。

秘密クラブの時間が、また始まる。

そしてその瞬間、昼間に感じた寂しさは、消え去っていった。

普段のクラスでの2人を書いてみました。

どうですか?

ぜひ感想ください!


余力があれば今日もう1話更新します

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