表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛秘密クラブ  作者: 白熊 猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/23

第23話 告白!

沈黙が続いた。

未来の「ごめんなさい」という言葉が部屋に落ちてから、もう何分経ったのか分からない。

夕陽は完全に沈み、図書室の資料室は薄暗くなっていた。

カーテンの隙間から漏れる街灯の明かりが、未来の頬を淡く照らしている。

彼女の肩が、かすかに震えていた。

これ以上泣くまいとしているのか、それとも、全部言い終えた安堵なのか。

空は、机の上で握りしめた拳をゆっくりと開いた。

心臓が早鐘を打っている。

でも、今は逃げたくなかった。

「……未来。」

静かな呼びかけに、未来の肩がびくりと揺れた。

顔を上げた彼女の目は、涙で赤くなっている。

そんな未来を見て、空の胸の奥がぎゅっと痛んだ。

「……俺、さ。」

言葉を選びながら、ゆっくりと口を開く。

「確かに、未来には騙されてたのかもしれない。でも、不思議と、嫌じゃなかった。」

未来の目が揺れる。

「むしろ……未来が秘密クラブを作ってくれたおかげで、俺はすごく楽しかった。名前で呼びしたり、SNSで話したり、相合傘したり。プレゼント交換も、デートも……。全部、俺にとって本当に楽しかった時間だった。」

話しながら、自分でも驚くほど自然に笑みがこぼれていた。

懐かしい光景が次々に浮かぶ。

未来が恥ずかしそうに笑った顔。

少し照れて、目をそらした瞬間。

それら全部が、空の胸に温かく残っている。

「だから、ありがとう。騙したなんて言うなよ。あの時間は、俺にとって大切な思い出だ。」

未来の目が大きく開かれた。

そして、その瞳の奥に、また涙が光り始めた。

「……でも、私……本当は……空を、騙して……。」

「違うよ。」

空はきっぱりと首を振った。

「未来は好きだからこそ、勇気を出して動いたんだろ?そんなの……嬉しいに決まってる。」

言葉が出た瞬間、胸の奥に溜まっていた感情が一気に溢れた。

照れとか迷いとか、そういうものが全部消えていく。

「俺も、未来のことが好きだ。」

静かな部屋に、その一言だけが響いた。

未来の目が、見開かれる。

息を呑んで、何か言おうとしたけれど、声にならないようだ。

空は続けた。

「最初は、恋の練習だって思ってた。でも、気づいたら本気になってた。未来といるとき、いつも嬉しくて、どんなことしても楽しかった。だから――。」

空は一歩、未来の方に近づいた。

目の前で彼女が小さく震えている。

その瞳には、恐れと戸惑い、そして希望の光が混ざっていた。

「未来。俺と――付き合ってください。」

静かに、けれどはっきりと。

自分の想いを、まっすぐに伝えた。

図書室の時計の針の音だけが響く。

未来は俯き、唇を噛みしめていた。

そして、肩が小さく震えたかと思うと――。

「……っ、バカ……。」

かすれた声でそう呟き、未来の目からぽろぽろと涙がこぼれた。

「なんで、そんなこと言うの……私、騙してたのに……。」

「それでもいい。」

空は即答した。

「嘘から始まっても、今の気持ちは本物だろ?だったら、それでいい。」

未来は目を見開き、そして唇を震わせた。

何度も瞬きをしながら、涙を拭おうとしたけれど、次々にこぼれてくる。

「……ほんとに……いいの……?」

「いい。むしろ、そうしてくれてありがとう。」

未来は手で顔を隠すようにして、俯いた。

小さな声が震えながら漏れる。

「……私も……空のことが、好き。」

その声は涙に滲んでいたけれど、確かに届いた。

胸の奥で何かが弾けるように、温かいものが広がった。

「じゃあ……。」

空はもう一歩、近づいた。

未来との距離は、もう腕を伸ばせば届くほど。

「俺と、付き合ってください。」

未来は顔を上げた。

涙で濡れた頬に、笑顔が浮かんだ。

その笑顔は、今まで見たどんな笑顔よりも綺麗だった。

「……はい。私も空と……付き合いたい。」

その瞬間、空の視界が少し滲んだ。

心の奥が熱くなり、涙がこみ上げてくる。

「……ありがとう。」

その一言に、全ての想いを込めた。

未来は涙を拭いながら、笑った。

その笑顔は泣き笑いで、ぐしゃぐしゃなのに、どうしようもなく愛おしかった。

「……ねぇ、空。」

「ん?」

「これからは、秘密じゃなくて……ちゃんと恋人、だね。」

未来の言葉に、空は小さく笑って頷いた。

「そうだな。練習じゃなくて、本番だな。」

未来は照れたように頬を赤らめ、そして――にっこりと笑った。

その笑顔が、夕暮れよりも優しく、部屋の中をあたたかく包んだ。

秘密の恋は、嘘から始まり、本物へと変わった。

静かな資料室に、二人の小さな笑い声が響いた。

まるで、ずっと閉じ込められていた時間がようやく動き出したかのように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ