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恋愛秘密クラブ  作者: 白熊 猫


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第21話 告白

放課後の校舎は、静まり返っていた。

部活の掛け声やボールの音も遠くに聞こえ、図書室の前の廊下には、ほとんど人の気配がない。

その静けさが、余計に心臓の鼓動を強く感じさせた。

――今日、言うんだ。

何度も胸の中で繰り返しながら、空は資料室の前に立つ。

さっき教室出伝えた「いつもの場所で待ってる」という言葉。

あのあとからずっと、いろいろなことを考えていた。

息を吸い、ドアノブに手をかける。

金属の冷たさが、少しだけ現実に引き戻してくれる。

――行こう。

静かに扉を開け、未来が来るのを待った。



部屋の中は、いつもと同じ。

いつも感じていた穏やかな温度が、今日は少し冷たく感じられた。

未来が来てくれるのを信じてじっと待つ。

心の中では様々な感情、期待と不安が入り乱れる。

静かにドアが開き、未来が入ってきた。

「……来てくれてよかった。」

「……うん。」

その声は静かだった。

笑ってはいるけれど、その笑顔はどこかぎこちない。

それ以上、会話が続かない。

沈黙が、重く、息苦しいほどの重さを持って漂う。

昨日のあの言葉のせいだ。

付き合ってみる?

それを断った自分が、今ここにいる。

けれど、今日こそはちゃんと伝えたかった。

練習じゃなく、本当の気持ちを。

深く息を吸う。

「……未来。」

名前を呼ぶと、未来が小さく肩を震わせた。

視線がぶつかる。

その瞳の奥に、自分の姿が小さく映っていた。

「昨日のこと、ずっと考えてた。」

「……うん。」

「俺……言えなかったけど、未来にちゃんと伝えたいことがある。」

未来のまつ毛がかすかに揺れる。

空の声は震えていた。

でも、それでも言葉を止めなかった。

「最初は、ただの興味だったんだ。恋の練習なんて、なんか面白そうだって思って。でも、活動を重ねるうちに……未来と過ごす時間が本当に楽しくて。」

未来は何も言わず、じっと空を見ていた。

その沈黙が、逆に空の背中を押す。

「未来の笑った顔とか、驚いた顔とか、そういう全部が気になって、放課後のこの時間が楽しみになって……気づいたら、未来のことを考えてる自分がいた。」

言葉にするたびに、胸が締めつけられる。

けれど、同時に少しだけ軽くもなっていく。

「だから――」

立ち上がって、机の向こうにいる未来を見つめた。

心臓が痛いほど鳴る。

手が震えているのがわかった。

「未来ことが好きだ。……付き合ってほしい。」

その瞬間、時間が止まったように感じた。

言葉が空気の中に溶けていく。

未来は一瞬、驚いたように目を見開いた。

けれど、すぐにその瞳が揺れ、唇が小さく震える。

「……待って。」

小さな声。

まるで泣き出す前の子どものように。

「え?」

未来はゆっくりと立ち上がった。

その顔は、笑顔を作ろうとしているのに、涙が今にも零れそうだった。

「待って、空。……お願い。」

その表情を見た瞬間、空の喉が詰まった。

泣きそうな顔なんて言葉では足りないほど、切ない表情だった。

「ど、どうしたんだよ。俺、何か――。」

「違うの。違うの、空。」

未来は首を横に振った。

その動きは震えていて、声も掠れていた。

「空が悪いわけじゃない。ただ、私……このままじゃダメなの。」

未来は両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。

まるで、何かに耐えるように。

空は言葉を失った。

どうして泣きそうになっているのか。

なぜ、告白を止めたのか。

頭の中が混乱する。

「未来……?」

彼女は深く息を吸い、ほんの少しだけ目を伏せた。

そして、震える声で言った。

「空に……聞いてほしい話があるの。」

「……聞いてほしい話?」

未来は静かに頷いた。

その瞳の奥に、覚悟のようなものが宿っていた。

「ずっと言わなきゃって思ってた。でも、怖くて言えなかった。」

その言葉に、空の心臓がまた早くなる。

怖くて言えなかった――何を?

未来はほんの少し唇を噛み、それからゆっくりと空を見つめた。

涙が、頬を一筋だけ伝う。

「私……空に秘密クラブのこと、ずっと騙してたの。」

――その瞬間、空の世界が止まった。

何を言われたのか、理解するのに時間がかかった。

騙してた?

「……え?」

その瞳には、涙と後悔が混ざっていた。

「ごめん、空。本当は――。」

その先の言葉は、出なかった。

未来は唇を震わせ、言葉の続きを飲み込んだまま、ただ俯いた。

沈黙が部屋を満たす。

時計の針の音だけが響く。

空はただ、立ち尽くすしかなかった。

何が起きているのか、どうして涙を流しているのか、わからない。

もしかしたらこの秘密クラブは――何か、大きな秘密の上に成り立っていたのかもしれない。

空の喉が音を立てて動く。

声を出そうとしたその瞬間、未来が顔を上げた。

涙を拭わず、真っ直ぐに空を見る。

「……だから、お願い。この先の話を、ちゃんと聞いてほしいの。」

その言葉には、覚悟が宿っていた。

空は何も言えず、ただ頷いた。

胸の奥で、何かが大きく音を立てて崩れ落ちた気がした。



窓の外では、夕陽が沈みかけている。

橙色の光が、未来の横顔を照らした。

その頬を伝う涙が、光に反射してきらめく。

騙してた――その意味を知るのは、もう少し先のこと。

今はただ、その言葉の重さだけが心に残り、空は息をすることすら忘れていた。

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