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恋愛秘密クラブ  作者: 白熊 猫


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2/23

第2話 名前呼びチャレンジ

夕暮れの光が図書室の窓をオレンジ色に染める頃、相川空は再び資料室の扉を開けた。

今日もまた、放課後の静けさの中、誰もいない教室を抜けてここまで歩いてきた。

中に入ると、すでに一ノ瀬未来が机の前に座っていた。

ノートとペンを手に、静かに待っている。

夕日を受けた黒髪が、柔らかく光っている。

「空、よろしくね。」

未来の声は、昨日より少しだけ緊張しているように聞こえた。

「よろしく、未来。」

空も少し緊張していた。

教室では名字で呼び合う関係。

それが当たり前だったから、秘密クラブでの二人だけの時間は、少し特別に感じられる。



未来はノートをこちらに差し出した。

「今日の活動はね、名前呼びチャレンジ。」

「名前呼び……?」

「うん。秘密クラブでは、教室のときみたいに名字で呼ばないで、下の名前で呼び合うの。恋人みたいでしょ?」

未来はペンで自分の名前をノートに書き込む。

未来。

「普通のことでも、恋人みたいに近く感じるかもしれない。私は相川くんのことを空って呼ぶから、私のことは未来って呼んで?」

空はノートに自分の名前を書き込む。

空。

小さく手が震える。

普段は名字でしか呼ばれない関係。

秘密クラブという空間で、名前で呼ばれるだけで、心臓の奥がちょっと跳ねた。

「じゃあ……空、今日は何の話をする?」

未来が微笑みながら尋ねる。

名前で呼ばれると、いつもより距離が近く感じられる。

照れくさいような、でも心地よい感覚が、胸の奥に広がった。

「えっと……天気とか、放課後のこととか……かな。」

空は少し照れながら答える。

とっさのことで話題選びは下手になってしまった。

少し失敗したなと思いつつも、普段の教室で話せないことも、ここなら話せそうな気がした。

未来は笑いながらうなずいた。

「じゃあ、今日の放課後の出来事から話してみようか。空は何をしてたの?」

「えっと……図書室に来る前に、少し散歩してた。」

窓の外の夕日を見ながら答える。

「天気がよくて景色が綺麗だし、風邪もちょっと気持ちよくて。」

「いいね、空。そういう時間、私も好きだよ。」

未来はペンを置き、机に肘をつきながら空を見つめる。

名前で呼ばれると、こんなにも自然に距離が縮まるのか、と空は思った。

「未来は?」

空が少し勇気を出して尋ねる。

「私は……図書室で本を読んでたかな。空のことを考えながら。」

未来が言った瞬間、空は一瞬息をのむ。

普段なら教室では決して聞けない、内緒の話。

恋愛禁止の学校では、秘密クラブだからこそ、許される距離感だ。

趣味のこと、好きな音楽のこと、昨日見た映画のこと。

いろんなことを話した。

名前で呼び合うだけなのに、心の距離が少しずつ縮まるのを感じた。

2人で普段とは違う雰囲気を楽しんでいた。

「空って、ほんとに優しいんだね。」

唐突に未来が呟いた。

すぐに視線をそらしていて、少しだけ恥ずかしそうに。

「あ、ありがとう。」

空も顔が赤くなる。

不意に褒められたことが嬉しくて、でも照れくさくて、自然に笑いがこぼれた。



ノートには二人の名前が並んで書かれている。

「ねえ、空。私、秘密クラブ始めてよかったって思ってる。」

未来が小さく笑いながら声をかける。

「うん。俺もそう思うよ。最初は勢いだったけど、楽しい。」

2人きりのクラブ活動ではあるけど、今までに味わったことのない楽しさがある。

秘密クラブだからこそ味わえる、特別な感覚だった。

「……不思議な気分だね。」

未来は頬をわずかに赤くして、微笑む。

その表情に、空は思わず微笑み返した。



活動の時間が終わる頃、二人はノートを閉じ、ペンを片付ける。

教室での名字呼びとは違い、下の名前で呼び合ったこの時間は、ほんの短いものだったけれど、空には大きな意味を持っていたように感じた。

「今日の活動、楽しかったな。」

空が小さく笑うと、未来も同じように笑った。

「私も楽しかった。名前呼びチャレンジ、またやりたいね。」

未来の瞳は少しきらきらしていて、空は思わず見とれてしまった。

「今度から秘密クラブにいるときは名前呼びにする?」

半分冗談のつもりでそういうと、未来は一瞬目を大きく見開いてから、くすっと笑った。

「明日からもよろしくね、空。」

二人は、秘密クラブの部屋を後にして、静かな廊下を歩いていく。

外の夕日は、だんだん夜の気配に変わっていく。

教室では名字でしか呼び合わないけれど、ここでは下の名前。

ほんの少しの変化だけど、急に距離が近くなったような気がして、空は照れくさくてたまらなかった。

それに自分から提案したとはいえ、今後もこの場所では名前で呼びを続けることになる。

もしかしたら、秘密クラブでは下の名前で呼ぶことが、二人にとって特別な合図になるのかもしれない。

空は心の奥で、次の放課後を楽しみに思った。

この秘密の場所で、未来ともっと距離を縮めてみたい――そう、期待を胸に抱きながら。

ストックがあるので明日も1話か2話投稿します。

楽しみにしてもらえると嬉しいです!

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