表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛秘密クラブ  作者: 白熊 猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/22

第16話 デートプラン作成

放課後。

薄い夕焼けが差し込む資料室は、静かに時を止めたように穏やかだった。

机の上には、未来が用意したノートと数本のペン。

そのページの見出しには大きくこう書かれていた。

――今日の活動:放課後デートプランを立てよう

「……デートプラン?」

ノートを覗き込んだ空が、目を瞬かせる。

「うん。」

未来は微笑みながら頷いた。

「恋人同士なら、休日とか放課後に一緒に出かけたりするでしょ?だから、今日は放課後デートの練習をしようと思って。」

「練習って、まさか実際に出かけるの?」

「うーん。とりあえずは計画たてるだけかな。」

未来は少し悩んでそう言ってから、ペンを手に取った。

「せっかく恋の練習をしてるんだから、デートについても考えたいよね。」



「じゃあまず――デート、どこに行きたい?」

「えっ、いきなり俺?」

「もちろん。男の方から提案することもあるでしょ?

未来がペンを構えながら微笑む。

空は少し考えてから、ぽつりと口を開いた。

「うーん……やっぱり、映画館かな。」

「映画?」

「うん。会話が途切れても気まずくならないし、天気に関係なく行けるし。無難かなって。」

「なるほど、安定だね。」

未来はノートに「①映画館」と書き込む。

「ただ、どんな映画がいいんだろうな?」

「うーん……流行りのやつとか?でも、1番はやっぱり、恋愛映画かな。」

「恋愛映画かー。確かにデートって感じはするな。俺はあんまり得意ではないけど。」

空の言葉に未来が少し肩を震わせて笑う。

「空らしいね。」



「次は……そのあとどうする?」

「映画終わったら……たぶん、お腹すくよな。」

「うん、夕方だしね。」

「じゃあ、軽くご飯?ファミレスとかカフェとか。」

未来が頷きながらメモを取る。

「②カフェでご飯、ね。……どんなカフェがいいとかある?」

「落ち着いた感じの。あんまり騒がしくないところ。」

「なるほど。静かで、ゆっくり話せるもんね。」

未来が書きながら、ふと笑う。

「空って、カフェとか好きなの?」

「そういうわけではないけど、デートの定番かなって。」

「空って真面目だね。でも、そういうとこいいと思うよ。」

その一言に、空の胸がわずかに高鳴った。

ペンを握る未来の横顔が、やけに近く見える。

夕焼けが彼女の髪を淡く照らし、微かな光が頬に揺れていた。

「さて……ご飯の後はどうする?」

未来が話を戻すように尋ねる。

「そうだな……といっても、もう帰る時間だろうな。夜だろうし。だから、駅まで送るぐらいかな。」

「送ってくれるの?」

「うん。暗くなるし……やっぱり女の子一人は危ないからな。」

その言葉に、未来の手が止まった。

顔を上げると、彼女は少しだけ驚いたように目を見開いていた。

「……空、そういうの、ちゃんとしてるんだね。」

「え?」

「女の子を大切にしようってしてくれるんだね。」

「そ、そんな立派なもんじゃないけど……当たり前だろ?」

未来はほんの少し笑って、小さく呟くように言った。

「……そういうのが、いちばん嬉しいんだよ。」

空は返す言葉を失った。

未来の声が優しくて、胸の奥がじんわり温かくなる。



「じゃあ、まとめるね。」

未来はペン先を見つめながら、今日の話をノートにまとめていく。

その筆跡は丁寧で、ひと文字ひと文字に穏やかさがあった。

――放課後デートプラン――

①学校を出て、近くの映画館に行く

②映画を見たあと、静かなカフェでご飯

③駅まで一緒に歩いて、見送り

「……こんな感じになるのかな?」

ノートを見せながら、未来が顔を上げた。

「こういうデートプランって、未来はどう思う?」

「落ち着いた感じで凄くいいと思うよ。無理がなくて、楽しそうだし。」

「それなら、よかった。」

ほっと息を吐く。

デートなんてしたことないから、プランに自信がなかったけど、未来に肯定されて安心した。

「でもさ、こうやって話してると、ちょっと本当にデートしてるみたいだな。」

冗談めかして言うと、未来が目を細めた。

「それ、褒め言葉として受け取っていい?」

「もちろん。」

二人の笑い声が、静かな部屋に溶けていった。



しばらく雑談が続いたあと、未来がふとペンをくるくる回しながら言った。

「ねえ、空。」

「うん?」

「もし本当に放課後デートするとしたら、どんなことしたい?」

その質問に、空は少し考えた。

「さっき立てたプランかな。……でも、本当は一緒に歩きながら、いろんな話ができればそれで満足かな。」

「どんな話?」

「なんでも。学校のこととか、好きな音楽とか。別に特別なことじゃなくても、一緒にいる時間があればそれでいいと俺は思う。」

未来は静かに頷きながら、その言葉を噛みしめるように繰り返した。

「一緒にいる時間があれば、それでいい……か。」

その声はどこか柔らかく、けれど少しだけ切なさを帯びていた。



「じゃあ、次はしたくないことも決めておこうか。」

「したくないこと?」

「うん。デートの失敗も、練習のうちでしょ?」

未来の提案に、空は苦笑した。

「そうだな……強引なのは嫌かな。」

「強引?」

「うん。相手の気持ちを無視して、自分のペースで動くのは違うと思う。」

「……うん、そうだね。……よくないよね。」

未来が少し暗い顔をして小さく頷く。

「未来は?」

「え?」

「したくないこと。」

 未来は少しだけ考えてから、微笑んだ。

「……嘘をつくこと、かな。」

「嘘?」

「うん。どんなことでも嘘だけは嫌だなって。」

そういう彼女の瞳はまっすぐで、そこに映る自分の姿がやけにくっきり見えた。

でも、未来がなぜそう言ったのかはわからなかった。

空に言っているようにも見えたが、自分に言い聞かせているようにも見えた。



気づけば、ノートのページはほとんど埋まっていた。

映画館、カフェ、帰り道。

たくさんの小さなもしもの話が積み重なって、ひとつの物語のようになっていた。

「……完成、だね。」

未来が満足そうに笑う。

空も頷いた。

「すごいな、これ。なんか本当に行けそうな気がする。」

「でしょ?」

「うん。……練習っていうより、計画書みたいだ。」

そう言うと、未来は小さく笑って、何かを思いついたように顔を上げた。

「ねえ、空。」

「ん?」

「せっかくこんなにデートプラン考えたんだし……。」

未来は少し唇をゆるめて、まっすぐ空を見つめた。

「――私たちも、してみる?」

一瞬、言葉の意味が頭の中で止まった。

してみるって……本当に?

未来の表情は冗談めいていない。

本気だ。

けれど、どこかいたずらっぽい笑みも浮かんでいる。

「え、えっと……。」

空は慌てて言葉を探す。

冗談かもしれない。

でも、その声は本当に誘っているようにも聞こえた。

「……う、うん。」

迷いつつもそう答えていた。

未来がゆっくりと微笑む。

その笑顔が、まるで春の陽だまりみたいに優しかった。



資料室の窓の外、夕焼けが夜に溶けていく。

机の上のノートには、「放課後デートプラン」と書かれたまま。

その文字を見ながら、空は胸の奥に奇妙な鼓動を感じていた。

練習のはずなのに――どうして、こんなに楽しみになってるんだろう。

そんな自分に気づきながらも、

空は未来の笑顔から、目を離せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ