エピオテス 3
十四歳になると、王子教育の座学が終了に近づき。
元々習っていた体術が本格化して、馬術・剣術などの内容が加わった。そして、魔法の訓練も……
他国ではほとんどの赤子が…産まれた時、魔力は蓋をされた状態で成長と共に徐々に使える様になったり、一定の年齢・体格に至った時覚醒したりするそうだ…
この国では、産まれた瞬間から魔力を放出した状態になる赤子が殆どだ。
(稀に、閉じた状態で産まれる子もいるが、そう言う子は後々の魔法の扱いの学び方が変わってくる。)
なので、産まれ落ちて直ぐに、魔力封じを記したおくるみで包み、魔道具のアンクレットを付ける。
そうやって幼い肉体に負担の大きい魔力放出を、一定の年齢・体格になるまで魔道具で封印する。
僕は、両耳にピアス、首にネックレス、両手首にブレスレット、両足首にアンクレットと七つの魔道具で抑えていた。
魔道具の数は魔力の量に合わせて増える…貴族筋の者は魔力量が多く二〜三個の魔道具で抑えるそうだが…
僕は、高性能の魔道具を七つ使ってギリギリ抑え込んでいる
やはり王族の血は規格外と言う事なのだろう……
初めて魔道具を外した日……
行うのは魔法で防御壁を張った闘技場で、三階上の見下ろす位置にある観覧場に、父が居て。
五歳の時から僕専属に付いて居てくれてる、侍女と侍従も五人全員
均等に間隔を開けて僕の周りを囲っている。
この五人は、アインスト国の[海の民]の一族の出で
結界・防御魔法に優れた一族なのだと。
全員が、水色の髪に青い瞳。[海の民]の特徴だそうだ。
八歳の婚約を結ぶ為にアインスト国に赴いた時に
視察と銘打って彼らの故郷である、オリゾンテも訪れた。
彼らが育った[クラム]と言う…学園の寮の様な施設は、自分と同じ年頃の子も大勢いて…
身分に関係なく過ごさせてくれた。
兄弟姉妹のいない僕には新鮮で楽しいひと時だった。
あれから六年…僕の従者に着いてからは十年近く…
僕が最も信頼している者たちが居てくれて…ありがたい。
初めて魔力を自分の意思で、制御・操作するのに
魔力暴走等が起きた場合の対応の為、居てくれてるのだろう……
彼らが居れば安心だ。
魔道具を外した直後、魔力が溢れる様に体から出ているのを感じたが……本能なのか?。
意識する事なく魔力を抑え込む。
その様子に父が安堵の表情を浮かべていた……
見守っていた侍女・侍従達も強張らせていた表情を緩める。
魔力制御も操作も難なく習得し、この日を難なく終えた…
終了後。父上が声を掛けに来てくれたのだが…先ず抱きしめられた。
他の者の目が気になり、恥ずかしかったが…とても嬉しかった。
どうやら父上はとても心配していたらしい……
「来年には入学だが…気負わず励む様に。」
「はい。」
この時、気が緩んでいたのだろうか?。自分でも思ってもいなかった言葉が出た……
「あの……母上はお元気ですか?」
父上は驚いた顔をしている……そして一瞬…ほんの一瞬、瞳に水の膜が張った様に見えた。
「……今は無理だが…立太子する頃には会える。」
立太子……あと四年も?
「今日は疲れただろう…ゆっくり休みなさい。」
「………はい。ありがとうございます…」
心ここに在らずな返事をしてしまった……
そうして帰って行く父上の背中に礼をする。
別に…母上に会えなくて寂しいとか…思った事はない。
普段は国王と王子として接している父上に抱きしめられ…
親の情に触れて母上を思い出したのだろう。
幼い頃の母上との思い出は、無いに等しい……
母上と一緒にいた時間は、寂しさに耐える苦痛な物だった……
でも決して、母上を嫌いな訳では無い…
『会いたい……』
初めて、そう思った……




