ソールとエピオテス 5
打ち合いの続く中…
ソールの様子が変わった事にエピオテスは気付いた
『なんだ?急に……怒り…か…苛立ちか…?』
今日、会った時から見た表情は
ずっと他所行きな笑顔…
手合わせが始まってからは真顔
なのに、剣の打ち合いが続くに連れ…瞳には探る様な色が強くなり
先程、一層強い…全力とも言える一撃を受けてからは
見見うちに、表情が険しさを纏っていく
そして撃剣の手数・速度・圧力が増す!
『……長期戦のつもりじゃなかったのか?……』
ちょっと前までは、体力と集中力を削り合う様な闘い方だったのに
急に、畳み掛ける様な攻撃に変わった…
カンッカカンッカンッガガンッッギンッッ……
ソールの様子の変貌にエピオテスは動揺し、猛攻に気圧される…
『くっ……捌ききれない…』
ギイイイイイィイン
エピオテスの剣が弾き飛ばされた。
とうとう勝敗を決した二人に、騎士達の喝采と遺憾の声が上がる
『……ハァッ…押し切られた……』
ハァハァ…ハァハァハァ
酸素を求めて荒く呼吸しながら…飛ばされた剣に目をやり、右手を摩るエピオテス
ギリッ!!
騎士達の声に紛れて微かに聞こえた音の方に目を遣れば
肩で息をするソールが、肩を微かに震わせていた
広場にソールを中心に威圧感が広がっていく…
ソールはギリギリと奥歯を鳴らし、黄金の瞳をギラギラと光らせて
エピオテスに問いかけてきた…
「………馬鹿にしてんのか?」
『はぁ?』
「僕は全力を出す程でも無かったですか…
あぁ…それとも、可愛い婚約者の弟に勝ちを譲って自分の印象をもっと良くしたいんだ?
姉様の心を掴んでずっと離さないくせに!!」
『……何を言ってるんだ…?』
エピオテスにはソールの言っている意味がわからない
この手合わせで、手加減なんてしていないし…負けるつもりも更々無かった。
だが、一番困惑した言葉は…
『……心を掴んで離さない?…アウローラの…?俺が?……』
エピオテスの頬に微かに朱が走ったが
ソールには見えていない…
「今度は本気でお願いしますよ…」
ソールは睨みを効かせたまま、エピオテスの方に掌を向ける。
二人の唯ならぬ様子に駆け寄ってくる侍従達の内…エピオテスの侍従の一人が叫んだ。
「ソール殿下!!いけません!!!」
ソールは掌をグッと握り込む…
パキイィーーーーーーーーーーーン…………
「………?…なんだ?…」
エピオテスは自身の体から、目に見えない何かがハラハラと落ちるのを感じた…
・・・瞬間
針葉樹の森から無数の緑の光が浮上する。
((((((((((……王だ!……))))))))))
ゴゴゴゴゴゴ………
突然、地面が鳴動し出した
多くの騎士達は揺れる地面や建物に、体勢を保てない
そんな揺れを物ともせずに、主人の二人の元に駆けつけようと走る四人の従者達
浮上した光の全てが、エピオテスに向かって飛んで来る。
エピオテスの従者が結界を張ろうとするも、間に合わない…
エピオテスは物凄い勢いでぶつかって来る光に包まれた。
途端…エピオテスは意識が混濁し、後方に倒れていく…
ソールは反射的にエピオテスに手を伸ばす…
と、同時に
闘技場の地面から無数の、蔓植物や木の根が突き上げる様に生えてきた!
エピオテスの従者達とソール従者ムシュレが結界を張り六人を護る。
「 エピオテス様!!! 」
エピオテスは混濁した意識の中…遠くにアウローラの叫び声を聞いた気がした…
『……アウローラが叫んでる…?……そんなわけ無いか……』
エピオテスの意識はそこで閉じられた。
蔓植物と木の根は
地面ごと包む様に球体に張られた結界を、飲み込む様にぐんぐん伸びてゆく……
そうして巨大な…樹の様な柱が空へと伸び上がった。
「ソール!!!エピオテス様ー!!!!」
アウローラの叫び声が闘技場に響き渡る。




