ソールとエピオテス 3
本宮の東に位置する王子宮の周りを囲む針葉樹はそのまま東に広がる森である。
王子宮から森の入り口まで
森を中央で分断するように補正された道が通り
森の入り口には近衛騎士団の本舎と闘技場がある。
エピオテスは
闘技場へは補正された道ではなく、森を抜けて行くとこにした
手合わせをするにしても、手加減を加えるべきか…全力で迎えるべきか…
少しでもソールの身体能力の情報を得たかった
エピオテスも自身の従者を二名を連れて行く
『ソール殿の従者の一人も水色か…もう一人はウナヴォルタの色が濃い…治癒と結界…主人の攻撃力が高いから従者は守りに特化しているのか…』
六人は森の中を走り出す
『心肺能力は俺と同等……いや、それ以上か…?』
管理された森とはいえ、規則性無く生えてる樹木…不陸な地面の障害など気にも留めずに
魔法で身体強化している様子も無く
馬の駈歩と変わらない速さでも余裕で着いてくる
そうして走る事、十分程…闘技場の外観が見えてきた
侍従達も含めて、息を切らしている者は一人も居なかった
『最後はスピードを上げたのに…余裕だったな…自信があると言っただけある……手加減なんてする余裕は無さそうだ…』
エピオテスは気を引き締めた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
闘技場の中は、近衛騎士団の隊員が日替わりで訓練をしている
午前の訓練が終わる頃合いに現れた王太子一行に
闘技場内はざわついた…
エピオテスは頻繁に闘技場を訪れるので、動揺する事ではないのだが…
連れの人物の容姿に全員が動揺を隠せなかった
金の瞳はアインスト国の王族の血統に連なる色…
しかも金髪で有れば、王族である事を決定づける。
自国の王太子が、他国の王子と共に訓練服で現れた…
なんのお触れも無かった事態に困惑するしかない
エピオテスの従者が
本日訓練をしている班の班長に話を通している間…
「…ソール様…大怪我のない様にお願いしますよ。」
従者のアセロがソールに耳打ちする
「もちろん♪」
ソールは嘘くさい笑顔を貼り付けたまま答える
ソールの後ろに控える二人は同じ事を考える
『面倒な事にならないと良いなぁ…』…と
丁度昼休憩に入る頃合いで、中央広場に多く居るはずの隊員は大体捌けていた
班長の近衛隊員が残っている者に指示を出す
「これからエピオテス様がお連れと手合わせを始める!残っている者は速やかに撤収するように!」
この指示に、訓練中の隊員は速やかに撤収し
逆に、休んでいた者達はザワザワと観客席に集まり始めた。
エピオテスの実力は近衛騎士団であれば、当然知っている。
そして
その相手は、金髪金眼の少年…間違い無くアインスト国の王族!
アインスト国の王族と言えば、魔術・体術に長けた[神の戦士]と言われた一族
そんな二人の手合わせを見逃す訳にいかない!と集まるのは当然である。
そんな近衛達の視線の中、広場中央に歩み出て行く二人…
お互い、手にはブロードソードを持っている
「身体強化無し、魔法攻撃無し、剣術のみの手合わせでよろしいですね?」
「はい♪ うちの国では、剣を折るか、弾き飛ばすか、降参宣言で勝敗が決まりますが…同じですか?」
「同じです。あと、昏倒した場合も負けです。」
真顔のまま会話するエピオテス
「それも同じです♪」
ソールは目を細めて笑顔で返した
円形の闘技場
ソールとエピオテスの従者達は
相談するでもないのに自然と、主人の二人を中央に置いた広場の周り
等間隔に四箇所…一人ずつ立っていた
開始の合図は近衛の班長に頼んだ
「よろしいですか?………」
エピオテスはソールから五メートル程の間合いを保っている
「始め!」
合図の声と同時にソールが、五メートルの間合いを一瞬で詰めて斬り込む
ガキイィン……
『!…早い…』
エピオテスは、真っ直ぐ打ち込んできたソールの剣を真正面で受けた
『ぐ…重い…!…なんで……身長はアウローラより少し大きい位なのに…』
180はある長身のエピオテスに対し、14歳のソールは165センチ程
体格差からソールは下から押し上げるような打ち込みになる…
当然、上から押さえ付ける事の出来るエピオテスの方が有利なのだが…
『物凄く重い!』
たまらず左に受け流し、右へ距離を取ろうと逃げるが
ソールは、受け流された剣を引き摺るようにしながらもエピオテスの動きに着いてくる
エピオテスは距離が開けられないまま…
ソールは剣を持ち上げ、至近距離から打ち込んでくる
カンッ ガンッガンッ
ソールの打ち込みを、追随されないよう
その場に押し留める様に上方から叩く
エピオテスはやっと距離を空けられた…
『踏み込みが尋常じゃなく強いな…身体強化無しで…これ程か…』
見やれば、ソールが最初に打ち込んだ場所の地面が
抉れる様に凹んでいる…
『細身でも、しっかり筋肉質だと思いはしたけど…そもそもの筋肉の密度が、常人と違うのかな……』
そう思いながら
今度はエピオテスの方が斬り込んだ
ソールの左斜め下から、足の踏ん張りが効かない様…掬い上げる様に打ち込む
ソールは剣で受けながら、その力に逆らう事なく右に飛ぶ…
『抜群のセンス…腕力に瞬発力…持久力まである……勝てる気がしないな……これがディアマントの血統の凄さか…』
エピオテスはソールと対峙しながら、アウローラを見ていた。




