ソールとエピオテス 1
「先程、アウローラ様の弟君が。来訪されました!」
「はあ?」
『アウローラの弟?』
婚約の調印式の時に見たな…と、当時の容姿を思い出す。
アウローラと同じ色の金髪はサラサラとしたストレートで
瞳はアウローラの、蜂蜜の様な…と表現するよりは、
エピオテスには純金の塊の様に見えた…
確か二つ年下で、当時は六歳…
歓迎するでも拒絶するでもない…薄っすらと微笑みを湛えた美しい人形の様な子だったと記憶している…
「来訪の先触れなど無かったよな?」
従者に確認する
「有りません。有ればアウローラ様も把握なされている筈で、その様な話はアウローラ様側からも有りませんでした。」
「そうだよな…」
侍従とそんなやり取りをしながら身支度をする。
いくら、いきなりの来訪でも一国の王子との対面なので平装という訳には行かない……
「ソール殿はアウローラとの面会を済ませてから、こっちに?」
「いえ…ウナヴォルタに到着早々にこちらへお越しになった様です…」
「「………………」」
思わず従者と無言で見つめ合ってしまった…
『アウローラより先に、俺に会いに?』
アウローラがアインスト国を出てから三年と少し…
その間、アウローラの帰国は無く
アインスト国からの来訪も無かった…
三年振りの再会になるのに、先ずエピオテスに会いに来た。
一体どう言う意図が?と、従者と共に困惑した…
****************
ソールは馴染みの従者二人を引き連れて
ウナヴォルタ国を訪れた。
王子の渡航にもを関わらず、自国になんの申告もせず…
ウナヴォルタ国の王族に往訪するのに、相手国側に先触れも出さず…
完全にお忍びスタイルだ。
一国の王子が何故こんなにスムーズに渡航出来るかと言うと…
以前、竜の里に赴いた時
叔父のザハブが会長を務めるギルドに登録して
ギルド用の身分を作ったからだった。
ウナヴォルタ国に着いて早々、王宮に向かい
アインスト国の王族である証明の印章を提示して
エピオテスへの面会を取り付ける。
『先ずは姉様に会いたいところだけど…』
アウローラの目があると、エピオテスに手合わせを願うのが難しくなる…と考え
先ずはエピオテスの暮らす王子宮に直行する事にした。
エピオテスの暮らす離宮は、東萌宮と呼ばれ
周りを針葉樹の林が取り囲んでいる。
宮殿の一階、芝生の広場が望める応接間に案内された。
ソファを勧められたが、ソールは座ることなく
窓から青い芝生の庭園を眺めている
侍従、ムシュレとアセロは扉の脇に並んで立っていた。
程なくして
エピオテスが侍従を引き連れてやって来た。
侍従が開けた扉から入って来たエピオテスを見たソールは驚いた
『……でかっ……』
八年前に数日会ったきりで、当時の可愛らしい幼少期の記憶しかなかったのもあるが…
十六歳になったエピオテスの容姿の変わり様に、素直に驚いた。
身長は180程だろうか
短く整えた髪は深碧色で、初めて見た時より濃い気がする。
切れ長の目は変わらずペリドットの様に美しい
『そー言えば、ウナヴォルタ国の男子は体格が良いんだっけ…』
ウナヴォルタ国の男子は身体が大きく
特に[森の祝福]と呼ばれる緑色が髪や瞳に挿すと、特に大柄になる。
ソールの侍従のアセロも母親がウナヴォルタ国出身で、明るい緑の髪に黒目
身長は188で、かなり筋肉質な体格だ。
ディアマントの家系には高祖父の代に、マクラーン王家から王女を娶っていて
叔父のザハブが覚醒遺伝で深緑色の髪を持って産まれた。
190を超える大男である。
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「エピオテス様、お久しぶりです。突然の訪問、申し訳ありません。
無作法な面会に応じて頂き感謝致します。」
ソールは顔に爽やかな笑顔を乗せて握手を求める様に手を伸ばす。
その手に応える様に握手を交わし
「いや、良いんだ…船旅は如何でした?
到着からそのままこちらにいらしたと聞きましたが…」
テーブルを囲むソファへの着席を促しながら
エピオテスは来訪の意図を探る
「快適な船旅でしたよ♪ 今朝方港に着きまして…早くエピオテス様にお会いしたくて。直行しました♪」
一方ソールは早速本題に入ろうとする物言いに
従者の二人は冷や汗が出ている
「私に会いたい…それは何故でしょうか?」
「手合わせをお願いしたいんです。僕と♪」
「………えっ?」




