表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

再起と依頼

 両脚と左腕が無残に撃ち抜かれ、右肩が焼けただれていた。黄金の血液が石畳に滴り、ひたりひたりと広がる染みは、まるで俺の命そのものを溶かし出しているようだった。

 幸哉は膝をついたまま、荒々しい息を必死に整えようとするが、肺の奥底に残る熱は冷めやらず、心臓の鼓動が耳元でうなる。


 このままでは——アルヴェンを守りきれない。


 その思いが胸を締め付け、深い絶望が渦巻く。昨日、あの小さな娘に誓った言葉が脳裏をよぎる。「必ず守る」と。だが今、俺は地を這うことすらままならない無力な姿だ。怒涛のように押し寄せる無力感が、自我を飲み込もうとする。


 その瞬間だった。


「幸哉さん……動かないで」


 かすかな足音が近づき、耳に馴染む声が響いた

 ティナだ。彼女は静かに、まるで影のように忍び寄り、誰にも気づかれぬよう慎重に背後に寄り添っていた。


「ティナ……? なんで……」

「アルヴェンちゃんが引きつけてくれてる。今のうちに治すよ」


 ティナは腰の薬袋から小瓶を取り出し、俺の傷口にそっとポーションを垂らす。ジュッと皮膚が再生する音が響き、焼けた肉がじくじくと元のカタチを取り戻していく。奇跡のような感覚が全身を包む。


「これどういう仕組み?」

「わかんないよ! 今度自分で解明して!」


 再び拳を地面につき、踏ん張る足に微かな力が戻ってくるのを感じる。ティナのポーションの恩恵か、それとも意地が俺を支えているのか。右足の感覚は鈍く、左腕の動きもぎこちない。それでも立てる。それだけで十分だ。


「ティナ、頼みがある。」

「え? 何?」

「奴を倒す秘策を……いや、科学実験をやってほしい」

「わ、私が!? 無理だよそんなの!」

「いや、できる。ティナには一度見せてる」

「え?」

「レモン電池さ」


 ティナの瞳が見開かれ、不安と決意が交錯する影がその表情に浮かぶ。軋む脚を支えに、俺はゆっくりと立ち上がった。風が頬を撫で、夜明け前の湿った空気が覚悟を後押しする。濡れた瓦礫を踏みしめながら歩を進め、手にはカイルとの戦闘で飛び散った金属片——破片、欠片、死にゆく記憶の残骸を拾い集める。足元に並べ、アルヴェンの行方を探る。


「……アルヴェン、どこまで逃げた?」


 呟きは風に溶け、答える者はない。だが分かっている。今、ここで声を上げなければ、彼女に届かない。俺は右腕を地に叩きつけ、地面が低く唸る。

 足元から金がうねり、鉄骨のように軋む音と共に純金の柱が天を衝く。厚く、重く、揺るぎない塔が形成され、俺をその頂点へと押し上げる。風が吹き抜け、夜の湿気が肌に染みる。深く息を吸い込み、俺は全存在を込めて叫んだ。


「カーーーーイル!!!!」


 怒声が静寂を切り裂き、窓が震え、鳥が一斉に飛び立ち、遠くで犬が吠える。やがて、チカッと鋭い光が空を走る。


 ——来た。


 マジックガンの弾丸が空気を裂き飛来する。

 俺は柱の側面を叩き、金の装甲を展開。直撃を防ぐが、数発、さらに数発が続き、壁にひび割れが広がる。

 それでも立つ。叫び続ける。屈しない。

 やがて、濃い影が現れる。黒い外套を翻すカイルが地上に立ち、両手を広げて塔を見上げ、嘲るように嗤う。


「ハッ、驚いたな! お前、不死身なのか!?」


 その声には軽さがありつつ、微かな苛立ちが滲む。


「血が流れれば死ぬさ。ただし……忘れるな。俺たちは錬金術師だ!」


 金の柱がきしみ、次の瞬間、カイルが右足を地に叩きつける。地鳴りが響き、金の構造体が容易く砕ける。


「マジか……!」


 呟きが終わる前に、カイルの蹴撃が再び襲う。柱が次々に割れ、瓦礫と化す。空中に放り出された俺は、金塊の破片に飛び移り、落下を制御する。


「うおおおおおっ!!」


 右拳を錬成し、凶器と化してカイルを狙う。が、一瞬の隙。カイルの身体が風のように揺れ、拳をかわす。


「遅いんだよ」


 回し蹴りが腹に突き刺さり、空気が肺から抜ける。「ぐふっ!」と呻き、俺は瓦礫の上を転がる。視界の端でカイルが銃を構える。


 ——ダメだ、防ぎきれない!


 その時、鋭い矢が飛来し、マジックガンを弾き飛ばす。


「……ちっ。あの小娘、いい腕してやがる」


 アルヴェンだ。遠くからの援護。こちらからはその姿を視認できないが、カイルは矢の射角からすでに居場所を割り出したようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ